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映画「時をかける少女」(1983)現実と幻想の世界を行き来しながら、揺れる和子の恋心!

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今年4月10日、大林宣彦監督は亡くなられましたが、多くの人が思い浮かべるのが「尾道三部作」だといいます。そのひとつ、本作をNHKBSプレミアムで録画して観賞しました。

一度目は現在とタイムスリップの区別がよく掴めず(笑)、二回目で、時空を旅しながらの淡い思春期の恋が語られるという、2回観なければわからなというのがこの作品の肝でしょう。当時どう捉えられたんでしょうか?

監督の自由な発想と映像の色使い、時空の変化をこう描くかと驚きました。世に残る名作です!

原作は筒井康隆さんの同名S小説。脚本:剣持亘さん、撮影:坂本義尚さん、音楽:松任谷正隆さんです。

出演:原田知世尾美としのり高柳良一岸部一徳根岸季衣・高林陽一・入江若葉上原謙入江たか子さんらです。


時をかける少女ending

あらすじ(ねらばれ):
物語に入る前に、人は現実よりも理想の愛を知ったとき、それはひとによって幸福なのであろうか?不幸なのであろうか? この映画を観たあとで結論を出さねばなりません。

冒頭、夜のスキー場。スキーパレードが始まるのを待つ高校1年生の芳山和子(原田知世)と堀川吾郎(尾美としのり)。そこに深町一夫(高柳良一)が現れ星空を眺めている。パレードが始まるというのに深町のスキーがない。
帰りの列車では、菜の花を摘んいて、発車間際に乗って来る深町。そして車外の風景、車内の光景が、次第に色づいてくる。深町とは何者か?と不思議な感覚のなかで物語が動き出します。

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4月16日(土)、授業が終わって、和子は堀川、深町と一緒に実験室の掃除をする。和子が男子の堀川と深町を帰して後かたずけをしていると、薬品室で変な物音がする。部屋に入り「深町君!」と呼ぶが返事がない。フラスコが落ちて煙が出始め、気を失った。何で「深町君!」と良いんだのかは分からない。(笑)
気が付くと健康室のベッドの上。堀川はハンケチで汚れた顔を拭いてくれていた。
和子の気分が落ち着いたところで、3人で帰宅。そこに自転車が突っ込んでくると、咄嗟に“和子は堀川を庇った”。醤油屋の堀川に家で別れ、和子は深町と尾道特有の細い登り路を歩いて自宅に帰り始め、途中で堀川の祖父母に出会い、温室を見せてもらった。温室でラベンダ―の匂いを嗅ぎ、この匂いが実験室で気を失ったときの香りであることを知った。和子は通学時、この香のことを思い出す。ラベンダーの香りがタイムスリップの引き金となる。

17日、日曜日でゆっくり起きて、長い坂道を“下駄ばき”で、堀川にハンカチを返しに尋ねた。堀川は稼業を継ぐと決め醤油の味を研究していて、和子への対応は素っ気ない。和子は「醤油の匂いがした」とハンカチを返して帰った。これを見た堀川の母親が「大学に行きなさい!」という。堀川はこれを全く受け付けない。この時代、バブルの真っただ中で、醤油こそ日本文化に欠かせないものと監督の時代に対する反発だったのでしょうか!

18日(月)、和子は登校。部活の弓の練習で矢を放たないのに命中する。異変を感じて練習を止めて、途中雨の中で、あの温室の側を通っての帰宅。
その夜、地震で眼が覚め、堀川の家付近から火が出ているので駆けつけた。堀川家には被害はなく安心した。そこに深町が来ていたのでふたりで、例の坂道を家に戻り始めた。深町が、授業があるのに、「明日植物採集に行く」と言う。石が敷かれた道、瓦屋根、深い木々が深海監督の描く絵のように美しい。目を覆われ・・・・、ここで和子は目が覚めた。

