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「アラビアンナイト三千年の願い」(2022)神話は科学にとって代わられると信じる女性に愛を説く恋物語だったとは驚き!

 

「~怒りのデスロード」のジョージ・ミラー監督とそのスタッフと「ドクター・ストレンジ」のティルダ・スウィントン、「ワイルド・スピード」のイドリス・エルバ出演で描く作品。アラビアンナイトの世界がどう描かれるか、メッセージはと楽しみにしていました。

公開当日初回に参加しました。東宝シネマさんは大きな劇場を準備してくれましたが、残念ながら観客は少なかった。本作はそんな作品ではなく、よく分からなかったが(笑)、哲学的なメッセージもあり、これまでの監督作の延長戦上の作品でした。

監督:ジョージ・ミラー原作:A・S・バイアットの短編小説「ザ・ジン・イン・ゼ・ナイ・チンゲーリズ・アイ」、脚本:ジョージ・ミラー オーガスタ・ゴア、撮影:ジョン・シール編集:マーガレット・シクセル、音楽:トム・ホルケンボルフ。

出演:イドリス・エルバティルダ・スウィントン、他。

物語は

古今東西の物語や神話を研究するナラトロジー物語論の専門家アリシアティルダ・スウィントンは、講演のためトルコのイスタンブールを訪れた。 バザールで美しいガラス瓶を買い、ホテルの部屋に戻ると、中から突然巨大な魔人:ジン(イドリス・エルバ)が現れた。意外にも紳士的で女性との会話が大好きという魔人は、瓶から出してくれたお礼に「3つの願い」を叶えようと申し出る。そうすれば呪いが解けて自分も自由の身になれるのだ。

だが物語の専門家アリシアは、その誘いに疑念を抱く。願い事の物語はどれも危険でハッピーエンドがないことを知っていたのだ。魔人は彼女の考えを変えさせようと、紀元前からの3000年に及ぶ自身の物語を語り始める。そしてアリシアは、魔人も、さらに自らをも驚かせることになる、ある願い事をするのだった……(映画COMから引用)

本作は「アラビアンナイト」をモチーフにした作品。「アラビアンナイト」ではパルシャの王様が最初の妻に不貞されて女性不審に陥り、処女と交わって翌日には処刑する。これを諫めようと大臣の娘が千日間王様に殺されない話を続け、これによって王様が改心するという話。本作では王様がアリシアで大臣の娘がジンと対比していることになります。ジンはディズニーでお馴染みのジンです。お伽話が二重構造になっていてややこしい!(笑)


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あらすじ&感想(ねたばれ含む:注意)

自らが孤独で性格性に欠けているというラトロジー物語論の専門家アリシアが人類に共通する物語を書いたと、学会講演のためイスタンプールを訪れた。空港でピンクのコートを着た小男に「ジンを信じているのか?あいつはエイリアンだ」と言われた(空耳?)。

そして、講演で「神話は科学にとって代わられ、神や魔物は隠喩(メタファー)として残る」と話したところで「ふざけるな!」の声が飛んできて、ぶっ倒れた。アリシアは目ざめて、他人には見えないものが見え、想像以上のことが起きていると感じた。

講演が終わって骨董品を求めてバザール市場に。一番奥の店で青と白の螺旋模様の入った小瓶を買った。

この小瓶の美しさをみれば、本作が如何に美しく出来ているかが分かります!

ホテルに戻り、ナイトガウンに着替え、夕食を注文して、小瓶をバスルームで洗っていて、小瓶の蓋が外れた瞬間に煙が舞い上がり巨大な魔人・ジンが姿を見せた。ジンが「3つの願いをかなえる」と言うので、おかしなことが起きると思いながら、ドアーを閉め、この男の話を聞くことにした。

「私は今、ひとりぼっち。話を聞いてから願いを考える!」と返事して、「いつ小瓶に入るようになった」と聞くと、ジンは「3,000年前のシバの女王とソロモン王のときだ」と言い、その顛末を語り始めた。

第1話、ソロモン王に追われた経緯

ジンがシバ(アーミト・ラグム)の女王を愛していたが、突然訪ねてきてハープを弾くソロモン王(ニコラス・ムアワッド)に女王が好意を抱いたため、ジンは「難問を出して帰ってもらえ!」と指南した。女王が「私の欲しいもの何か?」と聞くとソロモン王は即座に「セックス!」と回答した。これでふたりは愛し合うようになり、ジンがこの姿を覗き見したことがソロモン王の逆鱗に触れ、真鍮の小瓶に入れられ海に捨てられた。そして2500年間自分を欺くように過ごしたという。(笑)

この数分間の物語を無声で“デスロード”よろしく、魅惑的で淫靡な映像を見せてくれます。まさにファスト映画でした。(笑)この物語をあと3本見せてくれます!これは楽しめました。(笑)

この物語の後、ジンはアリシアに「未亡人か?」と聞いた。アリシアは「夫がいたが別れ、自由を得たが、孤独で今は物語の中にいる」と応えた。ジンは「それでも願いはあるだろう」という。「あなたをまだ信じられない。そして物語にハッピーエンドなものがない」と答えた。

