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「ラストレター」(2020)記憶されて人は生かされる!

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今年1月の公開作品。見逃していましたのでWOWOWで観賞。「Love Letter」(1995)で長編映画監督レビューした岩井俊二さんが25年ぶりに描くレターもの。手紙を通して亡くした恋人を偲ぶという前作をモチーフにした作品!本作は少し手の込んだ作品になっていて、前作同様、岩井節を楽しみました。(笑)

ややこしい込み入った設定、(笑)

姉・未咲の葬儀に参列した裕里は、未咲の娘・鮎美から、未咲宛ての同窓会の案内状と未咲が鮎美に遺した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるため同窓会へ行く裕里だったが、学校の人気者だった姉と勘違いされてしまう。そこで初恋の相手・鏡史郎と再会した彼女は、未咲のふりをしたまま彼と文通することに。やがて、その手紙が鮎美のもとへ届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎と未咲、そして裕里の学生時代の淡い初恋の思い出をたどりはじめる。

いったい誰が主役?(笑) 手紙を通してテーマ「ラストレター」の意味が明かされるところが面白い。

監督らしい美しい映像と曲、懐かしい青春の思い出に浸れる作品でした!しかし、本作は前作とちょっと違う、それぞれが美咲の死を乗り越える人生再生の物語になっています。

原作:岩井俊二、未読です。監督・脚本・編集:岩井俊二、撮影監督:神戸千木、

美術:都築雄二・倉本愛子、音楽:小林武史、主題歌:森七菜「カエルノウタ」。

出演者:松たか子福山雅治広瀬すず神木隆之介庵野秀明、森七菜、豊川悦司中山美穂、他。


映画『「ラストレター」』予告【2020年1月17日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ):

宮城県白石市八幡町。夏休み。母・遠野美咲を亡くした長女鮎実(広瀬すず)は駆けつけてくれた叔母の子・颯香(森七菜)と、自宅付近の瑞々しい滝の流れに癒されていた。

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葬儀の日、喪主を終えた鮎美は叔母・岸辺野祐里(松たか子)に母の遺言があることを伝え、母宛てに届いた同窓会案内状を渡した。祐里は姉の死が自死なら遺言状の内容を聞くはずだが、なぜか聞かなかった。颯香はしばらくここに留まり、鮎美と一緒に過ごしたいという。

同窓会に参加した祐里、参加者から「美咲さん!」と声を掛けられ、そのまま姉に成り代わってスピーチした。美咲は卒業式時生徒代表スピーチをしているだけに注目された。誰も気付かないないというのも不思議。早退してバスを待っていると姉の恋人だった乙坂鏡史郎がやってきた。実は祐里の初恋の人でもあった。乙坂は小説を書いたこと言い、携帯のアドレスを交換して別れた。乙坂は「君に恋していると言ったら信じますか?」とメールを入れた。同窓会というの・・・。(笑)

仙台市東区。帰宅して風呂に入ったところに「25年間ずっと君に恋しています!」のメール。これを見た漫画家で夫の宗二朗(庵野秀明)が怒って携帯を風呂に投げ込んだ!あたりまえです!乙坂は何を考えているのか?(笑)

宗二朗は妻に罰として2匹の犬を買い与えた。(笑)これをネタに祐里は「拝啓乙坂様・・・」と他愛もない事柄を、住所を書かず書き送った。

同窓会に参加した義母・昭子(水越けいこ)が訪ねてくると、夫が「何日でもいいから泊まって行け」という。これも妻に対する罰らしい。(笑) 

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祐里は犬の一匹を鮎美の慰めになればと実家に連れて来た。そのついでに、廃校となったかっての高校を訪れ、写真を撮って「懐かしい高校を見て・・。“東野美咲”」と乙坂に手紙を書き送った。

乙坂は卒業アルバムから東野美咲の住所を探し、美咲に「文章にするというのも風情があって良いですね!」と返信した。

乙坂からの手紙に「面白い!」と鮎美と颯香は「私のことをどれほど覚えていますか?」と手紙で書き送った。これで乙坂は二通の美咲からの手紙を受け取ることになった。(笑) 文字を見れば分かりそうなものだが・・。

家に帰ると義母が居ない。探すとかっての英語教師・波止場正三(小室等)のところで英語を教わっていた。義母がぎっくり腰で入院することになり、義母の書く英文手紙を持って先生に添削をお願いにいくと、先生から「右手を怪我して添削出来ないから手伝ってくれ」と言われる。祐里は「これ(義母がしていることは)、ラブレターですかね?」と波止場の住所で乙坂に書き送った。

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乙坂は鮎美に「どのくらい覚えているか!昨日のように鮮明に」と初めて美咲を目にしたときのことから、自分が(神木隆之介)が生物部に入って祐里(森七菜:2役)に出会い、祐里の紹介で憧れの美咲(広瀬すず:2役)に話ができたこと。祐里の勧めでラブレターを書き、祐里を通して美咲に渡したこと。祐里が覘き見し美咲に渡さなかったこと。これを責めると美咲が書いた「あなたのことが好きです!お付き合いさせてください」を見せたことなど。

美しい映像で、神木さん、広瀬さん、森さんによる初恋物語が語られます!

