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「ファイヤーフォックス」(1982)ロシア語で考えてろ!

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音速の6倍で飛行し、レーダーに影すら残さないソ連戦闘機ミグ31(NATOコード:ファイヤーフォックス)を盗み出すベトナム戦で活躍したアメリカ空軍パイロット、この軍人をクリント・イーストウッドが演じるという。まさか!とNHKBSプレミアムで観ました。(笑)

米軍はベトナム戦争に敗れてからの再建中で、米ソ冷戦の真っただ中、激しい兵器開発競争のなかにあった。映画界ではスパイもの映画として「007」が席巻するなか、スぺ―スものとして「スターウォーズ」が登場。このような環境のなかで、本作の製作企図がどこにあったか?“観れば分かる!“という、”歴史を感じる映画“でした。

マッハ6の飛行がどう描かれるかという興味もありました。

原作はクレイグ・トーマスのベストセラー小説。製作・監督はクリント・イーストウッド、製作総指揮はフリッツ・マーネイズ、脚色はアレックス・ラスカーとウェンデル・ウェルマン、撮影はブルース・サーティーズ、音楽はモーリス・ジャールが担当。出演はクリント・イーストウッド、デイヴィッド・ハフマン、フレディ・ジョーンズ、ウォーレン・クラーク、ナイジェル・ホーソーなどです。

あらすじ:
米空軍大尉ミッチェル・ガント(クリント・イーストウッド)は空中戦の敵戦闘機(ソ蓮機)パイロットを勤めていたが、ベトナム戦時のPTSD発作のため退役し、アラスカ州で療養していた。そこに武装ヘリが迎えにきて連れ出されSIS本部に出頭(笑)。「ロシア語が話せてソ連機を操縦できるのはあなたしかいない」と半ば強引に説得させられ、「ソ連ビリヤスク秘密基地に潜入して、開発中のファイヤーフォックスを盗み出す」という任務に就くことになった。

ファイヤーフォックスは出力2.6トン、戦闘高度36000m、思考制御誘導方式、マッハ5以上の能力を有し、世界を制する機体だ。

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秘密基地の実験担当主任バラノビッチ博士(ナイジェル・ホーソーン)は反体制のユダヤ人で、情報ルートは確保されているという。

ガントのPTDS原因は近接爆撃中に対空砲で撃たれ地上に脱出。救出に来た友軍機が放ったナパーム弾で少女が消えたことによるもの。これはイーストウッドらしい設定だと思います。

トレーナー、F104、F4ファイターで再訓練をしたのち、ロンドンでイギリス秘密諜報局ケネス・オーブリー(フレディ・ジョーンズ)から具体的任務を受けた。「麻薬売人レオン・スプラーグになりすましモスクワのクラスノホルスキ橋に行け。そこで迎えにきた3人に会い、あとは彼らの指示に従え!ファイヤーフォックス機を盗んだ後は、このトランジスターラジオの指示により、給油基地を探せ!」というものであった。

ガントがモスクワに現れると、すぐにKGBに追跡される。指示されたクラスノホルスキ橋に行くとレオン・スプラーグ以下3名が現れたが、いきなりレオン・スプラーグが殺害され、ガントは新しいパスポートが渡され「マイケル・ルクス」なる人物になって指定されたホテルへと急いだ。

下車駅で非常線を張っていたKGBに尋問され、トイレの中でこの男を殺害し、橋に迎えに来た現地協力者ウペンスコイ(ウォーレン・クラーク)と落ち合った。

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運送会社員のグラズノフに化けて、ウペンスコイとともに配達車のバンでビリヤスク秘密基地を目指す。途中検問所で写真を撮られ、KGB車に追わる。が、追随する(バラノビッチ博士とともに働いている)セメフスキー博士(ロナルド・レイシー)の車に乗り換え、トランクに隠れて、秘密基地に侵入してパラノビッチ博士に匿われた。

博士は「明日の試験パイロット・ボスコフが現れたら入れ替わること!思考制御誘導はロシア語で考えること!武装はミサイルに機関砲それに後方防御ポットが装備してある」と機の性能を話し、「格納庫で火災を起す、その混乱を利用して飛び出せ!」と発進後航法装置に入力する座標を渡した。

KGBも米軍パイロットが侵入した可能性があると臨戦態勢。出勤したボスコフを殴り縛り上げテープで口を封じてサウナに隠し、火災発生を待つガント。

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火災が発生。ガントはボスコフの与圧服、ヘルメットを着けて機に搭乗し、大空に舞った!しかし、格納庫ではパラノビッチ博士らがKGBに射殺された。試験を視察に書記長(ステファン・シュナーベル)がやってきた。

ソ連指導部は書記長の激しい怒りでガント追跡の指揮に混乱を生じたが、最終的にファイヤーフォックス2号機でこれを追わせることに決定した。

ガントは機体性能を確認するため、低高度で雪面を跳び、衝撃波で大きな雪崩が発生し、海面では高い波の壁が立ち上がる。

ソ連の戦闘機、巡洋艦からのミサイル攻撃をかい潜り、民間機に姿を見せて航路を偽編し凍結した海面に降りて潜水艦からの給油を受けて、アラスカへと飛び立った。

そこにファイヤーフォックス2号機が現れ、2機によるドッグファイト
                
感想:
物語は前半でビリヤスク秘密基地への潜入行動、後半でパイロットの脱出行動が描かれます。
前半、
何が起きるか予測できないところを省いた命令でモスクワに飛び出したガントは、KGB部員を殺したことでKGBに追われ、何が起きるか分からないとミステリアスで、多分に「007」を意識して観ましたが、これほどの迫力はなかった!しかし、イーストウッドの魅力は表現されていました。ここはむしろ、ユダヤ人に対する迫害、チェコ侵入に対する抗議などソ連への非難、GBによる監視社会など人権侵害や自由のないソ連社会を描きたかったのでしょう。今の人にはピンとこないかも知れません。

後半、
パイロットの行動ということでなく、「ファイヤーフォックス」の飛行特性を見せるように、雪上、海上、狭い山岳回廊を跳び、衝撃波が引き起こす雪崩や波が立ち上がる光景を見せてくれました。CGも当時とすればよく出来ていたと思います。しかし、マッハ6の衝撃波が見れなくて残念でした。これほどの戦闘機は今だ出現していません。(笑)

大半はガントを追うソ連高官たちの指揮活動に置かれ、書記長に振り回され混乱する将軍たちの活動が描かれました。当時の書記長はブレジネフで世界から嫌われていましたから、ソ連の書記長を揶揄したのかもしれません!(笑) 自由のないソ連を訴えたかった。

最後のファイヤーフォックス2号機とのドッグファイト。ガント機は2号機のミサイル攻撃を全て回避したが、PTSD発作で急降下し、機を立て直したところを2号機に後方から絶対的な好位置につけられ、あわやというとき「ロシア語で考えて!」と思い出した途端に、“後方ポッド”が火を噴くというラストシーンはイーストウッドらしかった!

当時の緊張した冷戦状況を知らない人たちが観たら間延びしたドラマに見えたかもしれません。こういう時代があったということを認識し、平和を願いたいです!
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