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宮﨑あおいさんを応援します

「パーフェクト ワールド」(1993)プロファイリング主体捜査に物申す?? 

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クリント・イーストウッド作品ということで、NHKプレミアムで観賞。完璧な楽園“パーフェクトワールド”を目指して逃走する孤独な脱獄犯と人質となった少年の心の交流、脱獄犯を追う警察署長の苦悩を描いた犯罪ドラマ。

ところが、前年に「許されざる者」でアカデニー賞の作品・監督を含む4部門を受賞したせいか、あまり評価がよくない。

大部は脱獄犯と少年の話ですが、ラストが脱獄犯を追う人情刑事の話で、これがイーストウッドというよく出来た作品でした。(笑) さらにケネディー大統領暗殺事件を皮肉ったのではなかろうかという背景設定を楽しみました。(笑)

スタッフは監督:クリント・イーストウッド、製作:デイヴィッド・ヴァルデス、撮影:ジャック・N・グリーン、音楽:エニー・ニーハウス、美術:ヘンリー・バムステッド、編集:ジョエル・コックスなど主要スタッフは、「許されざる者(1992)」をはじめとするイーストウッド作品の常連で占められています。

キャステイングは主演にケビン・コスナークリント・イーストウッド。助演に ローラ・ダーン 、T・J・ローサー 、キース・ザラバッカレオ・バーメスター 、ポール・ヒューイットらを配しています。初共演として脱出犯がケビン・コスナーでこれを追う警察署長クリント・イーストウッドというのが面白い。誘拐される子役T・J・ローサーの名演技が見どころです。


パーフェクトワールド A Perfect World 1993

あらすじ:
1963年、ハロウイン祭の前日。アラバマ刑務所からふたりの囚人、ブッチ(ケビン・コスナー)とテリー(キース・ザラバッカ)が脱獄し、所長の車シボレーを盗んで逃走。車を交換しようと立ち寄ったのがフィリップの家。
8歳のフィリップは、家の宗教が「エホバの家」で、ハロウインの前夜祭に参加出来ず悔しい思いをしながら、家族と食事しているところに脱獄犯が侵入。隣の住人に見つかりフィリップを人質に逃走した。

テキサス州警察署長のレッド(クリント・イーストウッド)は事件の報告を受け、州知事から特命で派遣されていた犯罪学者サリー(ローラ・ダーン)を伴って、ケネディ大統領警備用に作ったばかりのハイテク機材搭載指揮車で、脱獄犯を追うことになった。サリーはプロファイラーの専門家で、レッドは机上の理論は捜査に邪魔と思ったが知事の施策には逆らえず帯同した。

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ブッチはタバコを買いに車を離れた際に、テリーがフィリップに手を出したので射殺、以後ブッチとフィリップふたりの288号線沿いに北上する逃避行が始まった。

ガソリンスタンドで別の車に乗り換え、途中、小さな雑貨店で買い物をしていたところ店主に脱獄犯と感づかれて逃走。フィリップはハロウイン用衣装を手にしていた。フィリップにハロウイン衣装を着けさせ車上に乗せて走る。(笑)

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逃げるブッチとこれを追うレッド。途中激しいカーバトルで指揮車が行動不能になりここで野宿。
ブッチはピクニックを楽しむ家族の車を手に入れ、これで子供のころ別れた親父の住むアラスカまで行けると野宿していた。そこに現れたのが農夫のマック。

マックの計らいで家に招かれ休ませてもらい、6歳の孫クリーブランドと親しくなった。ところが、ラジオでブッチが脱獄犯と知ったマットの態度が急変。ブッチはクリーブランドをしっかり愛するよう言い残し、手足を縛って逃走しようとしたところを、「ブッチが何でこんなことをするのか」とフィリップが抗議のために拳銃を撃った。が、これがブッチの腹に当たった。

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そこに警察、FBIが駆けつけふたりを取り囲む。フィリップに「母親のところに帰れ」というが帰ろうとしない。拳銃を持ってないと確信して近づくレッド。FBIの狙撃手が引き金を引いた・・・。ブッチの手には古いアラスカからの父親の葉書が握られていた。
               
感想:
前段は、脱獄犯のブッチと誘拐されたフィリップがいろいろな事件を起こしながらのロードムービー。そのなかでブッチがフリップに、幼いころの父親との想い出を重ね、なんとしてもハロウインを楽しませてやりたいとう優しさ。一方、フィリップはブッチを父親のように慕っていく。ふたりの微笑ましい愛情物語になっています。それに警察との駆け引き、スリリングなカーバトルが加わり、結構笑いもあり、いろいろと楽しめるよう工夫されています。
そして、イーストウッド作品ではおなじみのテキサスの田園風景とラジオから流れる音楽に癒されます。( ^)o(^ )

一方、追うレッドとサリーの会話から、幼いころブッチは娼婦の母親のところに出入りしていて人を殺め、この事件を扱ったのがレッドであったことが明らかになる。レッドはブッチの再起を期して少年院に送りを主張したが、そうはならなかった。しかし、プロファイリングではレッドが刑務所に送ったことになっていた。

レッドとブッチの関係が明らかになってきて、これが逃走するブッチに被さり、ラストシーンでFBIがブッチが射殺したことに激しい怒りを露わにするレッドの感情がしっかり伝わるという上手い脚本です。

「何で撃ったか!撃つなと言ったろうが!生かしてやれ!」と悔やむレッド。何も知らないやつには、武器をもっていると感で撃ってしまう。俺にとっては昔から知っている優しい悪ガキなのに!「このざまああどちらが殺人犯だ」というレッドの叫び。こ物語の“落ち”がイーストウッドらしくて泣けます。

ということで、プロファイリング主体の捜査に疑問を呈する老刑事物語です。

タイトルの「パーフェクト ワールド」が分からなかった!(笑)

この物語の背景がケネディ大統領の暗殺事件前夜になっています。脱獄犯ケビン・コスナーは「JFK」(1991)でケネディ大統領暗殺犯を追うギャリソン検事役での出演でした。これを追うレッドの指揮車がケネデイ大統領警護用だったという設定。そしてグッチがFBIに射殺されるという結末に、なんでこんな設定にしなければならなかったのか?笑いました!!これも過剰なプロファイリン依存に対する抗議なのかなと考えています。

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「ロケットマン」(2019)

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世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの自伝的映画。主題歌が2019年度アカデミー賞の主題歌賞に輝いた作品です。
しかし、ダイアナ妃に捧げた「キャンドル・イン・ザ・ウインドウ」ぐらいしか知らない音楽音痴の観賞記(WOWOW)です!

