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「ボーダーライン 」(2015) SICARIO

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ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品ということで、WOWOWで観ました。評判に違わない作品でした。
アメリカとメキシコ国境で巻き起こる麻薬戦争の闇を、メキシコ麻薬カルテルを撲滅すべく召集された女性FBI捜査官の目線で描いたもの。

トランプ大統領が不法侵入者を阻止する壁を強化するという国境の町ノガレス、ファレスを目の当たりにできるというのも観る価値ありでした。空撮の殺伐とした風景に不法侵入は日常茶飯事だろうと、トランプ大統領が主張するのも一理あるなという感慨です。

「ボーラーライン」というタイトルは邦画名。原題はSICARIO。
原題について、冒頭で説明があります。「シカリオの語源はエレサレムの熱心党である。祖国を侵略したローマ人を追い詰め殺戮する者たち。メキシコでシカリオは暗殺者を意味する」。暗殺者がカルテル(麻薬組織)の重要人物を暗殺する物語。
しかし、邦画名の方が面白い。「ボーダーライン」は国境という意味ですが、捜査官にとっては誰が敵か味方が分からない、生と死が隣り合わせる、超法規的行動が求められる堺です。映画はまさにこのような境界を描いています。

あらすじ:
優秀なFBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、メキシコ麻薬カルテルの全滅を目的とした部隊に入り、特別捜査官マット・グレイヴャー(ジョシュ・ブローリン)のもとで極秘任務に就く。ケイトは早速、謎めいたコロンビア人のアレハンドレ(ベニチオ・デル・トロ)と共に国境付近の捜査を開始。特別捜索とはいえあまりにも容易に人を殺すことに、そして自分の役割に疑問を抱きながら・・・。
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作品は、冒頭からラストシーンまで、ケイトの目線で事件を追い、最後まで明かされない本当の自分の役割は何か、次に何が起こるか、誰に狙われているかと不信、不安、恐怖の連続。カメラで追う異様な風物・音響がこれを一層盛り上げる。
捜索現場での撃ち合いの激しさ、リアルさ。特にサーモグラフィや暗視ゴーグルを通しての映像による戦闘描写はまるでIS指導者アブバクル・バグダーディを米軍特殊部隊が急襲した映像を見ているようで、リアルで迫力がある。

常に不安を抱え、スレンダーな身体で巧みに銃撃戦に挑むエミリー・ブラントが魅力的。可憐なだけに、恐怖を余計に感じたかもしれません。ナイスキャステイングです。
何と言っても、ベニチオ・デル・トロの無口で表情に出さない殺し屋演技は圧巻でした。

****(ねたばれ)
FBI捜査官のケイト・メイサーと彼女の誘拐即応チームが、アリゾナ州チャンドラーで誘拐事件の容疑者宅を奇襲捜査する。特殊部隊が囲み、車両で家屋に突入し、「動くな!FBIだ」と警告してきぱきと指令をするケイトはとても女性とは思えない。しかし肝心の首謀者は不在で、無数の誘拐被害者たちの死体を発見。

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この事件でのケイトの指揮っぷりが買われて、特別捜査官マット・グレイヴャー率いる特別捜索作戦に参加することになる。
ケイトに与えられた任務はカルテル捜索。細部はルーク基地での作戦会議で聞けというもの

コロンビア人のアレハンドレと同乗で、ルーク基地へ移動。上空から見る地表の皺がいびつですごい。と同じように同乗のアレハンドレは寝ているが不気味。アレハンドレが何者かが分かるまでこの緊張感が続く。これが見どころ!

