監督が「夜は短し歩けよ乙女」の湯浅政明さん、脚本が「映画 聲の形」の吉田玲子さん。これは観ないわけにはいきません。WOWOW初放送で観賞です。
サーフィン好きの女学生が、自宅マンション火災で駆けつけた消防士と恋におち、その絶頂期に海で彼を失う。彼女がこの喪失感からいかにして立ち直るかという物語。
吉田さんの情感豊かな物語に、湯浅さんが自然を超えた美しさで、その情感を創造性豊かな絵をつけてくれます。アニメとは創造性、自由な発想を楽しむものだということを教わります。
世界的にも高く評価された作品、すばらしいです!!
声の出演は片寄涼太・川栄李奈・松本穂香・伊藤健太郎さんらです。音楽は大島ミチルさんです。
あらすじ(ねたばれ):
海洋学部の大学生となった向水ひな子は、好きなサーフィンが出来ると美しい浜辺のあるこの町にやってきました。波に乗ったひな子の姿に「僕らのヒーロー」と叫ぶ消防士のふたり。
アパート6階にひとり住まいのひな子。隣の建設中のビル火災がアパートに飛び火して、逃げ場を失っていたところを助けてくれたのが消防士の雛罌粟港(ひなげしみなと)。火災はいたずら花火が原因だった。
これが出会いで、ひな子がミナトにサーフィンを手ほどき。ミナトのサーフィンが上手くなると同時にふたりの恋が育っていきます。この恋に説明はいらない! サーフボードで波を走るふたり。ゲーム、花火見物、カラオケと楽しいデート。
すべて美しい絵で表現してくれます。
水溜まりに映る姿など“気付かなかったところ”を美しい絵で見せてくれます。オムライス、ドリップコーヒーなどは、絵ではなくて“食べたと思える感じ”が出ているところが凄い!
雪がちらつくクリスマスの夜、ポートタワーに上り、ふたりでハートの札掛けをしました。
ひな子は「雪の降ったあとにはいい波が来る。そのあと願が叶うというがまだ行ったことがない」と喋った。
翌日、ミナトはひとりで冬の海に出掛け、携帯でひな子に「波に乗れた!」と知らせた。しかしひな子は不安を感じて海に走ると、ミナトは溺れる子供を救助して亡くなっていた。
ひな子は葬儀にも参加せず家に引きこもってしまった。ミナトの想い出すことしかできなかった。
ひな子は「ひな子には波に乗ってほしい。困ったときに呼んで!」というミナトの口癖を思い出しミナトが歌っていた詩を口ずさむと、ミナトが見えた。
これからは唄えば、雨が降ればそこにミナトがいる。家に帰ってコップに水を入れればそこにミナトがいる。川を見ればそこにミナトがいる。学友はおかしいというがミナトが見せる。水筒に水をいれての散歩。さらにはビニール袋に水を入れて持ち歩く。(笑)
ミナトの消防署での後輩・川村山葵がこんなひな子を心配し、ひな子を現実に引き戻そうと「好きだ!」と伝えるが全く受付ない。トイレで便器に話しかけるひな子。(笑)
狂おしいひな子の感情を絵にして見せてくれます。
ひな子が歩いている先で車両事故、車が炎上するのを見たひな子はミナトを呼んだ。消防車が来て消火した。が、呼んでもミナトはこちらに来ない。天に昇っていってしまった。湯浅監督でなければ描けない情景画です!
「もう呼んではいけない」とひな子のミナトがいない現実を取り戻す様が描かれます。
ミナトの実家を訪れミナトの位牌にお参りし、妹・洋子からミナトが何故消防士になったかを聞きました。ひな子には記憶がなくなっていましたが、幼いころひな子が溺れるミナトを助けたことでした。私にもやれる!
ひな子は消防署でライフセーバーの免許取得を挑戦します。夏がやってきて花火のシーズン。花火大会の夜、いたずらで花火を上げるというグループの話しを耳にしたにひな子と洋子は、これを確かめようとグループの後をつけて、あの火災で焼けただれた廃ビルに入って行った。
グループが花火に火を点け火災となった。火の回りが早くて脱出できない。ひな子は塞ぎ込む洋子を庇って、消防が発射する大量の水の中をミナトに励まされ、洋子を庇って脱出。
洋子をサーフボートに乗せ荒れる波を乗り切るという壮大な脱出劇。新たに生きる力を得たひな子を描いて見せてくれ、とても冒険的な壮大な脱出劇でした!
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感想:
テーマは“波に乗る”。うまく波に乗るためには自分の波を探せというテーマが物語のなかで一貫して描かれ、「自分の人生は自分で見出せ!」というテーマが分かりやすい!!
大切な人の死をどう克服するか?その苦悩のなかで少しづつ気づいていく過程が丁寧に描かれ、彼の言葉のなかに答えを見出して、「人を助ける人になりたい」と彼の人生を引き継ぐ決意に納得です。( ^)o(^ )
そして最後に、彼を忘れるために大泣きをして、再びサーフィンの世界に戻るという結末に泣けます!
廃ビル火事のなかでの脱出劇の描き方に、監督の脳の中をのぞいた感じです。(笑)
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