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「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」(2018)

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コロナ騒動のなかでの劇場鑑賞。ウルグアイはサッカーの国というぐらいの知識しかなかったですが、その風土や音楽に癒され、ヒムカの純な政治家思想に触れ、やる気があればここまでやれると、今の時期だから観るべき作品だと思いました!

給料の9割を貧しい人のために寄付し、職務の合間にはトラクターに乗って農業に勤しむ、風変わりだけど、自然体で大統領という重責を担った、南米ウルグアイの第40代大統領ホセ・ムヒカ(2010~2015)。
ラクターを運転する大統領がいることに驚いた監督、カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを2度受賞しているエミール・クストリッツァが、社会を変えるにはこういう人物と興味を持ち、2014から撮影を開始し、大統領としての任務満了するまで(2015)を描いたドキュメント風作品です。

冒頭、ふたりがマテ茶を飲みながらの談話から始まり、こうやって飲むとマテ茶は美味いと茶を勧めるシーンで終わるという、特別な筋立てがあるわけではなく、ムヒカの“喋り”に映像を合わせ、その順序も時の流れに沿ったわけでもなく、タンゴ、ムルガ、サンバを聞きながら、素のムヒカを眺めているといった作品です。

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監督には演出する必要は全くなかったということでしょうか。特別な人としない演出がとても良かったと思います。ちなみに監督はボスニア・ヘルツェゴビナ出身で、ボスニア紛争を「アンダー・グランド」(1995)で描いています。

作品の肝はムヒカの喋り「語録」です。

撮影はレオナルド・エルモ、セバスティアン・トロ。キャストはホセ・ムヒカ(本人)、ルシア・トポランスキー(夫人)、エレウテリオ・フェルナンデス=ウイドブロ(元国防大臣)、マウリシオ・ロセンコフ(小説家)です。


『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』予告編

感想(あらすじ):
〇刑務所が自分を作り上げた。
かっての獄中生活について語ります。ウルグアイは第2次戦争が終わってしばらくは南米のスイスといわれるような豊かな国家であったが、米国の資本が入り政治が腐敗。キューバ革命に刺激され、反政府活動組織に参加して都市型ゲリラ戦を戦った。貧困層を救うため要人誘拐、銀行強盗をやって逮捕・収監された。100人が脱獄したという有名なブンタ・カレータス刑務所の脱獄に成功したが再逮捕。ここで出会ったのが後に夫人となるルシア・トポランスキー。彼女も反政府活動家で文書偽造の仕事に関わっていた。その後13年間、国内の全刑務所を盥回しされ、1985年刑務所生活から解放されて政治活動に入った。

監獄生活がなければただの“あほんだら”だった。堕落した、成功に目が眩んだ、つまらん男になったと思う。ここで学んだのは「それは矛盾しているようだが、『時に悪は善である。そしてその逆もある』と悟ったことだという。温和な風貌ですが、善も悪も呑み込めるという大きな人物。

「政治の世界で探すべきは、大きな心と小さなポケットの人物だ」と大統領選挙戦を戦う。耳が痛いですね!(笑)

刑務所生活で得た最大の宝物は、長い刑務所生活を支え続けたルシアさんの愛を得たことだと思います。「政治には愛が必要だ」と自らが語るように、夫人の支えがなければ大統領も務まっていないと思います。すばらしい大統領にはよき伴侶が必要です!これも耳が痛い!(笑)

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革命家時代の若きふたりの写真が写し出されますが、今とは違って(笑)、映画に出てくるような恰好良いカップルです。ふたりの愛の物語が作れるかもしれませんね!

夫人は「彼が大統領になるとは思わなかった」と言い、大統領の要件を「分かり易い言葉で喋ること」「信念を持って生きること」と支えます。現在は上院議員です。

古いホルクスワーゲンで出掛け、肉屋で買い物しておかみさんと話す。自分で料理をするとのこと。

貧困率を下げる。
こだが大統領の一貫した政治信条。貧困層の人たちに建設した住宅を視察する。そこでは子供たちがサンバで出迎えです。この施策に「サッカー場をつくれ!」と噛みつく男に「バカ者!」と叱り飛ばす大統領。

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〇文化が大切だ。
文化は社会が進歩するための基礎だという。刑務所を出たとき社会主義はすぐ来ると思ったが無理だった。文化を変えることの方が大切だ。社会主義から資本主義に変わったがこれでも解決しない。別の方法を模索するという。
「人間は社会主義的なものだ。資本主義は個人的だ。人間ひとりでは生きていけない。人間が人間らしく生きるには連帯感をもつことが大切だ」と説きます。

農業学校開校記念式典での挨拶。
あたしたちは世界を変えるために忙しく、子供を持てなかった。寿命も近づいてきたし何を残すかを考えた。私が作る学校ひとつで世界は変えられないが、「世界を変えるためには沢山の学校が必要なんだ!」と生徒たちに話しかけました。

大統領の無念なことのひとつが子供を持てなかったことのようで、子供たちの教育と文化を大切にしたいと子供たちと一緒に植樹をします。

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この記念式典に、派手な衣装で歌い踊る若い人たちが参加している。これは政治を評価する若者たちの行動だそうで、若い人が政治に参加する習慣を持っているのがいい。

〇人類に必要なのは気候変動のための金だ。
監督から「大富豪が800臆ドル持ってきたらどうする」と尋ねられ、「騙されないよう必死に警戒するだろうな。そんな金はいらない!」と答え、人類に必要なのは気候変動のための金だ」「持っている資産は寄付する、残すと官僚に使われだけだ」という。(笑)

2012年のブラジルで開催された「国連地獄嘉納な開発会議」で「気候変動を引き起こしている真の原因は、消費至上主義である。経済発展は必ずしも人類の幸福に結びついていない」とスピーチし世界から注目を浴び2度にわたりノーベル平和賞候補者に選ばれた。

いよいよ離任のときです。5年の任期を終え、大観衆に感謝して「去るのは死ぬとき、皆さんに寄り添っています」と挨拶。泣いて見送る観衆、まるでローリング・ストーンが町にやって来たような風景だったと監督は言います。

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後人に託して去るという、この去り方が良い。そして夫婦がバーで歌う愛の歌。最後に「夢はいつかは終わる」でENDマーク。余韻のある作品でした。
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