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「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016)

イメージ 1「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016)
好評価作品ということで、わたしどもの地域では正月明けの公開、遠出して観て参りました。噂どおりすばらしい作品で、今年のトップクラスの作品だと思っています。
突然の余命宣告を受けた母親が、強い意志と愛情で、2か月の間に絶対にやるべきこととして出ていった夫を連れ戻し銭湯を再開し、気が優しすぎる娘をひとり立ちさせ、娘にある人に合わせ家族の絆を取り戻し、家族から感謝で送られる物語です。ここでは死という悲しい物語ではなくこれからをどう生きるかという死にゆく母と、残される家族の愛の物語で、笑いあり涙ありで題名のとおりの結末を迎えるドラマです。
物語の初めの段階で巧みに伏線が張られ、無駄なくよいテンポで回収され、最後に大きな伏線が回収されるという脚本のよさと出演者のうまい演技で涙が止まらなくなります。(#^.^#)
キャステイングがこの物語にぴったりです。母親の宮沢りえさんは強い意志でただ優しく愛するのではなく、ときには相手が辛いと感じることをずばりと言いその後で温かく抱く強くてやさしい母親役がすばらしい、日本の母親です。そして長女役の杉咲花さんとのコンビが絶妙です。杉咲さんの強く生きようとする意志が見え母のために何度も泣きますがそれが本当に切なかったかったです。・・女優賞は確実でしょう! 次女の伊東蒼ちゃん、しっかりした演技でした。オダギリジョーさんの頼りないけどひょうきんで憎めない父親役もおもしいです。
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物語、
イメージ 2出ない銭湯の煙突、入り口に「湯気のごとく、店主が蒸発しました。当分の間、お湯は沸きません」の張り紙があり、二階のベランダでは幸野双葉(宮沢りえさん)が洗濯物を干していてのブラを見て「まだ大丈夫」と呟く。このあと娘とみそ汁の味が変」とちょっと言争いながらの朝食。あわただしく娘・安澄(杉咲花さん)は学校に、母は 自転車で勤め先パン屋に出かけ、途中で娘に「乗って行かない」と声をかけ、「乗らない」に振り返り笑顔を返して急ぎます。
・安澄が美術の時間に制服に絵具を塗られるといういじめに会い、母親が呼び出され駆けつけますが安澄は口を堅く閉じ悔しさに耐えるのみ。双葉は絵具を見て「何色が好き」と聞きます。安澄は「水色」と双葉は「赤」と言い、無言で娘を自転車に乗せ自宅に。安澄は双葉の腰に手を回しそっと泣いています。イメージ 3 
・双葉がパン販売カウンターで気持ちが悪くなり倒れ、病院で診断を受けます。結果は「ステージ4の膵臓末期がん遠隔転移しておりいずれ頭にも転移する」というもの。早退し、休止中の風呂のなかで一人泣きながら考えます。夜になり安澄からはやく帰っての電話で何もなかったように帰ってきたふりして台所で料理。
・次の日、探偵の滝本(駿河太郎さん)がやってきて旦那が見つかったと地図を渡します。ここでもう“ひとつ頼みがあると依頼します。
・夜、ふたりは贈り物の高足ガニを食べます。双葉が「お礼を書いて」と言うと安澄が「毎年何故わたしなの」と不服そう。「我家のルール」と双葉。送り主はタグにある「坂巻君江」です。
食べ終わって、双葉は「大事なときにちゃんとつけなさい」と水色の可愛いブラジャーとショーツを贈ります。
イメージ 4・双葉は早速電車で蒸発した夫・一浩(オダギリジョーさん)を迎えに行きます。お玉で一発食らわせて連れ戻します。() なんとここには鮎子(伊東蒼ちゃん)(9歳)が・・。
交差点で信号待ちしている安澄が耳の障害でとらぶっている女性に手話で何か説明をしています
・安澄が帰ると夕食に「しゃぶしゃぶ」が準備されており双葉に「誰の誕生日」と言うと「アンタの頭に浮かんだ人」。ここに一浩が鮎子を連れて現れ「安澄に妹ができた」というので安澄はびっくりしますが明るい双葉のとりなしで食事。鮎子は一浩が元カノに会ったときにあなたの子だと押し付けられたという。
ここまでで、この物語の伏線(太字)がほぼ全部出尽くしました。さあここから伏線回収です!
