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「ヒトラー 最期の12日間」(2004)この狂気に我々は関係ないのか?

終戦記念日に観ようと取り貯めていたもの。NHKBSで放送されたものです。

1945年4月のベルリン市街戦を背景に、ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーの総統地下壕における最期の日々を描くというもの。狂気のヒトラーを核に周囲の国防軍軍人や親衛(SS)隊員の行動とその末路、戦火に巻き込まれ混乱するベルリン市民の姿が描かれています。

ドキュメンタリーのように史実が丁寧に描かれ、ヒトラーの秘書(実在)の告白という形でプロローグとエピローグが入ることで、この作品の意義が問われるというメッセージ性のある作品になっています。

原作:ヨアヒム・フェストによる同名の研究書、およびヒトラーの個人秘書官を務めたトラウドゥル・ユンゲの証言と回想録「私はヒトラーの秘書だった

監督:オリバー・ヒルシュビーゲル、脚本:ベルント・アイヒンガー撮影:ライナー・クラウスマン、美術:ベルナント・ルペル、音楽:ステファン・ツァハリアス。

出演者ブルーノ・ガンツアレクサンドラ・マリア・ララ、コリンナ・ハルフォーフ、ウルリッヒ・マテス、ウルリッヒ・ノエテン、ユリアーネ・ケーラー、ハイノ・フェルヒ、クリスチャン・ベルケル、マティアス・ハービッヒ、トーマス・クレッチマン、他。


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あらすじと感想

プロローグ

ヒトラーの個人秘書であったトラウドゥル・ユンゲ(2002年死去)の「夢中で秘書の依頼を受けた。ナチでもなかったから断ることもできた。好奇心に動かされ愚かにも飛び込んだ。今も自分を許せずにいる」と回想があって、本題に入ります。

1942年11月、トラウドゥル(アレクサンドラ・マリア・ララ)は東プロイセンのラステンブルクにある総統大本営で、ドイツ総統アドルフ・ヒトラーブルーノ・ガンツ)自ら行う秘書採用試験に合格した。ここから一気に1945年4月に飛ぶ。

1945年4月12日、ソ連のベルリン空襲が始まりヒトラーは激怒して「空軍は全員首だ!」と怒りを露わにした。(笑)

420日ヒトラーの誕生日。ベルリンの総統地下壕でゲーリング国家元帥をはじめ国軍、SSの高官、閣僚の祝いを受けた。

そこでSS長官ヒムラーが「連合軍と交渉だ、自分には自信がある」とヒトラーに申し出たが、ヒトラーはこれを無視。最も信頼を置いている軍需大臣のシュペーア(ハイノ・フェルヒ)に首都改造モデル(ゲルマニア計画)を前に「次はこれだ!」と話しかけると、シュペーアは「先ずは避難だ!」と勧めが、ヒトラーは断った。

ヒトラーは参集者を会議室に集めて、地図で部隊を示しながら「シュタイナー師団と第9軍団で挟撃させる!」と将軍達に発破をかけた。将軍たちは「ヒトラーは紙の上の軍隊しか知らない」と嘲笑していた。

ヒトラーに作戦の細部まで介入されたら将軍たちの出番がない!失敗した場合の叱責が怖い!これが作戦がうまくいかない要因!ロシア軍のウクライナ攻勢初期におけるプーチンの作戦指導もこうだった。

このころの市街の状況はソ軍の空爆のほかに砲弾射撃を受け、偵察戦闘車両が出現。市民は避難を開始。現場ではSS防衛隊、ヒトラー・ユーゲントが駆り出されて配備についていた。幼いユーゲントの姿が痛ましい。ヒトラーが地下壕から出て、彼らに勲章を渡して激励!

指揮官はモーンケSS少将(アンドレ・ヘンニッケ)。負傷者の多発に薬品不足を司令部に要求するが返事がない。逆に「罷免!」と言い出される。(笑)ヒトラーに会おうにも副官たちに阻止されて会えず、ヒトラー付軍医のシェンクSS大佐(クリスチャン・ベルケル)に薬品を要求して指揮所に戻った。シェンクが薬品を持って病院に出向くと、ゲシュタポによって男性患者は全て殺害されていた。軍の規律が混乱していた。

夜、ヒトラーの愛人エヴァ・ブラウンユリアーネ・ケーラー)の合図でダンスパーティーが始まった。ヒムラーヒトラーの恋人・エヴァの義弟ヘルマン・フェーゲラインSS中将(トーマス・クレッチマン)に「お前の姉の縁で、ヒトラーに去るよう助言しろ!」と耳打ちした。そこにソ軍の砲弾が落下し爆煙で大混に乱陥った。

トラウドゥルら女性はヒトラーの言う「シュタイナー師団と第9軍団の攻勢」を信じていた。

4月22日ヒトラー国防軍司令部の作戦会議を指導。クレープス陸軍参謀総長(ロルフ・カニース)が「シュナイター師団は兵力不足!」と異議を申し出ると、「カイテル(陸軍元帥)、ヨーデル(陸軍上級大将)、グレープス(陸軍大将)、ブルックドルフ(陸軍大将)の4名は残れ!」と命じ、作戦会議を解散した。「主ナイターに攻撃させろ!命令に背くとはけしからん!」と叱責。さらに「将軍どもは負け犬だ。ドイツ人のクズだ!陸軍はわしの邪魔ばかりする。スターリンのように将校を大粛清しておけばよかった」と激しく攻撃した。さらに「この戦争は負けだ!ベルリンを去るぐらいなら頭をぶち抜く!」と言い捨てて、秘書たちの部屋を覗き「お終いだ!1時間後に飛行機が出るから支度しろ!」と言って自室に戻っていった。ヒトラーが去ったあと、将軍たちが「本心ではないだろう」と言い、ゲッベルス宣伝相(ウルリッヒ・マテス)が「降伏はない!」とヒトラーの代弁をした。

夜になるも砲撃が続き、逃げ惑う市民。こんな中でゲシュタポが「脱走兵だ!」と市民狩りが始まる。シェンクが避難所に薬品を届けに訪れると、避難民、患者で溢れていた。シェンクは内科医だが、ここでハーゼ博士(SS中佐)の手術を手伝うことにした。

エヴァに義弟ヘルマン・フェーゲラインエヴァに「逃げろ!」連絡したのち、姿を消した。

ゲッペルスの妻マグダが6人の子供を連れてヒトラーを訪ね、歌を唄ってなぐさめた。ヒトラーは「ヒムラーが置いていったものだ、あげるものはこれしかない」と劇薬をマグダに渡した。

4月23日

秘密文書の償却が始まった。エヴァが妹あてに遺書を書いた。トラウドゥルも遺書を準備した。

ヒトラーカイテルに「今夜中に発て!デーニッツ元帥の元にゆき立て直しを図れ!」と命じた。

ヒトラーの動きを察したゲーリングから総統権限の委譲要求の電報が入った。ヒトラーは激怒し「成り上がりのクズ、空軍は失敗ばかりだ、処刑に値する!」と空軍総司令官職を罷免した。さらに軍需大臣のシュペーアが離職を申しでてきた。ヒトラーは「ドイツと世界のめに壮大な計画があった。公然とユダヤに立ち向かったのはよかった。ドイツを浄化できた。死ぬのは一瞬だ!」とシュペーアを責めず「さらばだ!」と涙を見せた。

シュペーアはマグダを訪ね「子供と一緒に逃げろ!船が準備してある」と告げたが、マグダは「非ナチの社会で子供を育てたくない」と断った。エヴァを訪ねると彼女は「ヒトラーのために残る。私は怖くない!」と言った。

4月26日、空路でソ連軍の包囲網を突破し、グライム空軍上級大将(ディートリッヒ・ホリンダーボイマー)と空軍パイロットのハンナ・ライチュ(アンナ・タールバッハ)が地下壕にやってきた。ヒトラーは喜んだ。グライムを直ちに空軍総司令官に任命した。グライムを囲み側近8人で食事中に「ヒムラーがリューバックで連合軍と和平交渉を行っている」という報告が入ってきた。ヒトラーは激怒し、ゲッペルスに「グライムとともにデーニッツ元帥の元に飛べ!ヒムラー処罰のためあらゆる処置を取れと伝えろ」と命じた。そしてエヴァの義弟フェーゲラインを逃亡罪で逮捕するよう命じた。エヴァヒトラーに助命を願ったが、フェーラインは捕らえられ殺害された。

4月27日ヒトラーは再度国軍作戦本部に攻撃を命じた。グレーブスが「2万の若者が亡くなっている」と状況説明すると「それが若者の使命だ!」と取り合わなかった。ヒトラーはトラウドゥルを呼び出し「政治的遺言」をタイプさせた。「1914年兵となり30年が過ぎた。私の心は国民への愛と忠誠に動かされてきた。何世紀が過ぎても戦争責任を負う者への増悪が再生するだろう。ユダヤ民族と支持者どもだ・・・」。

4月29日、ヒトラーエヴァと結婚式を挙げた。モーケンが「敵は100m先、持ち答えられるのは20時間が限度だ!」と伝えてきた。カイテルが「12軍は反撃能力がなく9軍は包囲された」と伝えた。ヒトラーは副官のギュンシェSS少佐(ゲッツ・オットー)を呼び、「自殺後の遺体を焼却し敵に渡さないよう」厳命した。

ハーゼ博士を呼び「毒薬の使い方」を確認し、愛犬プロンディでテストして、確実に死ねるとことを確認した。

トラウドゥルはエヴァに呼ばれ「15年付き合ってもて、ヒトラーのことは何もわからない!犬と菜の話ばかり。ブロンディが憎たらしい!あの犬を蹴ると彼は異変に気付くのよ」(笑)と言い、「逃げなさい!」と言い形見のコートを渡された。

