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「人数の町」(2019)

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気になるタイトルに、主演が中村倫也さん共演に石橋静河さんということで観ることにしました。

監督はCMやMVで活躍の荒木伸二さん、映画監督レビュー。第1回木下グループ新人監督賞・準グランプリに選ばれたオリジナル・ストーリーです。

借金取りに追われる青年が、数合わせに協力すれば楽に暮らせると連れてこられた“人数の町”。仕事は単純で、食べることやセックスに不自由なく、しっかり監視されて暴力もなく快適な生活だと思ったが、新たに入ってきた女性を愛することで彼の生き方が問われるという、ミステリアスな社会派作品。

どこかに存在した、存在する、存在するであろう町。今の政治状況をパロっているようで、SNS社会の怖さを訴えていて、“怖い、気持ちの悪い!作品でした。

ストーリーや映画手法に未熟さが散見されますが、監督初作品にこの作品で臨んだ荒木さんの心意気に期待したいと思います。

撮影:四宮英寿、編集:長瀬万里。主演:中村倫也、共演;石橋静河、立花恵理、山中聡


中村倫也が主演!映画『人数の町』予告編

あらすじ(ねたばれ):

蒼山哲也(中村倫也)は借金取りから暴力を受けているときに人数の町の管理人(チューター)のボス:ポール(山中聰)に助けられ、数合わせに利用される人(チュード)として、収容施設に連れてこられた。チューターは黄色いつなぎを着ている。

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首に逃走防止のチップを埋められ、チュード共通のパーカーを着せられる。部屋は個室が与えられ、そこにはチュードが安心して暮らせる仕組み(バイブル)が備えられていた。

チュードは常にチュードとしての魂を維持するため、雑念が出て来ないようプールで身体を洗い清める。ここは男女交際の場でもある。彼らはメモ用紙を持っていて部屋番号を交換することでセックスを約束する。蒼山は宮野真白(川村沙也)からメモを貰った。

プールでモデルのような美しい末永緑(立花恵理)に出会った。彼女は」とても人気のある女性で次々とメモを受け取る。ここの生活を満喫しているようだった。

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食堂は回転ずしシステム。アナウンスされる“称賛!”“デスリタイム!”に会わせてSNSのメールにナイスを入れると料理が出てくる仕組み。バンバン、ナイスを押す。何に賛同しているかなど関係ない、数だけあればよいのだ。(笑) これブロッグの評価順位に似ていますね。(笑) ここで黒田茂(草野イニ)に出会う。

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施設はフェンスで囲まれている。このフェンスが安っぽい。(笑) 簡単に外に出れるのではないかと、蒼山、黒川が挑んだが、首もチップが作動して頭が割れると思うほどの大音響が入って来る。脱出は無理かも?

セックスは自由。子供は託児所で預かり、親と過ごすことはない。結婚は禁止。

部屋には避妊具が完備されている。

緑は夫の暴力に耐えられず刺し殺し、モモという娘を連れてこの施設に入所。たまに託児所でモモを覘き見するぐらいで、大らかなセックス生活を楽しんでいる。

チューターとチュードのセックスは禁止されているが、どうやらこれは守られていないらしい。

数でこなす仕事、選挙。チューターのジョージ(植村宏司)が大量に票を、市民に化けて金で手に入れ、バスで投票会場にチュードたちに送り込み、投票させる。こんな仕組みはいまでもやられている。転んだ人を助けたら、金を握らされたという例は一杯ある。(笑) 野外で行動する際は、バスの中にいるチューター・ジョン(橋野淳平)の持つ発信装置(キャンセラー)でチュードの首についているチップが操作される仕組みで監視されている。

新規開店のハンバーグ店に客として並び、うまそうに食って写メをSNSで流す。(笑) まだまだある。新薬開発のモルモット、駅前での死の抗議デモなどしっかり紹介してくれます。

ある日、突然にチュードの多くがいなくなり、蒼山らは町の清掃作業に駆り出される。これが怖い! あたらしいチュードたちがやってきた。

村木紅子(石橋静河はTVでテロ事件ニュースを見て、その中に妹に似た人を見つけ、チューターに導かれこの施設に探しにやってきた。こんな仕事もやっている。首にチップを付けて、パーカーを着て食堂に行くと、そこで妹・緑に会うことが出来た。しかし、緑は戻らないという。紅子はモモだけは連れて帰りたいと思っていたところで、プールで蒼山に出会った。蒼山は紅子に惹かれた!

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蒼山はここで生活ことを勧めたが、紅子の硬いモモを連れて町に戻るという固い意思に従うことにして、3人でこの施設を脱出。うまく脱出は出来たが、ポールに掴まり、「紅子を愛している。みんなで一緒に暮らしたい」とポールの支配を拒否したが、紅子が妊娠し、生活は苦しい。遂に、蒼山はポールの支配下で、黄色いつなぎを着ることにした!

感想:

物語の背景となる政治体制。思想も姿も見えない「数」という統治者、現在社会はこの道を辿っているように思え、この設定は上手いと思いました。

この統治者のもとにあっての人間の尊厳、自由を問うた作品。数さえあれば統治できるシステム、「人数の町」。人はいくら欲望が満たされても、アイデンティティーを失っては生きていけない!

蒼山と紅子が施設を脱出してその後は・・・と思っているところにこの結末。どんでん返しとも思える結末に唖然としました。決して楽して自由が得られることなどないが、この可能性は高いかもしれない。これが怖い! 

演出で経過時間を紅子の妊娠、子供の成長で表現されたが、分かり難かった。

蒼山哲也の紅子への愛が彼の行動を“決定的”にしたが、これを訴える表現が乏しい。そろそろ、石橋静河さんは演技上での大きな転換期に差し掛かっていると思います。

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