主としてレビューから、1990年リハビリ施設に入院し完治するまでを、随所に彼の代表曲を散りばめながら、波乱万丈な人生を振り返るという設定で進行していく、エルトンの人生の転機となる出来事を印象的に描いています。

麻薬・酒・セックスなどなどの依存性がセラピーにより強い意思を持てば治るというメッセージがあり、人生における愛の大切を説き、LGBT問題に触れており、テーマの捉え方が「ボヘミアン・ラプソディ」(2018)とは異なって大きな社会性のある作品となっています。それでいて、ミュージカル仕立てでエルトンの歌をたっぷりと聞けるという優れものです! 

監督は「ボヘミアン・ラプソディ」のデクスター・フレッチャー。製作は「キングスマン」シリーズのマシュー・ボーンにエルトンが加わっています。脚本:リー・ホール、撮影:ジョージ・リッチモンド、音楽:マシュー・マージソン

出演者はタロン・エジャトンジェイミー・ベルリチャード・マッデン -、
スティーヴン・グレアム、チャーリー・ロウ らです。
特にエルトン役のタロン・エガートンと彼の音楽的パートナー;バーニー・トーピン役のジェイミー・ベルの演技が見どころです。

エルトンの曲は、ミュージカルとして、ストーリーに合わせその時々の彼の心情、喜びや孤独、苦悩、葛藤が上手く伝わってきます。


『ロケットマン』本予告|PREPARE Bumper               
あらすじ:
オープニングでエルトンが大きな羽根つき衣装でリハビリ施設の廊下歩き、セラピー室に入り大柄な態度で座り、「アルコール依存、コカイン中毒、セックス依存、過食症、癇癪持ちだ。暇つぶしにやってきた!よくなりたい!」と自己紹介。皆が驚きます。こいつ何者だ! このうつろな目のエルトンが過去を語り始め、その姿が一変するところに驚きです。しっかり歌を唄うタロン・エジャトンの演技に圧倒されます。実は歌より悩み自失呆然で泣く演技の方が凄かったです!

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物語は、要所要所でこのリハビリシーンに戻り、エルトンのコメントでまとめながら展開されます。分かりやすい、しかし、酩酊状態での思い出だから厳密には辻褄があっていない!美味い設定です。脚本の勝です。(笑)

子供の頃の話し
表情が明るくなり喋り出します。「我は5歳で神に認められた」とミュージカル仕立てで明るい子供のころを回想します。曲名は?

しかし、父はたまに家に帰り部屋に篭ってレコードを聞き相手にしてくれなくなる。昔は“ジャズ”を語りハグしてくれたと、父に愛されなかった日々を回想します。
音楽の才に恵まれたエルトンは王立音楽学校に奨学生として、当日は家族の中で唯一可愛がってくれる祖母に付き添われ、入学。先生に何が弾けますかと問われ、先生が弾いた曲を「全部覚えた!」と弾いて見せます。天才であったわけです!

母親が家族を顧みない父親に愛想を尽かし、夫婦喧嘩して父親が家を出て、新しい男が父親として登場。このことがエルトンに決定的な影響を与えたと言います。
エルトンは「愛が欲しい!」「孤独だ!」と、出会ったのがロックンロールだった。エルビス・プレスリーに嵌った。学校でもロック漬けだった。

卒業時バンド「ブルーソロジー」に参加し、キーボーディストになっていた。
アメリカからやってきた「アメリカン・ソウル・ツアー」のバックバンドを勤めていたとろで、ロドニー・ジョーンズに「名前を消せ!過去を消すと大物になる」と言われ、「エルトン・ジョン」にした。「ジョン」はビートルズから貰った。(笑) このときメバンドーの一人にキスされた。このキスが運命を変えていく!

ディック・ジェームズ(スティーヴン・グレアム)の音楽事務所の広告を見て応募。面接官はレイ・ウィリアムズ( チャーリー・ロウ )、採用不合格としたが(笑)、「この詞に曲をつけて観ろ!」と渡されたのがバーニー・トーピンジェイミー・ベル )の大量の詞だった。

エルトンは詞に「ダニエル」の曲と名付つけたテープをバーニーに送ると、大変な喜びで、ふたりはカフェで落合い、盛り上がり、バーニーが「歌詞ならなんぼでも書く」ということになった。

出来た歌曲を持ってジェームズを尋ねた。ジェームスは「曲の99%は“くそ”で1%が勝負だ。沢山作るために同居しろ!」と同居を勧められた。(笑)
ふたりはエルトンの家に同居して歌を作った。バーニーが詞を書き上げると30分で曲「僕の歌は君の歌(原題:Your So)」が出来上がった。これは嘘らしい(笑)

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エルトンは「バーニーと付き合って20年間一度の喧嘩したことはない」とセラピーで語っている。

出来た歌曲をジェームスの許可を得てレコーデイング。「これでアメリカを制覇できる。先ずはトルバドールの出演だ!」ということになった。

ハリウッド、トルバドールにやってきたエルトンはステージを見てびくついた。レイに「この玉無し野郎!」と発破をかけられステージに上がったエルトン、「クロコダイル・ロック」で空を飛ぶパフォーマンスで大成功裏に終わった。

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その祝いがトルバドールのオーナー・テイト・ドノヴァンの豪邸で開かれた。「まるで楽園だ!」と成功を喜んでいると、バーニーが女と消えていった。はにかみ屋のエルトンは「これでバーニーに振られた!」と落ち込む。実はふたりはゲイの関係にあった。

そこに現れたのがジョン・リード(リチャード・マッデン)。「俺はマネージャーだ!君は何者にでもなれる!」と煽て上げ、その夜を過ごした。

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「エルトン、LAに激震!」というニュースで、アメリカでのツアーは大成功。ロンドンに帰ったエルトンは、これまでとは一変し、派手な衣装やメガネでピアノの曲弾きやクライマックスではピアノの上によじ登って歌い、スーパースターの地位を獲得していった。
25歳で億万長者となり、ロック界の富豪になった。そこにジョンがロンドンにやってきた。

「黄昏のレンガ道」が出来上がったところで、ジョンの提案でジェームスとの縁を切った。そして「今が勝負だ!しかし、ふたりの関係がバレたら全てが終りになる。両親にことがもれないよう説得しろ!」と命じられた。
父親には会っても話せず、泣いた!そして母親には真実を伝えたが「知っていた!しかし黙っていて欲しい!」と突っぱねられた。エルトンは「俺は誰にも愛されることがない!」とジョンに挑みかかった。

セラピーでエルトンは「本物の愛は得られないと思って、ここから暴走が始まった」と告白。

楽屋でジョンに殴られた傷に化粧して、薬・酒を飲んで、奇妙な衣装とメガネスタイルで舞台に立つ。「次のツアーで収入がロック界最高だ。世界のレコード売り上げの5%は俺が担っている」と稼ぐことだけが目標になった。
バーニーが見かねて「そんな衣装で歌いたいか?戻っても良いんだぞ!」と声を掛けたが、エルトンは「詞だけ書け!」と無視した。