4月30日ヒトラーは側近ひとりひとりに別れの挨拶をしてエヴァと自室に入った。ゲッペルス夫人マルダが「逃げてください!」と訴えたが、「人は私を呪うであろうがそれも運命!」と部屋に消えていった。ふたりの遺体は庭に運び出され、ガソリンで焼却された。

市街ではゲシュタポによるボリシェヴィキ狩りが始まり、男たちが吊るされていた。

5月1日参謀総長クレープス大将はソ連軍のチュイコフ上級大将と停戦交渉を行うが、「無条件降伏以外は認められない」と返答され、交渉は失敗に終わった。ヒトラーの遺言で新政権の首相に就いていたゲッペルスは「総統に逆らう者は処刑する」とこれを拒否した。

マクダがハーゼ博士からもらった劇薬で子供たち全員を葬ったゲッペルスは遺言「虚偽はいつか消え、再び真実が勝利する。その時こそ我々の地は清らかで完璧になる」とトラウドゥルにタイプさせた。

壕ですべき仕事は終わったとトラウドゥルたちは壕からの脱出を準備し始めた。準備を見届け、クレープスとブルクドルフが拳銃自殺した。

壕の外では軍の街宣車が首都防衛司令官名で「総統は亡くなった。総統の命令で抗戦し続けてきたが武器弾薬が尽き、これ以上の光線は無益である。即時戦闘を中止する」を流していた。

ゲッペルスはマクダとともに自決し、その遺体は焼却された。

夜、トラウドゥルはモーンケらに導かれ、壕を脱出して集合場所に移動した。ここでソ連軍に包囲されて、コーンケらは降伏するが、トラウドゥルは親のない少年とともに自転車で包囲網を突破した。

1945年5月7日、ドイツ軍は5月8日2400全戦闘終結で合意した。

エピローグ

ニュールンベルグ裁判で悲しい話を耳にした。600万人のユダヤ人や人種が違う人々が無残に殺されたと大変ショックでした。私には結びつけられず、私には非はない。ある日犠牲者の銘板を見てゾヴィーショルの人生が記されていた。私と一緒に秘書になって処刑されたと。そのとき私は気づいた。若かったということで言い訳にならない。目を見開いていれば気づけた

まとめ:

エピソードが沢山で書き切れない!信頼するベーリングヒムラーに裏切られ、シュペーアに去られ、ソ軍の反撃に追い詰められたヒトラーのすさまじい狂気が描かれていた。「この狂気に我々は関係ないのか?」プロローグで問題を投げかけ、エピローグで絞め括った演出はよかった!

総統地下壕でヒトラーが地図上の幻の軍を見つけ将軍たちに攻勢を催促し、将軍達を罵倒する。一方で壕外では市民がソ軍放火に晒され逃げ惑い、傷つき、あるものはゲシュタポに追われて木に吊るされている。「何のための戦いか?」と壕の内外を対比させた描写がとてもよかった。特に市街戦の様相がうまく描かれ、戦場の悲劇が伝わる映像になっていた

ゲッペルスの妻マクダが6人の子供たちを毒殺する際、長女のヘルガ(13歳)が薬を拒むシーン。狂気の極みでした。

ヒトラーを演じたブルーノ・ガンツが居並ぶ将軍たちを罵倒、あるいは裏切りのゲーリングヒムラーに向けて吐く狂気の毒舌がまるでヒトラーでした。(笑)自殺すると腹が決まってからの、毒気が消えた演技もよかった。シュペーアとの決別でヒトラーの涙を見るとは思わなかった!

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「長崎の郵便配達」(2021)タウンゼンド大佐を知るものには、何十倍にも増幅される反戦の願い!

私は“タウンゼンド大佐”と聞けばピンとくる世代の人間です。(笑)という訳で、この作品はことのほか心打たれました!

1950年代の話、タウンゼンド大佐は第2次大戦中、英空軍のパイロットとして英雄的な活躍をし、退官後はイギリス国王の侍従武官となり、エリザベル女王の妹マーガレット王女と恋におちたが、実らなかった。この恋は「ローマの休日」(1953)のモチーフになったというからびっくりです。

この失恋を癒すために世界を旅して小説家となり、「戦争体験から戦争は無くなって欲しい」という想いから「小説家には証言する義務がある!」と長崎を訪れ、少年郵便配達員・谷口稜曄さんをインタヴューして上梓したのが「長崎の郵便配達」(1984)。タウンゼンド氏は1996年、80歳で亡くなられています。

同じような不運の中で、タウンゼンド氏が「原爆被害を通じて」、ダイアナ妃が「地雷被害を通して」“戦争廃止”を訴えるという、この繋がりに運命を感じます!

タウンゼンド氏と谷口さんの出会いは1982年。谷口さんは2006年長崎被災協会長に就き、2017年8月30日に急逝されましたが、谷口さんの強烈な反戦意思にはタウンゼント氏の支えがあったように感じます。

監督:川瀬美香さん。「長崎の郵便配達」を復版したいという谷口さんの願いを叶えようとした本作の仕掛け人です。構成:大重裕二、撮影:川瀬美香、編集:大重裕二、音楽:明星/Akeboshi

出演者;イザベル・タウンゼンド(タウンゼンド氏の娘さん)、谷口稜曄(映像)、ピーター・タウンゼンド(映像と音声)、その他。

小説家タウンゼンド氏は長崎で被ばくした男性・谷口稜曄さんを取材し、1984年にノンフィクション小説「THE POSTMAN OF NAGASAKI」を発表した。谷口さんは16歳の時に郵便配達中に被ばくし、その後生涯をかけて核廃絶を世界に訴え続けた。

映画ではタウンゼンド氏の娘で女優のイザベル・タウンゼントが2018年に長崎を訪れ、著書とボイスメモを頼りに「何故父は谷口さんの体験を綴ろうと思ったのか?長崎で何を感じたのか?」を紐解いていく物語です。


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あらすじと感想

2018年8月、イザベルが撮影のため長崎にやってきて、鳥岩神社公園から長崎の街を見下ろしながら、「父が何故ここにやってきたか、父がここで見たものを見にやってきました」と話すシーンから物語が始まります。

イザベルがこの作品に出演することになったわけ、監督の川瀬がこの作品を製作する動機が、交差しながら描かれます

イザベルは「川瀬との出会いが、作品への出演になった」と言います。イザベルは父に「THE POSTMAN OF NAGASAKI」という作品があることは知っていましたが、読んではいなかった。しかし、谷口さんの記憶はあった。それは1985年にフランスのTV番組にふたりが出演して、谷口が服を脱いで背中を見せたこと

「この傷でどれほどに苦しかったか」と会って話を聞きたいし、父との出会いなど沢山聞きたいと思っていた。川瀬から話があり、「何かが起きる!」と思ったと話します。

“谷口さんの背中の傷“、これがこの作品を、いや、世界の世論を動かす力になっています。

イザベルは父の遺物を捜していて、谷口をインタビューしたカセットテープを見つけた。1982年平和公園でのセレモニーの録音でしたが、会場の状況を吹き込んだ父の声を23年ぶりに聴き「父がそこにいる!」と感じ、川瀬監督にこのテープを送り「ストーリーが決まった!」と言います。

テープで初めてタウンゼンド氏の声を聴き、「これがあのタウンゼンド大佐の声!」と震えましたが、柔らかい声で、「状況観察が細かい人だ」という印象を受けました。

2015年4月、核兵器不拡散条約検討会に「70年前の出来事。二度と起こさせてはならない!」と出席を決めニューヨークに赴く谷口に川瀬は同行した。谷口は演壇で「1946年1月の写真です」と背中の火傷を治療している写真を提示し「原爆を受け、3年7カ月の闘病生活、1年9カ月臥せったので床ずれで肋骨の向こうから心臓の動いているのが見える。こんな状態で生きてきた!」と原爆の恐ろしさを訴え、参加者に大きな感銘を与えた。川瀬はこの状況を見て「やれる!」と思った。ところが2017年8月30日、谷口さんが急逝した。

川瀬は「これでは撮れない!」と悲嘆していた。そこに、イザベルからタウンゼンドの取材テープが送られてきて、「これでやれる!」と決まった。川瀬はフランスを訪れイザベラに会い「タウンゼンドも谷口もここにいる。映画になることを喜んでいる。準備はできた!」とふたりで喜んだ。

ここから、冒頭のシーンに繋がり、イザベラが父タウンゼンドの著書をなぞり、特にボイスメモに耳を傾けながら、谷口が生活した稲佐山への階段、その頂上にある鳥岩神社、そして被ばくした周辺などを訪ね歩き、父がここにきたわけ、父の想いを知る旅が始まります。

稲佐山200段の階段を登り鳥岩神社に出て、谷口が住んでいた家を訪ねた。お盆の準備ができた仏前に手を合わせ、そこで父が谷口に贈った色紙を見た。そして父が語る若き谷口の郵便配達員の姿を耳にした。「14歳で、赤い自転車で郵便を配達するのだが、身体が小さいためペタルに足が届かず苦労し、坂道は担いで登った」という。階段に手作りの灯篭を置いて仏を迎えますが、イザベラも灯篭作りを手伝った。ひらがなで“だいすき”と書いた。灯篭の灯が“平和”を照らし出していた。

長崎のお盆行事が美しく描かれ、この映像だけでも、如何に日本人が平和を願う国民であるかが分かります。

ここで、タウンゼンドのインタビューに通訳として参加した田崎昇さんが訪ねてきた。田崎さんは流ちょうな英語で「谷口は口が重い人だったからもっと聞きたかったかもしれない、タウンゼンドさんは辛抱強い人だった。ときどき訪ねてきていたからコミュニケーションは取れていたと思う」「タウンゼンドさんはレコーダーで自然の音、小鳥のさえずりを録音し、花の香が好きだった」と話すと、父の想い出が一気に噴き出したイザベラが涙を見せた。

