映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「まく子」(2019)すべての背後には生命と慈愛があり恐れる物はない!

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原作が西加奈子さんの同名小説ということで、WOWOWで観ました。このタイトルは何か? おそらくタイトルで観る人は少ないかもしれませんね!(笑)これが分かると“人生が楽になる”というお話し、原作は未読です。

小さな温泉街に住む11歳の少年が、身体の異変に気付き大人になっていくことへの不安のなかで、転入生の不思議な少女との出会いを通して成長していくというボーイ・ミーツ・ガールドラマ。 西さんらしい壮大なファンタジー作品でした!(笑)

この少年に被さるところもあり、この年頃でこの物語が語る人生の見方を理解していたら、ずいぶんと楽に人生を楽しめたな!」と思いながらの観賞でした。(笑) 

監督・脚本は「くじらのまち」の鶴岡慧子さん。撮影:下川龍一、音楽:中野弘基、主題歌:高橋優さんです。
主演は「真夏の方程式」の山崎光君、本作が2度目の映画出演となる新音さん。共演は草なぎ剛須藤理彩村上純・橋本淳・内川蓮生 ・根岸季衣さんらです。


心揺さぶる!映画『まく子』予告【全国公開中🌸】

あらすじ(ねたばれ):
山間にある古い温泉町、四方温泉「あかつき館」のひとり息子、小学5年生のサトシ(山崎光)。身体に異変が現れ出した。そして、いつも学校前で智恵遅れの大人・ドノ(村上純)が読んで聞かせてくれるマンガも面白くなくなり、浮気した父・光一(草なぎ剛)のことを思うと大人になるのが嫌いになっていった。孤独になりたい。そんなところに新しい仲居さんの子として、コズエがやってきた。とても可愛い子で白いドレスでの初顔合わせでは緊張で物も言えなかった。

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コズエはすぐにクラスメイトやドノにも馴染んでいくが、サトシは馴染めなかった。そんなある日、いつもやってくる大樹の丘で、身体の異変を調べているところにコズエがやってきて、隣に座って、顔を覗き込む。もうサトシしはどうしていいか分からず、落ち葉を掬って撒いた。すると同じことをコズエがして喜ぶ。コズエのこの行為から、コズエのことを「まく子」と呼び、タイトルとなったようです。

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ふたりはここで一緒に座るようになり、コズエが大きな秘密を明かします。自分は宇宙人だという。自分の住んでいる星では年齢という概念がない。しかし、あるときから人口がどんどん増え続け、希望して死を選択することが出来るようになった。でも死がどういうことか分からないから地球に見学にやってきた」。「照井さんという地球人にシンクロしてその姿になっている。本当の姿は図工で作った塊よ」と喋って帰っていった。分けわからない西さんの世界です。(笑)

橋の上から瀧の流れを見ながら、コズエはサトシの掌の色が変わることに驚き、「私の身体は小さなブツの沢山の集まりで出来ていて、その数が変化することはない。サトシの身体もそれで出来ている。しかし、サトシのツブは私たちとは違って、数が減ったり増えたり、別のものと与えあったりでき、サトシたちは歳をとり、全てが入れ替わることが出来る。しかし、私たちのツブが変化しないツブで作られているので永遠に生きることができたが、隕石と衝突してツブが増え続けるので、誰かが消滅しなければならなくなった」という。 (笑)

人は成長し、結婚して新しい生命を得て、死を迎えるという決まったプロセスがあるので心配することはなに一つない生命体である。身体の変化なんか気にするな!私と違ってあなたは生き続けると言っているようです。

サトシはこの不思議な話に魅せられ、コズエに惹かれていきます。まるで「ペンギンハイウエイ」(2018)のアオヤマ君みたいです。
 
生徒たちの作ったミコシを壊して燃やす温泉町名物の祭り“サイセ祭り”が近づき、コズエの地球儀が本体ミコシに選ばれた。

ダダシがコズエに告るのを目にして、猛烈に敵愾心が湧いて来る。

サイセ祭りが始まった。ミコシが町を練り歩き、夜になって川原で岩にぶつけて壊し焼かれる。生徒たちはこれを無念に思いながら、次に生まれるものへの期待で諦めて見送るが、サトシはコズエの想い出を壊したくなかった。
「壊さないで!」と先生に訴えているとき、“あかつき館”のコズエの部屋付近から火の手があがり、祭りは中止となった。

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コズエが「オミコシをどうす?」と聞くと、サトシは「こんなバカなことをする大人が嫌いだ」と言い「君には死んで欲しくない」と頬に触れた。コズエは葉っぱを撒きながら「楽しいよ!全部落ちるから!ずっとずっと飛んでいたら、こんなにきれいでない!」と御呪いのようにサトシの頭に撒き続けた。コズエの行為をどう解釈するか?

警察が捜査するが犯人は分からなかった。父・光一がしょんぼりしたサトルのために大きなおにぎりを作ってくれた。

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仲の良かったクラスメートの類(内川蓮生)が戻ってきたので、コズエを伴って訪ねると、そこにノドが居て、彼に勉強を教えていることを知った。そして部屋に類が描いた「UFO」の絵があった。「この絵はコズエに関係があるか?」と聞くが「それはない」という。

類の書いた絵が幼稚で「これがUFOに見えるか?」とノドに尋ねると、「見える!何故信じない!本人が見たというものを、俺は信じる」ときっぱり応えた。サトシはノドに対する見方が間違っていたのではないかと気付き始めた。

その夜、赤いドレスのコズエが夢に現れ、サトルが初めて精通した!

パンツを始末していて異変に気付き外に出るとそこに女性がいた。サトシは「火を点けたのはあんたか」と激しく詰問したが「絶対にやっていない、お母さん謝りに来た」というばかり。騒ぎでコズエが駆けつけた。「なんだってものは何時か消える。永遠のものはない。消えてしまって終わりでないように形を変えて、生まれ変わって大成する力になる」という祭りの由来を聞いて、女性も加わり三人で壊し焼いた。

そして「俺の金玉はおかしいか」と父のものと比べてみた。

いつも間にか、コズエが町をいなくなると、大樹のある丘に皆さんが集まった。コズエは大空に町の人たちに思い出を描いて去って行った。サトシはまた会いたいと祈った。とてもファンタジーな見送りの映像でした!

