映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「未来のミライ」(2018)

イメージ 3
細田監督作品、楽しみにしていました。前作「バケモノの子」(2016)公開時、監督に長男が生まれ、次作は子供が主役の作品と明かされ、どのようなものになるのかなと期待していました。
 
神奈川 横浜の磯子区界隈舞台とし、生まれたばかりの妹の存在に戸惑うばかりの甘えん坊“くんちゃん”は、4歳の男の子。両親の愛情を妹に奪われたと感じたくんちゃんはある日、未来からやってきた妹のミライちゃんと出会い、家族の歴史をめぐる冒険に出発するという物語。
 
基本は、くんちゃんの成長物語。両親のリアルな成長物語であったり、タイムリープすることで、壮大な家族の物語となり、“家族は奇跡で出来上がっている”という、とても大きな構想のファンタジーな物語を圧巻の絵力で観せてくれます。しかし、感情移入できない!
 
「子育て日記」を見ているようで、自分の育児体験を思い出し、改めて“そういうことがあった”と懐かしみ、結構笑いました! よくこれだけのエピソードを集めましたねと。

特に父親が家庭で仕事を持つイクメン(未来の理想の父親?)で、夫婦お互いが協力しながら、くんちゃんに教えられ気づき、驚き、悩みながら、すこしずつ前に進んでいくところが面白い。
イメージ 4
くんちゃんを怒ってばかりと反省する母親に、「子育ては、(少しでも幸せになってほしいという)“願い”が大切なのよ!」と励ますおばあちゃんの言葉。そして、くんちゃんが自転車乗りでおじいちゃんから教わる「遠くを見ろ!」。このふたつが子育ての原則のようです! いや、「人生の指針」ではないでしょうか。
 
ところが、ヤフーレビューに見るように、とても評価が低い。原因は、感情移入し難いことです。
物語は両親の愛をうしなった(と思っている)“くんちゃん”がタイムリープして未来のミライちゃんや昔のお母さんとお婆ちゃんに、お爺ちゃんに会いに出かけるという独立した小さな物語(主体はくんちゃんではない)からなり、最後にこれらの物語が家族のインデックスとして繋がりますが、くんちゃんとミライちゃんの旅の感動として繋がらないことだと思っています。
 
しかし、タイムリープの仕掛けは、理解しずらいところがありますが、とてもユニーク。そして作画はうつくしく抜群の出来です。
この作品にはとても丁寧なパンフレット、「MIRAI」という小冊子、が準備してあります。鑑賞後、パンフレットを読めば、理解でき、面白さが伝わってきます。未来の東京駅をみるだけでも、すごいものを観たという記憶が、子供さんの成長につながるのではないかと考えます。( ^)o(^ )
 
声の出演はくんちゃん役に上白石萌歌さん、ミライちゃん役に黒木華さん。さらに星野源麻生久美子役所広司福山雅治さんらが参加、とても豪華です。
イメージ 1
***
物語は、
冒頭、山下達郎さんのテーマソングに乗せて、上空から撮った横浜磯子区の街並みが絞り込まれ、両親とダックスフンド犬が住む赤い屋根の家がアップされ、くんちゃんのエコー写真から、家族が三人とダックスフンド犬となり、庭の真ん中に大きな樫の木が育ち、お家が大きくなるという、くんちゃんの成長が一気に描かれるシーンが爽快で、物語に引き込まれます。
イメージ 5
雪のちらつく日、窓のくもりを消して、お母さんと赤ちゃんの病院からの帰りを待つくんちゃん。その後、このあかちゃんの存在で、両親の、お爺ちゃんお婆ちゃんの愛を失ったと焦るくんちゃん。この気持ちをどこに持って行くか?

庭に出ると、タイムリープで庭が廃墟の教会になっていて、むかし王子だったと名乗る謎の男に出会い、この男の尻尾を借りてくダックスフント犬の“ゆっこ”になり、赤ちゃん返しでお父さんに迫る。()
イメージ 6
タイムスリープは、庭が異次元の空間になっていて、ここに出た時点で始まります。そして、タイプリープしても、現実のなかに入れるというのが、本作の特色。4歳のくんちゃんの考えること、我々の想像を超える発想ということでしょうか。あまりこだわらずに観て、映像の美しさ・面白さを楽しむことです。

ここから、タイムリープで庭が熱帯林となり、そこで中学生のミライちゃんに会って、ひな人形のあとかたずけをする話、すこし冗長すぎましたね。何が言いたかったのかよくわかりませんでした。ミライちゃんが好きになれなかったし・・() 
イメージ 7
青々とした草原から熱帯魚と一緒に雨の降る街に来て、小さいころのお母さんに会う話。このタイムリープが面白い。子は親に似るんです。() お母さんの性格がくんちゃんとそっくりというのが面白い。
「弟が弱くてなにもできないから、親は自分を大切にしてくれるとおもったがそれは間違いだった」というお母さんの話。くんちゃんどう思ったかな!難しすぎますね。

薄暗いエンジン工場でおじいちゃんに会って、くんちゃんが自転車に乗れないというので牧場で乗馬を経験して、オートバイに乗せてもらい横須賀に旅する。
イメージ 8
乗馬で「遠くをみろ」と「何事にも最初はある」というお爺ちゃんの言葉が、くんちゃんの自転車乗りを後押しするという話。
ここでは、横須賀の林立するクレーン群、空母、そして馬堀海岸を疾走する風景絵がよかったです。
この話がラストで、おじいちゃんが特攻で負傷し、それがお婆ちゃんと一緒になる動機になったという話。どこにでもある夫婦のはなしで、これがくんちゃん誕生に繋がっているという話がいい。
なぜ終戦時の兵士のはなし?ここではジプリを思い出します。この物語は前作「バケモノの子」同様、監督自身の成長物語でもあるように思えます! 
 
「遠く見て」自転車に乗れたくんちゃんは大感激。お父さんも大感激です。
イメージ 2
最期に、無人駅のホームから未来の東京駅に出て迷子になり、忘れもの係に「失くしたのは自分自身」とひとりぼっちの国に送られることになり、ここからの脱出に、ミライちゃんの記憶に助けられ、ふたりが東京駅を突き破り、自宅の庭に帰って、樫の木に埋め込まれて家族にインデックスを探すという旅。疾風感がいい。
イメージ 9
んちゃんは家族みんなと命が繋がっていることにびっくり。ラスト、くんちゃんの成長ぶりです。
イメージ 10
物語は、平凡だが、つながる命の大切さを知るという結末がよい。そして何よりも、タイムリープの奇抜さと映像の美しさがすばらしい。
***
記事 20190203
細田守未来のミライアニー賞でインディペンデント作品賞を受賞