爆心地公園。父のナレーション「当初の目標は小倉だったが、悪天候で長崎に変わった」を聞いて、イザベラはここに立ち、B-29による原爆投下シーンをイメージし「ほんの一瞬で多くの命を奪った!何十年も、何世紀にもわたって。ここで起こったことがよく理解できなければならない」と思った。焼けただれた石垣を見た。

住吉商店街を歩き住吉神社。谷口が郵便配達のために自転車で走っていて被爆した場所。

イザベラは「三菱女子寮に手紙を届けるために走っていた。まばゆい閃光、すざましい轟音の中で自転車は空を飛び、白いものが降ってきた。さっき見た子供たちだった。背中に大火傷、左腕の皮膚が垂れ下がっていた。徒歩で三菱魚雷工場へ避難すると多くの人が集まっていて、皮膚が垂れ下がった女の子が「切って!」と叫び、油を体に塗っていた。30分後、「空襲がある」と男に連れ出され近くの山へ避難し、2晩過ごした。雨の夜、葉っぱで集めて飲んだ。人々は次々と死んでいった。30人の中で唯一の生存者だった」という父の文章を思い出していた。

長崎原爆資料館。イザベラはここで少年が臥せって火傷の治療を受けるビデオを観た。すぐに谷口だと分かった。そして涙が出てきた。

2015年に起きたパリの同時多発テロ事件の際、130人が亡くなり、「母として子供たちにどんな世界を残したいのか、このままでは人類は滅びる」などと不安に駆られていたところに川瀬が父の本を携え訪ねてきたことを思い出していた。

路面電車浦上天主堂、永井博士の記念館など、父が見た光景を辿った。

浦上天主堂爆心地から800m、キリストが初めて原爆に遭遇したところ、何千人もの死体が教会の周りにあったという。ミサに参加、被爆のマリアに会った。

司教が「この周辺には12000人が住んでいたが8450人が亡くなった」と言い、「自分は母の胎内で被爆した。被爆した女性は結婚できなかった。偏見ですよ!」と言った。

被爆した女性は結婚できなかった」が気になり、父の本でどう書かれているかを調べた

谷口に結婚したが満足な子が生まれるかととても心配したが、ふたりの健康な子供に恵まれた。子供たちを海に連れていって泳がせようと裸になったとき、子供たちが泣き出した。母親の英子が「お父さんが海に向かえば、原爆の恐ろしさが分かる。苦しんでいる何万人もの被爆者がいる」と説明したという。谷口はありのまま受け入れて生きてきた。

2015年4月、核兵器不拡散条約検討会の演壇で谷口が「原爆を1発も残してはいけない。廃絶を世界に訴えましょう!ノモアヒロシマ、ノモアナガサキ、ノモアウオ」と訴えた理由だと感じた。

「普通の父が未来のために戦った。父の愛が私を長崎に導いた。貴方が伝えたかったことがよく分かった」とイザベルは本を閉じた。未来を信じイザベルは父と谷口の道のりを辿ろうと考えた。

鐘楼流しの日、谷口を黄泉の国へとおくった。

父がなぜ長崎に行ったかが分かった。私自身が郵便配達員になって、次の世代に伝えるメッセージがある

イザベラはフランスに戻り、谷口の被爆体験を、子供たちに演じさせる体験してもらうという、お芝居にして公開した。

まとめ

娘イザベルが亡き父タウンゼンドが何故長崎に行ったかを探る中で、父親の愛を感じるとともに父の残した反戦への志を受け止め、自らが反戦の郵便配達員となるという、押しつげがましい反戦映画でないところがいい。タウンゼンド大佐を知るものにとっては何十倍にも増幅されて伝わってきました。というわけで、少し感想文も長くなりました。(笑)

父と娘の絆の話としても感動できますね!

谷口さんが「復版したい!」という気持ちがよく分かり、タウンゼンド氏のボイス案内と文章で現地を確認する中で、日本の優しさや美しい風景がイザベラの心をほぐし父の想いを知るといううまく描かれた作品でした。

背中の傷で反戦を訴える谷口さんの話。これをマーガレット王女との悲恋で世界中に知られているタウンゼント大佐が一緒に立ち上がったというのが何とも力強い。すばらしい友情物語でした。ローマの休日がこんなに繋がる話になるとは思いませんでした。復刻版を楽しみにしています。

今年8月9日、NHKの朝のニュースで「長崎の郵便配達」のウクライナ語とロシア語版の復版が進んでいると報じられました。ロシアによるウクライナ侵攻で核兵器の脅威がより現実的になっている今こそ、急がれる事業だと思います。

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「クーリエ 最高機密の運び屋」(2020)キューバ危機を救ったのはケネディ?

クーリエとは運び屋のこと。1962年のキューバ危機ではケネディ大統領の強いメッセージでソ連キューバへの核ミサイル配置は阻止されたが、その裏にはソ連の情報員の情報を運んだ男がいた。この男の物語です。

NHKBS世界のドキユメンタリー(「“核”の内幕 第3回 モスクワからの使者~キューバ危機の真実~」)で観て興味を持っていたところにこの作品、WOWOWで鑑賞しました。

監督:ドミニク・クック脚本:トム・オコナー、撮影:ショーン・ボビット、美術:スージーデイビス衣装:キース・マッデン、編集:タリク・アンウォー ギャレス・C・スケイルズ、音楽:アベル・コジェニオウスキ。

出演者ベネディクト・カンバーバッチ、メラーブ・ニニッゼ、レイチェル・ブロズ、ジェシー・バックリー、アンガス・ライト、他。

1962年10月アメリカとソ連の対立は頂点に達し、キューバ危機が勃発。英国人セールスマンのグレヴィル・ウィンベネディクト・カンバーバッチ)は、スパイの経験など一切ないにも関わらず、CIAとMI6の依頼を受けてモスクワへと飛ぶ。そこで彼は、国に背いたGRU(ソ連参謀本部情報総局)の高官ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)との接触を重ね、機密情報を西側へと運び続けるが……という展開。

ハラハラドキドキのシーンもありますが、ミステリーやアクションで見せるスパイものではなくソ連人と英国人の国境を越えた友情で見せてくれるヒューマンドラマです。この友情がなかったらキューバ危機は危機でなく戦争になっていた!

核使用をチラつかせながらのロシアのウクライナへの軍事侵略したことで、核抑使用の現実性が叫ばれるようになったが、過去を振り返ってみると、こんな際どいことで核使用を押し止めたという史実にぶち当り、あらためて核使用の現実性を考える作品になっています。

捉われたウインは過酷なKGBの尋問を受ける。カンバーバッチがすさましい体重コントロールでこの役を演じてくれます。ここも見どころです!


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

1960,08.12、モスクワ。「帝国主義者の時代はじきに終わる。連中は虚勢を張り我々を脅しかけている。だが連中こそ怯えている。我々の核の威力は日々増大の一途である。連中を必ず叩きのめしてやる」というフルシチョフの演説を聞いたペンコフスキーは、「これは脅しでない!」と判断、核ミサイルの写真を同封した封書を、アメリカの観光客を使って、アメリカ大使館主席公使に届けた。

フルシチョフの演説がプーチンの演説に似ているのが気になる!

これを受けて、CIA諜報員ヘレン(レイチェル・ブロズ)はM-16の諜報員ジェームス(アンガス・ライト)を伴ってM-16を訪ね「CIAにはロシアに適当な諜報員がいない!運びが仕事だから適当な人を」と協力を求めた。

CIAでは「ペンコフスキーは砲兵大佐で先の大戦で13回の表彰を受けるほどの人物で、フルシチョフに近づけつる人物。トルコで一緒に写真を撮ったことのあるコード名“アイアンバーグ”、今は科学委員会代表で、実際はGRU」と把握していた。

M-16は「プロの諜報員より目立たないセールスマンがいいだろう」と商務省に出入りする東欧と取引のある男ウインを紹介した。

この役を聞かされたウインは渋ったが「大酒飲みで体が緩んだ男が最適だ!」と励まされ、ソ連と取引ができるかもと引き受けた。(笑)

ウインはモスクワ空港で厳しい検査を受けてロシア入り。ソ連科学院で「西側の最高の機械メーカーを紹介します!」と売り込みをした。そこでペンコフスキーに誘われてレストランで食事。

ペンコフスキーは「コード名!アレックス“だ」と明かし、ウインの会話が諜報員らしくなく酒に強いことを確認して、ボリショイバレー団の公演に案内した。フルシチョフも見物にきていて、ペンコフスキーに気付いたが、何の反応も示さなかった。ペンコフスキーは劇場を出て、街を歩きながら「貿易使節団としてロンドンに招いてくれ!」と要求した。

アレックスは“情報の運び屋はこいつだ“と気にいった。

ウインはロンドンにやってきたペンコフスキーをクラブに案内し、妻シーラ(ジェシー・バックリー)にも会わせ、派手に踊ってもてなした。その後、アレックスをジェームスとヘレンが待つ部屋に巧みに誘導した。

アレックスは「フルシチョフは本気だ!」と証拠に機密誌“軍事思想”を提示した。そして「必要なときには家族を亡命させて欲しい」と申し入れした。CIAはこれを受け入れた。アレックスは「ソ連核兵器は米国より遅れている。第1撃能力は無く、壊滅的打撃力はない」と証言した。ヘレンは「これで戦争を思い止める理由になる」とこの証言に注目した。