コズエ親子が去って、また新しい親子が“あかつき館”にやってきた。今度の女子もサトシと同級生でソラと言った。サトシがしっかりサポートしようとするが、嫌がる。「私が館に火をつけた!」というが、サトシには許しの心に芽生え意に介さない。

コズエが遺した「飛ばないで落ちていくことはとてもきれいだ」と「僕らのツブは変わり続けていていつか全部新しくなる」という言葉をソラに伝えようと、枯れ葉をふたりで撒いた。
               *
感想:
まず最初に、物語の背景となる山間の古い温泉町のロケーションが素晴らしく、閉ざされた少年の心を象徴するようで、少年の成長に合わせて、この重苦しい空気が次第に溶けていく描写がすばらしい。そしてこの難解なセリフの人生訓が、山崎光君と新音さんが醸し出す雰囲気で解かれていくというふたりの演技がすばらしい。

身体に異変が現れ、初めての精夢を体験する年頃の男子が、大人に向かって一歩踏み出すための切っ掛けが、ちょっとませた女の子に憧れ、不安、焦り、孤独を克服するという定番で男子成長物語が、西さんにかかるとかくも壮大なドラマになるのかと楽しみました。

サトシの隣にコズエが座るその距離、“ソーシアルディスタンスの微妙さ”。(笑)これにサトシの心が疼くのがわかります。何も喋れなかったサトシが、こんな大人びたコズエに物おじしなくなり、「好きだ!」といえるまでの成長。この憧れの気持ちが将来にわたってサトシの成長を支え続けるでしょう。

サトシが宇宙人のコズエが発する言葉をどう捉えるか。難しいですね!

「飛ばないで落ちていくことはとてもきれいだ!」はコズエが撒くシーンから生命力と慈愛を示していると推測できます。
これがアメリカンビューティ」(1999)のなかで孤独な青年が飛び散る紙が決して一点を離れず回る様を見て叫ぶ「すべての背後には生命と慈愛があり恐れる物はない」と生き様を見出すシーンに似ていて、感動しました。 

そして話は死生観にも及びます。コズエは命の連続性についてよく喋り、これをサトシが自然にこれを受け入れていくという形でしっかり死を見つめています!

草薙さんがちょっと危ないお父さんを演じましたが、役にぴったりでした。(笑)これまでにはなかった役の草薙さんが観れそうで楽しみです!

小さなもの語りですが、壮大な思索で描かれた普通の男の子の成長物語、面白かったです。
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「ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場」(1986)

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イーストウッドにこんな作品があるのかとNHKBSプレミアムで観ました。

ベトナム戦で破れた米軍が再建を賭けていた時代の物語。米海軍のCM映画のようです!時のレーガン大統領に依頼されて作ったかのような作品に見えますが(笑)、決してそうではない、“我が道を行く男の人生”がしっかり描かれ、後の作品でも描き続けられるテーマが含まれています。

結末が海兵隊グレナダ侵攻で終わっていることもあり、戦争好きのイーストウッドと捉えられそうですが、イラク戦争などには反対しており、純粋な気持から軍の再建に何が必要なのか、そして戦争を思うとき決して忘れてならないものは何かを描き、近代戦で「負けないために何が必要か」を問うた作品だと思います。

監督はクリント・イーストウッド、脚本はジェームズ・カラバトソス、撮影はジャック・N・グリーン、音楽はレニー・ニーハウス、編集はジョエル・コックスが担当。出演はイーストウッドのほかに、マーシャ・メイソン、エヴェレット・マッギルなどです。


ハートブレイク・リッジ 予告編

あらすじ:
朝鮮戦争ベトナム戦を戦い抜いてきたベテラン曹長ハイウェイ(クリント・イーストウッド)。今では補給処勤務で戦闘とはほど遠い仕事が性に合わないと酒を飲んで警官に絡み、留置場に拘束されるが長年の軍への貢献ということで釈放された。
この仕事は不適切と判断され、東部ノースカロライナ州キャンプ・レジューンに駐屯する第2海兵師団第2偵察大隊第2偵察小隊に転属が決まった。キャンプに移動するバスの中で会ったのが「ロックンロールの帝王」を自称する黒人青年。このバスの中のシーンが長い。何故かと思っていたら、・・・

部隊に出頭すると小隊長が若い中尉リング(ボイド・ゲインズ)で頼りなさそう。兵士に至っては前任者の曹長が除隊前で訓練を適当にやったらしく、使いものにならない状態だった。そのなかにロックンロールの帝王ことスティッチ伍長(マリオ・ヴァン・ピーブルズ)が居た。(笑)

中隊長パワーズ少佐(エヴェレット・マッギル)は大学出身で、戦闘経験はないが出世欲と気位の高く、ベテラン曹長を毛嫌いする将校だった。

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ハイウェイはバーに出掛け、そこで働いている前妻アギー(マーシャ・メイソン)と顔を会わせた。しかし、アギーの態度はとても冷たい。歌っていたスティッチに客が絡みこれを庇ったハイウェイが店主から追い出されてしまった。ハイウェイがなぜアギーが冷たいのかが理解できなかった。

カマボコ隊舎にいる兵士たちに「鍛え直す!」と宣言するが、「戦争があるわけでもない」と馬耳東風。「明日0600に集まれ!」と指示して、翌日0500に叩き起こす。これに不平を言う兵士たち。戦争では「臨機応変が必要だ!」と全員を集合させ「駆け足」が始まる。
兵士たちは長距離を走ることも考えず走り出してヘタル。ハイウェイは持続するスピードで走り、これを見せつける。この日から毎日朝の駆け足が続く。

そんな駆け足訓練のなかに、ロシア製AK47小銃をぶっ放しで、小銃の種類と飛翔経路を判断させるという無茶な訓練を、これも「臨機応変」だと、仕組んでくる。(笑) これにパワーズ少佐が嫌悪感を示す。

「そのうち熱がさめるだろう」と思っていた兵士たちの目の色が変わってくる。

訓練は駆け足から障害通過訓練、さらにサバイバル訓練へと練度をあげていく。
兵士たちは知らない間にしっかり体力が出来ていて、第1小隊と腕力勝負しても負けないようになっていた。

中隊長パワーズ少佐が行う待伏せ対処訓練で、第2小隊が対抗部隊を勤めることになった。それぞれが被弾センサーを付けての実戦的な戦闘訓練。ハイウェイは少佐が全く予期しない(シナリオにない)場所で襲撃し、中隊を全滅に追い込んだ。少佐が「訓練にならん!」と激怒したが、「臨機応変が大切だ」と譲らなかった。

突然の非常呼集。ハイウェイが慌てる兵士たちを落ち着かせ、臨機応変に対処する。実はパワーズ中隊長が仕掛けた空挺攻撃でどちらがはやく目標高地を奪取するかを争う訓練。パワーズ率いる第1小隊とハイウェイ率いる第2小隊が争ったが勝負がつかず指揮官同士の戦いにもつれ込み、ハイウェイが勝ち、兵士たちから絶対的な信頼を得た。一方、少佐との対立は深まる。

