原作はベストセラー作家・湊かなえさんの同名小説。未読です。戸田恵梨香さんと永野芽郁さんが母娘役を演じるミステリードラマ。監督が廣木隆一さんということで、少し心配もありましたが(笑)、WOWOWで鑑賞。
監督：廣木隆一、脚本：堀泉杏、撮影：鍋島淳裕、編集：野木稔、音楽：コトリンゴ、主題歌：JUJU。
出演者：戸田恵梨香、永野芽郁、三浦誠己、中村ゆり、山下リオ、高畑淳子、大地真央、吹越満、高橋侃、落井実結子、他。
物語は、
女子高生が自宅の庭で死亡する事件が起きた。発見したのは少女の母で、事故なのか自殺なのか真相は不明なまま。物語は、悲劇に至るまでの過去を母と娘のそれぞれの視点から振り返っていくが、同じ時間・同じ出来事を回想しているはずなのに、その内容は次第に食い違っていく。（映画COMより）
母親ルミ子が結婚し娘清佳の誕生から、清佳が教員となり結婚し母となるまでのルミ子と清佳の親子関係を主体に、ルミ子の母親、ルミ子の嫁ぎ先の義母との関係を絡めながら、ルミ子と清佳双方の視点から「母性とは何か」がミステリー仕立てで描かれる。
あらすじ＆感想：
冒頭、女子高生が自宅の庭の木で首吊り自殺するという事件が発生。この記事を見た女性教員が「愛を与えるかぎり与えたという母親のコメントがうさん臭い」と隣に男性教員と話す。その後、ふたりの教員は“お好み屋“で「母性とはなんですか」と論議が始まった。母親とおぼしき女性が牧師に「私は愛を与える限り与え、娘を愛していた」と懺悔する映像で物語が始める。
ルミ子（戸田恵梨香）は良家の娘として母親（大地真央）の愛情一杯に育てられた。ルミは母親依存で母親の言うことには全て従う。結婚は美術館で見た夫・田所哲史（三浦誠己）の絵を母が気に入り、ルミが母のために買い求めたことが縁で交際し、夫の母親（高畑淳子）は気にいらない様子で不安であったが、母親の「あなたは太陽なの」という言葉を信じ24歳のとき結婚した。
新居は瀟洒な森の中の一戸建。夫は鉄工所で働き、ルミ子は専業主婦となった。清佳が生まれ、母親が自分を育てたように上品で自分従うように育てた。
清佳（落井実結子）の誕生日。母親が鳥の刺繍入りバックを清佳にプレゼントすると「キャティちゃんのバックが欲しい」と祖母に求めた。ルミ子はこれを見て動転、母親の気持ちを忖度し注意した。
清佳は「私は母に可愛がられていない。祖母は無償の愛の人だったが、母は祖母の言うがままだった」と回想。
台風で夫が不在の夜、事件が起きた。
庭木が倒れ窓を突き破り箪笥が倒れ、寝ていた母親と清佳が下敷きになった。ルミ子が駆け付け母を助けようとすると、母が「私はいい、清佳を連れて退避しなさい。もうあなたは子供ではない！」と急がせた。ルミ子は「嫌よ、私は娘！」と叫んだ。ローソクの火で部屋が燃え上がる。ルミ子は「気付いたとき、清佳を連れ出し、家が燃えるのを眺めていた」という。清佳は「母は私より祖母を救おうと必死だった。祖母の死について母と父は何も言わなかった」と回想。
母を亡くして12年後、ルミ子たちは義母と暮らしていた。
ルミ子は義母に辛く当たられるが、家事に畑仕事もこなしながら仕えていた。義妹の律子（山下リオ）は義母と衝突しなからルミ子を庇ってくれていた。清佳が母のためにと義母に逆らが、ルミ子は「私の努力を無駄にしないで！」と叱る。ルミ子は「きっと受け入れてくれる。義母の娘になれる」とひたすら祖母の言葉を守っていた。清佳が母を手助けしようとしても受け付けなかった。狂った母親だった。父は何も言わない人になっていた。
律子は彼氏ができて家を出ると言い、ルミ子に金を借りに来たが、ルミ子は夫に相談すると貸さなかった。可哀そうだという母の気持ちを知った清佳は父から律子の見張りを頼まれたが、律子が出ていくのを見逃した。律子の家出を知った義母は泣いて悔しがった。これ以降、義母は律子を思い出しては泣く。これに清佳が落ち込んだ。ルミ子が慰めようと手を出したが清佳がその手を払い退けた。
罪悪感を覚えた清佳は律子の行先を知ろうと律子の部屋に入り、父のノートを発見した。そこには学生運動に参加していたことが書かれていたが、清佳は「父は反対ならなんでもよかった、自分というものがなかった」と思った。