ヘレンはウインに「ペンコフスキーが望んでいるから」と引き続きペンコフスキーとの接触役を依頼した。

ウイルは拒絶した。ところが夜、ペンコフスキーが息子へのプレゼントを携えて訪ねてきた。家族と一緒に飯を食べ、運び屋をやってくれることを頼んだ。ウイルは受け入れた。

ウインは度々モスクワを訪ねペンコフスキーと接触し商談と装って、情報を運んだ。ペンコフスキーから「モスクワは全てKGBに監視されていると思え!女房には嘘ついておけ!」と注意されているので、ウイルの行動に007のようなアクションはなくても、ヒヤヒヤさせられ、リアルなスパイものになっています。

ソ連によるベルリンの壁が閉鎖、50メガトン核弾頭の成功が伝えられる中で、ウインはペンコフスキーから核弾頭資料が渡された。このときペンコフスキーから「万一の場合、妻子を保証してくれ!」と乞われ、「政府として約束する!」と答えた。

ウインは空港で周りの監視をきつく感じ、機内で吐いた。家に帰りつくと妻のシーラを激しく求めた。そして体力をつけるようトレーニングを始めた。シーラは「浮気が始まった?」と怪しんだ。ウインの最大の敵はシーラだった!(笑)

フルシチョフが、キューバにミサイル拠点を作ることに批判的な意見に対して、「アメリカに付け入る拠点にできる」と指示する現場にペンコフスキーが居合わせた。

この情報にCIAはペンコフスキーに確証を求めた。ペンコフスキーは秘密資料室に入り、資料を漁り、「キューバにおける核ミサイル配備計画」をカメラに撮り、フィルムをウインに渡した。

ウインはこれをイギリス大使館のトイレでM-16に引き継いだが、彼は緊張のあまり吐いた!どんどん追い詰められていった。

ウイルがモスクワの部屋に入ると、机の上に置いている英露辞書の向きが違う!ウインはKGBに狙われていると感じた。一方、ペンコフスキーもKGBのグリサバフに狙われていると知った。その直後、毒を盛られ入院した

このあたりの状況は現在と同じですね!

1962.10.14米軍の偵察機U-22キューバ上空を飛行してペンコフスキーの情報が正しいことを立証した。

1962.10.23、これに基づき、ケネディはTVで「確実な証拠により、ソ連は攻撃用ミサイル基地をキューバに建設していることが判明した。アメリカは西緩急のいかなる国に発射されてもソ連アメリカへの攻撃とみなし、総力を挙げて攻撃する」と発表した。

ペンコフスキーはロンドンの見本市参加が、貿易省から取り消しになったことで「逮捕される!」とウインに電報を打った!

ウインはジェームスとヘレンにペンコフスキー家族の亡命を求めたが、ジェームスは「プロは人を利用するのはあたりまえ!」と反対した。ウインは「ペンコフスキーを見捨てることができない。自分が亡命計画を伝え行く」と言い出し、これにヘレンが同行することになった。

ウインとヘレンがモスクワに飛び、ヘレンが大使館員と脱出計画を練った。その計画をウインがペンコフスキーに渡し、ふたりはボリショイバレーを見て、涙を流しながら別れを惜しんだ。

ここからのペンコフスキーの脱出劇は、スパイ映画らしくサスペンスフルに描かれますが、失敗。ふたりはKGBに逮捕された。ヘレンも捕まったが、外交官特権で国外追放となった。

搭乗機から降ろされたウインはKGB拘置所に直行、素っ裸にされ尻の穴を調べられ、髪を刈られ、便器しかない牢に放り込まれた。髪の件を除けば今の警察のやり方と同じ。ウインは「ペンコフスキーが何を喋ったかしらないが、俺はセールスマンで頼まれたものを運んだだけだ」とこれ以外何も話さなかった。決してKGBが作った調書にサインしなかった。ウインは次第に痩せ衰えていった。

妻シーラをジェームスとヘレンが訪ね「ご主人は勇敢だった。親戚友人に決してスパイだと話さないで欲しい。いつか救出する」と伝えた。シーラはウインがモスクワで浮気していると思っていたから驚いた!(笑)

半年後、ヘレンが面会に牢を訪ねた。痩せたウインを見て驚いた!守衛が制するのを無視して「キューバからミサイルは撤去された!」と伝えた。ウインは深い感動を味わった。

KGBはペンコフスキーをウインの牢に入れ、ふたりの会話からウインがスパイであったことを立証しようとした。

ペンコフスキーは「全部話した。君は荷物の中身を知らない。世界を平和にしたかったが、こうして国や同胞を裏切ったことが無念だった!」と泣いた。ウインは泣きながら「フルシチョフは核を撤去した。君のお陰だ!君は偉業を成し遂げた!」と告げていると守衛がペンコフスキーを連れ出した。

1964.2.22、ウインは捕虜交換で帰国したペンコフスキーは処刑され、その家族はモスクワで静かに暮らしていた。

まとめ

ペンコフスキーとウインで持ち出した秘密資料は5000件以上というからこれは凄い!それも全く素人のウインが絡んだスパイ事件というのが驚きだった。

007ストリーと違って、こちらは環境の雰囲気や登場人物の吐くセリフの中に恐怖を感じるという、リアルなスパイ映画でした!

当初、運び屋ウインの行動が、妻のシーラを絡めて、ユーモアたっぷりに描かれますが、次第に恐怖に襲われるようになり、最期は牢の中での過酷なシーンへと変わっていく物語。状況が悪化するほどにウインとペンコフスキーの友情が強く結ばれ、モスクワのバレー劇場での涙の別れ、そしてペンコフスキーが「ソ連キューバから手を引いた」ことを牢の中でウインから聞かされるというラストシーンは感動的でした。

牢に入ってからのカンバーバッチの痩せ衰えていく演技は凄かった。体重を落とすために3か月間撮影を中断したと言いますが、役者根性を見た思いでした。

作品全般を通してみると、スパイ映画はアクションがないと映えませんね!(笑)核の問題が論じられる今、うまい具合に観ることができた作品でした。

               ****

「メインストリーム」(2021)“いいね”は猛毒!

人気YouTuberへと駆け上がろうとする若者たちの野心と狂気を描くという今時の作品、アンドリュー・ガーフィールドが主演を務めている作品ということで、WOWOWで観ました。

監督ジア・コッポラ、脚本:トム・スチュアート ジア・コッポラ、撮影:オータム・デュラルド・アーカポー、美術:マシュー・パーカー、衣装:ジャッキー・ゲッティ、編集:グレン・スキャントルベリー、音楽:デボンテ・ハインズ。

出演者アンドリュー・ガーフィールド、マヤ・サーマン=ホーク、ナット・ウルフ、ジョニー・ノックスビル、ジェイソン・シュワルツマン、他。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

ロサンゼルスで暮らす女性フランキーは、寂れたコメディバーで働いていた。店主には子細なことで叱られ、アパートに戻っても話す相手もいない人の温かみを感じない生活の中にいた。唯一の慰めは映像作品をYouTubeで公開することだった。

ある日、街を撮っていて、熊の縫いぐるみでチーズの宣伝をするリンクがフレームに入った。彼に「何を撮った?」と聞かれ、「あの広告!」と指さすと、彼がその広告紙を壁から外し、通りかかる人々に「アートを喰え!アートを喰え!」とパフォーマンを見せると大変な人だかりができた。この映像をYouTubeにアップロードするとこれまでつかなかったナイスとコメントがついた。もうびっくり!

リンクは定職を持たない何でも屋。老人の車椅子押し、車のウインドウ拭き(1ドル)、子供の遊び相手等。親は亡くなったとしか言わない。スマホ嫌いだった。そんな彼に誘われ中国料理を食べたが、彼の話とパフォーマンスが面白かった。

ガーフィールドの演技がめっちゃめっちゃ面白い。ふたりがテーブルの下に隠れて話すシーンは笑える!そんなリンクをアパートに連れてきて聞く話「今は誰でもダメ人間だ。誰も居心地が悪い、ブチ切れているんだ。中には人間でなく動物だと思っているやつがいる。身体を間違えて猫だと思っているやつにスニーカーを宣伝してもムダだ!」。

フランキーは「彼は話術の天才だ!」と、バーの同僚で歌手のジェイクを誘って、YouTubeを作ることにした。ジェイクは「7歳の姪はYouTuberが子守代りだ!中身のないYouTuberを神だと崇めている」と参加することになった。(笑)

簡単で安く作れるものと、#糞みたいな日常、#カクテル、#パイナップルなどリンクの喋りとパフォーマンスでアップロードすると、どんどんナイスが増えて、YouTuber“ノーワン・スペシャル”となった。結構SNSの軽率さを突いているとは思ったが、これが面白いとは思わなかった。が、リンクは「俺は生まれ変わった!」と真っ裸で街を歩く。(笑)これは大傑作でした!(笑)

これに目をつけたのが売れっ子YouTuberのファンパ。リンクとファンパの共演が実現して、リンクの「明日の夜、フォーストーン墓場でパーティーやろう」とツイートしたことで、まさかの盛大な墓場パーティーが出来た。ここでのリンクは女の子たちの輪に入って薬を吸っていた!

パーティーの盛況を知ったファンパのマネージャー・マークが企業広告を貼って稼ぐYouTuberを勧めた。リンクたちはスタジオを借りて製作を開始。

フランキーが「スマホは必要かをゲームでやりたい」と提案し、スタジオで撮った。小さなステージにわずかな聴視者を入れたスタジオ。カンペと拍手催促で撮った。(笑)聴視者の中から一人の男(予め決めていた)をステージに揚げ、スマホを取りあげ、スマホと賞品のどちらを選ぶかをリンクと視聴者が競うゲーム。他愛もないゲームで、どこが面白いのか分からなかった。この動画にどんどんナイスがつき740万になった。(笑)

こんな動画をじゃんじゃん作って、あっという間にリンクは売れっ子YouTuberになったが、その人気もすぐに下がり出す!

