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「ベン・イズ・バック」(2019)

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薬物依存症の更生施設から抜け出した息子と、彼を救おうとする母親の物語。ジュリア・ロバーツ主演ということで、タイトルの意味も考えず観ることにしました。あ母さんとしての圧倒的なジュリア・ロバーツのオーラとともに、薬物依存という問題を大きな視点で考える作品でした。
 
監督は「エイプリルの七面鳥」(2003)で監督デビューしたピーター・ヘッジズ、脚本家として名作「ギルバート・グレイブ」があります。
あらすじ:
クリスマスイブの朝、薬物依存症の治療施設で暮らす19歳のベン(ルーカス・ヘッジズ)が突然自宅に帰り、家族を驚かせる。母ホリー(ジュリア・ロバーツ)が久々の再会に喜ぶ一方、妹アイビー(キャスリン・ニュートン)と継父ニール(コートニー・B・ヴァンス)は、ベンが何か問題を起こすのではないかと不安を抱く。両親はベンに1日だけ家で過ごすことを認めるが、その晩、一家が教会から帰宅すると、家の中が荒らされ愛犬が消えていた。昔の仲間の仕業だと確信したベンは愛犬を取り戻しに向かい、後を追ったホリーは息子の人生を食い荒らす恐ろしい事実を知る。息子を全力で守ることを決意するホリーだったが、ベンはホリーの前から姿を消してしまい……。((映画COM
 
帰ってきたベンの薬物依存とこれに関わる家族との葛藤、なんとしてもベンを信じたい母親とベンの闘いが情感深く描かれます。この母の愛の深さに心打たれる一方で、この愛はベンにとって本当に為になるのかと疑念がでてきます。
 
愛犬を取り戻しに出たベンを追った母親がベンの本当の姿を知る過程は、これまでの描き方とはうって変わってミステリアスで、薬物依存の恐ろしさ、根の深さ、更生することの難しさを目の当たりにします。薬物依存からの脱却の難しさ、そのために母親はどうあるべきかを、観る人に任せながら見事に描いています。
 
キャチコピー「救えるとしたら、私しかいない」、ラストシーンでホリーの覚悟が問われます。小品ですが、とても意義深い作品でした!
 
***(ねたばれ)
冒頭、母親ホリーが、讃美歌を歌う娘アイヴィーに、家に戻ってベンを見つけて抱擁する笑顔。このジュリア・ロバーツの笑顔に理想の母親だと完全にもっていかれます。
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ところが、洗面所やベッドなど部屋中を見て回り薬物や宝石類を隠す。一体これは何事か? アイヴィーは「隠すのはおかしい!」と母親を批判。そこに戻った継父ニールが「早いのではないか?去年失敗している。戻らない方がいい」という。これを聞いたベンが気分を悪くして、「戻る!」と家を出る。ホリーは「ベンと一緒に寝るから1日だけは居させて欲しい」と、ニールと話合いベンの滞在を認める。滞在を認められたベンは、小さな妹弟と遊びながら、屋根裏を探して薬を見つける。
 
ホリーは、洋服を買ってやりたいと、ベンを連れてショッピングモールへ。そこでベンはかっての薬仲間スペンサー(デイヴィッド・サルテイヴァ)に出くわす。これが、のちにとんでも事件にベンを引き込む。この街に住む限り逃れられない、これが薬中毒の恐ろしさ。
 
ホリーはベンの薬物依存症の切っ掛けを作った医師クレイン(ジャック・デヴィッドソン)に出会い、「4歳のベンが怪我したとき、貴方が投与した薬でベンは中毒患者になった!」と毒づく。そして、ベンのパンツを買おうと試着する際、ポケットに薬物を見つけ、墓地に連れ出し「ここで死ね!」と激しく叱責し放置するが、最後には家に連れて帰る。()   
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ホリーのベンに掛ける愛情がいかに大きいかは分かるが、ベンは悪い子ことをする子ではない、医者や仲間が悪くしたと信じ切っている。このために、ベンの不正を見つけても、最後は折れてしまう。これを圧倒的な演技力でジュリア・ロバーツが見せてくれます。
ホリーのどうしようもないベンへの愛と絶望の循環が続く。どうこれを断ち切るか。
 
さらに、ベンが夫の悪口を吐けば、「私には言ってもいいが、金を作ってくれているんだから感謝すべき」と。これではベンはニールを理解できない。()
 
クリスマスの日。家族で教会に。そこで薬で亡くなったベンの女友達・マギーの母ベス(レイチェル・ベイ・ジョーンズ)に出会い、「マギーは天国、頑張ってね!」とねぎらい、マギーが亡くなったことにベンが絡んでいると考えることなど全くない。
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一方、ベンは、教会で妹アイヴィーの唄う讃美歌に涙を見せる。が、支援団体のミーテイングに参加して「自分は77日間薬を断って、この通りだ!」と語りホリーを安心させるが、女の子に「最後だから薬に付き合って!」と言い寄られるとぐらつく状態。母や家族には迷惑をかけると頭では分かっているが、薬を断つことができない。完全に薬を断つにはどうしたらよいのか?
 
クリスマスのお祈りが終り、家に帰ると愛犬の“ポンズ“がいない。家族の目がベンに向く。ベンはポンズを取り戻しに家を飛び出す。ホリーは「自分のせいだ」と自分を責めるベンを車に乗せ、家族には「警察に言わないで!」と言い置き、ベンの心当たりのある者たちを一人一人訪ねる。
 
マギーの父親、ペスと離婚してアパートに住んでいる、を訪ねると「殺してやる」と襲い掛かる。ホリーは「マギーは自分が殺したようなものだ」というベンの告白に驚く。
カフェでスペンサーを待ち伏せし、「ポンズを連れ去ったのは誰か」と問い詰めると、クレイトン(マイケル・エスパー)だという。ベンは「最悪なやつなんだ」と言い、ホリーからお金と高価なネックレスを受け取りクレイトンの家に向かう。なかなか戻って来ないので迎えに行こうとしているところに、ベンが出てきて「この先は危ない、家に帰って!」とホリーを残し車で走り去る。ベンは薬の運び屋に仕立てられていた!
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ホリーはベスのところに走り込み車を借りる。この際、ペスが「やらないとあんた後悔するよ。12年経過して利かないかもしれないが」と、薬と吸入器をホリーに持たせる。
ベスはホリーと違って「自分が気づいてやれず、マギーを自殺に追い込んだ」とベンを憎む気がない。「ベンを見つけて!」と娘の死を無駄にしないようホリーを励ます。
 
ホリーは、娘アイヴィーPCでベンの行方を追わせ、行き先を突き止めるが、そこにベンの姿はなかった。「ここにくるやつは川原にいる」と聞き、中毒者が屯する川原を彷徨する。このときの絶望したジュリア・ロバーツの表情は見ておれない!
絶望のなかにあっても諦められない。警察に駆け込み捜索を依頼する。ベンは運び役を終え、ポンズに菓子を与え、覚悟の行動に移っていた。
ベン発見の知らせに駆けつけたホリーは、ペスが渡してくれた吸入器を「生き返って!あなたを信じている」とベンの鼻孔に差し込み涙する。そのとき・・・。
 
この後のベンとホリーの行動は、観る者に負かされている。ホリーには問題の本質は見えてきている。今度こそベンを生き返させるでしょう。
ますます大きな社会問題となる薬物依存の問題に、真の母親の覚悟が問われるという作品でした。
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