イメージ 5・朝、パンで朝食を済ませると「働かざるもの喰うべからず」と全員で風呂掃除です。
安澄と鮎子はポステイング、一浩はトラックで燃料運搬、双葉は番台の準備。煙突に煙が立ち上り、双葉が番台に座りそばでずかしそうに鮎が双葉を見上げる。風呂を焚きつけている一浩のところに安澄がやってきて店が再開できてよかった。でもお母ちゃんがどんな気持ちでいたか、なんも知らない顔がむかつく」と。
イメージ 6・安澄が体育の時間にいじめで制服を隠され、数学の時間に体操着でいることに皆に笑われ先生から咎められる。次に朝、安澄は起きてこない。(体育着の)登校がいやだと言う。双葉は「体育着で学校に行け、あきらめたらだめ」とここでふたりは激しく取っ組み合う。安澄は母から贈られた水色の下着をつけ体育着で登校。皆に笑われ、先生から注意を受けた安澄は下着になり制服が隠されたことを訴える。双葉は激しく娘を責めて登校させたが、心配で心配で安澄の帰りを家の外で待つ。制服で帰った安澄を双葉は力一杯抱きしめる。安澄は「お母ちゃんの遺伝子が少しあった」と涙ぐむこの光景をじっと見つめる鮎。気が優しすぎる娘がやっとひとり立ちできそうです。
イメージ 7・双葉が風呂を掃除していて、鮎は番台のお金をもって出て行くのを見つける。鮎のバッグの中を調べると母の手紙が見つかり「こんどの人とはうまく行くと思う。来年には迎えにいく」と書かれている。
夜になっても帰ってこない。一浩に鮎の誕生日を訪ねると「今日だ」という。双葉と安澄と一緒に元居たアパートを訪ねると、雨が吹き込む廊下に震えながら座っている鮎を見つける。双葉は力一杯抱きかかえ「明日はひとりで銭湯を磨きなさい」という。ほっとした鮎はおしっこを漏らす。
次の朝、鮎は朝食に出てきて「これからは一生懸命働きます。どうかこの家に置いてください」と言う。「バカ、あたりまえだ」と朝からこの家の誕生日献立「しゃぶしゃぶ」が始める。この一件で鮎は双葉の子になってしまいます
イメージ 8・双葉の症状が悪化していることを心配する一浩は、何かしてやりたいと言い出すと「新婚旅行はエジプトに行ってピラミッドを見ることだったが行かなかった。その穴埋めに娘たちと伊豆の旅をさせて」と旅に出かけます。
途中で、ヒッチハイクをしている青年向井拓海(松坂桃李さんに会う。彼は北海道からやってきて旅を続けているというが様子がおかしい。聞いてみる「北海道生まれは嘘。今の母は3人目で、海の母の顔を知らない」といい、目的もなくぶらぶらしていることを知る。「目標を持つことが大切。あなたは北海道の最北端を目指しなさい。終わったらできるだけ早く訪ねてきて」としっかり抱いて別れる。双葉には死を前にして苦しんでいる人に手を差し伸べたいという気持ちが一杯なのです。イメージ 9
・それから3人であるレストランで足高ガニの食事をする。ウエイトレスの女性が来てにこやかにみんなに挨拶、聾唖者のようです。双葉は食事が終わって先に子供を車に帰らせ、勘定をする際さきほどの女性にピンタし、車に帰ってイメージ 10きて安澄に「さっきの女性があんたの本当のお母さん・坂巻君江(篠原ゆき子さん)さんだ」と説明し会ってくるように促しますが、信じられないと断る。双葉は安澄を車から引きずり出し背中を押します。安澄は半べそで会いにレスランに入っていきます。