リンクはジェイクと揉めて「ネット上の人格を変える」と自分で脚本を書くことにした。

リンクはステージにモデルのイザベルを迎え、モデル前の痣がある顔をちらっと映像で見せて、「スマホと虚栄心。本当の君を見せるか?」と問う。視聴者は見たがる。イザベルが拒否する。リンクがこれを巧みに“見せる“に同意させてナイスを取る。「やりすぎ!いじめだ。世間を皮肉って最悪なことをしている」とジェイクはリンクと決別し去っていった。フランキーはリンクが無理強いするシーンをカットしてアップロードした。

リンクは人気司会者テッドの生番組に出演し大物インフルエンザーたちから「あなたのテーマはSNSに依存するな!だが、あなたが有名になっているのはSNSを軽蔑している。イザベルを泣かせたのはあなたの主義に反する」と非難された。リンクは「それはカットされたシーンだ。よく見つけたな!泣いたあとイザベルはやりたと言ったんだぞ!」とやり返した。そのあと「本当の俺を見せてやる!」とテーブルに上がり“うんこ”をしてインフルエンザーたちに突きつけた。(粘土だったのだが)会場は騒然とした。ナイス数が一挙に上がった。これには笑った!

これをスタジオで聞いていたフランキーは「終わった!」と思った。フランキーはバーで歌ってるジェイクに相談した。ジェイクは「やつは嘘つきだ。金持ちの子だ。学校に放火して施設に入っていた。目を覚ませ!」と忠告した。そしてカット映像を流出させたのは自分ではないという。それでは誰が流出した?

フランキーが悩んでいるところにリンクが戻ってきて「YouTubeの生放送特番に出演する」という。フランキーはほっとした。

フランキーが会場に足を運ぶと「リンクは死ね!」「ノーワン・スペんシャルは退場せよ」コールに溢れていた。フランキーはリンクが襲いかかってくるようで怖くなった。

リンクはダンサーたちとステージに上がって踊って、パフォーマンスを見せて、話しかけ始めた!

「イザベルが死に謝りたい。悪かった!謝りたい!しかし、君たちが彼女を崖から落としたんだ。それが真実だ!俺も殺す気か?そうはさせん、画面の後ろに隠れているやつ出て来い!イザベルをナイス稼ぎにしたかもしれないが、それは君たちのためだ!これがSNSの弊害だ!リアルに向き合えず、利用し合うだけだ」「最高なのはお前らと俺が同じこと。でも自分を見る勇気がない、見られるのは俺ひとりだ。俺は真実を語っている。俺に賛成なのか?反対なのか?

賛成なら“いいね”をくれ!」。どっと“いいね”が入り出す。リンクの顔は自信に満ちていた!

まとめ

スマホが嫌いな男がYouTuberに嵌って、自分の発言が相手を殺すことになっても、その責任を負わないで“ナイス”をつけた視聴者に回す。この態度は益々エスカレートしていく。まさに“ナイス”は猛毒です!よくぞ描いたという作品でした。

SNSの悪罪を題材にした作品だから、悪評なのはあたりまえ!(笑)しかし、それだけではなかった!ここで提示されるYouTubeが何を訴えているのか分からず面白くない!ネタバレをしようにもできないレベルでした。(笑)

作品はガーフィールドの演技で観せてくれる作品でした。ラストでガーフィールドが吐く長セリフには震えました!

ラストシーンの「イザベルをナイス稼ぎにしたかもしれないが、それは君たちのためだ!これがSNSの弊害だ!リアルに向き合えず、利用し合うだけだ」、このフレーズだけは忘れないようにしたい!

メインストリームとはナイスの数で動く社会の流れ。なんの責任もないいい加減なナイス判断で流されていく社会。これは怖い!つまらん作品だという所見が多いですが、そうは思わない!その危険性を危惧し、怖くなっています!

                ***

「神々の山嶺(いただき)」(2021)何故山に登るかに答えが見つかるか?

夢枕獏さんの小説を谷口ジローさんが漫画化した山岳コミックの傑作「神々の山嶺を、フランスでアニメーション映画化された作品。すでに日本では「エヴェレスト 神々の山嶺」(2016)として実写化されています。

フランスでは大ヒットを記録し、同国のアカデミー賞にあたるセザール賞の長編アニメーション映画賞を受賞した作品です。

本作の企画は谷口ジローさんがフランスに持ち込んだものだそうで、谷口ジローさんはフランスではとても人気のある方だったようで、完成を観ないで亡くなった(2017)のはとても残念だったでしょう。

フランスの人たちはどこに関心があったのか、「何故山に登のか?」をもう一度考えてみようと挑戦してみました。

監督パトリック・インバート、原作(作):夢枕獏原作(画):谷口ジロー脚本:ガリ・プゾル パトリック・インバート ジャン=シャルル・オストレロ、音楽:アミン・ブアファ。

声優堀内賢雄(深町誠役)、大塚明夫(羽生丈二役)、逢坂良太(文太郎役)、


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

冒頭、1924年エヴェレスト山頂付近で、マロニーとアーヴィングが風吹の中、写真を撮って登る姿、この映像は写真?いやそれ以上の感度で繊細に雪面を捕らえている、氷壁の美しさ。一気に物語に誘ってくれ、これが山に登る理由ではないでしょうか。すばらしいアニメ描写の力で、これがフランスサイドの製作理由かもしれない。

カトマンズ。登山家・深町誠はエヴェレスト南壁登山隊のカメラマンとして参加したが、8500mで登頂を果たせず、悶々としているところにある男が「特ダネのマルローのカメラを買ってくれ!」とせがまれたが、断った。その後、路地裏でこのカメラを巡って言い争っている男を見た。この男は8年前に登頂に失敗したエヴェレスト登山遠征隊にいた羽生丈二だった。

深町と羽生が、すっかり登山家らしい風貌なのがいい。イケメンでは困る。(笑)

帰国した深町は雑誌編集長の宮川に「マルローが撮った写真を現像できたら、エヴェレスト登山史が変わる」と羽生を追うことを申しでたが、「もう古い話だ、やめとけ!」と断られた。しかし、深町は諦められず、羽生の過去を調べ始めた。

羽生は天才的なクライマーだった。幼いころから山登りが好きだった。アンナプル遠征隊員募集があったおり、貧乏人だからと選に漏れた羽生は怒りをぶつけるように、友人の井上を誘って一晩で鬼スラ(谷川)を登り詰めたという逸話のある男だった。このときの話が仲間のなかで「ザイルに繋がれたふたりが宙吊りになったらどうする」と話題になったが、羽生は「俺は切る!切られてもいい。でないと意味がない」と言い切った。このことは後に彼の登山人生に大きな影響を与えることになった。

このころ、羽生と「どちらが先にやるか?」と競っていたクライマー・長谷常雄がいた。あるとき、ふたりは鬼スラを単独で登ることを話していたが、長谷が冬季単独鬼スラ登頂を成功させた。

羽生は長谷に対抗するように穂高屏風岩の単独登頂を狙っていたが、後輩の岸文太郎にせがまれて、彼とザイルを結ぶことにした。不幸にして文太郎のミスでふたりは宙吊りになり、文太郎が自らザイルを切って落下し、羽生は救われた。文太郎の姉・涼子に侘び、その後、ふたりは手紙のやりとりするようになった。

登攀シーンが丁寧に描かれて、アニメならではの緊張感のあるシーンになっていて、これもフランスサイドの拘りの映像ではなかったかと推測します。

羽生は競って世界三大北壁に挑んだ。しかし、最後のグランドジョラスで落下事故を起こし宙吊りになりながら、ザイルに補助綱を巻き、口でそれを咥えて懸垂し、安全なテラスに辿り着き、ここで文太郎の夢を見て、救助されるという奇跡の生還を果たした。このシーンの映像も面白い。羽生は文太郎とともに山を登っていた。羽生にとって山登りは文太郎への贖罪だったかもしれない!

深町は涼子と接触することができ、彼女から「しばらく便りがなかったが、今度は遠いところに行く!」と羽生から連絡あったと知らされた。深町はこれまでの羽生の登山のやり方が「先にやる!」から、世界で誰も成功していない「エヴェレスト西南壁、単独、無酸素登頂!が」をやると読んで、ナムチャバールの山小屋を訪ねた。そこに羽生がいた。羽生は「山は止めた!」と言った。深町は「諦めない!」と予想し、ベースキャンプ適地で羽生を待った。そこに羽生がシェルパのツエリンを伴って現れ、何も言わず、テント支柱を投げてよこした。夜の星空の美しいこと!

深町は「なぜ先を競って山に登るか?」と羽生に聞いた。答えは「分からない!山に憑かれている」だった。

ここをベースにして、ツエリンが残ることになった。

天気待ちして、三泊四日の行程で「単独だから俺にかまうな、お前がとらぶっても同じだ」と登山を開始した。

羽生は振り向くことはなく登り続け、深町は必死に彼を追い続けた。夜は羽生とテントで寝た。ここでの雪面の美しさがこの作品の見せどころです!