「夢だったのか」と再び眠り込んだ。

登校中、堀川に会って「おはよう!」と挨拶すると、地震で瓦が落ちてくる。「危ない!」。ここで眼が覚めた。また夢か!と和子。和子の揺れる女心が見えてきます。

19日(火)の日めくりを確認して登校した和子。国語の福島先生(岸部一徳)のネクタイを褒めると「変な子!」と言われ、堀川は「地震も火事もなくお前、大丈夫か?」という。深町も学校に来ている?
授業が始まると昨日やったことばかり。部活で弓の矢を放とうとして、異変に気付いた。

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帰宅も途中、温室を通りかかったところで深町に呼び止められ、初めて深町の部屋を訪れた。しっかり靴を揃えて上がった!
幼いころの雛祭りで、騒ぎ過ぎて鏡を倒し、ふたりが傷を負った話をした。深町が出血を口で止めてくれたことを思い出す。傷が大きな伏線となります!

雛祭りの映像が、赤色を主体とした色彩で、妖気漂う雰囲気でした。

和子は「まる一日時間が戻っている」と訴えると、深町が「心配ない!」と温室に連れ出し歌を唄って、優しく励ましてくれた。

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実は18日だった

その夜地震が起きた。和子が堀川を訪ねると何事もなかった。そこに深川が訪ねていて「君の言うとおりになった」と言う。パチャマ姿の深川を見てこれは現実だと確信した。「大丈夫だ、このままで帰ろう!」と誘われ、その帰り道」で「君は超能力、テレポーテーションとタイムトラベルが同時に出来る“タイムリープ”だ」と話され、和子は怖くなって「分からな!抱いて!」と求めた。別れ際に「傷は?」と問うと「もう治った!消えた!」という。ここはとても美しい映像でした。

19日登校。途中で地震。和子は瓦が落下から堀川を守った。そして彼の右手を見た!傷があった。

深町を探して確かめたいが見つからない。温室で一杯ラベンダーの香りを喫った!すると“タイムリープ”で、海辺の岩壁で植物採取する深町に会えた。なんでこの危険な岩壁!高柳さんはこのときの恐ろしさで俳優になることを辞めたと言います。(笑)

和子は深町から「会えなくなるぞ!」と止められたが「まともな女の子になりたい!」と実験室に戻してくれるように訴えた。

ふたりは空を飛び大波に乗って、「雛祭り」や「幼いころの深町の葬儀」など過去の自分がいた場所を確かめながら実験室に戻った。

そして実験室で深町になぜこうなったのかを糺すと「自分は2660年の世界から、やってきた植物学者だ。植物が無くなっているので地球にやってきて、堀川と君の想い出を借りた。自分の気持ちに嘘はない!これまでの記憶を全部消して帰らねばならない。また会える。しかし僕とは気づかないだろう」と明かして去って行った。

その後、和子は大学薬学部に入って仕事を続け、独身でした。深町がやってきたが和子は気づかなかった。
             
感想:
現実と幻想の世界を行き来しながら、振り向いてくれない堀川と優しい深町の間で揺れる和子の恋心が面白い
この恋心を清楚で透明感のある原田知世さんが、“第1回主演”で初々しく演じるのですから、当時の若い人には堪らなかったでしょうね!(笑)

現実と幻想の境目が分からず観る人が混乱するという演出が面白かった。そっして、現実に戻る際の奇想天外が映像に驚かされました。まるで湯浅政明さんの奇想天外なアニメ映画作品を観ているようでした。(笑) 最近の戦争三部作しか観ていませんが、これに引き継がれているようで、創作エネルギーの凄さに驚いています。 

理想の愛を知ることは幸福か不幸の結論ですが、この作品は「現実をしっかり見つめなさい」というように受け取りました。理想ばかり追うと結婚はできません。幸せは結婚してからふたりで作って行けばいいのではないでしょうか。

さて、当時の皆さんはどう受け止めたのでしょうか?

尾道の密集した古い家屋、路地、坂道、神社を、決して名所を使っていませんが、坂道を上下する度に時を駆けているようで、作品の謎めいた雰囲気がよく出た作品だと思います。登場人物の行動を含め、バブルに警鐘を鳴らしていた!

冒頭で出てくる桜は尾道の名物、来年は桜の千光寺を訪れたいと思っています。
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