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「ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場」(1986)

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イーストウッドにこんな作品があるのかとNHKBSプレミアムで観ました。

ベトナム戦で破れた米軍が再建を賭けていた時代の物語。米海軍のCM映画のようです!時のレーガン大統領に依頼されて作ったかのような作品に見えますが(笑)、決してそうではない、“我が道を行く男の人生”がしっかり描かれ、後の作品でも描き続けられるテーマが含まれています。

結末が海兵隊グレナダ侵攻で終わっていることもあり、戦争好きのイーストウッドと捉えられそうですが、イラク戦争などには反対しており、純粋な気持から軍の再建に何が必要なのか、そして戦争を思うとき決して忘れてならないものは何かを描き、近代戦で「負けないために何が必要か」を問うた作品だと思います。

監督はクリント・イーストウッド、脚本はジェームズ・カラバトソス、撮影はジャック・N・グリーン、音楽はレニー・ニーハウス、編集はジョエル・コックスが担当。出演はイーストウッドのほかに、マーシャ・メイソン、エヴェレット・マッギルなどです。


ハートブレイク・リッジ 予告編

あらすじ:
朝鮮戦争ベトナム戦を戦い抜いてきたベテラン曹長ハイウェイ(クリント・イーストウッド)。今では補給処勤務で戦闘とはほど遠い仕事が性に合わないと酒を飲んで警官に絡み、留置場に拘束されるが長年の軍への貢献ということで釈放された。
この仕事は不適切と判断され、東部ノースカロライナ州キャンプ・レジューンに駐屯する第2海兵師団第2偵察大隊第2偵察小隊に転属が決まった。キャンプに移動するバスの中で会ったのが「ロックンロールの帝王」を自称する黒人青年。このバスの中のシーンが長い。何故かと思っていたら、・・・

部隊に出頭すると小隊長が若い中尉リング(ボイド・ゲインズ)で頼りなさそう。兵士に至っては前任者の曹長が除隊前で訓練を適当にやったらしく、使いものにならない状態だった。そのなかにロックンロールの帝王ことスティッチ伍長(マリオ・ヴァン・ピーブルズ)が居た。(笑)

中隊長パワーズ少佐(エヴェレット・マッギル)は大学出身で、戦闘経験はないが出世欲と気位の高く、ベテラン曹長を毛嫌いする将校だった。

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ハイウェイはバーに出掛け、そこで働いている前妻アギー(マーシャ・メイソン)と顔を会わせた。しかし、アギーの態度はとても冷たい。歌っていたスティッチに客が絡みこれを庇ったハイウェイが店主から追い出されてしまった。ハイウェイがなぜアギーが冷たいのかが理解できなかった。

カマボコ隊舎にいる兵士たちに「鍛え直す!」と宣言するが、「戦争があるわけでもない」と馬耳東風。「明日0600に集まれ!」と指示して、翌日0500に叩き起こす。これに不平を言う兵士たち。戦争では「臨機応変が必要だ!」と全員を集合させ「駆け足」が始まる。
兵士たちは長距離を走ることも考えず走り出してヘタル。ハイウェイは持続するスピードで走り、これを見せつける。この日から毎日朝の駆け足が続く。

そんな駆け足訓練のなかに、ロシア製AK47小銃をぶっ放しで、小銃の種類と飛翔経路を判断させるという無茶な訓練を、これも「臨機応変」だと、仕組んでくる。(笑) これにパワーズ少佐が嫌悪感を示す。

「そのうち熱がさめるだろう」と思っていた兵士たちの目の色が変わってくる。

訓練は駆け足から障害通過訓練、さらにサバイバル訓練へと練度をあげていく。
兵士たちは知らない間にしっかり体力が出来ていて、第1小隊と腕力勝負しても負けないようになっていた。

中隊長パワーズ少佐が行う待伏せ対処訓練で、第2小隊が対抗部隊を勤めることになった。それぞれが被弾センサーを付けての実戦的な戦闘訓練。ハイウェイは少佐が全く予期しない(シナリオにない)場所で襲撃し、中隊を全滅に追い込んだ。少佐が「訓練にならん!」と激怒したが、「臨機応変が大切だ」と譲らなかった。

突然の非常呼集。ハイウェイが慌てる兵士たちを落ち着かせ、臨機応変に対処する。実はパワーズ中隊長が仕掛けた空挺攻撃でどちらがはやく目標高地を奪取するかを争う訓練。パワーズ率いる第1小隊とハイウェイ率いる第2小隊が争ったが勝負がつかず指揮官同士の戦いにもつれ込み、ハイウェイが勝ち、兵士たちから絶対的な信頼を得た。一方、少佐との対立は深まる。

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ハイウェイは再びアギーのアパートを訪れ彼女との関係を修復しようとするが、再婚の話しを出すと泣き出し、追い出してしまう。彼女にはハイウェイが戦争に出掛けるたびに耐えられない悲しみを経験していた。

海兵隊将校・下士官のパーティー。正装での参加にハイウェイが嫌がるが、そこに突然の非常呼集。兵士たちは何度も訓練の非常呼集があったのでまた訓練かと思ったが、グレナダの米人救出作戦だった。直ちに空母に乗艦。グレナダ沖でヘリに乗り換え、海と空から上陸。医科大学に監禁されているアメリカ人を救出する任務を担当。落ち着いたハイウェイの指揮で、難なく任務を達成し安堵しているところに、パワーズ少佐から丘の上の敵陣地を偵察するよう命令ぜられた。

装甲車で攻撃してくる敵にてこずる。しかしハイウェイは敵から奪った葉巻をくゆらせ、兵士たちの戦いぶりを眺めていた。彼らは情況を的確に把握し、自分たちが何をすればいいか「自分で考える」兵士になっていた。

一時、廃ビルに小隊が蝟集して危機に陥るが、プリペイドカードで基地に航空攻撃を要請して危機を乗り越え、敵の無線基地を奪取する。パワーズ少佐がハイウェイの任務は偵察だけでこれは独断先行だと怒ってくる。そこに視察に来た大隊長メイヤーズ大佐(リチャード・ベンチャー)は情況を聴取し、ハイエウェイの行動が認められた。

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戦闘を終え航空機で帰還した兵士たち。空港で迎える家族のなかに、アギーが居るのを認めた。アギーはハイウェイの任務はこれが最期で除隊することを知っての出迎えであった。
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感想:
ベトナム戦後、徴兵制が志願制になり、好調な景気が続くなか兵士募集は難しく、この作品に出てくるように英語が話せない移民の兵士もいて、部隊練度を保つのが大変な時期であった。これにゲリラ攻撃で苦しんだベトナム戦の教訓をどう生かすかという問題を抱えていた。

こんな風潮のなかで求められたのがハイエウェイのようなベテラン兵士だった。彼らが説いたのが状況の変化について行ける臨機応変であり、自ら判断できる「判断力」「強い体力」、そして実戦的な訓練だった。ハイエウェイの生き方を通して、これらが見事に描かれたと思います。イーストウッドの好きなタイプの軍人のようで戦闘服姿がとても恰好よかった!

アギーを通して戦争の悲しみを描いています。彼女は戦場で最愛の人を失うことに耐えられずハイウェイと別れたが、もう戦場に出ることはないと確認して再婚を受け入れました。妻にとっての戦場の悲しみは「硫黄島からの手紙」(2006)、「アメリカンスナイパー」(2014)で描かれています。 
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