翌日も深町は羽生を追い岸壁に取り付いたところで、ベースのツエリンから「嵐が来るぞ!」と連絡を受けた。突然周囲が真っ赤になって気を失った。羽生の「アイゼンをはずせ!」の声。気が付いたときはテントの中だった。セルパから「7500mで凍傷、これを過ぎると8000mで死が待っている」と教わっていた。(エヴェレスの標高は8849m)。

羽生が「あと一歩でダメだったとき、ここでマルローの遺体とカメラを見つけた。8100mだ。フィルムがあれば成功したかどうかが分かると思ったが、そんなことはどうでもいいんだ」と話した。

朝出発するとき、深町は咳が止まらなかった。羽生に「嵐がくると助けられん!昼には渓谷に着けるから帰れ!」と追い返された。深町はアイスハンマーで岸壁を登る羽生の姿を見ながら下った。羽生は岸壁を登り切り、頂上へと足を進めていた。

深町はベースに戻り、ツエリンに「羽生は登頂したか?」と聞くと「成功しただろう!」と言った。ここで2日間羽生の帰りを待ったが、戻って来なかった。ツエリンから「彼は帰らない」と預かっていたマロニーのカメラと置手紙が渡された。そこには「この手紙を読んでいるなら俺は死んでいる。登った理由は見つからないが、お前が突き動かしたことだ!最期まで頑張る。後悔はない!」とあった。

深町は東京にもどりマロニーのカメラが撮ったフィルムを現像したが、何も写ってなかった。深町は「なぜ先に頂に命を懸けるか、今は分る。しかし、そこに理由はない。頂も中間点だ。登り切っても歩き続けろ!」だと思った。

まとめ

原作の恋愛部分を除き、徹底的に羽生の生き方と、エヴェレス山嶺の美と厳しさ、そして登山の厳しさを描いた作品だった

羽生は好きで山に上り始め、野心に芽生え、何度も挫折を味わい、文太郎への贖罪で山に登った。こんな羽生の生き様が、私の人生に重なってくる。「登山は人生だ!」と感動します!

最期のエヴェレス西南壁、単独、無酸素登山。深町が倒れなければ楽に頂をきわめていたが、彼にはそんなことはどうでもよかった。登山できたことに感謝していた。彼にとっての登山は“生きる“ことへと変化していた。こうさせたのは何か?冒頭のエベレストの美しさ、尊厳さではないかと思います。

この作品は「日本人が作ったの!」と言う程にストーリーの情感も映像も、日本的なものになっています。日本の山も東京もよく調べて作られています。フランスで人気が出て世界に配信されるとなると、山好きとしては、ちょっと誇らしい気持ちにさせてくれる作品でした。

              *****

「トラ・トラ・トラ!」(1970)ハワイ奇襲攻撃の謎、もうこんな戦闘シーンは描けない!

間もなく終戦記念日。何かこれに関わる作品ということで、本作を選びDVDで鑑賞しました。日米のスタッフ・キャストによる共同作品。

トラ・トラ・トラ!」とは1941年12月8日の大日本帝国海軍による真珠湾攻撃時、空母から発信した攻撃機隊が米国に気付かれず真珠湾に到着し、飛行隊長が奇襲に成功したことを告げ発信した暗号のこと。

ということで本作は、日米両面から見た真珠湾攻防の顛末を描いた戦争映画です。物語の始まりは山本五十六中将が連合艦隊司令長官として連合艦隊の旗艦“長門“に着任したときから始まり、連合艦隊真珠湾攻撃を終え戦域を離れるまでの日米両軍の行動が描かれています。1970年度アカデミー賞特殊視覚効果賞受賞作。

ノルマンディー上陸作戦を描いた大作「史上最大の作戦」(1962)の成功にあやからろうとした20世紀フォックス社長・ダリル・F・ザナックの企画

日本側の監督が当初黒澤明さんだったが、数個シーンを撮って降り(降ろされ・・)、揉めに揉めて舛田利雄さんと深作欣二に決まった作品。「黒澤明とハリウッドの戦い」と言われる映画製作における日米戦争だった。映画よりこちらの話の方が絶対に面白い!黒澤さんは降りたが、脚本は黒澤さんのものと言われていますが、クレジットに名はない。

原作:ゴードン・W・プランゲ著「トラ・トラ・トラ!」、ラディスラス・ファラーゴ著「破られた封印」。

監督:リチャード・フライシャー舛田利雄深作欣二脚本:ラリー・フォレスター、エルモ・ウィリアムズ(ノンクレジット)、ミッチェル・リンドマン(ノンクレジット)、小国英雄菊島隆三黒澤明(ノンクレジット)撮影:チャールズ・F・ホイーラー、姫田真佐久、佐藤昌道、古谷伸、萩原健、上田宗男、萩原憲治。編集:ジェームズ・E・ニューマン、ペンブローク・J・ヘリング、井上親弥、音楽:ジェリー・ゴールドスミス(編曲:アーサー・モートン)。

出演者

マーティン・バルサムジョゼフ・コットン、E・G・マーシャル、ジェームズ・ホイットモア、ウェズリー・アディ、ジェイソン・ロバーズ、レオン・エイムス、エドワード・アンドリュース、ジョージ・マクレディ、キース・アンデス、他。

山村聡三橋達也東野英治郎宇佐美淳田村高廣島田正吾千田是也、内田朝雄、北村和夫、藤田進、安部徹、十朱久雄、久米明、中村俊一、他。

出演者が多い!誰を主体にしたドラマなのか?日本軍については連合艦隊司令長官山本五十六を中心に置いた物語で分かりやすい、米軍については、中心となる人物が見え難い。日本の動きに合わせて、陸・海の情報課長の情報で動く陸軍参謀総長、海軍作戦部長、ハワイに在住する太平洋艦隊司令長官・ハワイ方面陸軍司令長官の物語と言っていいのかな?

年月日が入らず日独伊三国軍事同盟、南部仏印進駐などの日本の動きに合わせ、日米軍の動きが描かれるが、分かり難い!特に米軍。見どころは、製作企図から分るとおり、後段の戦闘シーンです。CGのない時代の戦争もの、見ごたえがあります。その反面、ストーリーは少し塩気が抜けている!と思います。


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あらすじ

1939年(昭和14年)9月、山本五十六中将(山村聡)が連合艦隊司令長官として旗艦長門に着任。軍楽隊の奏する「海行かば」の登舷礼で迎えられた。ちょっと身が締まる映像です!

日独伊三国軍事同盟へと動く中央にあって、強くこれに反対する海軍次官・山本中将は目障りと、連合艦隊司令官長官へ転出させられた。

山本長官は巨艦主義から空母の時代という持論に基づき、航空機からの魚雷攻撃を視察して効果を確認し、大西少将(安部徹)に空母によるハワイ攻撃の研究を命じた。大西少将が「雷撃機での攻撃は無理だ」と進言すっると「無理でもやれ!」と指示した。(笑)大西少将は「適任者がいる」と海軍のエースパイロット源田実中佐三橋達也)の名を挙げた。このキャストは謝りでしたね。

米国海軍情報部日本の暗号を解読する機材の開発に成功した。解読情報を海軍のクレーマー少佐と陸軍のフラットン大佐(E・G・マーシャル)がそれぞれ政府、海・陸の高官に伝達の役を追うことになった。フラットン大佐は伝達先に大統領と空軍長官の名がないことに疑問を持った。

ハワイ。太平洋艦隊司令長官としてキンメル中将(マーティン・バルサム)が着任。真珠湾の出入口が狭いことを気にしていたが、湾内の水深が40mで空中からの魚雷攻撃はないと聞いて安堵していた。

1940年(昭和15年7月)第2次近衛内閣の成立日独伊三国軍事同盟(1940.9)北部仏印進駐(1940.9)と状況が進む中で、

源田中佐が第1航空戦隊参謀として着任。連合艦隊によるハワイ攻撃計画担当は連合艦隊作戦参謀・黒島大佐が担うことになり、源田案「海軍空母機動部隊は択捉島の単冠湾に集結し、機を見て南下、アメリカ太平洋艦隊を撃破する」を基に具体化が始まった。

機動艦隊の艦長・参謀を長門に参集し、山本長官は「週末、未明、敵空母6隻を狙うハワイ奇襲攻撃構想」を明らかにした。

米国。ハワイ陸軍長官としてショート中将(ジェイソン・ロバーズ)が着任。部隊視察でハワイ在住の日本人による破壊を恐れ、警戒が容易と全戦闘機を1ヵ所に集めた。これには反論が多かった。陸軍長官には空に対する警戒心がなかった!

陸海の合同会議で常時ハワイ周辺海域の警戒を検討したが、機数不足から常時は無理だった。対空レーダー1基(映画では)が配備された。ただし通信システムがなかった。(笑)

1941年(昭和16年7月)南部仏印進駐

山本長官は吉田善五海軍大臣宇佐美淳也)に面談しハワイ攻略の必要性を強くした。兵棋演習を実施。第1艦隊司令長官南雲忠一中将(東野英治郎)から「作戦は無理だ!」という意見がだされたが、山本長官は「作戦をやるやらないは論議するな!」と強く戒めた。

8月、淵田美津雄駐中佐(田村高廣)が赤城飛行隊長として着任(第1次攻撃隊長予定)。真珠湾の地形モデルが出来上がり、具体的な攻撃要領の詰めに入った。そして、ハワイと酷似している錦江湾で航空攻撃訓練が開始され、水深40mでの機雷攻撃に確信を持つに至った

近衛首相(千田是也)に「万一対米戦になった場合の海軍としての見通しを聞かれ、「1~2年は暴れて見せますが、それ以上が保証できない。外交にラストワードはない!」と伝えた。

米国暗号文書「日本のインドシナ駐留」をキャッチしたフラットン大佐が「大統領に見せるべきだ」と主張したが受け入れられなかった。

キンメル司令長官がマーシャル陸軍司令長官(キース・アンデス)とスターク海軍作戦部長(エドワード・アンドリュース)の署名文書「日本国に対する制裁として全面禁輸を行なう。警戒態勢を取られたし!」をみて、上層部は情報を与えないので自分で考えるしかないと「空と海のパトロールを増やせ!」と指示した。(笑)そして本格的な戦闘機や対空配備訓練、艦艇による海上哨戒が始まった