乙坂が翻訳しているところに「私が書いた小説は『美咲』です。あなたがモデルなのに忘れるはずがない。あなたは祐里さんでしょう?同窓会で会ったときから分かっていました。美咲がどこに居るのですか?」と訪ねてきた。祐里が「1か月前に亡くなった」と話すと「大学でつき合っていた。そのことを小説で書いた。賞をもらったが彼女の幻が抜けず、彼女のことばかり書く自分が居るんだ。美咲にこの本を読んで欲しい、それで小説を書くのを止めたいと思っていた」。

祐里は「大学でのことは知らなかった。姉が駆け落ちのように結婚し、相手の人は仕事もせず姉に憑りつかれたような人で、鮎美に暴力を振るうようになり、姉は実家に戻り、何度も自殺を繰り返し、山の中で亡くなった。悔しいです。貴方が結婚してくれていたら・・。姉のことを書き続けて欲しい!姉のふりをして手紙を書いたのはまだ姉の人生が続いている、誰かがそのことを思い出し姉が生きることになるように」と姉の死を悔やんだ。乙坂は美咲の死を知っても泣かなかった!

乙坂は昔美咲が住んでいた家を訪ねると、顔を見せた女性(中山美穂)が「美咲さん、うちの旦那の前の人です」と旦那・阿藤(豊川悦司)と連絡を取ってくれ、居酒屋で会うことになった。

酒を飲みながら阿藤は「あまえはあいつの人生に何の影響も与えていない。お前はふられて小説家になれた。俺は出ていってくれというから出て行った。帰ると居なくなっていた。続編を書け!一人称なんかで書くな!人の人生なんかちっちゃな本には収まらん!」という。

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夜、鮎美と颯香は廃校のプールで花火をしながら、颯香が「夏休みが終わるがもう少し居るつもり」という。

乙坂が廃校を訪ねて写真を撮って、犬を連れて散歩中の鮎美を見つけ、美咲によく似ていて手紙を送った美咲だと分かった。鮎美は母の代わりに手紙を書いたことを詫びた。

実家を訪れ、美咲の位牌に手を合わせた。ひとりにしてもらって、美咲の位牌を撫でながら、卒業式で美咲がスピーチする原稿をふたりで考えたこと、「あなたは小説家になれる!」と掛けてくれた言葉を思い出した。仏壇に小説「美咲」が置かれていた。

鮎美は「小説を読み、手紙を読んで小説のモデルが母であることが分かった」と言い本にサインを求めた。そして「母は何度も読んでいました私も何度も読み母に対する愛情がすごく伝わりました。いつかきっとこの人が来てくれると思っていた。そう思うことですごく頑張れた。もっと早く来て欲しかったが、母は喜んでいると思います」と話した。

颯香はこの話に感動して、仙台に帰って学校に行くと言い出した。颯香は好きな人がいて、夏休みで焼けた黒い顔を見せたくなかったのだった。(笑)

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祐里の勤める図書館を尋ねた乙坂は廃校を訪ねたこと、鮎美と颯香に会ったことを纏めたアルバムを祐里に渡し、「もう一度小説と向き合う気がしてきた」と伝えた。祐里が「先輩に初めて握手!」と喜んだ。

鮎美は仏前で母の遺書を開けた。それは卒業式での母のスピーチ原稿だった!

感想:

前段は祐里と久し振りに会った初恋の人・乙坂の、ちょっと後ろめたい文通や美咲の娘・鮎美、颯香との謎の文通で「何のことやら?」とちょっと苛立ちましたが、後段、乙坂が祐里を訪ねるあたりから、乙坂と美咲の恋愛模様が描かれ、ふたりが結婚しなかったのは、おそらく乙坂が「好きだ!」と言い出さなかったことではないか。美咲が自殺した理由は阿藤が語る「一人称で書くな!」が暗示しているとその結末に泣かされました。いろいろと考えさせられるところが面白い! 

美咲の死は乙坂にとって再生のきっかけに、若いふたりには、愛の素晴らしさを知る機会となり、鮎美には「母はひとりではなかった」とその死を乗り越えるでしょう。祐里は昔と同じように姉を乙坂を会せ、美咲は祐里の記憶のなかで生きていくでしょう。

美しい女優さんたち、うつくしい風景、部活、卒業式、同窓会、廃校を使っての映像。だれの胸にも響く思い出。愛を語る道具が全て整った岩井監督らしい愛の物語でした!

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