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「ヒトラーに屈しなかった国王」(2017)

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タイトルで観ることにしました。第2次世界大戦時、ナチスドイツの侵攻に激しく抵抗したノルウェーの国王ホーコン7世の下した決断と運命の3日間を描いた歴史ドラマ。本国ノルウェーで大ヒットし、アカデミー外国語映画賞ノルウェー代表作品に選出された作品だそうです。
 
国王ホーコン7世は、もとはデンマーク王家のカール王子。ノルウェーが独立して立憲君主制の国になるときにデンマークから国王に即位し、名前もカールからノルウェー語のホーコンに改名。同じ立憲君主国である我が国の立場から観ることになり、そのありように興味を持ちました。
 
この戦での国王が成し得た功績は、国王はノウルエー独立のシンボルであり民主主義を守ることが使命であると、ヒトラーの押す首相を任命しなかったこと。このことで今日、ノルウエーは自由を大切にする国として国際的に評価されている。また、ノルウエーは中立国でしたが、地政学的な要衝に位置し、中立を保つことがいかに困難であるかを示しています。我が国の天皇制や安全保障を考える上で興味ある作品だと思います。
 
あらすじ:
194049日、ノルウェーの首都オスロナチスドイツが侵攻。ノルウェー軍も交戦するが、圧倒的な軍事力によって主要都市が次々と陥落し、占拠されていく。ドイツ軍はノルウェーに対し降伏を要求し、ドイツ公使とノルウェー政府国王のホーコン7世との謁見の場が設けられるが、ホーコン7世はその場で、ナチスの要求に従うか国を離れて抵抗を続けるかの選択を迫られる。
 
ドイツの不法侵略に苦悩するノルウエー国王の決断にいたる3日間の史実を辿る物語ですが、この危機に対する国王と王子の葛藤とその家族の絆。また、ヒトラーの命令に従順に従うべきかどうかを巡るドイツ公使と妻の葛藤などしっかりしたヒューマンドラマになっています。
007 スペクター」で悪役ミスター・ホワイト役のイェスパー・クリステンセンが国王ホーコン7世として、苦悩でやつれながら、信念を通して国民のために涙する演技がすばらしい。ぜひ見て欲しいです。
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***(ねたばれ)
冒頭、「1905年新国王カールとマウド王妃は幼きオラフ王子と共にノルウエーに到着。カールはホーコン7世として戴冠した」とホーコン7世がノルウエー国王となった経緯が語られ、実録による国民大歓迎のなかでのお国入りのシーンが流れます。そして、194049日に繋がり、ここから3日間にわたるドラマがまるでドキュメントのように始まります。
 
194048オスロ郊外の王族住居区。雪の中で、国王は孫たち(ハーレル、ルール)と鬼ごっこを楽しんでいるところに、オラフ王子から「船が領海内で撃沈された。救助されたのは全員ドイツ兵だ。侵攻が始まったが首相はコート外務大臣の言いなり。コート外相が反対だからと軍を動員しない」と知らされる。王子が「王室には影響力があるべきだ。黙って見てることはない」と意見を述べたが、国王はこれを無視。
国民に押されて国王になったホーコン7世には、政治には関与せず国民の象徴としての立場を貫く強い決意が見える。
 
48日午後1130分、オスカースボルグ要塞(オスローの南方27km)でが、後に国家の最高栄誉賞を与えられたエリクセン大佐が霧の海の中、敵艦を血眼になって探していました。「本当に撃っていいのか」というゲスの意見なんぞ、威嚇射撃などしない実射だと、中立を犯すものには断固たる決意を示すと意に解しない。
 
48日午後10オスロ・ドイツ公使館。イギリスとフランスの軍艦がノルウエー海域に機雷を敷設した。これはドイツが鉄鉱石を運搬するのを阻止するため。デンマーク沖に50隻のドイツ軍艦が北上したというBBCニュースが流れる。そこに武官がやってきて「ドイツ軍との協力協定」にサインさせるようブライアードイツ公使にヒトラーの指示を伝えた。
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49日午前0オスロ王宮。ドイツ軍がフィヨルドに侵入したことが知らされる。首相から、0700オスロから列車で退避することが伝えられた。
 
49日午前420オスロ外務省。ブロイアードイツ公使は、戦火を交えることなくヒトラーの命に服するよう、ドイツへの協力文書調印をコート外務大臣に求めるが、閣僚の意見を聞き「他国の侵略に屈する国家は存在する価値がない」というヒトラーの言葉を逆利用して断る。
公使の生ぬるいやり方に武官が脅して「即刻調印させろ!」と迫っていた。
 
