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「鉄道員」(1956)

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主題歌「鉄道員のテーマ」はどこかで耳にしているでしょうが、このタイトル?なんの話?(笑) それほどに地味な話で、胸に刺さる家族の話なんです。
戦後10年、電気機関車が牽く急行列車の機関士は憧れの職業のひとつ(日本でも同じでした)。「機関士の俺は特別!」と勘違いし、家族や友人を傷つけ、絆を失った頑固親父さんが幼い息子の力を借りて、それを取り戻すという、どこにでも転がっている、今に通じる話です。

耳が痛い話で、この作品を観ながら反省するという、常に胸の中に締まっている作品です。

監督:ピエトロ・ジェルミ、脚本アルフレード・ジャンネッティ、ルチアーノ・ビンチェンツォーニ 、撮影:レオニーダ・バルボーニ 、音楽:カルロ・ルスティケリ
出演者はピエトロ・ジェルミエドアルド・ネヴォラ、ルイザ・デラ・ノーチェ、
シルヴァ・コシナ、サロ・ウルツィ、カルロ・ジュフレ、レナート・スペツィアリらです。


Pietro Germi - Il Ferroviere - Trailer with Theme

あらすじ(予告編で全て思い出せるのではないでしょうか!):
マルコビッチ(ピエトロ・ジェルミ)はミラノーボローニャ間を走る急行電車の機関士。ミラノ駅に帰り着くころに、幼い息子のサンドリーノ(エドアルド・ネヴォラ)が「乗務員だ!」と改札口をパスして父を誇らしく出迎える。「今度は機関士マルコビッチの息子だと言え!」と抱き上げる。大きめのオーバーを着で大股に歩くサンドリーノ:エドアルド・ネヴォラが圧巻の可愛らしさです!これでこの作品は大成功です。(笑)

この日はクリスマス。家族が全員集まっていた。結婚した長女のジュリア(シルヴァ・コシナ)は大きなお腹を抱え、夫レナード(カルロ・ジュフレ)と一緒だった。ジュリアのシルヴァ・コシナが美しく、肩入れしたくなりますね!

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長男のマルチェロ(レナート・スペツィアリ)は仕事がなくぶらぶらしていて、父とは合わない。しかし、義兄のレナードとは商売の話をする仲でした。

戻ったマルコビッチはサンドリーノを先に帰し、ウーゴのバーに寄って、飲んでるうちに仲間と盛り上がり、深夜の帰宅した。本人は家族に迷惑をかけたという自覚は全くない。ところがシュリアが急に産気づき入院したが、死産だった。

ジュリアは「あんな男!」と結婚に反対する父を押し切って食品店を営むレナードと結婚したこと、結婚式で「絶対に男の子を産め!」と、酔っぱらっていたが、喚く父の言葉が胸に刺さっていた。

ジュリアは、死産を機に、実家に寄りつかなくなり、レナードともうまく行かなくなった。

そんなある日。雪で視界が利かないなかでの運転中に、若い男の飛び込み自殺に遭う。いやな気分を払いように酒を口にして運転。赤信号を見落として大事故を起こすところだった。この事故で停職処分を受け、身体検査を経て、古い蒸気機関士へと配置転換させられた。

ジュリアはある男と付き合い始め、これを目撃したサンドリーノに「内緒!」と口止めした。レナードが産院で無神経に「子供が欲しかった!」と喋ったのが悪かった!

一方、レナードはジュリアの母親サラ(ルイザ・デラ・ノーチェ)に「もうやってゆけない!離婚を考えている」とこぼしにやってくると、サラがこれに同情するんです。(笑)
レナードは今でもジュリアが好きなのに本人に言えず、母親に話すというのが面白い。よくある話で、よく書けた脚本だと思います。

マルコビッチはスト決起宣言する労組大会で間違った自分の処遇を取り上げて欲しいと訴えた。しかし、無視された。彼はウーゴの店で飲んでクダを撒き、酒に溺れていった。

サンドリーノはレナードの味方。ジュリアの新たな男の車をパチンコで傷つけたことで、ジュリアが母サラに会いに来て、マルコビッチと鉢合わせ。マルコビッチはジュリアに手を上げた。そこに長男のマルチェロがきて親子喧嘩。マルチェロが家を出た。

スト決行の日。マルコビッチは急行列車の機関士として勤務した。「マルコビッチはスト破り」の落書きが出現、サンドリーノは仲間はずれとなった。マルコビッチは居場所を失い家を出てしまった。

そんななかで、サンドリーノはレナードから頼まれてクリーニング店で働くジュリアに衣類を届け、姉の元気な様子を母サラに話し、「姉と父はどちらが悪いの?」と聞いた。サラは「話さないことが積もってこうなった。皆、上辺だけで、本当の幸せでない!」と涙を流した。サンドリーノはこの母の涙を見て、父を迎えにいくことを決めた。

幼いサンドリーノの迎えで、マルコビッチは「自分は特別だと思っていたが、何でもないことに気付いた!」と反省し、ふたりでウーゴの店に寄り、今までのように仲間に入れてもらい、歌っていて突然倒れた。

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クリスマスの日。マルコビッチが退院して帰宅。大勢の客から祝福を受け、妻サラに感謝の言葉を掛け、ギターを奏でながら眠りについた・・・。
                
感想:
鉄道員一家の日常生活が子供目線で描かれるとても平易な物語の中に、哀愁に満ちた音楽で、それぞれの家族の細かい感情が掬い取れ、家族にとって何が大切なのか、人としでどうあらねばならないかということが伝わってくるすばらしいドラマでした。

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一番苦しんだのは誰?お母さんですよね。母の涙でお父さんを呼びにいく幼いサンドリーノ。厚いオーバーを着て、すこし蟹股で急ぐサンドリーノの姿が目から離れません!

家族が分かり合え、絆を取り戻したのも柄の間。マルコビッチが癌で眠るように亡くなってしまうという結末。母サラが「部屋が広くなった」と気丈に振舞うがぼんやりした表情。父に代わって兄マルチェロと一緒に学校に出掛けるサンドリーノの笑顔で終わるエンディング。力強い家族の再出発でした。

物語はこのままで時を経ますが、キャストの皆さんが次々となくなっていく。
長女ジュリアを演じたシルヴァ・コシナが1995年に亡くなるんですが、これが悲しかった。生き続ける家族の物語であって欲しいです
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