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ハイウェイは再びアギーのアパートを訪れ彼女との関係を修復しようとするが、再婚の話しを出すと泣き出し、追い出してしまう。彼女にはハイウェイが戦争に出掛けるたびに耐えられない悲しみを経験していた。

海兵隊将校・下士官のパーティー。正装での参加にハイウェイが嫌がるが、そこに突然の非常呼集。兵士たちは何度も訓練の非常呼集があったのでまた訓練かと思ったが、グレナダの米人救出作戦だった。直ちに空母に乗艦。グレナダ沖でヘリに乗り換え、海と空から上陸。医科大学に監禁されているアメリカ人を救出する任務を担当。落ち着いたハイウェイの指揮で、難なく任務を達成し安堵しているところに、パワーズ少佐から丘の上の敵陣地を偵察するよう命令ぜられた。

装甲車で攻撃してくる敵にてこずる。しかしハイウェイは敵から奪った葉巻をくゆらせ、兵士たちの戦いぶりを眺めていた。彼らは情況を的確に把握し、自分たちが何をすればいいか「自分で考える」兵士になっていた。

一時、廃ビルに小隊が蝟集して危機に陥るが、プリペイドカードで基地に航空攻撃を要請して危機を乗り越え、敵の無線基地を奪取する。パワーズ少佐がハイウェイの任務は偵察だけでこれは独断先行だと怒ってくる。そこに視察に来た大隊長メイヤーズ大佐(リチャード・ベンチャー)は情況を聴取し、ハイエウェイの行動が認められた。

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戦闘を終え航空機で帰還した兵士たち。空港で迎える家族のなかに、アギーが居るのを認めた。アギーはハイウェイの任務はこれが最期で除隊することを知っての出迎えであった。
                * 

感想:
ベトナム戦後、徴兵制が志願制になり、好調な景気が続くなか兵士募集は難しく、この作品に出てくるように英語が話せない移民の兵士もいて、部隊練度を保つのが大変な時期であった。これにゲリラ攻撃で苦しんだベトナム戦の教訓をどう生かすかという問題を抱えていた。

こんな風潮のなかで求められたのがハイエウェイのようなベテラン兵士だった。彼らが説いたのが状況の変化について行ける臨機応変であり、自ら判断できる「判断力」「強い体力」、そして実戦的な訓練だった。ハイエウェイの生き方を通して、これらが見事に描かれたと思います。イーストウッドの好きなタイプの軍人のようで戦闘服姿がとても恰好よかった!

アギーを通して戦争の悲しみを描いています。彼女は戦場で最愛の人を失うことに耐えられずハイウェイと別れたが、もう戦場に出ることはないと確認して再婚を受け入れました。妻にとっての戦場の悲しみは「硫黄島からの手紙」(2006)、「アメリカンスナイパー」(2014)で描かれています。 
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「ドクター・ドリトル」(2020吹替版) 

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コロナ感染状況が第3ステージに入った日、動物たちと遊ぶロバート・ダウニー・Jr.が楽しそうで、アベンジャーズと違った面を見て観ようと本作を選びました。

動物好きの少年が、怪我をしたリスを助けようとドリトル先生の家を訪れ、先生が動物の言葉を話すのにびっくりして、ぜひ助手になりたいと願い出て、病の女王陛下」を助けようと薬草を求めて、先生と動物たちと一緒にワクワクドキドキの鮒谷に出るというストーリー。

原作は100年間愛され続けてきたトーマス・シェパードの世界的ベストセラーで何度も映像化された小説。どのような楽しみ方をするのかなと期待しておりました。

ひと口で言うとアニメで始まり、実写、アニメで終わるという、CG技術を駆使したリアル感のある美しい「生きた絵本」という感じでした。“沢山の動物と遊ぶ”がテーマ。
宝探しの冒険、海賊との闘い、お医者さんごっこと幼いころの定番の遊びですから楽しかった(懐かしい)! ケチをつけるところは一杯ありますが、遊びの主体がゲーム時代に生きる子供たちには、こういう命を感じる作品は必要で、これで良いと思います。やさしい人をつくるにはこれが一番です。

動物が好きになって、万一怪我をしている動物をみつけたら治療してやろう、犬猫は最期まで面倒みるという気持ちになってくれると良いですね。

監督・脚本:スティーブン・ギャガン、撮影監督:ギレルモ・ナヴァロ、音楽:ダニー・エルフマン、製作にスーザン・ダウニーか関与しています!
主演はロバート・ダウニー・Jr.共演にハリー・コレット、カーメル・ラニアード、アントニオ・バンデラスマイケル・シーンジム・ブロードベントジェシー・バックリーらです。


『ドクター・ドリトル』本編映像/日本語吹替え版 <ドリトル先生の藤原啓治と犬のジップの斉藤壮馬が共演!>

あらすじ(ねたばれ):
ドリトル先生ロバート・ダウニー・Jr)はイギリスの名医。オウムのポリーに動物の言葉を教わり、さまざまな動物と話せるということで女王陛下(ジェシー・バックリー)から大きな庭園のある邸宅を賜り、妻リリーとともに病んだ動物たちと暮らしていたが、リリーが冒険に出て海に消え、それ以来門を閉じて人と交わらなくなった。ちょっと偏屈なドリトリ先生です。

そこに動物好きな少年スタビンズ少年(ハリー・コレット)が傷ついたリス・ケヴィンの治療に訪れた。庭園に入るとそこは広々とした動物園?不法侵入者として網を掛けられたが、女王陛下の病気を治して欲しいとやってきた侍従レディ・ローズ(カーメル・ラニアード)に出会って、一緒に屋敷に入ると先生の部屋はオモチャと動物たちで大騒ぎ!