国王一家は、政府とともに、ハーマル(オスロの北方125km)へ向かう特別列車に乗り込む。ドイツ駆逐艦がノルウエーの港を攻撃しており、ハーマルで議会を開くことが伝えられる。
空襲のため途中で下車し、市民とともに防空壕に急ぐ。ここで市民の逃げ惑う姿を見て、ヒトラーの要求を拒否した場合の悲劇を想像することは十分に分かったと思われる。
 
49日午前1110分避難先のハーマル駅に到着。市民の圧倒的な歓迎を受ける。主要都市が爆撃されたこと。不意打ちされたこと。そして交渉の余地がまだあるというニュゴールスボル首相の報告を聞く。そしてデンマーク国王の兄のいるデンマークが降伏したことを知る。
 
宿・セーリッド農場に向かう車の中でオラフ王子が「不意打ちされて交渉が出来るのか。軍を増強しておくべきであった。直接軍に話してみたらどうか?」という。国王は「そんなことは出来ん」と拒否。これに王子は「意見も言えず、嫌われるなら王室は何のためにあるんだ」と反論。「いい加減なことをいうな!」と国王が激怒する。
 
宿を訪ねた総理は内閣総辞職を申し出る。臨時議会で、国王は通常は認めるが今回は例外としてハンプロ議長と協議して決めたとして、内閣総辞職を認めなかった。
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コート外相の「状況は変わった、戦を止めるために彼らと交渉する」という発言を聞き、「議会の決定に従う」と議会に任せ国王は退席した。オラフ王子が「内閣に任せず、ハンプロを首相にすればよかった」というと「今は国の一致団結して内閣を支えることが大切。非難ばかりするな!」と軍を動かしたがる王子を強く戒めた。
 
突然のクーデターで“クヴィスリング”が首相に就き「イギリスはわか国の中立を侵した。その侵略行為を甘んじて受けた薄弱な旧政権に対しドイツは我が国の保護と協力を申し出た。彼らは我が国を尊重し主権と財産を守ると約束した。しかし、旧政権はその寛大な申し出を拒否し軍を動員するという決断を下した。援助を願い出たドイツに抵抗するなど愚の骨頂ともいえる。旧政権は逃亡し国民を危険にさらしている。」と声明を発表した。この声明により一気に国民の不安が高まった。
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ドイツ軍が国王を追っており、防衛軍がこれに勇敢に立ち向かう。が、ドイツ軍に追い詰められ、国王と王子はこの国に残り妻と子供たちはスイスに避難することになった。家族と別れたことで、国王と王子が昔のような親子の絆を取り戻していく。
 
410日午前810分、トリシルニーベリスン。政府の人たち、ニュゴールスボル首相から「ブロイアードイツ公使と交渉して欲しい」と要請される。王子が危険だと激しく反対する。このころの国王のやつれ方は半端でない。「自分が行くことで死傷者が出ないなら引き受ける。国王として最後の切り札にならねばならない」と国王。国王は後を王子に託して、ブロイアードイツ公使との面会所に出向く。ここは親子の情が良く伝わるドラマになっている。
 
ヒトラーからの「クヴィスリングはいいやつだが、国はまだ抵抗している。直接国王を説得しろ!」という命令を受けたブロイアードイツ公使が、国王との面会所に急ぐ。
ブロイアーは二人で話したいと申し出たが、随行の外相らが反対する。ブロイアーが諦めて帰ろうとすると、国王が呼び止めふたりで話し合うことに。「クヴィスリングを首相に据えて欲しい」という公使に国王は「私はノルウエー史上で唯一国民に選ばれた国王だ。この国は民主主義国家であって最も尊重すべきは国民の意見だ。今ここで私が決断すれば民主主義でなくなる。この国の行く末は密談で決まるのではなく国民の総意で決まるのだ」と後は外相らに任せた。
ブロイアーは平和主義者でなんとか平和に治めようと懸命に国王を説得するが国王はヒトラーの使者であることに変わりはないと受け付け負かった。
 
ブロイアーは外相らとは交渉を断り帰っていった。「私は国王としてクヴィスリングを首相に任命できない、国民の信を得ていないから。ドイツの要求を呑むのであれば国王を退き、王室を解体する」と宣言した。
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411日午後540分トリシルニーベリスンで食事中にドイツの本格的な爆撃を受ける。国王が断ったことで行われた爆撃。これで戦争へと突入していった。国王は涙を流す以外になすべきことはなかった。
 
これにより本格的なドイツ侵攻が始まり、国王はイギリスに亡命。ここからドイツへの抵抗を支援し続けた。
 
国民の幸せということを常に心においての行動、わが国の皇室と相通じるところがあり、この国にとても親しみを感じます。ノルウエーを知るには欠かせない作品ではないでしょうか。
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キャスト

アンドレス・バースモ・クリスティ:アンセンオラフ

カール・マルコビクス:クルト・ブロイアー

カタリーナ・シュトラー:アンネリーゼ・ブロイアー

ツバ・ノボトニーマッタ
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