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「不機嫌な過去」(2016)



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二階堂ふみさん、小泉今日子さん出演ということもあり、予告編を見ての鑑賞。予告編とは印象が違っていて、取っ付き難いが深みのある作品です。
この作品は退屈な日常を過ごしていた女子高生・果子(二階堂ふみ)が、亡くなったはずの母親・未来子(小泉今日子)がやってきて、退屈な日常が少し彩り始め、過去の捉え方が変わっていくというファンタジーな物語です。
監督・脚本は前田司朗さん、オリジナルです。

”果子の不機嫌さ”が、彼女の住む新旧建物のひしめく北品川や古風な料理屋という環境、複雑な血縁関係の家族というどうしようもない閉塞感の中にあって、リアルに伝わってきます。
複雑な家族関係や謎の多い未来子の行動を家族や友人らが話す言葉で理解することになり、とてもミステリアスかつユーモラスで、日常では語られないすばらしい言葉に出会います。

テーマは「あんたの見てる未来ね、それ全部過去よ」「血のつながりってなんなの」です。
ラストでの、二階堂さんの「見えるものなんて見てもしょうがない」とふっきれた笑顔が美しいです。

過去と現在・未来を暗示するような美しく幻想的で映像も見どころ、何度も劇場で見たい作品です。二階堂さんの自然にさらけだされた不機嫌さ、小泉さんのミステリアスな雰囲気、そして二人の本気でぶつかり合う演技はすばらしいです。
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物語
何か不満があるような、不機嫌な顔した果子が友人のヒサシ(山田裕貴)と運河を覗きワニがいるかどうか見ている。ヒサシはそんなばかなと思っているようですが、果子は「叔母(未来子)さん見たと言った」とここに毎日確認に来ている。
そして、いつもの喫茶店に立ち寄り本読んでる謎の男(康則:高良健吾に今日何か変わったことはないかと覗き見。康則が店の子となにか話して出て行くので聞いてみると「あんた、ヤスノリちゃん事件って知っている」と問うてくる。

不機嫌で傘を引きずって我家、古びた食堂蓮月庵(エジプト料理)に帰ってくると、家族の女ども、おばあちゃんのサチ(梅沢晶代)、母サトエ(兵藤公幸)、叔母さんのレイ(黒川芽衣)、従妹カナ(山田望)が黙々と豆を剥いている。
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会話のなかに、この人たちの血の繋がりが方が分かるが複雑です。サトエには子供ができたばかりだがまだ名を付けていない。
「なんで付けないの、果子の時はすぐ付けたではないか」
「あれは母親の未来子が付けた」
「ワニを見たなんてでたらめだ」などと言う話が飛び交う。
父タイチ(板尾創路)は「俺なんかには(未来子は)捕まえられん人」と言い、自分の右手を見て(指を2本失くしている)「失くなっている部分だけ、一緒に旅している感じがする」という。(未来子は相当伝説の危ない人のようだ)。

果子は従妹のカナをとても可愛がっていて、この姉妹関係はとても微笑ましい。
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果子の部屋でカナが「学校は面白いか」と聞くので、「面白くない。人生なんてそんなもんだ。同じことの繰り返しで創造の範囲内の出来事」と不機嫌に答える。
カナの母レイがやってきたのでヤスノリちゃん事件のことを聞くと、「昔そんな話があった」と言う。

運河で事件発生
果子と家族のこと、最近の話題が出たところで、映画のタイトル「不機嫌な過去」の幕が上がり、最初のシーンと同じ場所で果子が運河を見ている映像がでてくる。
ヒサシの”事故だ”という声が入るが、果子は運河を見ている。運河をまたぐ先の橋の上で3人の人がもつれ合っている(ほとんど影)。パトカーのサイレンが聞こえる。このシーンは面白い映像です。そのうちに、果子の視界にあの謎の男が女性と走り去る姿が入る。

未来子、蓮月庵に出現
果子が蓮月庵に戻ると、いつものように家族で豆を剥いていると、そこに未来子が入ってきて、みんなが驚く。果子とかナ以外はみんな未希子を知っていて懐かしがる。
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果子はサトエから”未来子”と紹介される。未来子は果子の顔を見て「私に似て美人だ」という。ちよっとした歓迎会をして寝ることのなる。未来子とどこに寝るかで揉め、果子は大いに不満だが、果子の部屋で寝ることになる。これでまた、果子の不機嫌さが一層激しくなる。ベットに果子、床に未来子。ここでの果子の不機嫌さは絵になります。()
朝になって、サチが「あんた何処にいたの」と未来子に問うと、「海外にいて最近は飯能あたりに潜伏している」という。「そしてちょっとあれで爆弾が頭に入ってる」などと物騒なはなしをするが、観てる方にはさっぱり分かりません。想像する楽しみがあります。”革命家とかめちゃくちゃな人”のようです。「しばらくここに居る」という。

