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「酔うと化け物になる父がつらい」(2020)残された者がなおつらい!

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コロナ騒動のなかで、やっと劇場で映画が観れるというので選んだ作品。タイトルだけで泣けそうです。(笑) 実は、出演者に松本穂香さんと恒松祐里さんの名があり、いずれも今泉力哉監督作品に出演、これを観ようとの想いです!

原作は菊池真理子さんの“実体験に基づいた”コミックエッセイ。未読です。
監督は「ルームロンダリング」の片桐健滋さん。脚本;久馬歩片桐健滋さん。撮影:一坪友介さん。
主演は渋川清彦さん、松本穂香さん。共演は今泉佑唯恒松祐里ともさかりえ濱正悟・浜野謙太・安藤玉恵さんらです。

毎日酔い潰れて帰宅する父を見て、もうこんな父には関わらないと過ごしてきた娘が、父が亡くなって、「化け者だったのは私だったのかな!」と観る人に問いかける作品。「そんなことはない!貴方は立派に成長しました、そのことでお父さんは喜んでいますよ!でもお父さんは大バカ者です」と声を掛けたくなる作品でした。(笑)


映画『酔うと化け物になる父がつらい』予告編

あらすじ(ねたばれ):
冒頭、田所家の長女サキ(松本穂香)が、古いカレンダーを新しいものに変えようとして「化け者だったのは私だったのかな!」と涙ぐむシーン、何で涙ぐみのか?これがテーマです。

サキの父トシフミ(渋川清彦)の想い出は酔っていた姿しかないという。

サキ8歳ごろの想いで、
夜、帰宅した父を玄関から母と子供で引っ張ってテーブルに着けるがず~と寝たままで意識を無くして船を漕いでいる。(笑) これを見かねた母サエコともさかりえ)が新興宗教に嵌る。(笑)
土・日には仲間と真昼間からマージャン。母はお酒の準備して教義を読むばかり。夏休みでも、どこにも連れていってくれない。クリスマスには、プレゼントを楽しみに待っている子供たちを無視して深夜帰宅。昼間、父は素面、夜は付き合わないと仕事ができなくなると飲む。(笑)

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父トシフミは人がよくて人付き合いがいい。気が弱くて断りきれない。お酒が好き。これに母サエコは文句を言わないどころか「人を憎まず!」という。新興宗教も自分の救いでしかなかった! 酔払って帰宅できない父を迎えにいく母親。これ、アル中になっていく過程と同じで、まあまあで過ごした結果です。サキはこんな生活が普通の生活だと思っていたが、

サキ17歳のとき、
サエコは首を吊って亡くなった。葬儀で酔っ払って挨拶する父の姿に「母は愛されてなかったのでは?」と泣いて、父に大きな不信感を持つようになった。

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父は酒を断ち、マージャンも辞めて食事を作ってくれたが、これもしばらくの間だった。スーパーで勧められた試飲で酔っ払い、バーのママ(安藤玉恵)の「お父さんは寂しいから分かって!」の言葉で、サキは自分の気持ちに蓋をすることにした。安藤玉恵さんに説かれると断れません!この人が出てくると場が変わる、それほどに説得力のある演技でした!(笑)

「国立に入れるかも」と父に話しかけたが、父はTVを見て惚けていた。父は再び元のように酔払って正体を無くしていった。もう関わりたくない!

酔払った父をモデルにパラパラ画を描くと大評判で、これが動機となり漫画を描くことで毎日を過ごすようになった。

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サキ25歳のとき、
フリーターで過ごしていたが友人で看護師のシュン(恒松祐里)に励まされイラストの世界に進むことに決めた。このころの父は手が付けられないほどの酔っていて、サキに乗りかかってくるありさま。しかし、朝になれば「行ってきます」と出勤する。
イラストがコンクールで合格すると「やるだけやって見ろ!困ったらいって来い」と喜んでくれた。これが唯一声を掛けてくれた記憶だった。

このころ父親が何を悩んでいるかなど考えもしなかった。サキはシュンの紹介で中村(濱正悟)と付き合うようになった。しかしこの男はとんでもない大酒飲みでDV男だった。

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妹のフミ(今泉佑唯)が止めたほうが言うが「自分を受け入れてくれる」と結婚を約束した。が、愛されていないということに気付いて別れた。父を見ていてこんな男はダメというのは分かりそうなものだが、寂しさが彼を求めた。

このことで母の悲しかった気持ちが分かり、一層父への嫌悪感が増してきた。再婚しない父の気持ち、誰が今の父の面倒をみているか、考えもしなかった!

サキ30歳のとき、
父が余命半年という癌で倒れ、借金があることが分かった。もう怒り心頭!
しかし、父を介護療養施設で看護師シュンに見てもらうことになり、また借金は仲間を助けるためであったと知り、物言わぬ父と病室で「話したいことが沢山あったのに何で話さんかったん」とひとり喋りでオセロをした!

恒松祐里さんの出演場はすくなかったですが、明るく友人を見守る演技が印象に残ります

父は眠り通し何も話すことなく逝った。

父の会社の同僚木下(浜野謙太)が話す「いい人だった」という父との想いで話、妹フキの「お父さん、酔って帰って文句言うたよ!」の話を聞き、父だけが悪いのではない、私がお化けだったのかなと。涙が出てきてしょうがない・・・・。
感想:              
酒乱の父と娘の重い話しをコミカルに描き、娘の苦しみから酒乱の問題に切り込んだ本作、酒飲みの親父には心当たることも多くあり、娘のため泣けます。

渋川清彦さんの演じる酒乱のお父さんが、ほとんどセリフがなく、笑顔で寝ている姿のみ。映画「閉鎖病棟」(2019)で見せた狂気の表情と全く正反対の、この笑顔がひょうきんで、酒乱のダメ親父だけれど責めにくい。熱演でした!

一方娘のサキ・松本穂香さんは、こんな父には関わりたくないと言いながら、どこかで父を意識しているようで、ラストで見せる父への想いの涙には悔しさが滲んだいい雰囲気のある演技でした。

酔払った父トシフミを拒否すればするほどに心が痛み苦しむ娘サキの気持ちが伝わり、父が生きているうちにサキにひとこと“すまんかった!”という言葉が欲しかったと思えます、難しい父と娘の関係がよく描かれています。酒乱だけでなく娘さんといい関係が築けないお父さんは「何が欠けているのか?」と観るといいと思います!
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