LAに豪邸を手に入れた。エルトンは酒と薬に入り浸り。目が覚めればジョンが「仕事だ!」と急かす。ついにジョンと衝突するようになった。母たちもやって来た。集まった人たちを見ながら酒と大量の薬を飲んで「俺の自殺ショーだ!」とプールに飛び込んだ。プールの底で、俺は楽しく歌っている夢を見ていた。

引き揚げられて病院に運ばれ、回復するやドジャースタジアムでのコンサートに参加し「俺はロケットマンだ!」と歌った。

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ナーニーが「自分を見直したい。一緒に逃げ出さないか!」と持ち出してきたが拒否した。バーニーは去って行った。そしてジョンとも金のことで衝突するようになった。

エルトンはレコーディング時に出会ったレナーテと結婚したが、すぐ分かれた。「あの子には悪いことをした」とセラピーで語った。

母親が「あんたのスキャンダルで国外に逃げ出すから金を出して!」と言ってくる。エルトンが血を吐くようになっても、ジョンが「感染症で心配ない。あと5公演追加だ」と言ってきた。
マジソン・スクエア・ガーデンの公演? エルトンは薬・酒を飲んで、このリハビリ施設に逃げ込んだという。
                
感想:
人生で何が大切か、孤独と愛に飢えた人生が生々しく描き出され、何よりもセラピーで治るということを訴えていす。そして、ラストの映像で、エイズ基金設立とふたりの子供を育てる楽しさを伝えるシーンがあり、これがエルトンからのメッセージだと思います。世界のトップミュージシャンとして立派な役割を果たしたなと、感動しました。

エルトン役のタロン・エガートンがすべて自分で歌っていると聞き、タロンの才能と努力に驚きました。

リハビリ施設を見舞いに訪れたバーニーから渡された詞にエルトンが「アイム・スティル・スタンディング」と曲をつけることができて、リハビリによって薬と酒を断つことに成功したと実感する感動的なシーンで幕を閉じます。
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「ルース・エドガー」(2019)

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人種差別に抗議する同時多発的デモが連日のように続くアメリカ。この闇を観てみようと本作を選びませた!
人種差別を正面から取り上げた作品ではありませんが、その奥にはこれが透けて見えるという、アメリカとはどんな国か?アメリカのアイデンティティを問う作品で、まさに今のアメリカが描かれているという優れものでした!

アフリカの戦場で生まれ、7歳で白人の父母と養子縁組でアメリカにやってきた少年が、高校生となり、課題レポートに尊敬する人物に北アフリカ戦線で活躍した革命家の名を上げたことで、担任の黒人教師、育ての父母、学校当局、学友を巻き込んでの大騒動をサスペンスフルに描いた物語です。

この若者は何者か。アメリカ人か、黒人か。たんなる悪ガキか、それとも革命家か?彼に翻弄される父母、先生、学校(校長)がまさに現在のアメリカです。

監督は「クローバーフィールドパラドックス」のジュリアス・オナー、未見です。脚本はJC・リーの戯曲。撮影:ラーキン・セイブル。

出演はケルビン・ハリソン・Jr.オクタビア・スペンサー、ティム・ロスナオミ・ワッツ、ノーバート・レオ・バッツ、アンドレイ・バング、マーシャ・ステファニー・ブレイクら。

ケルビン・アリソンのオバマ元大統領風のエリート演技から、不気味な謎の少年の演技。そして一見リベラル思想とアメリカの善意を代表する白人夫婦のティム・ロスナオミ・ワッツが少年の行動に狼狽える素晴らしい演技で見せてくれます。さらに差別されないよう規範的な行動をとる、いままでの作品とは全く異なる、黒人教師をオクタビア・スペンサーが演じてくれます。

そして、マーシャ・ステファニー・ブレイクの怪演に声を上げることになります!


6/5(金)公開『ルース・エドガー』予告篇!

あらすじ(ねたばれ):
オープニング。バージニア州アーリントンの高校。登校した学生が個人ロッカーに花火の入った袋を投げ入れる。ここから物語が始まります。この作品の大きな伏線です。

この日は、全校学生が集まっての「学校を讃える」学生総会。父兄も参加。学生総代としてアフリカから養子でアメリカにやって来たルース・エドガー(ケルビン・ハリソン・Jr)が教師と家族を讃える歯が浮くような立派な演説をする。(笑)これに担任教師のハリエット・ウイルソン(オクタビア・スペンサー)が渋い顔で聞いています。

帰校時の車のなかでルースが「ハリエット先生が厳しい!」と養父母のピーター・エドガ(ティム・ロス)とエイミー(ナオミ・ワッツ)に訴えるが、ふたりは気にもしなかった。エイミーは「よく出来たスピーチだが、自分を喋って欲しい」と訴えた。

ルースは勉強もできるが陸上選手としてもダントツで、学校では絶対的な信頼がおかれていて、養父母にとっての自慢の子です。

翌日登校してロッカーを見る。黒人の同級生デショーンが「俺が入れた袋がなくなっている」と話しかける。先生か?と雑談をしながら教室に。

教室ではハリエット先生が黒人としてアメリカの規範に真剣に取り組みなさいというようなレクチャーをするが、ルースが窓の外で電柱に上り仕事をする男を見ていた。

エイミーは婦人科の医師。夫ピーターの要望で、次の養子?として新生児に会う約束をしていた。そこにハリエットから会いたいと電話が入る。

エイミーが会うと、「ルースは歴史レポートに尊敬する人物としてアルジェリア独立運動フランツ・ファノンを挙げた。彼は植民地支配下の置かれた人々の真の解放は革命だと主張した人物。危険人物を尊敬している。あなたはしっかりセラピーをやりましたか?」と責めて、花火の入った袋とレポートを渡した。狼狽えるエイミー。

勤務を終えて家に戻ったエイミーがこのことを夫ピーターに相談。エドガ家の食事の仕方は、まさに今のコロナ感染下の蜜を避けたようで面白い。料理はテイクアウト。食事は立ったままで、あと始末は各自で行う。

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ピーターは心配ないと受けつけないが、エイミーは不安を隠せず、レポートと紙袋を台所の収納棚に隠した。

そこに戻ってきたルースは、父母に「ハリエット先生に黒人だから頑張れと言われるのが嫌だ」と話すと、ピーターが不快感を示した。
違和感を持ったルースは、ふたりが去った後、食事の片付けをしていて、ノートと紙袋を見つけた!
パソコンでハリエット先生のOB情報を洗った。妹ローズマリー(マーシャ・ステファニー・ブレイク)がリハビリセンターにいて、先生が送迎をしていることを掴んだ!

ルースのハリエット先生に対する憎しみの気持ちが収まらなくなった!

翌日朝の弁論部の練習で恋人(父母は知らない)ステファニー・キム(アンドレイ・バング)にレポートと紙袋を預けた?
そこに現れたハリエット先生に「プライバシーについてどう考えるか!」と激しく迫った。
ルースが「母に何を言いましたか?」と激しい口調で聞くと「あなたの考え方に疑念を持っている」というので「怖かったら謝ります」と言い、「アメリカの記念日で何が好きですか」と問うた。

ルースは「独立記念日が好き。それは自由、強さ、個性を大切にする、そして花火です!」といって去った。これが大きな伏線です!