先生は動物たちの手を借りてケヴィンの手術を行った。そして、ダチョウのプリンプトンの背に乗って、女王の枕元に急いだ。プリンピトンに乗って走るシーンはとても面白い。

宮殿では王立医師のマッドフライ(マイケル・シーン)による治療が行われていた。ドリトルが犬のジップを使って診断開始。「頭の中がハテナ?だ」と音を上げる。(笑) そこで、水槽の中に顔を突っ込んでタコのレオナに聞くとなんとお茶を飲んで倒れたという。アヒルのダブダブが薬草本を取り出し、ジップが「これだ!」と薬草“エデンの樹の実”を見つけた。

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ドクトルは足手纏いとスタビンズを残して動物たちと港に向かったが、「あなたは不思議な力がある」とポニーとキリンのベッツイが迎えに来た。スタビンズはベッツイの背中に乗って街を野を走り、橋から帆船目かけて飛び降りる。(笑)

宮殿では病で倒れた女王に代わって王冠を手にしようと企むバシリー卿(ジム・ブロードベント)が「ドクトルを戻すな!」と医師ドファライに追わせる。

ドリトルは亡き妻リリーが残した日記を手に入れ、“エデンの実”があるという伝説の島を見つけようとモンテベルデ島に向かっていた。

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航海で順調で、スタビンズは動物たちの言葉を沢山覚えた。が、マッドフライの艦隊が近付いていた。ドクトルは潜水具で海に入り、鯨に話して船を引かせて逃げたがロープが切れ追いつかれてしまった。

モンテベルデ島はリリーの父である暴君ラソーリ(アントニオ・バンデラス)が支配する島。ドリトルとスタビンズは変装して城に潜入、日記の所在場所について蟻とトンボのジェームスから情報収集。しかし、ドリトルは捕らえられてトラのバリーがいる檻のなかに。スタビンズも捕らえられたが、ラソーリーに気に入られ晩餐に招待された。

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スタビンズが晩餐会の最中に、ジェームスにメッセージを託して帆船から動物たちを呼び、ドリトルを救出。ここでは臆病だったゴリラのチーチーが大活躍でした。

宮殿にダイナマイトが仕組まれ晩餐会が混乱するなかで、スタビンズがリリーの日記を手にいれた。が、待伏せしていた医師マッドフライがこれを奪い、ドリトルの帆船を砲撃で沈没させ、伝説の島へ出航してしまった。海に落ちたプリンプトンを白くまのヨシが救助するという微笑ましいエピソードがありました。

動物たちが「リリーの日記を取り返そう!」とドリトルを励ます姿に、ラソーリが感動してボロ帆船を提供してくれた。

この船で、鯨をナビゲーターとして、マッドフライ艦船を追い、伝説の島に上陸。マッドフライ隊を避けて、険峻な崖路を伝って“洞窟に入った。エデンの樹の実が安置してあったが、病める巨竜が守っている。何でもかんでも食ったらしく腸に異常がある。(笑) ドリトルと動物たちが治療をして、エデンの樹の実を手にした。

ドリトルと動物たちが宮殿に帰還し、女王にエデンの実を与えると、女王は生き返って、感謝の言葉を述べるのでした。
                
感想:
物語がシンプルで分かり易いやすい。結末で仲間と一緒にいるときが幸せ、そして他の人を救うことが自分を救う唯一の道であるという、子供たちにはとても分かり易い教えでした。

しかし冒険物語でありながら、サスペンス感が不足し、さらにアクションがないところが残念でした。

動物と遊ぶ物語として、沢山の動物が登場するのは面白いのですが、キャラクターが多すぎてよくわからない。どの動物も悩みを持っていて、助け合うことで癒され成長していくところが見どころですが、それが薄くなってしまいました。
CG、動物のキャラクラーはよく出来ていますが、動作の縫いぐるみ感が残念でした。しかし、風景が美しくまた建物、室内の備品など美術が美しくすばらしかった。これですべて帳消しです!!

ロバート・ダウニー・Jr.のユーモアと子供好きの演技で引っ張った作品でした。
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声優:
ジョン・ドリトル:藤原啓治
スタビンズ :林卓
海賊王ラソーリ -:大塚明夫
マッドフライ:大塚芳忠
バッジリー卿 :森功至
ヴィクトリア女王瀬戸麻沙美
リリー:福原綾香
レディ・ローズ:遠藤璃菜

「ゴールデン・リバー」(2018)さすがフランスの巨匠が描いた西部劇だ!

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フランスの名匠ジャック・オーディアール監督が初めて英語劇で挑んだ西部劇サスペンス。第75回ベネチア国際映画祭(2018)での銀熊賞(監督賞)作品。

監督作品は初観賞です。正直、“テーマは何か”と戸惑いました!タイトルに引っ張られました!邦題は間違いだと思います。原題はThe Sisters Brothers。

1850年代、サンフランシスコのゴールドラッシュを背景に、殺し屋の兄弟が人生を賭け、一攫千金を夢みて挑戦。夢敗れて人生で本当に大切なものは何かを掴むという西部劇というよりヒューマンな物語でした。当時のアメリカの近代化を風刺し、これが現在も続いているのではないかと思わせる結末に、さすがフランスの巨匠が描いた西部劇だと感動しました。

殺し屋の世界をふたりでなければ生きられなかった兄弟の絆を、ジョン・C・ライリーホアキン・フェニックスが男臭く、何とも言えない良い味で演じてくれます。これも見どころです!

原作はパトリック・デウィットの小説「シスターズ・ブラザーズ」。脚本:ジャック・オーディアール、撮影:ブノワ・デビエ。
主演はジョン・C・ライリーホアキン・フェニックス、共演はジェイク・ギレンホールリズ・アーメッドなどでさすがの布陣です。


映画『ゴールデン・リバー』予告編

あらすじ:
1851年、オレゴン準州。兄イーライ(ジョン・C・ライリー)と弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)による殺し屋“シスターズ”が夜間襲撃するシーンから物語が始まる。銃口から出る火炎を遠景で見せる銃撃戦というのも異例で、銃撃戦がドラマの主題ではないことを示しています。いわゆる銃器で相争う西部劇の時代は終わり、科学で近代化していく西部開拓を丁寧に描かれます。

燃え上がる幕舎に馬を求めて走るイーライ。6~7人殺したというチャーリー。
この成果を提督(親分)に報告するのは弟のチャーリーで、提督から指揮官がいれば成功したと言われたという。弟が兄貴に威を張りたいらしい。そして新たな命令「南に下りモリスと合流して、ウォームという山師を追え!」を受けたという。兄弟の間で、なぜ弟が兄に指示するのか?