ルーク空軍基地(軍事情報センター)での作戦ミーテイング。
特別捜索隊の任務はファレス警察署からマヌエル・ディアスの弟・ギエルモ(エドガー・アレオラ)を引き取るというもの。
ディアスは合法的に商売しているがメキシコのカルテルにつながりソノラ・カルテルの幹部。彼の兄がギエルモ、ソノラのナンバー3。

移動時国境通過時襲撃されやすい。メキシコ内ではメキシコ警察が隊を誘導するが、メキシコ警察を信用するなと指示がある。

この指示で行動を開始した特別捜索隊。国境検問を緊張のなかで通過、メキシコ警察が隊の前後に付きハイスピードで移動。常にどこから狙われているかとひやひや。高架橋の下に吊るされた遺体を見る。カルテルが見せしめに吊るしているもの。

ギエルモをもらい受けてからの帰路、いつ襲撃されるかと警戒していると並列して走る車が気になる。渋滞で停止中に、カルテルの一味に狙われてことにアレハンドレが気づき下車して近づくと、特別捜査隊の一斉射撃で一味をせん滅させる。ケイトはメキシコ警察から狙われるが軽傷。劇中のケイトも驚くが、映画を観てるこちらも怖くなる!

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エルパソの警察署に戻り、ギエルモの尋問。これがえげつない!アレハンドレの知合いの警察官が「ファウストに繋がるトンネルがあるらしい」と教えてくれる。国境沿いに調査するがトンネル位置がつかめない。

夜になるとファレスの町のいたるところで銃声と爆発音が響く。ギルモアがいなくなったことでカルテル内で衝突が起こっている。

一方、ケイトは特別捜索隊員として参加したが、無謀とも思える銃撃戦を目の当たりにしただけで、捜査官として何の役にもたっていない。特別捜索隊を抜けるつもりで、ケイトは隊の役割をマッに糺す。
マットは「ギエルモがノガレスの東にトンネルがある」と喋った言い、「ここで混乱を起こせば、ディアスはメキシコに呼び戻される。これでボスの居場所を掴む」と語った。掴んでどうするかを明かさなかった。

ギルモアの情報を確認するため、FBI捜索官ケイトの権限を使って、不法侵入者を尋問する。さらに航空写真でトンネルの位置を特定。

ディアスの資金洗浄を行い口座を凍結したことでカルテル内が混乱し始めた。「この混乱でボスはディアスをメキシコに呼びつける。そのときがチャンスだ」とマットはいう。
ケイトは「口座の金の流れを追えば正当にディアスの逮捕出来る」と主張するが、マットは「真の狙いはディアスではなく、彼を従える麻薬王ファウスト・アラルコン(フリオ・セサール・セディージョ)だ」という。

ケイトは「越境して戦を起こすことは違法だ」とFBI上司に訴えるが、上からの命令と却下された。ケイトは正義を重んじる論理はここでは通らないことを知る。

ケイトは、相棒のレジーダニエル・カルーヤ)とバーで飲んでいて、レジーの友人警官・テッド(ジョン・バーンサル)にホテルに誘われる。テッドはカルテルに買収されている警官だった。ケイトはとんでもない醜態を見せたことで隊の言うがままに動かざるを得なくなった。

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いよいよトンネルを使っての麻薬捜索。ケイトもこれに参加。暗視グーグルを着けての作戦。途中でアレハンドレが単独行動に出るのでケイトがこれを追った。ケイトはアレハンドレに撃たれ隊に収容されるが、アレハンドレは単身でファウスト・アラルコン邸に乗り込む。

ここでマットからアレハンドレという人物、彼の任務が明かされる。アレハンドレはメキシコ麻薬カルテルに妻と娘を惨殺された過去を持つメキシコ政府の元検事。彼の個人的復讐を利用してファウスト・アラルコンを殺害し、コロンビア麻薬カルテル一党支配を確立するのが任務だという。このあたりは歴史を調べると面白い。
ケイトはマットの計画の全貌を公表するつもりだと警告するが、やっても無駄だという。このことがラストで明かされるという実に巧妙な特別捜索作戦だった。

アレハンドレは子供・妻と食事中のファウストに、自分の苦しみを味わわせるように、子供、妻、そして本人に食事をさせて刺殺する。

アレハンドレが基地に戻り、ケイトに麻薬捜索作戦終了報告書にサインを迫る。これがケイトの役割だった。ケイトはサインせざるを得なかった。

特別捜索隊は全く自分の手を汚さずメキシコの大物カルテルを潰すことに達成した。いわゆる毒をもって毒を制した。麻薬の流通をコロンビアに任せることになったが、実情はどうなっているのでしょうか? とても面白いシナリオでした。
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映画『ボーダーライン』本予告