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ハリエットはこの一部始終をピーターに報告した。帰校したルースは厳しくピーターから「先生を脅したか?」と問われた。「脅す気持ちはない。袋のことはは、ロッカーを友人と共有しているので自分がやったのではない」と主張。母エイミーはほっとしたようだが、父ピーターの疑念は晴れなかった。

このあとルースは夜の駆け足に出掛け、夜の校舎を見て、親友デショーンのところに立寄った。タバコを吸って、同じ黒人なのに先生に責められる不満を喋った。デショーンは「お前はルースだぞ!」と取り合わない。

不安なエイミーはルースの部屋を探して、ステファニーという女の子がいることを知る。これはルースの策略か!
早速ステファニーをカフェに呼び出し、ふたりの関係を聞く。するとパーティで会って、薬を喫って、大勢の学友に回されたがルースは親切にしてくれた。ハリエット先生は薬のことしか知らない。薬で先生からスポーツ奨学生資格を剥奪された友がいると喋った。
エイミーは、「大変だったね」と労わったが、「ルースは大丈夫」と親バカ丸出し。しかし、これを聞いた夫ピートは「望通りの子ではなかったか!くそったれだったんだ!」とエイミーを責め、ふたりの関係が危険なものになりかけた。

ルースはハリエットとその妹ローズマリーがスーパーに買い物に出掛けたのを知り、追っかけてローズマリーに偶然会ったふりをしてアフリカの食物を勧めた。彼女は大喜びだった。
ローズマリーはこれを一杯食べて(ルースが買い与えた?)過食症に陥り、ハリエットは心では泣きながら、ローズマリーを施設に預けることにした。ローズマリーは姉を恨んで泣いた!

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ハリエットが授業中に「先生来て!」の呼び出しで学校玄関に出ると、ローズマリーが真っ裸で「私が邪魔なんだろう!」と抗議している。全校生が見る中で警官に引かれていった。
ハリエットが家に戻り「ニガー」と大きな赤文字の落書きを見た。そこにステファニーが訪ねて来て性暴行を訴えた。

ローズマリーのTVニュースを見たピーターは「お前を疑って悪かった!」とルースに謝ったが、エイミーにはまだ不安があった。エイミーが一連の出来事についてルースに真意を糺した。ルースは「誰も俺を信じない!期待に沿うよう努力してきたが、もう窒息しそうだ!」と訴えた。

ハリエットは白人のダン校長(ノーバート・レオ・バッツ)に落書きはルースの仕業で性暴行の主犯だと訴えた。校長がことが事だけに、エドガ一家を呼び、ハリエットも加わり、面談で状況確認することにした。

ルースはハリエットに無礼を謝り、暴行については携帯で薬を喫っている映像を見せ、ハリエットの言い分を封じてしまった。このときステファニーがハリエットの証人になると彼女の部屋に待機していたが、いつのまにかドロンです。何しに来たか?(笑) 校長はハリエットの話しを聞くことなく、面談を終えてしまった!

この夜、ハリエットの部屋で花火が破裂して火事になった!ハリエットは校長に呼ばれ即免職を言い渡された!

ルースは花を持ってハリエットの家を訪ね、花を受け取ってもらえなかったが、部屋に押し入り、「デショーンの奨学生却下はあんたのせいだ!」と詰め寄った。すると「私やあんたの問題ではない。アメリカのせいだ」という。これがテーマです。「じゃ落書きと花火は誰のせいだ!」と問うと「あんたがやった、出て行ってちょうだい!」とルースを追い返した。これでは問題は解決しない!

ルースを迎えにきたエイミーはルースが森の中に入るのを見て、つけた。小屋のなかでステファニーとセックスしているところを見て愕然とする。ルースは家に戻ってエイミーに「やり直す、お母さん!」と“魚の入った”瓶をプレゼントした。これ最大の嫌味でしょう! エイミーは「あなたのは未来がある」と応えた。

そして、いつものように夜の駆け足。どんどんスピードアップして泣いた!!

感想:
ルースはアメリカにやってきて両親や、先生・学校が求める、型にはまった理想的な学生を懸命に演じるほどに辛くなり、自分のアイデンティティを探し始めた。その捌け口がこのレポート。ルースが書いたレポートが白人であれば騒ぎにはならなかった!

アフリカ系黒人でエトリア戦場の少年兵であったということで、疑念を持たれる。一方、これを押し付ける同じアフリカ系黒人の教師ハリエットは黒人が差別されることにならないようにと、不幸な妹を持ったことを隠してまでも、規範的な行動を押し付けてくる。アメリカは自由だろうがと、ルースにはこれが嫌で嫌でたまらない。

両親はリベラルな思想の持主と言いながら、女性や花火の問題が絡んでくると、理想と現実は別で、その理想は崩れてしまう。米国社会を革命するような男に育てという大きな夢が持てない。まるで我が子の教育を慈善事業と考えているようにみえる。そして、17歳の男の子を持つ親としてはお粗末です。

校長に至っては、学校がうまくいくことしか考えていない。

同級生は白人の養子ということでルースを一枚上の人物とみなし、逆にルースはその環境に甘え、ハリエットに挑んだともいえる。

ルースの周りに起こったことは、現にアメリカで起こっている騒動に関係づけられます。オバマ元大統領は在任間、ハリウッドから「それでも夜は明ける」(2014)で黒人政策を問われましたが何か動きがあったでしょうか。今般の騒動で声明を出しましたが、黒人にとっては“ハリエットの言葉”としか受取らないかもしれません。とても考えさせられる作品でした。

 

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映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」(2012)

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「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の公開を控え、この国民的ヱヴァンゲリヲン祭りに参加しようと、歳も顧みず(笑)、「破」に続いて、NHKBSプレミアムで観賞です。
 
スタッフ、キャストは言わずもがなですが、
総監督:庵野秀明さん。監督:摩砂雪鶴巻和哉さん。
声優は緒方恵美林原めぐみ宮村優子坂本真綾三石琴乃山口由里子立木文彦清川元夢さんらです。

「Q」はこれまでの作品と違って、“一見さんお断り”というほどに、わけ分からない作品でした。(笑)
とは言え、3作品を通してのテーマは何か? これこそがヱヴァンゲリヲン物語、「人類補完計画」物語ではないかと、絵図が先行して説明が足りませんが、見ないではおれないというミステリアスで衝撃的な作品でした。(笑)


これまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

あらすじ:
時は「破」から14年後。ザーレとネルフの「人類補完計画」に異を唱えて、ミサトやアスカたちが「ヴィレ」なる反抗組織を結成し十分力がついたところで、ニアサードインパクトのトリガーとなった、今ではザーレの管理下にある「エヴァ初号機を奪回作戦」から物語が始まります。