果子、未来子の過去を探る。
果子はいつもの喫茶店に行くと謎の男がいて、出て行こうとするので、後をつけ彼のアパートを訪ねる。
彼は、果子のことも知っていて、「未来子はある組織に軟禁されていてそこから逃げていて、彼女を攫うつもりだ」と話す。彼はヤスノリちゃんの康則、攫われた子で「人攫いに攫われた子供は人攫いになる」と言う。
果子が「わけわからん」と言いますが、観ているこちらにも”わけわからん”。()

果子、カナと一緒にいつもの橋のところで運河を観ている。カナがワニがいないというと「見えるものなんか見てもしようがない」と言い、実はヒサシの父ヒロシに会って未来子のことを聞き出そうとやってきたのだが、彼の話がまた分けわからない。が、実に面白く大笑いです。

彼は片足を失っていて、どうやら未来子が起こした爆弾事件に関係して失ったようです。そして父タイチが指を失ったのも同じ理由。爆弾作ってヤクザの事務所を爆破して警察に捕まり、出所して北海道に失踪。父タイチがこれを追って北海度に行ったが会えず、”彼女は死んだこと”になっている

店で働いている野村(AHMAD ALIと話すと、未来子さんは私の恩人で、「エジプトで会った。それがここに来るきっかけになった」と言う。

果子、未来子と対決
ここまでで、未来子の人物像がほぼ分かってきたので、果子はいよいよ彼女と対決することになる。
果子の部屋で黒いどろどろしたものを飲んでいる(豆を煮汁?)未来子に、果子が問い質す。
「ヤスノリちゃんて知っている」
「・・・・・・・」
「何故帰ってきたの、寂しいから」
「みんな寂しいんじゃない。みんな孤独なのよ。だから欲望するの、欲望が人と人を結びつける」
この答えに果子がむかつく。激しく二人はもみ合う。
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ここは見どころです。二人の喧嘩を見ていると血が繋がってる、どちらも気が強い、親子です。()
未来子が「果子に会いに来たかも!」と本音を言うと、この場は収まって、未来子が「今夜付き合わない」と持ち掛ける。

果子、未来子の告白を聞く。
未来子、果子そして従姉妹のカナは夜中に舟で、かってヤスノリちゃんがいた中州の村に漕ぎ出す。都会の光が川面に映えまるで夢の国にいるようです。
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中州の森の中を歩きヤスノリちゃんの屋敷跡に着きトイレだった場所を掘り起こす。未来子が「古いトイレの下には硝石が埋まっていてそれで爆弾を作る」と説明果子が白い石を掘り出しトイレの匂いがするという。

すこし雨が降ってきて、3人が色違いの傘を持って、硝石で作った爆弾が爆破するのを待っていると”ポン”と小さな音。三人の傘の色が、カナが白、果子緑、未来子赤で、過去、現在、未来と並んでいるように見える。
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失敗したらしい。カナが近づいている。未来子は「なにこれ。爆弾は手段じゃない、目的よ。崇高なのは爆発」と言い「私があんたの本当の母だと告白する。
そのうち大きな音がしてカナが倒れている。「ちくしょう、見逃していた」と未来子。果子は”やった”という感じ。この体験で果子はタッパーを使った爆弾が作れるようになる。これも血の繋がりか?(笑)

未来子、蓮月庵を去る
果子と未来子がいつものように寝ていて、夢うつつのなかで果子が未来子に「付いて行きたい」と言うと「無理」と言いながら康則と一緒に出て行く
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夢かな? 朝起きると未来子はいない。店ではいつものように豆を剥いていて、父タイチが大きな声で「未来子がいない、二度と会えん」と喚き、母サトエは「果子が未来子と一緒に出ていくと思っていた」と言う。

果子、母未来子との別れ
果子は康則のアパートを訪ね、そこにいる未来子に会う。蓮月庵を黙って出て行ったことを責める。康則は「これから日本を出て世界を改革する」という。
果子は分けわからんと怒りを爆発、帰りかけるが、傘を構えて未来子に突進未来子の腹に刺さる。未来子は傷にガムテープを貼って応急処置、医者には行かないという。
果子に「肌色の糸買ってきて」と頼む。果子はすっかりしょげかえっている。未来子は「傘が刺さったくらいで人は死なない、あんたを人殺しにはしない」と言うと「先っぽに犬の糞つけていた」と果子。(笑) 「死にはしない」という未来子に「熱も下がらないしきっと死ぬ」と果子。
そんな果子に「あんたの見ている未来、それはただの過去」「見えるものなど見てもしょうがない」と未来子。

果子、運河にワニを見る。
果子、例のタッパー爆弾を手にして、いつものところで運河をみているとブルーシートで包んだワニのようなものを見る。人が集まっている。上空にヘリが飛ぶ。“ワニが居たんだ”。果子、これまで一度も見せなかった満面の笑顔で、「見えるものなど見てもしょうがない」。
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記事1 20161120
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