ハル国務長官は日独伊三国軍事同盟にサインした来栖三郎(十朱久雄)が遣米特命全権大使に就任したことで日米関係の先行きに悲観していた。

1941年(昭和16年11月)ハワイ攻撃命令の下達

「海軍空母機動部隊は択捉島の単冠湾に集結し、機を見て南下、アメリカ太平洋艦隊を撃破する。攻撃開始は12月6日予定、X日とする。X-1日午前1時までに交渉が可決したら引き上げる」と下達し、単冠湾への集合を命じた。

米海軍情報部。11月25日、「日本は外交交渉を11月29日で終了する」という日本大使館あて暗号電報を解読した。そして、日本軍の輸送船団が台湾沖を南下してるという情報を得ていた。ブラットン陸軍大佐は「海軍はまだ日本にいる!必ずハワイを攻撃してくる」と分析したが、クレーマー海軍少佐は「証明できるか?」と聞いた。ブラットン大佐は「マーシャル陸軍参謀長、スティムソン陸軍(ジョセフ・コットン)長官を説得する」と奔り出した。マーシャルには不在で会えなかった。

ハル国務長官、スティムソン陸軍長官、ノック海軍長官でこの暗号電報を協議した。ハル国務長官は「ブラットン大佐の言う通りだ!が、実行部隊の意見に従う。これからは海軍の出番だ」と発言。海軍長官が「大統領に報告し、全員に待機態勢を取らせる」と発言した。この後、マーシャル陸軍参謀総長の文章が、副官からノック海軍長官に渡された。

単冠湾。機動艦隊。「12月2日午後0530、ニイタカヤマノボレ、X日は12月8日」の電報を受領した。

ハワイ太平洋艦隊司令長官室。キンメル長官は副官から渡された「すぐにも戦争突入の危険がある。戦争が避けえない場合、米国は日本からの一撃を望む。防衛措置を制限するものではない。貴官は防衛のため必要とする措置を取り、市民に不安を起こさせないこと」というマーシャル将軍署名入電文を読んだ。キンメル長官は「曖昧だ!警報を出せ!」と副官を叱りつけた。(笑)

キンメル長官は指揮官を参集し命令を下達した。「日本はフィリピン、タイ、マレー等を攻撃する見込み。開戦に備え警戒せよ」。ハルゼー中将(ジェームズ・ホイットモア)に「ミッドウエーに空母を派遣する。なるべく戦闘機を飛ばさないでくれ!」と命令し、「艦船もつれていくか?」と聞くと、「艦船は脚が遅いからダメだ」と断り「敵と遭遇したときの明確な指示をくれ」と聞く。キンメルが「常識でやれ!」と答えると「妙な命令だな!」と言って出て行った。(笑)

連合艦隊の機動艦隊が南下中。

米海軍情報部12月6日、フラットン大佐が「日本大使館に待機命令を寄こした!何かある?南下中の日本軍輸送船団はマレー半島まで14時間で着くが、日本の空母が見つかっていない!」と日本軍のハワイ攻撃の可能性を感じ取った。フラットン大佐とクレーマー少佐が手分けして暗号情報を伝えに走った。

日本大使館に「13部の解読以外に職員を当ててはならない」と電文が届いた。「専門のタイピストがいないで間に合うかな!」と外交官が心配した。

機動部隊指揮官・南雲中将が出撃に当たっての訓示を行ない、日本海海戦時と同じくZ旗が掲げた

米海軍情報部。夜になって「最終文書は明日だ!最終文書は来てないが、13章の文章を伝える。これだけは大統領に伝える」とクレーマー少佐が妻の運転する車で出かけた。大統領には会えず、副官に預けた。海軍作戦部長には「夜、遅い!」と副官から面談を断られた。ところがルーズベルト大統領から呼び戻され「天皇に親書を送った。続きが入り次第伝えてくれ!」と言われた。

ハワイでは週末のダンスパーティーが開かれていた。「明日はB-17 機が12機くる」と事態に楽観的な会話が交わされていた。

日本大使館に「以下の回答を12月7日午後1時(ワイントン時間)米国政府に通告せよ」と電報が届いた。外交官のつたないタイプで通告文の作成が始まった。

マーシャル陸軍参謀総長は「11時30分(ワシントン時間)外交交渉による合意は不可能になった。日本は午後1時に攻撃してくると思う」(日本の暗号は解読されていた)と各基地に伝達するよう指示した。

12月8日未明(ハワイ時間)、空母赤城から第1次攻撃隊が発艦。真珠湾に米艦艇群が居るのを見て、淵田飛行隊長が「トラ、トラ、トラ」を発信した

特殊潜航艇が米監視艇に発見され、また攻撃編隊がレーダーで捕らえられたが、米軍の当直将校の判断「まさか?そんなことはない!」で無視された。(笑)

攻撃開始は0800の国旗掲揚時だった、日本の飛行編隊が真珠湾の艦船、飛行場、軍事施設に襲いかかった。右往左往する高官、兵士。ここは映像で確認してください。

野村大使(島田正吾)がハル国務長官を訪ね最後最後通告を渡した。ハル長官は「50年に渡る自分の歴史の中で、これほどの虚偽と歪曲に満ちた文章を見たことはない」と野村大使を追い返した。

機動部隊指揮官南雲中将は戦艦4隻撃沈、2隻大破の成果を見て、「敵空母はいなかった。敵の潜水艦は追ってくる。我々は好運であった。機動艦隊は無傷だ。戦いは始まったばかり、先は長い!」と戦闘海域を離れることを決意した。

この時期、キンメル長官はワシントンからの電報「午後1時、日本は最後通牒らしものを提示する。意味不明であるが十分注意されたい」を見た。

ハワイ攻撃の成果を呉の連合艦隊旗艦・長門で聞いた山本長官は「ハワイ攻撃に狙いは米国の艦隊並びに基地を徹底的に叩き、戦意喪失にあった。米国の報道によると真珠湾攻撃は日本の最後通牒を受け取ったのは攻撃を受ける55分前だったと言っている。これで眠れる巨人を起こし、奮い立たせた」と感想を述べ、席を立った。

感想

日米共同製作作品。日米対等に描かれていて、これは黒澤さんに負うところが大きかったのではと推測します!

日米戦争の顛末を考えると、日本は米国の合理的作戦計画に負けたのではないでしょうか。黒澤さんが降りた理由もこれではないかと思います。

山本五十六の話はよく知られた話ばかり。「1~2年だけなら保障できるがそれ以上は責任を持てない」という合理性のない作戦計画!ならば、なぜ機動艦隊とともに行動し、現場で指揮をしなかったのかと疑問を持ちました。

米軍については、「国民の参戦意識高揚のため、あえてハワイを見捨てた」という話をよく耳にしますが、いつ誰が発案したのか?映画ではマーシャル陸軍参謀総長とスターク海軍作戦部長の共作ということになり、シビリアンコントロールという視点から問題がある。

この戦さ直後、キンメル太平洋艦隊司令長官とショートハワイ方面陸軍司令長官が罷免された。キンメル将軍の名誉回復はいまだなされていないと聞くと、当時「よくここまで描いたな!」と感嘆します。

この戦での米軍の情報活動については大いに学ぶところがありますね!

後段の戦闘シーン。CGもVFXもない、実機実艦を持って撮った映像だけに、「トップガン」と同じようにリアルな戦闘映像となっていますが、ここに人間ドラマがないから戦闘の痛みが伝わらない。しかし、日本軍は民間施設を攻撃してない!ジュネーヴ条約をしっかり守るというすごく清い国民性を示している

米国のヨーロッパ重視は今でも変わらないのではないでしょうか。そんなことを考えながら、本作を見終えました!

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「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」(2022)動く恐竜の面白さ!新たなる支配者は?

1993年に公開された「ジュラシックパーク」が「ジュラシックワールド」へと展開した“ジュラシックシリーズ”が本作で完結するという、それも「新たなる支配者」というテーマで完結。とても楽しみにしていました!

公開当日、第1回目の吹替版で観ましたが、このコロナ禍の中で、ほぼ満席。それも子供たちでした。「ストーリーがどうとか?」と大人が心配しますが、彼らがリアルな恐竜を見ることで大成功だと思いました。1993年にこのシリーズが始まって、恐竜への関心が高まり、平均週に一種、新種の恐竜発見が続いていると言われています。

この作品でも新たな恐竜が登場し、それには新たな知見が加えられています。子供たちは驚いているでしょう。「俺も怪獣博士になるぞ!」と。作品の根底には遺伝子工学の未来が語られているわけで、しっかりこちらにも興味を持ってもらいたいです。今回のコロナ禍で日本の研究力不足をいやという程に感じましたので、子供たちにはぜひこの作品を観て欲しい。科学の力を感じて欲しいと思います。「新たなる支配者」とはあなたたちなんです!