ジンは「願いがないと消えなければならない」とさらに物語を語り始めた。

第2話、王子の子を身ごもった奴隷の少女を助けられなかった話

オスマン帝国時代。奴隷の少女グルタン(エチュ・ユクセル)がムスターファ王子(マッテオ・プテッツり)を壁の隙間から覗き見して、壁が崩れ小瓶が現れた。ジンはグルタンの望みを叶えることにした。第1はムスターファ王子と結婚すること。次が懐妊することだった。

グルタンは1、2の要望を叶え大きなお腹を自慢していた。このとき王宮に革命があり、王子は国王によって処刑された。ジンはグラタンに逃げるよう進言したが、彼女は敵の手に墜ちて海に投げられ亡くなった。小瓶は人食い魚のいる牢に投げ入れ、やがて海に流れ出て漂っていた。

第3話、大女の妃を助けようとして海に捨てられた話

1620、ジンは兄弟の王子に発見され、城の床下に隠され、ジンはここから兄弟を見ていた。兄のムトラ(オグルカン・アルマン・ウスル)が20歳で戦場に出た。万一の場合に後継者がいなくなる女王は心配し、弟のイブラヒムを牢に閉じ込め、女を侍らせ、放縦に過ごさせた。このためイブラヒムも女たちもぶくぶくと肥えていった。

戦場から帰還したムトラは語り部を呼び出し話を聞いて気にいらねば殺という暴君になった。しかし、ひとりの老人の語り部に会いその性格が治ったが、その語り部が亡くなり、ムトラは孤独だと嘆き亡くなった。代わりにデブのイブラヒムが王位につき、デブ女のシュガー・ランプ(アンナ・アダムス)を妻として迎えた。このシュガー姫が床で滑って転んで、小瓶が割れた。(笑)ジンはシュガー姫に「助けてくれ!」と懇願したが、姫は怒りで小瓶を海に捨てた。(笑)

ここまで話してジンは「何か望みを言ってくれ!自由になりたい!」とアリシアに懇願した。アリシアは「2度小瓶が壊れ自由になるチャンスがあった!」と責めた。するとジンは「ゼフィールによってここにきている」と、賢過ぎたゼフィール(ブルク・ゴルゲダール)の話を始めた。

第4話、賢過ぎたゼフィールに捨てられた話

ゼフィールは人類の文明史を暗記しているような頭のいい子だった。魚を捌いていて小瓶がでてきた。彼女は人類の文明史を暗記しているような女だった。「自由と会話を望んでいる」と希望してきた。ジンは哲学や数学、詩の知識を与えた。すると仲睦ましかった夫のセックスを断り、ジンの話を聞くだけが楽しみになっていった。

そして第2の望みとして「ジンになりたい!」と要望した。そこでジンはゼフィールと結婚し子供をもうけた。しかし、3番目の要求は知識が限界に達し「ジンに会わねばよかった」というものだった。これでジンが再び小瓶の中に戻った。

アリシアはゼフィールの話に感銘し「あなたを愛したい!あなたに恋したい」と願い事をした。ジンは「快楽のためか?」と聞くと「あなたの孤独を埋めたい!永遠に!」と答え、「シバの女王とゼフィールに与えた愛が欲しい」とお願いした。アリシアは「ふたりの関係をどう説明しても誰も信じない。愛は理性ではない。真実なのか狂気なのか分からない」と気持ちを伝えた。

 ジンはアリシアの願いを聞き入れふたりは結ばれた。アリシンはジンを小瓶に戻して空港の検査をうまく切り抜けて、ロンドンの自宅に戻った。

自宅でジンを元の姿に戻した。ナラトロジーの専門家としてのアリシアの仕事は順調だった。アリシンの仕事中はジンがロンドンの見物に費やしていた。ところがふたりの生活に隣家から嫌味を言われ、ジンが「騒がしい人ばかりで、あらゆる文明が騒がしい!」とノイローゼになってきた。

ある日、アリシンが家に戻るとジンが居ない。探すと老化しやつれたジンがいた。散歩に行くと逃げ出す。アリシンは「愛するのが全て、あなたの世界に戻ってもいい」とお願いした。すると小瓶が割れてしまった。ジンは旅に出た。アリシンはジンがいつ戻ってもいいようにジンの持ち物を整理して保管した。

3年後、公園のベンチで物語を書いているとそこにジンが笑顔でやってきた。ふたりで公園の中を歩いた。彼はたまに現れ、この世界では見えないが、彼女は十分幸せだった。

まとめ

「~怒りのデスロード」のジョージ・ミラー監督がこうきたか、まさか?と思える作品でした。(笑)

神話は科学にとって代わられると信じる女性に真の愛を説く恋物語だったとは、驚きました。ジンの姿は見えないが、アリシンは孤独から脱出し、愛の心を取り戻し、感情豊かな人生、ナラトロジーとしての生活を送れることになりました。

 愛の物語は科学が進歩してもこれに代わることはない。このことは映画でも同じで、映画が消えることはない!本作で描かれる4作品のお伽話映像を観れば明らかです。ジンがロンドンで悩んだのは、早すぎる文明の進化だったのではないでしょうか。

アリシン役のティルダ・スウィントン、恋を諦めた孤独で知的な学者がジンによって恋心を取り戻していく演技に、この世界にジンは存在しているという信じるに十分な演技でした。そしてジン役のイドリス・エルバ、誠実でやさしさが一杯で嘘のない演技。この世界に存在すると信じています。

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