イーライが弟の髪を切ってやり、準備を整えて、マートレ・クリークヘ出発。

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途中駅馬車に出会い、これを追って街の宿に入った。しかし、モリス(ジェイク・ギレンホール)はウォームを追って出発した後だった。次の町までは2日だというので明日朝立つことにした。
イーライは活気つく町の風情を見て回り、雑貨屋で歯磨セットを買い、歯を磨いて寝た。(笑)チャーリーは相変わらず酔払って拳銃をぶっ放して騒いでいた。
次の朝、チャーリーは泥酔で馬に乗れない。イーライが馬に括りつけて出発。

一方、モリスはマートレ・クリークの宿でウオームに出会い、ウオームが砂金堀でサンフランシスコを目指していることを知り、自分はジャクソンビルへ行くと同行することにして、40ドルで馬を買い与え、駅馬車と一緒に向かった。

シスターズはモリスの置手紙「7日後にジャクソンビルに到着。ここでウオームを確保しておく」を見て、山を行けば2日で行けると荒道を採った。
霧に苦しみながら、イーライは毒クモが口から入り体調不良になり(笑)、ジャクソンビルを目指した。

モリスはウオームが化学剤で砂金を見つけ出す方法で砂金堀に挑もうとしていることを彼のノートを盗み見して知った。モリスは日記をきちんとつけ、ルソーの本も読むというインテリ男(弁護士)。
モリスにノートを盗まれたことで、ウオームはモリスの実の顔に気付き別れようとするが、彼の武力も必要と砂金堀の目的「暴力を終わらせ、新しい社会システムを作る。人間関係が敬意により統制される社会、無欲な社会をつくるためだ」と明かし、モリスの協力を求めた。ウオームはフランスからやってきた砂金堀?うまい設定です。

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モリスはウオームの話に感激して「新しい自由のために!」とふたりで作るW&Mカンパニー設立に合意して砂金堀に挑むことにした。

シスターズがジャクソンビルに着くと、モリスとウオームが出発した後だった。「やつは舐めている!」とメイフィールドを目指して発った。

カルフォルニア州メイフィールド。盛り場の女ボスの名が町名になっているという。ここでもモリスとウオームが宿を発ったあとだった。チャーリーが女を抱くために泊まるという。イーライは娼婦からの情報で、メイフィールドが部下にモリスを追わせ、シスターズを始末したがっていることを知った。逃げ出すシスターズ、酔っぱらってもチャーリーの拳銃の腕は冴えていた。この場を切り抜け、サンフランシスコに向かった。実はチャーリーがウオームを追うのは彼の化学探知法を盗むことだった。

サンフランシスコの賑わい、宿のシャワーにびっくりしたふたりはホテルのレストランで飲み、今後の人生について、イーライが「提督と縁を切ろう!暴力は暴力を呼ぶだけで終わりがない」と国に戻ることを勧めたが、チャーリーは「兄貴と別れても、別のやつと組んで、提督の後釜を狙う」と反対した。これにイーライが「俺を抜きにして!」と笑ったことで、チャーリーがぶん殴って出て行った。

次の朝、チャーリーが何事もなかったようにイーライを砂金堀に誘う。(笑)これがふたりの関係なんです。だからこれまでやってこれた。

チャーリーがメイフィールドの宿で、ウオームが買った土地を調べていて、アメリカ川・フォルサムにいるという。

シスターズはフォルサムに向かった。が、夜間露営中眠っていて、待ち伏せたモリスとウオームに掴まった。しかしそこに川下で金堀をしていたやつらが襲ってきた。これを撃破するために4人は協力。一緒に砂金堀をすることになった。

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小さなダムを作って、化学液を加え、反応して光を放つ金塊を集める。集めだすとすべての金塊が欲しくなる。そのうち濃度が低下して金塊が見えなくなった。

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チャーリーがウオームが止めるのも聞かず、残りの化学液を加えたため足が爛れ、砂金を集めるどころかこれが原因でモリスとウオームは命を落とした。チャーリーも右腕(拳銃を持つ手)を負傷した。

シスターズはふたりを葬って、現場を去ったが、提督の遣わし者レクサスらに襲われた。イーライが医者を雇いチャーリーの腕を切り落とし、彼の拳銃をもってレクサスに立ち向かった。

イーライは弟チャーリーを庇いながらオレゴンに戻り、提督を殺そうと館に入ると、なんと提督が棺に中にいた。(笑) チャーリーはその場を去ったが、イーライがチャーリーに代わって、右手で提督の顔を殴った。
そして、ふたりで母親の待つ家に戻った。そこで安らぐふたりに・・・

感想:
科学で近代化が始まった西部アメリカ。民主主義の楽園作りを目指すウオームとモリス。これに暴力ものを言う社会に生きようとするシスターズが加わったゴールド探し。欲が欲を求め、暴力が暴力を引き起こすというどうしようもない人間の業のなかで、チャーリーが化学薬品量を間違え、腕を負傷したことでゴールド探しが終わった。チャーリーは腕を失って初めて自分にとって大切なものは兄イーライであり家族の愛、故郷の風に触れる幸せに気付くという結末が良い。

しかし、ダラスに自由国を求めようとしたウオームの夢。この町が後にケネディ大統領暗殺の場になろうとは!ジャック・オーディアール監督の皮肉でしょうか?アメリカの監督では描けない西部劇でした。

駅馬車やバー、宿の建造物、町の賑わい、歯磨きなど当時の文化をしっかり描き、毒クモに噛まれたり、イーライが持つスカーフのエピソードなどユーモラスで楽しめるドラマでした。

兄イーライが最期まで、弟チャーリーが酒乱でどうしようもない父親を殺したことに、これは自分の役割だったとチャーリーを守り続ける兄の愛には涙です!! 
提督が死んでいたとは!ラストまで予想を裏切られるというとても面白い作品でした。
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「家族を想うとき」(2019)宅配ドライバーがなぜ尿瓶をもつか?

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2019年度第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。昨年末の公開でしたが、コロナ感染騒動の影響で今だ上映中、ありがたく鑑賞させていただきました。

“観て良かった”と言える作品でした。イギリスの労働問題を扱う作品ですが、コロナ感染騒動で注目を浴びている訪問介護士と宅配ドライバーを取り上げ、マイホームを手に入れ幸せになろうと働けば働くほどに問題が出て、決して家族は幸せになれないという新自由主義社会の闇を衝く作品でした!

宅配ドライバーが持つ尿瓶訪問介護士が鼻につけるクリームで、この業界の苦しい労働環境とこれが及ぼす家族問題をユーモラスに描き、現在社会の大問題を問うてくる演出がすばらしい!!

監督はイギリスの巨匠ケン・ローチ。脚本:ポール・ラヴァーティ、撮影:ロビー・ライアン。出演者はクリス・ヒッツエン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・ブロクター、ロス・プリュ-スターらです。


ケン・ローチ監督最新作『家族を想うとき』12.13(金)公開/90秒予告篇

あらすじ(ねたばれ):
イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。狭いアパート暮らし。父親リッキー(クリス・ヒッツエン)は、いろいろ仕事をやったが、寒くってもでき働く時間も自分で決められると聞いて、フランチャイズの宅配ドライバーを選んだ。妻アピー(デビー・ハニーウッド)は自家用車で訪問看護士をしているが、リッキーの強い希望で自家用車を手放しバスで訪問することにした。

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子供は高校生の長男のセブ(リス・ストーン)と小学生の長女のライザ(ケイティ・ブロクター)がいる。

仕事に当たって、リッキーが集配所の管理人マロニー(ロス・プリュ-スター)から「すべてはスキャナーに従え!失くすな!尿瓶を持て!」と注意を受けるたが、尿瓶は「俺には必要ない」と持たなかった。

宅配で訪れても感謝はされず、留守が多い。駐車違反で警官からキップを切られる。なかなか効率があがらない。休めば罰金を科せられる仕組みになっている。

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学校が休みの日にライザの手を借りる。ライザは父親の仕事の忙しさに、「誰がこのスキャナーに情報を入れているの?」と素朴な質問を投げかける。まさにこのプログラムでリッキーは走り回っているのだ。儲けているのは誰だ?