君江は不安そうに前に立っている安澄に「もしかして、安澄ちゃん?」とボードで示す。それを見て安澄は「わたし、さちのあずみです」と手話で応える。君江は怪訝そうな顔をして、手話で「どうして手話を?」と聞く。安澄は「きっといつか役に立つからと、お母さんが手話を習わせた」と言う。ここで君江はドッと泣き崩れる。双葉は鮎をつれて水族館に。頃合いをみてレストランに戻り鮎に安澄を迎えに行かせます。安澄が車に帰ってくると双葉が倒れていて救急車で病院に。死ぬ前には達成しなければと思っていた「何時かは安澄に本当のことを話し産みの母に会わせなければ」(私が亡くなった後はこのお母さんに)という望みを叶えます。安澄は双葉を「お母さん」と産みの母君江を「君江さん」と呼びます。
・双葉はホスピスで過ごすようになります。双葉は「必ず会いにくるからね」と言って去って行く母の夢を見ます。そこに探偵の滝本がやってきて「もうひとつの頼み、双葉の母が見つかった」と知らせます。双葉も母に捨てられた子だったのです。双葉が何故強い、やさしい母親であったかという謎が解かれます。双葉、安澄、鮎子の三人は母親に捨てられた子で強く母を求める子なんです。
双葉は力をふりしぼっていまでは他家に嫁ぎ孫たちと一緒に暮らしている母に、安澄を連れて、会いに行きますが「わたしにはそんな子はいない」と会うことを断られます。あまりの悔しさに石をぶつけて帰ってきます。病状が一層悪化してきます。
・双葉の見舞いは安澄と鮎の役割です。安澄が病室を訪れると苦しむ母の声が聞こえ、部屋に入る前に泣いて部屋では明るく振る舞います。鮎は双葉の毛布の中に入って甘えています。どこから見てもこの三人は本物の親子です。安澄は鮎に「お母さんの前では絶対泣くな」と教えます。
一浩は安澄から双葉の症状を聞き何かをしてやらねばと考えているところに、北海道に行っていた拓海が訪ねてきます。拓海はしばらく一浩のアシスタントで風呂をたくことになります。イメージ 14
君江が訪ねてくることになります。そこで一浩が双葉のためにこれまで出来なかったことをしたいとある計画を明かします。
双葉は「外を見て」という携帯メールを受けて外をみると一浩、拓海、滝本さん、君江、安澄、鮎の6人でつくる人間ピラミッドが作られており、それぞれが大きな声でメッセージを送ります。一浩は「俺に全部まかせろ!!」と、これを聞く双葉は「死にたくない。生きたい」と嗚咽します。
・安澄がカレーを準備して、拓海が風呂を焚き一浩はこれでパチンコが出来ると喜んでいます。安澄が番台に座り、鮎が「こんばんのご飯は」「5時ごろ。カレーよ」。毎日の生活が双葉がいなくてもうまく回転するようになっています。双葉は皆に大きな変化を与えました。
イメージ 11安澄が母双葉を訪ねると酸素マスクをつけた双葉は眠っているように見えます。安澄が今の家のこと「拓海君とお父さんがよく合うよ、2日たったら君江さんがやってくる。妹は5時には帰ってくる。明日もくる」と語りかけます。話し掛けようとしても声がでない母にそっと泣く安澄。「お母ちゃんを一人ぼっちにはしない。安心して」と笑顔を見せる。(この作品でのもっとも秀逸な杉咲さんの演技) 「ありがとう、ありがとう」「もう大丈夫だよ」。涙する双葉。
イメージ 12・銭湯の煙突に煙が消えて、風呂場に祭壇が設けられての葬儀です。手順よく進められ皆さんに見送られ火葬場に。霊柩車の運転手は滝本さん、霊柩車と家族の乗った自家用車が火葬場でなく川原に、ここで家族一同楽しそうに弁当を食べて(双葉が無事三途の川を超えたことを確認して)銭湯に戻ってきます。イメージ 13
煙突から煙が出てきて、赤い煙が・・
家族が風呂に入っていて「あったかいね」。湯を沸かすほどの熱い双葉の愛に感謝です。
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