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戦場は宇宙空間らしいですが、暗くて、声が小さくて、突然前作で消えたアスカが眼帯と赤い衣装でエヴァ2号(改)を操り、さらに能天気な声のマリがエヴァ8号で登場、わけわからない。(笑) 作戦は大成功で、エヴァ初号機はヴィレの旗艦AAAヴィダーに収容された。目覚めたシンジは情況が理解できない!こちらと同じです。(笑)

ミサトが隊長でリツコが副隊長です。パイロットにアスカとマリがいる。ところがシンジにはよそよそしい態度。まるで罪人扱いだ。首にDSS(Deification Shutdown System)という「神格化遮断システム」を着けられ「エヴァには乗るな!」と厳命される。

そこに、ネルフがレイ(のクローン)が搭乗するマーク9を派遣し、シンジを奪う。

シンジはネルフ本部で、父ゲンゾウと再会するが「エヴァ13号に乗れ!」と一言声を掛けられ、与えられた部屋で過ごすことになった。
そこで出会ったのが、サードインパクトを止めたマーク6号のパイロット・渚カオル。ふたりはピアノの連弾を通じて心を通わせるようになっていきます。

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第3新東京市の惨状を見て、自分が引き起こした事件だとカオルから知らされたシンジは、カオルの勧めで「フォースインパクトを起こさせないことで償う」とダブルエントリーシステムに改造されたエヴァ13号で、エヴァ9号の援護を受けながら、14年間封印されているというリリスの結界へと進入した。カオルはシンジを助けることを誓って、その担保にシンジが付けているDSSを自分の首に付けた。

目的はセントラルドグマの最深部にある2本の槍ロンギヌスとカウシウスを手にいれることであった。

最深部には無数の骸とリリスの亡骸(首がない)そしてエヴァ:マーク6の屍(自律タイプに変更されたという)を目にした。槍はリリスの屍に刺さっていた。

エヴァ13号の動きをキャッチした“ヴィレ”はエヴァ2号(改)とエヴァ8号を派遣。激しいアスカとマリの攻撃を受けながら、シンジは槍を手にするが、槍は2本ともロンギヌスだった。

これではフォースインパクトは止められない。槍を抜かれたリリスの亡骸は融解して使徒12号が現れ、エヴァ13号に寄生して覚醒。フォースインパクト発生の儀式が始まった。

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カオルとシンジはどう対処するのか? そして“ヴィレ“の対応は? さらにザーレとゲンドウの思惑は・・。

               
感想:
フォースインパクトとは何か。なぜ2本の槍でフォースインパクトが止められるのかという、この作品の基本的世界感をしっかり押さえてないと物語に入り込めない。この点について、極めて不親切です!(笑) 

ゼーレとネルフ人類補完計画」については、これまで語られることがなかったが、碇ゲンドウEVA初号機のコアに取り込まれた妻・碇ユイとの再会という目的の為に計画を私物化した為、NERVとゼーレは対立を始めてしまう。新世紀エヴァンゲリオンとは、ゼーレとゲンドウが人類補完計画と言う出来レースをどのようにして己の望む形に歪曲させるかという策謀の物語でもあることが浮き彫りになってきた。

冬月は「ゼーレンの人類補完計画死海文書のとおりだが、もはや我々の知るところではない。ゼーレの計画は書き換える」というゲンドウに「13号を使うつもりか?俺はお前の計画について行くだけだ。ユイ君(ゲンドウの亡き妻)のために!」と答え、シンジを将棋に誘ってゲンゾウの考え方を伝えた。

「君の母親は綾波ユイだ。エヴァの初期型の制御システムになっている。ダイレクトエントリーの実験者となって消えた。レイはユイ君の複製体のひとつだ。レイは初号機の中に存在している。碇は自分の願いを叶えるために“あらゆる犠牲を払って自分の魂を賭けている”」と伝えた。シンジは聞いた振りをして去った。

ここにきてやっと、ゲンドウの人類補完計画の概要とゲンドウとレイ、シンジとレイの関係が見えてきたようです。

ゼーレが、知恵の実を食べてしまったという人類の原罪を自らの手で贖罪し、全ての生命が生み出される前の状態にまで回帰することを目的としているのに対し、ゲンドウは、人間がすでに手に入れている知恵の実(科学)を最大限に活用して、原罪による人類の欠陥を自らの手によって補い、新たな生物(神)となって生きることを選択した。両者の目指すところは全くの正反対であるが、そのためにはどちらの目的を目指す場合であっても生命の樹ロンギヌスの槍、全使徒の殲滅などが必要である。そのためゼーレとゲンドウはまず協力関係を築き、互いに牽制しあいながらも各々の目的を達するための準備を整えた。

「ニアサードインパクト」後の14年間に何があったか?

セントラルドグマで繰り広げられたエヴァ13号の覚醒ドラマは????だらけでした。(笑)

エヴァ6号が骸として鎮座し、リリスに刺さった2本の槍がロンギヌスで、カオルはこのカラクリがゲンドウの仕業と気付き、「自分は第13使徒だ」と告白。ザーレの廻し者カオルは何故ザーレ、ゲンドウを裏切ったのか?

ゲンドウの指令室にリリスの首が鎮座している。誰が斬ったか。その首がレイにそっくり、何故か?

また、マリには分からないことが多すぎる。(笑)

マリはエヴァ9を見て「ゼーレンの探偵さん!ここから出ていった方がいいよ」「アダムスの器になる前に!」と檄を飛ばす。レイは「ダメ!それは命令でない」と応じると「あんたのオリジナルさんはもっと愛嬌があった」という。このふたりの関係はどうなっているの?

さらに、エヴァ13号を攻撃するアスカを見て「やめとけ!あれ、コアーだから手の打ちようがない。“最後の使徒”を倒したところで骨が出るか蛇がでるか?」と揶揄する。エヴァ13号が覚醒したのを確認して「書にないはずの13番目。ゲンドウ君の狙いはこれ!」という。この人、人類補完計画を知り尽くしているようで、何者ですか?

覚醒したエヴァ13号は天に上り始め、フォースインパクトが始まる。これを懸命にエヴァ2号改、エヴァ8号、AAAヴィダーが追う。

カオルがシンジに「希望に沿えなかった」と詫びているところで、DSSが作動し亡くなった。ミサトの仕業?
アスカはフォースインパクトを停めるため「ガフの扉を閉める」とエヴァとシンジを切り離すためエヴァ13号に体当たりして爆破。二人は地上に落下。また、エヴァ8号はマーク9との激しい戦闘で損傷し、“ヴィレ”艦隊に収容された。

副長のリツコが「作戦はここまで!」と止めた。女性たちの活躍、成長がみごとな本作でした。ミサト、リツコの声が凛々しい!

