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宮﨑あおいさんを応援します

「いちごの唄」(2019)

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脚本岡田恵和峯田和伸という名を見て、この作品と決めました。きっと岡田さんの泣けるセリフに出会えるぞ!峯田さんのあの風貌が好きで・・!
岡田さんのすばらしいセリフに泣かされましたが、峯田さんはラーメン屋のおやじさんという端役。なんだこりゃ!と思いましたが、峯田さんを描いた作品ということで、全編峯田さんが出ずっぱり!という作品でした。
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ということで、峯田さんフアンには欠かせない作品です。この作品を楽しむには、銀杏BOYZの歌を聞き、朝ドラ「ひよっこ大河ドラマ「いだてん」を観ておくといいと思います。(^)o(^ )

 
原作は岡田さん、峯田さん共著による小説「いちごの唄」。岡田さんが自分の脚本「奇跡の人」「ひよっこ」で峯田さんに出会い、妬かれ、峯田さんの音楽(「漂流教室」ほか3曲)をモチーフにトリビューンアルバムとしで作った作品だとのこと。
監督は本作が初監督作品となる菅原伸太郎さん。出演は「ひっよこ」の出演メンバーに峯田さんなじみの人たち。
主演はロックバンド「2」を率いる古館祐太郎さん、「夜空はいつでも最高密度の青色」「きみの鳥はうらえる」の石橋靜河さん。石橋さんは本作でも格別なオーラを放っています。
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共演は、清原果那・岸井ゆき・蒔田彩珠泉澤祐希・常松祐里ちゃんら上手い若い俳優さんたちに、大ベテランの和久井映見光石研宮本信子さんら、さらに麻生久美子・宮藤勘九郎田口トモロヲさんらと豪華です。()
 
あらすじ:
コウタ(古館祐太郎)は不器用だけど優しい心を持つ青年。たったひとりの親友・伸二(小林喜日)は中学生の頃2人が“天の川の女神”と崇めていたクラスメイトの千日(清原果那)を交通事故から守り亡くなった。
10年後の七夕、伸二の命日。ユウタは成人千日(石橋靜)と偶然、高円寺で再会する。毎年ふたりは七夕に会い、環七通り散歩する。しかし3回目の年、千日は伸二との過去の秘密を語り「もう会うのは終わりにしよう」と告げるが・・・。
物語はコミカルに、そして3人の関係が次第に明らかになるというミステリアスに展開します。
 
***(以下ねたばれ)
7月七夕、コウタは、黄色い短冊に願いを込め、同じ黄色いシャツを着るという律儀で正直者。
今年もこのシャツで高円寺の七夕飾りのある街を歩いていて、ラーメン屋(店主が峯田和伸)の前で、偶然天野千日(あ~ちゃん)に出会う。ここでのあ~ちゃんこと石橋靜河さんが天の神に見えます! ラーメン屋で話してその後の環七通りの散歩でも、コウタは、あの事故現場の目撃者でありながら、このことに触れない。毎年会おうと約束したが、電話番号も聞かず別れた。() 
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そしてコウタは次に会える日をカレンダーでチェックして毎日を過ごすのが日課
 

そんななかで、同じアパートの隣に住むパンクファッションのアケミ(岸井ゆき)が酔っぱらって帰ってコウタの部屋に入り込み、「解散するほど、おまえら音楽やったのかよ!座れ!」とコウタを一喝し、コウタのパンツを引き下ろす。朝になって「あんた何した、謝れ!」と意気込む。() 岸井ゆきさんがコミカルに演じてくれるから面白い。しかし、やったかやらなかったか? これを読ませるところが演出の妙です!()

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七夕の日、いつものラーメン屋でふたりは会って、ラーメンを食べ、環七通りを歩いた。何を話すかと思えば、アケミの話。() あ~ちゃんは微笑みながら聞くだけ。
そして別れ際にやっと「あ~ちゃんのこと知りたい。あ~ちゃんのこと好きなんですかね?」と聞く。「ごめん、伸二君」??
2年目にこれだけの会話、コウタはバカかと思いますよね。() そんな演技を古館祐太郎さんがコミカルに演じてくれます。しかし、これがコウタの精一杯の気づかいということが分かって来て泣けます。人が辛いときにどう対応するか、“いだてん”で峯田さんが孝蔵(のちの落語家志ん生)に人の悲しみが分かる落語家になって欲しいと説くシーンに重なります。
 
そして次の七夕まで、・・
アケミが「元気でうらやましいほどの男を探し、子供3人を産む。声を掛けるな!」とipodを置いて佐賀に帰っていった。()
 
この年大地震が起こって、コウタは会社の冷凍商品を持って現場に駆けつけ、ボランテイアとして活動。避難所で両親を失い塞ぎ込んでる少女(蒔田彩珠)にipodをあげちゃう。全部パンクロック、これは実話らしい。
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しゃべらない蒔田彩珠ちゃんの演技が冴えています。のちに、彼女はこれを聞いて癒されたと言い、歌曲は「ぼあだむ」です。歌詩の感覚がすごい! 
 
そうしてまた七夕がやって来た。
コウタは、震災があったこと、国に帰って伸二の事故現場を訪れ記憶を新たにしたこともあってか、あ~ちゃんに事故のこと伸二と自分の関係を話す。
 
あ~ちゃんは、堰を切ったように自分の過去、思いを語り出す。「自分と伸二は4歳のとき孤児院に拾われた。自分は8歳で天野家に養女となり、この時とても喜んでくれたこと。中学生になり転校で戻ってきたが孤児院に居た子と悟らせないように気遣ってくれたこと。そして、事故で自分を救ってくれたとき命を落とす直前に微笑んだこと」など長セリフ、長回しで石橋さんが演じ、岡田さんの脚本に泣かされます。
 
「あなたに会って、話が面白くて、私のことを何も聞かないから安心していた。また会えることが楽しみで生きてきた。私はコウタ君に年1度会って泣いた。今日で会うのは最後にする」と去っていった。
 
コウタは「いちごの唄」を歌いながら、泣いて、泣いて、環七通りを彷徨した!
 
ふたりは、これからの生き方を探すように伸二の事故現場に戻ってくる。あ~ちゃんは孤児院の園長(宮本信子)に会い、千日の名の由来を聞く。「千日は園に置き去りにされたあと電話で母親がその名前を告げてきたこと。しっかり生きることだ!」と聞かされ、事故への拘りから解放される。ここでも脚本のよさに泣かされます。
 
ここで会ったふたりは、かってコウタと伸二が楽しんだように、自転車で坂道を下りダイブして園の農園に落下。そこが伸二の夢だったストロベリーフィールド(千日紅)になっていることに気付く(昔はレタス畑)。「伸二はず~とあ~ちゃんが好きだったんですね(花ことば)」と千日に。あ~ちゃんが笑った。
 
とてもうまい脚本でした。友を失った心の傷や切ない気持ち、相手を想うがゆえに口にできない辛さ、そして淡い恋心。コウタと伸二が“いだてん”に見る峯田さんに重なってきます。
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