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「日本沈没」(1973)希望を捨てない、生きるという強い意思こそが、この恐怖から救ってくれる!

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コロナウイルス感染症騒動を見ながら、未知の恐怖にどう対応すべきか。これ以上の恐怖はないと本作をDVDで観賞しました。

原作は小松左京さんの同名ベストセラー小説。映像化された作品はいくつかあるようですが、最も原作に近いものと本作を選びました。

 地震学者による日本沈没予言。まさかと思っていたが東京大地震が生起し、これを機に1臆1000万人の国民をいかに海外脱出させるかというSF物語。地震学者、総理大臣と総理を支える政治フィクサー、悲恋の若いカップルを中心に展開され、政治色彩の濃い作品です。

 日本が沈没するという科学的な説得、それでも受け入れない心理。地震が生起たことでの悔やみ・反省。世界は1臆もの日本人を受け入れてくれるか、国民はどう行動するか等興味が尽きない。SFとは言え、今の日本の有難さ、国際社会の中で生きていくことの大切さを感じる作品でした。

 この作品の目玉は日本海溝の異変、東京大震災、富士山噴火、日本列島の沈没を当時の特撮技術の粋を集めて、現在の技術には比べようがありませんが、よくぞここまで描けたと言えるリアルさです。

 監督は黒澤明監督の愛弟子森谷司郎さん。脚本:橋本忍さん、特殊監督は「ゴジラ」シリーズで知られる中野昭慶さん。木村大作さん雄大で美しい海洋シーンを見せてくれます。

 出演者は藤岡弘いしだあゆみ小林桂樹二谷英明丹波哲郎・島田省吾さんら数多くの名優たちが出演しています。


日本沈没(1973)予告編

 あらすじ:

小笠原諸島北方の小さな無人島は消えたということで、海底火山の権威・田所博士(小林桂樹)は海底開発KKの新海艇“わだつみ”をチャーターして、艇操縦士小野寺(藤岡弘)と地質学専門の幸長助教授(滝川祐介)を伴い、深度8000m級の日本海溝を観測した。そこで見たのは噴火し、雲のように湧き流れる、大量の重金属を含む乱泥流であった。小野寺が「何が起こっている」と聞くが「分からん!」のひとこと。田所がさらに観測したいが、すでに先の運用が決まっていて“わだつみ”が使えない。

 総理の山本(丹波哲郎)は運輸大臣(山本武)からこの話を小耳にはさみ、興味を持った。

 陸に上がった小野寺、見合い話が部長(神山茂)からあり断り切れず、伊東で阿部玲子いしだあゆみ)に会っていた。盛り上がって海辺で語らっていたところに、突然の伊豆半島の噴火。岩石が降り注ぐなか身をもって玲子を庇った。小野寺は田所の話に大きな興味を抱くようになった。

 天城山噴火で損害は死者200名で熱川付近まで溶岩が流れ、道路被害は膨大だという。山本首相(丹波哲郎)は学者、閣僚を交えた懇談会を開き、地球物理学の東大教授・寺内博士(本人)の地震学を聞く。

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田所が「一晩で200mも沈下。太平洋プレートの下で密度の高い乱泥流が起きている。何が起きるか分からない!」と海底の異変を訴えたが、「懇談会で細かいことを言うな!」と幹事長に一蹴された。しかし、首相は自分の後見人ともいえる老人・渡(島田省吾)にこの話をした。

 田所は渡老人に呼び出され、“大地震の前触れか“と聞かれ、”感でそうだが、この感には理屈がある!”と説明したところ、渡の肝入りで、政府役員を含む専門委員会「D計画」グループを立ち上げることになった。委員会メンバーは科学技術庁の中田(二谷英明)、防衛庁技官の片岡(村井邦夫)、内閣調査室の邦枝(中丸忠雄)、これに幸長助教授、小野寺、そしてチーフが田所だった。

 早速、支援を受けた自衛艦に田所、幸長、小野寺が乗り込み、日本海溝に沿って広範囲に計測センサーを海中に埋め、プレートの移動を測定した。

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その結果「M8以上の地震、最悪の場合日本列島の大部は沈むだろう!」との結論を得た。

 その直後、東京大地震が起こり、大きな揺れ・津波・火災によってビルや道路が倒壊破壊し、70万人が被災した。首相も妻を失った。 

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田所は邦枝を伴い、これからのことが心配で、箱根に渡老人を訪ねた。渡が「あれが来るのか?」と聞くから「確実ではないが、来る!」と応じた。これに邦枝が「気ちがい扱いになるかもしれないが、ある程度準備しておけば、1臆の5%、500万人を生かすことが出来ます」と答えた。渡は「分かった」と応えた。

 首相は東京大震災の被害を「何とかしておれば!」と悔やみ、「おの気ちがい男の言うことなど信じてどうなる!」という幹事長を押し切って、外国に顔の効く人材を集めると内閣改造を行った。

 まずは野崎特別大使(中村伸郎)をもってオーストラリア首相(アンドリュー・ヒューズ)に500万人の受け入れを打診した。首相は「それでは国内にひとつの国が出来る」と渋った。このあと、米、中、フランス、スイス・・と説いて回った。

 一方、田所が「日本列島は確実に沈没する」という論文を雑誌に掲載し、TV討論にも出て持論を喋った。しかし、熱くなって相手を殴ってしまい、D計画メンバーから身を引くことになった。中田は「国民に見せて反応を知るためだった」という。

 首相が渡老人を訪ねると、社会学者たちに纏めさせたという「日本民族の将来」という提言を渡された。1新しい国をつくる 2世界の各地に分散する 3どこの国にも入らないという人にという三案が書いてあった。老人は「もうひとつ案がある何もしないほうが良い、1臆人が沈む案だ」という。