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地上に降りたアスカとシンジ。赤い大地をアスカに「馬鹿シンジ!私を助けないの!自分のことばかり!」と急かれて歩くシンジ、これに続くレイ。シンジはアスカが叱る如く、全く成長してない。(笑) この三人、次作にどう繋がるのか?美しい絵でした!

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ゲンドウはエヴァ13号が覚醒した状況で、ゼーレ本部に契約完了と決別の報告をした。この際本部から「我らの願いはすでに叶った。すべてこれでよい。人類の補完、安らかな魂の浄化を願う」という労いの言葉を得た。

この言葉、コロナ感染に伴う社会変化を見でいると、頷けます!

このあと、ゲンドウがどう自らの人類補完計画を完成するか、世間を“あっ”と言わせるほどのメッセージを期待しています。(笑)
***

「ライムライト」(1952)人生は願望だよ!願望が人生を決めるんだ!

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チャプリンにとって米国での最後の作品。ロンドンでの本作プレミアに向かう船の中で、国外追放命令を受けるという運命的の作品です。このことが色濃く出た、チャプリンの集大成作だと思います。

ロンドンを離れ米国に渡り俳優としての地位を得た1914に立ち戻り、再びロンドンを舞台に、52歳にして描く、「華やかなライムライトの陰で老いは去り、若きが登場する、これはバレリーナと道化の物語」という美しきバレリーナによせる心を秘めて、舞台に散った道化の恋心が描かれます。

しかしこの物語には生きる意味や死とはなんぞや喜劇役者とはというチャプリンの人生訓、さらに限りないアメリカへの惜別の情が描かれているように感じます。

主題曲「ライムライト」はアカデミー歌曲賞を受賞していますが、「人生は夢を実現するためにある」というとチャプリンの考え方に貫かれたストーリー展開は表彰もので、脚本賞があってもよかったと思えるすばらしさです。

監督・脚本:チャールズ・チャップリン、撮影:カール・ストラス、音楽:チャールズ・チャップリン、ラリー・ラッセル、レイモンド・ラッシュです。
出演者はチャールズ・チャップリン、クレア・ブルーム、バスター・キートンシドニーチャップリン、ナイジェル・ブルース、ノーマン・ロイドらです。


Charlie Chaplin - Limelight (Trailer)

あらすじ:
〇1914年のロンドン、夏の午後
昔は売れたが今ではすっかり忘れられた喜劇芸人・カルヴェロ(チャールズ・チャップリン)がアパートに戻ってくると、玄関でガスの匂いがする。部屋を除くと若い女性がベットにうずくまっていた。カルヴェロは女性を2階の自室に運び込み面倒を見ることにした。異変に気付いた家主(マージョリー・ベネット)には妻だと嘘をついた。

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やがて女性が眼を覚ます。名を聞くとテレーザ(クレア・ブルーム)だという。「何故こんなことを!」と問うが泣くばかり。「なぜ泣く、“人生苦しみが大切、あとは幻想だ!”何10億年もかけて人間の意識は進歩したその奇跡を消すな!」と叱った。が、女はいびきをかいていた。(笑)
商売道具のバイオリンを質に入れ、食べ物を買って戻った。昔からやっている「フィリスとヘンリーのノミの曲芸」をやってもお客が笑わない!もう芸人はダメかと夢を見ながら眠った。(笑)

朝、テレーサは「死にたい」という。「どんな病気だ」と聞くと、「エンパイアー・バレーのダンサー、リューマチで5か月入院していた、もう生きるのが空しい!」という。「人生は願望だよ!願望が人生を決めるんだ!さっきまでは君の人生は無駄だったが、今は臨時の夫がいる。寝ていろ!」と励ます。

「人生は願望」がこのドラマのテーマです。

その夜も、もうひとつのだぶだぶのズボンにドタ靴で演じるハエタタキの演技を見せると拍手が起きるという夢を見た。(笑)

朝起きると、テレーサが泣いている。「君と舞台に出ていた夢を見た!」と陽気に話しかけた。
「脚に感覚がない麻痺している」と泣く。「死ぬなんてなんだ!今に命が惜しくなる。生きるには覚悟がいるんだ。瞬間を生きるんだ!自分と戦うんだ!幸せになるために戦うんだ!」と励ます。

すばらしいセリフなのでそのまま載せます

「私はコメレィアンだがもうダメだと思われている。人は歳をとると生き方が変わる。深刻な顔は喜劇役者には致命的だ。客を沸かせられない。それで舞台の前に酒を飲む。飲めばバカが出来る。それで心臓発作だ!」「客のひとり一人は良くても、団体になると怪物だ!」と喜劇役者の悲哀を喋った。

そこにエーゼントから舞台があるぞと電報が届いた。出かけて交渉をすると名を変えてやれと言われる。

アパートに戻ってくると、テレーサが「姉が街の女になって支えてくれていると知って足が麻痺した」という。「皆が生きるための努力をしているんだ。それが人間の定めなんだ!名声はどうでもいい!」と励まし、ちょっぴり自分を慰めて、「初恋をしたか」と聞くと・・・。

「文房具屋で働いていたとき、よく五線紙を買いにくる貧しい内気な作曲家におまけの五線紙とお釣りを多く渡した。その作家がアルパートホールの演奏会で大成功した。しかし私は主人に見つかって首よ」と話す。
カルヴェロはその話を継いで「その青年に出会うよ!」と話し、「人生を恐れるな!必要なのは勇気と創造力だ、そして少々の金だ!」と付け加えた。
なぜ死ぬことばかり考える?死と同じように生も避けられん!それが人生なんだ、命なんだ!」。

そしてリハビリが始めた。そこにカルヴェロに舞台出演が決まった知らせが入ってきた。出演したが客に受けてもらえず失意でアパートに戻ると、テレーサから逆に「一回の失敗で引退!貴方は偉大な芸人よ!」と逆に励まされるはめに。

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テレーサはカルヴェロとテムズ河畔を散歩できるまでにすっかり健康を取り戻していた。テレーサが結婚したいと告げた!