作品は、これまでに出現したものにさらに新種を加え、その動きも最高の映像技術で出来上がっています。ストーリーは簡潔で、これまでの作品で引き継ぐべきところを引き継ぎ、最終章にふさわしい論理構成がしてあり、「ジュラシックパーク」に登場した人たちと「ワールド」で活躍した人たちが手を取り合って、上手く幕を引いてくれます。

監督:コリン・トレボロ製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、アレクサンドラ・ダービシャー、コリン・トレボロウ、脚本:エミリー・カーマイケル、コリン・トレボロウ、撮影:ジョン・シュワルツマン。

出演者:クリス・プラットオーウェン・グレイディ役)、ブライス・ダラス・ハワード(クレア・ディアリング役)、ローラ・ダーン(エリー・サトラー役)、ジェフ・ゴールドブラム(イアン・マルコム役)、サム・ニール(アラン・グラント役)、ディワンダ・ワイズ(ケイラ役)、マムドゥ・アチー(ラムジー役)、B・D・ウォン(ヘンリー・ウー役)、オマール・シー(バリー役)、イザベラ・サーモン(メイジー・ロックウッド役)、キャンベル・スコット(ルイス・ドジスン役)、他。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

前作「「炎の王国」ではメイジーの「私と同じクローン。みんな生きて!」と恐竜たちが街に放たれ、数学者でカオス理論の専門学者マルコムが「人間が恐竜と共存する時代が来た。新時代の幕開けです!」と議会証言するシーンで終っています。

冒頭で恐竜と人間の関係の現状が描かれる。ベーリング海で漁する船をモモササウルスが大口を開けてその獲物を奪う。一方でブラキオサウルスは製材所で働いていた。

森に逃げ込んだ恐竜が恐ろしいとバイオシン社(CEO:ドジスン)に特権を与えてイタリアのドロミーティ山脈にファンクチャリーを作らせ保護している。が、恐竜の売買も行われている。人類が恐竜を蘇らせて30年になるが、「恐竜は安全か?」に人類は今だ答えを見出していない。

このような生態系環境の中で、オーウェンは野に放たれた恐竜を追い、クレアは悪質な恐竜繁殖施設を監視するなど、ふたりは恐竜保護に励んでいた。この夫婦にとって14歳になったメイジーが「自分は何者か?」と自分探しのため街に出たがるが、捕まって利用されることが不安だった。特にクレアは母親といて受け入れられているのかと悩んでいた。これはドラマとして面白い!

そんな中で、ブルーがその子ベーターが連れて現れオーウェンと再会を果たすが、密猟者によってメイジーとベーターが攫われた。オーウェンはブルーに「必ず取り戻す!」と約束して、CIAの情報から犯人はマルタ島の恐竜売買市場に現れると、クレアとともにマルタ島に飛んだ。これまでの作品と違って、恐竜が街に放たれたという恐怖をたっぷりと味わうことができます。

そのころ、テキサスでイナゴの大発生による農作物被害を調査していたエリー・サトラー博士は、バイオテクノロジー分野の巨大企業バイオシン社が関係していると疑念を抱き、かつてのパートナー、アラン・グラント博士を誘い、バイオシン社の拠点ドロミーティ恐竜ファンクチャリーを訪ね、ここで働いているマルコムに会うことにした。

マルタ島に着いたオーウェンとクレア。クレアが恐竜売買市場に入り探す。そこで恐竜運搬を生業にしている元空軍パイロットのケイラに出会い「ここは危険だ」と忠告されたが、「メイジーを探している」と写真を見せ協力を求めた。一方、オーウェンはかっての仲間バリーと恐竜売買市場近くのビルから犯人を監視していた。ふたりの行動を探知した密売人がバイオシン社のCEOドジスンに報告すると「始末しろ!」の指示が出た。密売人はアトロキラプトルを放ちオーウェンを追い、自らはクレアの宿舎を襲ったが、クレアは脱出してケイラの車に拾われた。(笑)

“ことがうまく進み過ぎる”のがこの作品の笑いどころです!

 こんなことに捉われず、街中をバイクで走るオーウェンとラプトルのチエイスラプトルの能力を楽しむことです!オーウェンはケイラの機が待機している空港に急き、やっとのことで間に合うというスリリングなシーンでした。機上でケイラから「メイジーとベーターはドロミーティ恐竜ファンクチャリーにいる。ドジスンを裏切る!」と告げられた。

サトラーとグランド博士はイタリアでバイオシン社の機に乗り換え、CEOの副官・ラムジーの案内で恐竜ファンクチャリーに向かった。機上で見た恐竜たちの姿に驚いた。すべての恐竜に電子チップが埋められ、信号で集められると説明を受けた。ドジスンCEOからとても慇懃な歓迎を受けた。マルコム博士の研究者への講演を聞いた。「遺伝子操作で食物を失う。この危機が現実的でないと思っている人間は意識を変える必要がある」という内容だった。

マルコムに協力を求めると「興味ない」と断り、「イナゴがいる、探せ!」と飼育室の暗号が渡された!

このころメイジーはウー博士に会っていた。ウー博士から「君とベーターの遺伝子組み換え情報が欲しいんだ、協力してくれ!」と頼まれた。ウー博士がメイジーの産みの母・シャーロットは優秀な科学者で自分のコピーを作り、自分の病気体質が移らないよう遺伝子操作をしたと話した。メイジーは母がいたことに驚いた!

サトラーとグランド博士はラムジーから施設の案内を受けていたが、30分間の休憩時間を利用してイナゴ飼育室に侵入した。すると警報が鳴りだし、眠っていたイナゴが目を覚まし大混乱となり、ふたりは室外に飛び出した。するとそこにラムジーが現れ「私は味方だ!」と言い、「秘密の社内移動手段・ハイパーループを使って逃げろ!」と勧めた。そこにウー博士から逃げ出したメイジーと出会い、3人が一緒になって施設からの脱出を図った。何度も言いますが、展開が調子よすぎるんです。(笑)ハイパーループの中で、サトラー博士がメイジーに母親シャーロットの思い出話をする。こうやって「パーク」と「ワールド」の話が繋がっていくとことが面白い!

サトラーたちが逃げ出したことを知ったドジスンがマルコムを疑い、疑われたマルコムは「お前らは地球を滅ぼすぞ!」と毒づいて、施設から逃げ出した!(笑)

ハイパーループが突然止った。琥珀石を掘り出した坑道内だった。そこに背中にフリルがついた恐竜ディメトロドンが現れた!グラントが出口を探す!出口にマルコムがいた。笑った!!マルコムによってドアーは開けられ、3人が脱出に成功して、4人グループになった。

マルタ島から脱出したオーウェン、クレア、ケイラがドロミーティ恐竜ファンクチャリー上空で着陸許可を求めるが交信中で許可が取れない。そこに有翼恐竜ケツァルコアトルスが機を襲い、航行不能に陥った。機にパラシュートはひとり分しかなかった。オーウェン「メイジーの母親は君しかいない!」とクレアにパラシュート降下を勧め、オーウェンとケイラは胴体着陸することにした。

地上に立ったクレアはギガンザウルスに追われ川の中に身を隠した。オーウェンとケイラは胴体着陸し、機体から出て氷上を逃げていた。そこに赤褐色の羽毛恐竜ピロラプトルに追われ、氷の下に潜ったが、追ってくる!これを逃れたふたりは餌を巡りTレックスと陸上最大級の肉食恐竜ギガノトサウルスが戦う姿を目にした。これは生体系を考える上での大切な情報だった!

川から上がったクレアが施設の電源室に逃げ込んだところでヒロラプトラに遭遇した。こういうシーンが、昔、あったぞ!(笑)そこにオーウェンとケイラが駆けつけた。(笑)

ドジスンCEOはイナゴ室の混乱を確認して火を放った。イナゴが空に飛び出していった。これを見たサトラーは「証拠を消したな!」と呟いた。

このあとオーウェンら3人グループとサトラー博士ら4人グループが合体した。そこTレックスが現れイナゴを食べる。ギガノトサウルスが現れたので、全員が施設の2階に梯子を伝って逃げることになった。このときマルコムが炎をかざしてギガノトサウルスを誘い口に炎を投げ入れて、皆が逃げるのを援助した。これは「パーク」でマルコムが取った行動と同じシーンでした。このように過去作の想い出シーンを取り入れてあるのも楽しみです。

 ドジスンCEOが社員に施設からの退避を指示して、自らは遺伝子資料を持ってハイパーループで施設を脱出するが、途中でディロフォサウルスに襲われ、亡くなった。これは「パーク」でネドリーが恐竜の血液を持ち出して亡くなったと全く同じシーンになっています。ルイス・ドジスンは産業スパイでパークのエンジニア・ネドリーに、恐竜の胚をシェービング・クリーム缶に入れてジュラシック・パークから持ち出すよう指示した男でした。と言うことで、ジュラシックシリーズ完結にふさわしいシーンだと思います。(笑)

ラムジーがドジスンから再建時一緒にやろうと誘われたが「哀れな人だ!」と断った。

ベーターを麻酔銃で眠らせオーウェンが背負って、Tレックスとギガノトサウルスが戦う姿を見ながら「俺達には用ない!」と、ケイラの操縦するヘリでサンクチュアリを後にした。ウー博士が「シャーロットの遺伝子組み換えの謎が解けた」と明かした。「地球に生きるあらゆる命を生かす!共存しかない!」と決まった。

まとめ

当初人類と恐竜の共存に疑問を抱いた「パーク」の3人の博士たちと、「パーク」お引き継ぎ「ワールド」の世界で恐竜たちの保護者となった者たちが、恐竜サンクチュアリに集まり彼らの生態現状を見て、生態系は安定しており、遺伝子工学の未来に期待して下した「すべての生命を生かす」という結論。大きなテーマー性を持ってシリーズを終えることができてよかったと思います。

オーウェン夫妻とメイジーを巡る愛の物語も繋がる命の大切さを訴え本作のテーマでした。クレアを演じたブライス・ダラス・ハワードの演技に母親の本性を見ることができました。

何よりも将来を託せるメイジー、ケイラ、ラムジーたちの出現があってこその結論でした。これもひとへにマルコム博士の敵を恐れないカオス理論のなせるところでしょうか。(笑)

とにかく恐竜たちの映像がよかった。もう既視感があってという意見もありますが、なんど見ても美しい!恐ろしい!今回は世界に出た恐竜ということで、いろいろな現地ロケで見せてくれたのがよかった。マルタ島でのオーウェンとラプトルのチエイスはまるで観光巡りでした。そしてサンクチャリでマルコムが行った講演場所がオックスフォード大の校舎だったとか。これなら講演効果があったということでしょうか。(笑)シリーズがこれで終りとなると、寂しいですね!

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