妻のアピーのバスでの訪問のため、時間を気にしながらの介護、過大な要求もあり困惑する。夜に「おしっこに行けないから来て!」と自宅に電話がかかることもある。

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こうしてふたりは家に帰っても、夫婦の会話も少なくなり、子供の話も聞いてやれない、ただ眠るだけの生活となっていく。食事はテイクアウト。

こんななかで長男セブが広告板に仲間と一緒にスプレーでイラスト絵を描いたことが見つかり、学校から呼び出しが掛かるが、宅配中のリッキーは出頭できず、妻アピーが時間を割いて出掛けた。

セブは14日間の停学を言い渡された。これを聞いたリッキーは「なぜアピーは校長に抗議しなかった!」と責め、夫婦喧嘩になる。

出勤したリッキーはマロニーに「家族のために時間が欲しい」と休暇を申請したが、「代行者が見つからない、なによりも君のスキャナーの使い方に問題がある」と拒否された。

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警察署からリッキーに呼び出しが来た。マロニーに事情を話すと、「許可するが、計画変更だ」と罰金を課せられた。

警察に出向くと担当刑事は「お前には他者にないものがある。家族だ!家族のために2度とやるな!」と注意し、セブを釈放した。
しかし、アパートに戻ったリッキーとセブが大喧嘩を始めた。リッキーの手が出たことで、セブは家を出た。
朝、車のキーがないことに気付いたリッキーは「休む!」とマロニーに伝えると「またか!」と100ポンドの罰金を課せられた。セブの居所を自転車で探したが見つからなかった。

そこに、申し訳なさそうにライザが「キーが無ければ元の家族に戻れる」とキーを隠したと泣いて謝った。

リッキーは元の家族を取り戻すために「働こう!」と、これまでやってこなかった尿瓶を持って小便に行く時間を惜しんで働くことにしたやさき、ギャングに襲われ大怪我を負った。妻のアトピーに付き添われ病院に。(笑)
そこにマロニーからリッキーの携帯に「盗まれた荷のなかにパスポートがある。それにスキャナーが壊されている。1500ポンドの賠償だ!」と請求してきた。これにアピーが「なんでこんな時に電話するの!どこが自営なの!」と言い返した。

その夜、セブが「大丈夫?父さん!」と戻ってきた。「心配ない!」と笑みを送った次の日。リッキーは朝6時に起きて、“不在宅メッセージ”票に「心配するな!」と書き残し、家族が止めるのを振り切って「千ポンドの罰金が・・」とうつろな目で飛び出していった。・・・
                 
感想:
原題は「Sorry We Missed You」。これは不在宅に残しておく宅配ドライバーのメッセージカードです。ラストシーンで、リッキーがこのカードに「怒らないでくれ!俺は大丈夫だ!」と妻にメッセージを残して仕事にでかけます。大怪我をしても休むことができない過酷な労働環境を示す洒落たメッセージです。こんな洒落たタイトルで新自由主義の問題点を暴くという監督の目の確かさに驚きます!

宅配ドライバーの使命は時間を守ることと自分と家族を犠牲にしてまで奉仕していることを思い、宅配さんが訪れたときは感謝の意を伝えたいと思います!

リッキーが怪我をしてアピーに付き添われて病院に。そこで交すふたりの会話。アピーが「この臭い、クリームつけていないから?」と問うと、「小便だ!」と応えるリッキー。大笑い!
リッキーはスキャナーをうまく利用するために、仲間が皆やっている尿瓶を持つことで成績を上げられると思った。しかし、初めてこれを手にした日、ギャングに襲われ尿瓶の小便をかけられるという不運に会う。こんな小噺でこの業界の厳しさを見せつけ、社会の不条理を衝くという、とても分かり易い社会派ドラマでした。(笑)

リッキーがセブを叱ることに、アピーが「物事の善意ではない!ここは側にいてやることよ!」と諭すが、そばにいてやる時間が取れない。

刑事がセブに「家族が迎えに来てくれたことに感謝しろ!」と言うが、迎えに来たリッキーに賠償金が課せられ、宅配ルートを失うかもしれないという不安が付き纏う。迎えに来なければどうなったか?

こんな社会は狂っている。仕事とは何か?

コロナ感染騒動後の生活様式が大きく変わると言われますが、もっとも望まれるのは“助け合う社会システム”が必要であるということではないでしょうか!
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「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」(2019)

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第92回アカデミー賞作品で監督、脚色賞を含む6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を得た作品です。コロナ騒動で遅れましたがやっと公開で、掛けつけました。
監督はグレダ・ガーウィグ。キャストはシアーシャ・ローナンエマ・ワトソン、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、ローラ・ダーンティモシー・シャラメメリル・ストリープらと、とても豪華です。
撮影:ヨリック・ル・ソー、音楽:アレクサンドル・デスプラ、衣装デザイン:ジャクリーヌ・デュラン。

原作「若草物語」は1886年に出版されたルイザ・メイ・オルコットの名作小説「若草物語」で、これまでに沢山の映画作品がありますが、全く観ておらず、小説も未読で、今回のリメイクする意義がどこにあるのかという視点で観ました。

ガーヴィング監督のOB情報を調べると、監督の活動が若草物語の主人公女性小説家ジョー・マーチ、作家オルコットの生き方に近い。女性が結婚以外に自立して生きる道があり、ひとつのすばらしい選択であると、今を生きるガーヴィング監督の目を通して、ジョーとオルコットの生き方が描かれていと思います。


『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』6月12日(金)全国順次ロードショー

あらすじ:
南北戦争時代下のアメリカ。貧しいながらも仲睦ましく生きるマーチ家の個性豊かな四姉妹。

作家志望の次女ジョー(シアーシャ・ローナン)を主人公にマーチ家の皆さんの生き方がみずみずしく描かれます。

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女優志望で裕福なセレブの生活に強く憧れるメグ(エマ・ワトソン)。小説家として大成したいと願う次女ジョー。ピアノの演奏に秀でているが病弱な三女ベス(エリザ・スカンレン)。画家としての才能に恵まれた頑固なエイミー(フローレンス・ピュー)。
叔母マーチ(メリル・ストリープ)は「女性に仕事は絶対無理、結婚しなさい」という。叔母には反対され長女のメグは子供のころに夢見た女優の夢を諦めて結婚するという人生を選択してしまう。