〇6か月後
テレーサはバレー劇団の一員として踊っていた。歌劇の練習に訪れると作曲家はあの五線紙の男ネヴィル(シドニーチャップリン)だった。歌劇の楽曲は「テリーのために(ライムライト)」。ネヴィルには文具屋にいた娘だということを伝えなかった。

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カルヴェロは飲んだくれとなり、街芸人とバイオリンを弾いていた。テレーサは座長ボダリンク(ノーマン・ロイド)に呼ばれ、「君が主役だ、道化を連れて来い」といわれ、嫌がるカルヴェロを出演させることにした。
監督ポスタント(ナイジェル・ブルース)から芝居の説明があった。第1場で、テレーサがベットで死を迎えるところをカルヴェロが道化の演技で見送る。そして第2場で、テレーサが恋人の踊りで生き返りソロで踊るというもの。

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このシナリオが現実となるというラストシーンに、唸ります。

幕が開くと第1場で大喝采。第2場へ舞台装置の展開を天井から見せる映像に驚いた!気合を入れて第2場に出なければならないテレーサが「脚が動かない!」と泣き出す。カルヴェロはいやがるテレーサをぶん殴って舞台に上げた。テレーサは完璧に踊り、何回もアンコールを受ける。

この芝居の成功で、テレーサはネヴィルから求婚されるが私には決めた人がいると断り、改めてカルヴェロに結婚を迫った。しかし、カルヴェロは「歳が違い過ぎる、もっと幸せになれ」と突き放し、身を隠した。

ヨーロッパ巡業をするまでのバレリーナになったテレーサがバーでバイオリンを弾いて稼いでいるカルヴェロを見つけ、座長ボダリンクに頼み込み「カルヴェロ記念公演」を企画してもらい、沢山の拍手がもらえるようサクラも準備して、舞台に上げた。

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アンコールに応え、「音楽で風刺コメディーをやりたい」という願望を、かってのパートナー(バスター・キートン)と演じた。何度も何度もアンコールを受けた。余りの興奮で突然の心臓発作を起こした。心配するテレーサに「大丈夫だ!君のバレーと俺の喜劇で世界を回ろう」と彼女を舞台に送り、彼女のバレーを見たいと幕間に運んでもらっている間に、息を引き取った。テレーサはそれを知らず「ライムライト」の曲に舞っていた!
              *
感想:
山高帽に窮屈な上着、だぶだぶのズボンにドタ靴、ちょび髭にステッキという姿はここにはない。ここでは初老の喜劇俳優として、脚本家としての登場です。

夢が現実へと変化していく伏線のつながりで、テーマ「人生は願望で生きる」が見事に描かれました。観る人への人生の応援と、喜劇人へのメッセージがすばらしいです。

テレーサがアメリカのメタファーに思われ、涙が止まらない!

夢の中で曲「ライムライト」を耳にして息を引き取るカルヴェロの死様は羨ましい限りです。

アメリカ最後の作品で、「街の灯」(1931)で花売り娘に恋心を伝えられなかった伏線が、ここでやっと回収してされました。チャプリンにとってアメリカは自由な理想の国であったんだ。 


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「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」(2018)

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コロナ騒動のなかでの劇場鑑賞。ウルグアイはサッカーの国というぐらいの知識しかなかったですが、その風土や音楽に癒され、ヒムカの純な政治家思想に触れ、やる気があればここまでやれると、今の時期だから観るべき作品だと思いました!

給料の9割を貧しい人のために寄付し、職務の合間にはトラクターに乗って農業に勤しむ、風変わりだけど、自然体で大統領という重責を担った、南米ウルグアイの第40代大統領ホセ・ムヒカ(2010~2015)。
ラクターを運転する大統領がいることに驚いた監督、カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを2度受賞しているエミール・クストリッツァが、社会を変えるにはこういう人物と興味を持ち、2014から撮影を開始し、大統領としての任務満了するまで(2015)を描いたドキュメント風作品です。

冒頭、ふたりがマテ茶を飲みながらの談話から始まり、こうやって飲むとマテ茶は美味いと茶を勧めるシーンで終わるという、特別な筋立てがあるわけではなく、ムヒカの“喋り”に映像を合わせ、その順序も時の流れに沿ったわけでもなく、タンゴ、ムルガ、サンバを聞きながら、素のムヒカを眺めているといった作品です。

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監督には演出する必要は全くなかったということでしょうか。特別な人としない演出がとても良かったと思います。ちなみに監督はボスニア・ヘルツェゴビナ出身で、ボスニア紛争を「アンダー・グランド」(1995)で描いています。

作品の肝はムヒカの喋り「語録」です。

撮影はレオナルド・エルモ、セバスティアン・トロ。キャストはホセ・ムヒカ(本人)、ルシア・トポランスキー(夫人)、エレウテリオ・フェルナンデス=ウイドブロ(元国防大臣)、マウリシオ・ロセンコフ(小説家)です。


『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』予告編

感想(あらすじ):
〇刑務所が自分を作り上げた。
かっての獄中生活について語ります。ウルグアイは第2次戦争が終わってしばらくは南米のスイスといわれるような豊かな国家であったが、米国の資本が入り政治が腐敗。キューバ革命に刺激され、反政府活動組織に参加して都市型ゲリラ戦を戦った。貧困層を救うため要人誘拐、銀行強盗をやって逮捕・収監された。100人が脱獄したという有名なブンタ・カレータス刑務所の脱獄に成功したが再逮捕。ここで出会ったのが後に夫人となるルシア・トポランスキー。彼女も反政府活動家で文書偽造の仕事に関わっていた。その後13年間、国内の全刑務所を盥回しされ、1985年刑務所生活から解放されて政治活動に入った。

監獄生活がなければただの“あほんだら”だった。堕落した、成功に目が眩んだ、つまらん男になったと思う。ここで学んだのは「それは矛盾しているようだが、『時に悪は善である。そしてその逆もある』と悟ったことだという。温和な風貌ですが、善も悪も呑み込めるという大きな人物。

「政治の世界で探すべきは、大きな心と小さなポケットの人物だ」と大統領選挙戦を戦う。耳が痛いですね!(笑)

刑務所生活で得た最大の宝物は、長い刑務所生活を支え続けたルシアさんの愛を得たことだと思います。「政治には愛が必要だ」と自らが語るように、夫人の支えがなければ大統領も務まっていないと思います。すばらしい大統領にはよき伴侶が必要です!これも耳が痛い!(笑)

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革命家時代の若きふたりの写真が写し出されますが、今とは違って(笑)、映画に出てくるような恰好良いカップルです。ふたりの愛の物語が作れるかもしれませんね!

夫人は「彼が大統領になるとは思わなかった」と言い、大統領の要件を「分かり易い言葉で喋ること」「信念を持って生きること」と支えます。現在は上院議員です。

古いホルクスワーゲンで出掛け、肉屋で買い物しておかみさんと話す。自分で料理をするとのこと。

貧困率を下げる。
こだが大統領の一貫した政治信条。貧困層の人たちに建設した住宅を視察する。そこでは子供たちがサンバで出迎えです。この施策に「サッカー場をつくれ!」と噛みつく男に「バカ者!」と叱り飛ばす大統領。

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〇文化が大切だ。
文化は社会が進歩するための基礎だという。刑務所を出たとき社会主義はすぐ来ると思ったが無理だった。文化を変えることの方が大切だ。社会主義から資本主義に変わったがこれでも解決しない。別の方法を模索するという。
「人間は社会主義的なものだ。資本主義は個人的だ。人間ひとりでは生きていけない。人間が人間らしく生きるには連帯感をもつことが大切だ」と説きます。

農業学校開校記念式典での挨拶。
あたしたちは世界を変えるために忙しく、子供を持てなかった。寿命も近づいてきたし何を残すかを考えた。私が作る学校ひとつで世界は変えられないが、「世界を変えるためには沢山の学校が必要なんだ!」と生徒たちに話しかけました。