清佳が学校から帰宅すると義母が「あなたが財布を盗んでお菓子を買った。頼る人がいないのは寂しい。息子は仁美ちゃん（中村ゆり）と結婚すればよかった」と話す。清佳は義母の言葉に嫌気がして母に「義母を老人ホームにいれたら」と話すと「恐ろしいことを言う」と厳しく叱責された。
ルミ子は夜遅く帰宅した清佳に、昨夜厳しく清佳を叱責したので、優しく声を掛けるととんでもないことを言い出した。
清佳は街中で母の友人・仁美と一緒の父親を見つけつけた。父親は仁美と豪華な食事をしていた。清佳は「この人を結婚するの？ママにお婆ちゃんの面倒をみさせるの、ママに謝って！」と抗議した。すると仁美が「あなたのお母さんはお婆ちゃんべったりで何もできなかった。あのときお婆ちゃんがあなたを守って自殺した。哲史はそれが嫌なの」と言い返したという。
清佳はルミ子に「あのときお婆ちゃんが私を助け、自殺したのは本当なの」と聞いた。ルミ子は動転した。謝る清佳に「愛している」と抱きしめると“清佳が私から奪ったものの大きさに気付き”驚き逃げ出したという。
ルミ子は忌まわしい記憶。「子供は先で産めるから」と母を助けようとすると母は「違う！未来に繋がる命を助けなさい。その方がうれしい。清佳を大切に育てて！」と言ってハサミを首に刺したことを思い出していた。こうしなければルミ子は動かないから！
清佳は「母が首を絞めてくるので殺されると逃げた」と回想。母娘にはこれほどの意識の差があった。
清佳は庭の木にぶら下がり自殺を図ったが、地面に落下して意識を失った！発見した義母が救急車を呼び、病院に運ばれた。清佳は「母が何度も誰かを叫んでいてがそれがサヤカ、私の名だと分かった」と回想。
ルミ子は教会で牧師（吹越満）から「愛とは自分のありのままの姿を神に差し出すことです」の説教され、「娘の命が1日でも早く戻って欲しい。“私が間違っていました”」と懺悔し、清佳の看病に当たった。
冒頭の女学生の首吊り自殺は清佳ではなく全くの別人。この自殺を話題にした先生は成人して教師になった清佳でした。
教師になった清佳は同じ学校の男性教師・中谷亨（高橋侃）と律子の店「お好み焼き屋」で自殺した女学生の自殺について論議していた。
清佳は「母性は本能でなく学習で形成されていくもの」、「女には2種類ある、娘か母親。いつまでも娘でいたいという人もいる」という。中谷が「君がどちらか？」と聞くと清佳はまだ答えられなかった。中谷は「自殺した女学生のことを調べてみる」と言った。
清佳は中谷と付き合うようになり、妊娠していた。
ルミ子は脳梗塞の義母の介抱をしていた。義母が「あなた誰？」と聞くと「哲史さんです！」と呼びかけ水を飲ますと義母が「ありがとう」と言う。夫がこれを聞いて席を外した。夫は仁美と別れ家に戻っていた。ルミ子は磨かれ愛溢れる女性に成長していた！（涙）
清佳が「妊娠した、女の子」と母に伝えると「怖がらなくていいのよ。私たちを未来に繋げてくれておりがとう」と感謝した。清佳はお腹に手を当て「私は母親になる」と。
まとめ：
母性は元来子供が生まれれば、その子のために発揮されるものだと思っていたがそうでない！ということ。最近の多発する幼児虐待事件を見れば明らかなのですが、これをスリリングに描いてくれました。
清佳は母ルミ子に愛して欲しいと願ったが愛されなかった。母は祖母に愛されたがその愛を祖母に返すのみで清佳には渡さなかった。しかし、母は清佳の自殺未遂で祖母が残した言葉の意味を解し、厳しい義母に接したことで、「自分は間違っていた」と懺悔し清佳への愛を取り戻した。
清佳は産まれてくる子に母性を示せるか？母の行動を見て育ったから母のようにはならないと思えますが、彼女には人の気持ちを考えず介入する、遊び心の無い悪い癖がある。常に自分を見直すことが大切です。
ルミ子と清佳のひりひりする関係を戸田恵梨香さんと永野芽郁さんが情感豊かに演じていました。戸田恵梨香さんの実母と義母には実母とは真逆の接し方をする演技もよかった。義母の娘・律子に対する偏狭的な母性、これも母性！高畑淳子の怪演でした。(笑)
ルミ子の実母は聖母でした。これぞ母性でしょう、大地真央さんにぴったりの役でした。
母性とは本能ではなく、学習で身に着ける感覚だというメッセージ、至言だと思います。
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