ジョーには作家となると同じくらい大切な男性ローリー(ティモシー・シャラメ)がいたが、彼のプロポーズに「結婚したら人生が終わる」と断ってニューヨークに出て小説家を目指す。

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四女のエイミーも自分の能力には限界があることに気付き「サロンの花を目指す」と言い出す。そこにフランスから帰国したかってジョーの恋人であったローリーが現れる。

ジョーはやっと作品が出来、出版社に採用されたが次作ができない。そんなとき三女のベスが病に倒れ、これを機会に故郷マサチューセッツ州コンコードに戻る。母や姉妹の絆や葛藤を通して、自分の初心を再確認し、ベスの死契機に再び小説家として立ち上がる。
              
物語はジョーが故郷に戻り、過去のエピソードを交差させながら、現在のマーチ家の生活を描いています。過去エピソードには薄いオレンジ色を掛け分かりやすい工夫がしてありますが、物語そのものが複雑ですから・・(笑)

ジョーはローリーとどんな出会いをして別れたのか、別れたローリーとの関係、ベスとの想い出が今の自分にどう繋がっているのか、小説家になると決めたときの家族の応援・母との絆、メグからどんな影響を受けたかなど、今のジョーの気持ちが浮き彫りになるよう焦点を絞って、過去エピソードが描かれますので生々しく感動的な脚本になっています。

こうすることで、ジョーの物語だけでなくマーチ家全員が、人に意見で人生を選んでない、この時代にこの考え方があったことに驚きですが、結婚してもそこにはしっかりした自分の生き様があることが分かります。

日常のたわいもないエピソードが描かれる「若草物語」が、映像で感動的に描き、沢山の人に親しまれる譯が分かるという演出になっています。( ^)o(^ )

感想:
ジョーはローリーと別れ小説家道を選び結婚への憧れは無かったかといえばそうではなかった。ローリーがエイミーとヨーロッパ旅行に出ると、孤独感に襲われ、ふたりになにもないなら元に戻すことを真剣に考える。

金がないことにも不安もあるが、戦争協力のために寄付を求められ、自分の髪を売って金を作り、このことで家族の絆は強まっていく。貧乏でも幸せに生きるメグ夫婦の生き様を目にする。
こうして何をもなすことなく亡くなったベスの無念を思うと、彼女のためにも何かを残したいと逡巡しながら道を切り開いていく。そして孤独感や金のことが吹っ飛んで、ラストでは自分が生きるために書くという結末に胸打たれます

作品の冒頭で、他人名で作品を売って編集者ダッシュウッド(トレイシー・レッツ)とお金を交渉し現金を手にした。それがラストシーンでどう変わったか?これがこの作品のテーマでしょうか!

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若草物語」を書き上げ、編集者との交渉で著作権を譲るか自分のものにするか?
編集者が「これでは売れない、何故近所の子と結婚しなかった?では誰と結婚するんだ」と問うてくる。ジョーが「誰とも結婚しません」と言うと「バカ、だれも読まんよ!ハッピーエンドだよ!」。

ジョーはすばらしいハッピーエンドを考えました!彼女はこれが書けるほどの経験を持っていました。

著作権を渡さず、自主出版に踏み切った? 小説家として生きる決意が決まった瞬間でした。作家オルコットが生涯独身でしたから、小説と結婚した瞬間でした。

母親マーミー(ローラ・ダーン)は、近所にご飯が食べられない家族がいると娘たちを連れて慰問に出向くという、とても慈愛に富んだ人でした。こんな母親に育てられれば、娘たちがどう成長するか分かります。ローラ・ダーンの表情がすばらしい。娘たちには自分の道を進めと励ます強い母でもあった。この作品のなかで好きなキャラクターとなると母親マーミーと長女のメグです。(笑)

ベスは身体が弱かっただけに家族はいろいろと助けてやらねばならないことが多かった。そして、ダンスパーティにも参加せずひたすらピアノを弾く姿は姉妹に大きな感動を与え、亡くなって家族を結束させる結果となりました。ベスの死は物語の大きな結節となっています。

四女エイミーは、幼いころジョーに嫉妬して彼女の原稿を焼き大喧嘩をし、成人してローリーを取り合う形になりましたが、ローリーがジョーと完全に切れたことを確認し、結婚はお金の為ではないと交際を始め、これを実らせていくというとてもしっかりした結婚感の持ち主でした。さらに自分が絵を描くことを辞める際、ジョーの力を認め小説家になることを勧めたのは彼女でした。

このように女性たちがとても強く、自らの意思で決める人生が描かれています。

この作品の見どころは、美術の優れたところです。 アーチ家とローレンス家、室内美術品、そして姉妹が着るフアアションが、当時に会わせるよう再現され美しいです。ダンスシーンが躍動的でこれがまたすばらしい。

若草物語」を読んだことがありませんが、この作品でその良さが分かったと思わせる作品でした!
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映画「時をかける少女」(1983)現実と幻想の世界を行き来しながら、揺れる和子の恋心!

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今年4月10日、大林宣彦監督は亡くなられましたが、多くの人が思い浮かべるのが「尾道三部作」だといいます。そのひとつ、本作をNHKBSプレミアムで録画して観賞しました。

一度目は現在とタイムスリップの区別がよく掴めず(笑)、二回目で、時空を旅しながらの淡い思春期の恋が語られるという、2回観なければわからなというのがこの作品の肝でしょう。当時どう捉えられたんでしょうか?

監督の自由な発想と映像の色使い、時空の変化をこう描くかと驚きました。世に残る名作です!