大統領の無念なことのひとつが子供を持てなかったことのようで、子供たちの教育と文化を大切にしたいと子供たちと一緒に植樹をします。

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この記念式典に、派手な衣装で歌い踊る若い人たちが参加している。これは政治を評価する若者たちの行動だそうで、若い人が政治に参加する習慣を持っているのがいい。

〇人類に必要なのは気候変動のための金だ。
監督から「大富豪が800臆ドル持ってきたらどうする」と尋ねられ、「騙されないよう必死に警戒するだろうな。そんな金はいらない!」と答え、人類に必要なのは気候変動のための金だ」「持っている資産は寄付する、残すと官僚に使われだけだ」という。(笑)

2012年のブラジルで開催された「国連地獄嘉納な開発会議」で「気候変動を引き起こしている真の原因は、消費至上主義である。経済発展は必ずしも人類の幸福に結びついていない」とスピーチし世界から注目を浴び2度にわたりノーベル平和賞候補者に選ばれた。

いよいよ離任のときです。5年の任期を終え、大観衆に感謝して「去るのは死ぬとき、皆さんに寄り添っています」と挨拶。泣いて見送る観衆、まるでローリング・ストーンが町にやって来たような風景だったと監督は言います。

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後人に託して去るという、この去り方が良い。そして夫婦がバーで歌う愛の歌。最後に「夢はいつかは終わる」でENDマーク。余韻のある作品でした。
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「きみと、波にのれたら」(2019)自分の人生は自分で見出せ!

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監督が「夜は短し歩けよ乙女」の湯浅政明さん、脚本が「映画 聲の形」の吉田玲子さん。これは観ないわけにはいきません。WOWOW初放送で観賞です。

サーフィン好きの女学生が、自宅マンション火災で駆けつけた消防士と恋におち、その絶頂期に海で彼を失う。彼女がこの喪失感からいかにして立ち直るかという物語。

吉田さんの情感豊かな物語に、湯浅さんが自然を超えた美しさで、その情感を創造性豊かな絵をつけてくれます。アニメとは創造性、自由な発想を楽しむものだということを教わります。

世界的にも高く評価された作品、すばらしいです!!

声の出演は片寄涼太川栄李奈松本穂香伊藤健太郎さんらです。音楽は大島ミチルさんです。


映画『きみと、波にのれたら』予告【6月21日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ):
海洋学部の大学生となった向水ひな子は、好きなサーフィンが出来ると美しい浜辺のあるこの町にやってきました。波に乗ったひな子の姿に「僕らのヒーロー」と叫ぶ消防士のふたり。

アパート6階にひとり住まいのひな子。隣の建設中のビル火災がアパートに飛び火して、逃げ場を失っていたところを助けてくれたのが消防士の雛罌粟港(ひなげしみなと)。火災はいたずら花火が原因だった。

これが出会いで、ひな子がミナトにサーフィンを手ほどき。ミナトのサーフィンが上手くなると同時にふたりの恋が育っていきます。この恋に説明はいらない! サーフボードで波を走るふたり。ゲーム、花火見物、カラオケと楽しいデート。

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すべて美しい絵で表現してくれます。

水溜まりに映る姿など“気付かなかったところ”を美しい絵で見せてくれます。オムライス、ドリップコーヒーなどは、絵ではなくて“食べたと思える感じ”が出ているところが凄い!

雪がちらつくクリスマスの夜、ポートタワーに上り、ふたりでハートの札掛けをしました。
ひな子は「雪の降ったあとにはいい波が来る。そのあと願が叶うというがまだ行ったことがない」と喋った。
翌日、ミナトはひとりで冬の海に出掛け、携帯でひな子に「波に乗れた!」と知らせた。しかしひな子は不安を感じて海に走ると、ミナトは溺れる子供を救助して亡くなっていた。

ひな子は葬儀にも参加せず家に引きこもってしまった。ミナトの想い出すことしかできなかった。

ひな子は「ひな子には波に乗ってほしい。困ったときに呼んで!」というミナトの口癖を思い出しミナトが歌っていた詩を口ずさむと、ミナトが見えた。

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これからは唄えば、雨が降ればそこにミナトがいる。家に帰ってコップに水を入れればそこにミナトがいる。川を見ればそこにミナトがいる。学友はおかしいというがミナトが見せる。水筒に水をいれての散歩。さらにはビニール袋に水を入れて持ち歩く。(笑)

ミナトの消防署での後輩・川村山葵がこんなひな子を心配し、ひな子を現実に引き戻そうと「好きだ!」と伝えるが全く受付ない。トイレで便器に話しかけるひな子。(笑)

狂おしいひな子の感情を絵にして見せてくれます。

ひな子が歩いている先で車両事故、車が炎上するのを見たひな子はミナトを呼んだ。消防車が来て消火した。が、呼んでもミナトはこちらに来ない。天に昇っていってしまった。湯浅監督でなければ描けない情景画です!

 「もう呼んではいけない」とひな子のミナトがいない現実を取り戻す様が描かれます。

ミナトの実家を訪れミナトの位牌にお参りし、妹・洋子からミナトが何故消防士になったかを聞きました。ひな子には記憶がなくなっていましたが、幼いころひな子が溺れるミナトを助けたことでした。私にもやれる!

ひな子は消防署でライフセーバーの免許取得を挑戦します。夏がやってきて花火のシーズン。花火大会の夜、いたずらで花火を上げるというグループの話しを耳にしたにひな子と洋子は、これを確かめようとグループの後をつけて、あの火災で焼けただれた廃ビルに入って行った。

グループが花火に火を点け火災となった。火の回りが早くて脱出できない。ひな子は塞ぎ込む洋子を庇って、消防が発射する大量の水の中をミナトに励まされ、洋子を庇って脱出。

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洋子をサーフボートに乗せ荒れる波を乗り切るという壮大な脱出劇。新たに生きる力を得たひな子を描いて見せてくれ、とても冒険的な壮大な脱出劇でした!
                
感想:
テーマは“波に乗る”。うまく波に乗るためには自分の波を探せというテーマが物語のなかで一貫して描かれ、「自分の人生は自分で見出せ!」というテーマが分かりやすい!!

大切な人の死をどう克服するか?その苦悩のなかで少しづつ気づいていく過程が丁寧に描かれ、彼の言葉のなかに答えを見出して、「人を助ける人になりたい」と彼の人生を引き継ぐ決意に納得です。( ^)o(^ )

そして最後に、彼を忘れるために大泣きをして、再びサーフィンの世界に戻るという結末に泣けます!

廃ビル火事のなかでの脱出劇の描き方に、監督の脳の中をのぞいた感じです。(笑)
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声優:
雛罌粟港:片寄涼太
向水ひな子: 川栄李奈
雛罌粟洋子:松本穂香
川村山葵:伊藤健太郎