 小野寺は兄がカナダで仕事を見つけたこと、「行った方が良い」と賛成した。街を歩きながら、出会う人に「早く逃げろ!」と叫びたい気持ちになっていた。

 D計画メンバーは首相、閣僚に田所博士が作った「日本沈没」シュミレーションを展示し、「10か月後だ」と警告した。首相は2週間後に発表するとして、緊急事態宣言をしてすべてを政府の統制下に入れると指示した。D計画メンバーも政府の新しい機関に組み込まれることになった。これを機に小野寺はDメンバーから離れ、玲子に「結婚したらスイスに行こう」と約束した。

 アメリカの測地学会で「日本で大地震が起こる可能性がある」と発表され、首相は2日早めて「ごく近い将来大地震があり、日本は壊滅的な打撃を受ける!」と発表した。すると間もなく富士山が噴火した。真鶴付近を車で走っていた玲子はこれに巻き込まれ、小野寺は玲子を見つけることはできなかった。

 国連では日本救済特別委員会が急遽開催されたが、840万人しかきまらなかった。早急に集結地を決めよう緊急提言がなされるが、これも難航して決まらない。

 東京湾から国民の脱出が始まった。国連は2か月近くかけて280万人の受け入れしかきまらなかった。閣議で「民族が国を失って、よその国で生きる権利はない。それが現実!」という意見が出る。首相は厳しく叱責した。

首相は渡老人に遭い「国連や外務省、特使に任せきりだったが、自らが海外に行って説く!」と決意を述べた。

 四国・伊勢半島が噴火し大坂が沈んだ。米国から全太平洋艦隊を挙げての支援が発表された。中国も全艦隊を日本の九州、沖縄に派遣すると発表。ソ連艦隊が(当時)舞鶴敦賀に入港すると伝えてきた。

 首相は秘書官から「1千万の大台に乗りそうだ」と報告を受けた。渡老人は「総理のいうようになった。学者の中にはこれで収まるという意見もある」と総理を褒めた。

 三陸沖が沈み始めた。玲子を見失った小野寺はDメンバーに協力し、ヘリパトロール中に漁船で脱出するものたちに「津波が来る!引き返せ!」と警告したが、彼らは海に出て、消えた。

 九州が沈み始め、国連は「これまで動かなかった中央破砕帯が動いた」として、6300万人を残して日本人救出支援を終えることになった。

 皇室をスイスに送ったのち、田所博士は日本に残り、首相、Dメンバーはそれぞれ日本を脱出した。玲子はヨーロッパ行きの列車に乗っていた。

 感想:

未曾有の大災害を乗り切れるか、首相のリーダーシップでした!

 この物語の面白さは、なぜ日本が沈没するのかという科学的な思考と誰もが想像し得なかった日本人の海外脱出という発想です。

前段で斬新な地殻変動説に圧倒され、これにもとずく地震の発生を当時の特撮技術でリアルに描き、後の阪神地震、東北大地震でこの映像を再確認するというすばらしい映像作品でした。

 地震予言は、まるで学者論文のように論理的で、しっかり描かれます。当時の地震学の最先端学理、プレートテクトニクス論が展開され、伊豆半島地震、東京大地震を過去の地震記録をもって再現するという学位論文のような展開でした!

 静岡県地震対策が1978年に始まったことを考えると、我が国の地震対策に決定的な影響を与えたのではないでしょうか。東大の竹内均教授が劇中で説いてくれるわけですから、すごい地震学授業だったわけです!(笑)

 予知を受け入れないというのも、歴史の繰り返しです。「すこしでも準備しておけばなんとかなる」という田所博士の願い。阪神大震災、東北大震災、そして今般のコロナウイルス騒動で痛いほどに味わっています!政治家のみなさんには耳の痛い話が多かったように思います。国民の負託にこたえる覚悟が求められます!

 震災描写はすばらしいものでした。

東京大地震でのビル・コンビナー道路の崩壊・火災、津波の来襲、逃げ惑う市民たち。とてもリアルに描いていりました。自衛隊ヘリによる消火活動がうまく描かれたように思います。宮城に押しかける市民に「武器を使用してよいか」と首相に判断を求めるシーンがありますが、宮内庁長官と協議し宮城に避難させるという、関東大震災時の教訓をうまく取り入れていました。

 富士山の噴火、溶岩流、火砕流の発生、これに逃げまどう人々。これもうまく作られていました。普賢岳、御岳山の噴火を見るおもいでした。

 震災後の市民の生活に全く触れてないは、尺に制限があるとしても、残念でした。

 世界に向かって脱出。世界が日本人がどう受け入れるかと興味がありました。

受け入れ国にはそれぞれの国民感情、紛争、犯罪など難しい問題があり、受け入れられるにはどうするかと逆に日本人とは何者か、どう世界は繋がっていくかと考えさせてくれました。

「日本人は若い民族でこれまで4つの島の中でぬくぬくと育ったが、これからは外に出て帰るところが無くなり、海千山千の中で、しっかり生きて行かねばならない」というメッセージがよかった。

 日本脱出を国民にどう伝えるか!情報の管理をどうするか、脱出者選定をどうやるかなどいずれも大パニックを起こす問題。ここではほとんど描かれませんでしたが大きな問題です。

 希望を捨てない、生きるという強い意思こそが、この恐怖から救ってくれることを教わります。

小野寺と玲子にはいつかは会えるという希望がある。愛という力の大切さを説いてくれました。なんでこの場でこのシーンが必要なのと思われたふたりのとっぴでもないラブシーンが、ラストで生かされるという、うまい結末でした。藤岡弘さん、いしだあゆみさん、映画史に残るラブシーンでした!

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