原作は筒井康隆さんの同名S小説。脚本:剣持亘さん、撮影:坂本義尚さん、音楽:松任谷正隆さんです。

出演:原田知世尾美としのり高柳良一岸部一徳根岸季衣・高林陽一・入江若葉上原謙入江たか子さんらです。


時をかける少女ending

あらすじ(ねらばれ):
物語に入る前に、人は現実よりも理想の愛を知ったとき、それはひとによって幸福なのであろうか?不幸なのであろうか? この映画を観たあとで結論を出さねばなりません。

冒頭、夜のスキー場。スキーパレードが始まるのを待つ高校1年生の芳山和子(原田知世)と堀川吾郎(尾美としのり)。そこに深町一夫(高柳良一)が現れ星空を眺めている。パレードが始まるというのに深町のスキーがない。
帰りの列車では、菜の花を摘んいて、発車間際に乗って来る深町。そして車外の風景、車内の光景が、次第に色づいてくる。深町とは何者か?と不思議な感覚のなかで物語が動き出します。

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4月16日(土)、授業が終わって、和子は堀川、深町と一緒に実験室の掃除をする。和子が男子の堀川と深町を帰して後かたずけをしていると、薬品室で変な物音がする。部屋に入り「深町君!」と呼ぶが返事がない。フラスコが落ちて煙が出始め、気を失った。何で「深町君!」と良いんだのかは分からない。(笑)
気が付くと健康室のベッドの上。堀川はハンケチで汚れた顔を拭いてくれていた。
和子の気分が落ち着いたところで、3人で帰宅。そこに自転車が突っ込んでくると、咄嗟に“和子は堀川を庇った”。醤油屋の堀川に家で別れ、和子は深町と尾道特有の細い登り路を歩いて自宅に帰り始め、途中で堀川の祖父母に出会い、温室を見せてもらった。温室でラベンダ―の匂いを嗅ぎ、この匂いが実験室で気を失ったときの香りであることを知った。和子は通学時、この香のことを思い出す。ラベンダーの香りがタイムスリップの引き金となる。

17日、日曜日でゆっくり起きて、長い坂道を“下駄ばき”で、堀川にハンカチを返しに尋ねた。堀川は稼業を継ぐと決め醤油の味を研究していて、和子への対応は素っ気ない。和子は「醤油の匂いがした」とハンカチを返して帰った。これを見た堀川の母親が「大学に行きなさい!」という。堀川はこれを全く受け付けない。この時代、バブルの真っただ中で、醤油こそ日本文化に欠かせないものと監督の時代に対する反発だったのでしょうか!

18日(月)、和子は登校。部活の弓の練習で矢を放たないのに命中する。異変を感じて練習を止めて、途中雨の中で、あの温室の側を通っての帰宅。
その夜、地震で眼が覚め、堀川の家付近から火が出ているので駆けつけた。堀川家には被害はなく安心した。そこに深町が来ていたのでふたりで、例の坂道を家に戻り始めた。深町が、授業があるのに、「明日植物採集に行く」と言う。石が敷かれた道、瓦屋根、深い木々が深海監督の描く絵のように美しい。目を覆われ・・・・、ここで和子は目が覚めた。

「夢だったのか」と再び眠り込んだ。

登校中、堀川に会って「おはよう!」と挨拶すると、地震で瓦が落ちてくる。「危ない!」。ここで眼が覚めた。また夢か!と和子。和子の揺れる女心が見えてきます。

19日(火)の日めくりを確認して登校した和子。国語の福島先生(岸部一徳)のネクタイを褒めると「変な子!」と言われ、堀川は「地震も火事もなくお前、大丈夫か?」という。深町も学校に来ている?
授業が始まると昨日やったことばかり。部活で弓の矢を放とうとして、異変に気付いた。

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帰宅も途中、温室を通りかかったところで深町に呼び止められ、初めて深町の部屋を訪れた。しっかり靴を揃えて上がった!
幼いころの雛祭りで、騒ぎ過ぎて鏡を倒し、ふたりが傷を負った話をした。深町が出血を口で止めてくれたことを思い出す。傷が大きな伏線となります!

雛祭りの映像が、赤色を主体とした色彩で、妖気漂う雰囲気でした。

和子は「まる一日時間が戻っている」と訴えると、深町が「心配ない!」と温室に連れ出し歌を唄って、優しく励ましてくれた。

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実は18日だった

その夜地震が起きた。和子が堀川を訪ねると何事もなかった。そこに深川が訪ねていて「君の言うとおりになった」と言う。パチャマ姿の深川を見てこれは現実だと確信した。「大丈夫だ、このままで帰ろう!」と誘われ、その帰り道」で「君は超能力、テレポーテーションとタイムトラベルが同時に出来る“タイムリープ”だ」と話され、和子は怖くなって「分からな!抱いて!」と求めた。別れ際に「傷は?」と問うと「もう治った!消えた!」という。ここはとても美しい映像でした。

19日登校。途中で地震。和子は瓦が落下から堀川を守った。そして彼の右手を見た!傷があった。

深町を探して確かめたいが見つからない。温室で一杯ラベンダーの香りを喫った!すると“タイムリープ”で、海辺の岩壁で植物採取する深町に会えた。なんでこの危険な岩壁!高柳さんはこのときの恐ろしさで俳優になることを辞めたと言います。(笑)

和子は深町から「会えなくなるぞ!」と止められたが「まともな女の子になりたい!」と実験室に戻してくれるように訴えた。

ふたりは空を飛び大波に乗って、「雛祭り」や「幼いころの深町の葬儀」など過去の自分がいた場所を確かめながら実験室に戻った。

そして実験室で深町になぜこうなったのかを糺すと「自分は2660年の世界から、やってきた植物学者だ。植物が無くなっているので地球にやってきて、堀川と君の想い出を借りた。自分の気持ちに嘘はない!これまでの記憶を全部消して帰らねばならない。また会える。しかし僕とは気づかないだろう」と明かして去って行った。

その後、和子は大学薬学部に入って仕事を続け、独身でした。深町がやってきたが和子は気づかなかった。
             
感想:
現実と幻想の世界を行き来しながら、振り向いてくれない堀川と優しい深町の間で揺れる和子の恋心が面白い
この恋心を清楚で透明感のある原田知世さんが、“第1回主演”で初々しく演じるのですから、当時の若い人には堪らなかったでしょうね!(笑)

現実と幻想の境目が分からず観る人が混乱するという演出が面白かった。そっして、現実に戻る際の奇想天外が映像に驚かされました。まるで湯浅政明さんの奇想天外なアニメ映画作品を観ているようでした。(笑) 最近の戦争三部作しか観ていませんが、これに引き継がれているようで、創作エネルギーの凄さに驚いています。 

理想の愛を知ることは幸福か不幸の結論ですが、この作品は「現実をしっかり見つめなさい」というように受け取りました。理想ばかり追うと結婚はできません。幸せは結婚してからふたりで作って行けばいいのではないでしょうか。

さて、当時の皆さんはどう受け止めたのでしょうか?

尾道の密集した古い家屋、路地、坂道、神社を、決して名所を使っていませんが、坂道を上下する度に時を駆けているようで、作品の謎めいた雰囲気がよく出た作品だと思います。登場人物の行動を含め、バブルに警鐘を鳴らしていた!

冒頭で出てくる桜は尾道の名物、来年は桜の千光寺を訪れたいと思っています。
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