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「月の満ち欠け」(2022)「この世に生まれた命は、皆だれかの生まれ変わり」についてゆけるか!

原作が2017年に第157回直木賞受賞作、佐藤正午さんの同名小説ということで観ることにしました。未読です。

発行部数は56万部を超えるというベストセラー小説。ということで、劇場はなかなかの入りでした。

監督:廣木隆一脚本:橋本裕志撮影:水口智之、照明:北岡孝文、録音:深田晃、美術:丸尾知行、編集:野本稔、音楽:FUKUSHIGE MARI、劇中歌:ジョン・レノン

廣木監督は今年5番目の作品になります。大丈夫かという感じですよね!(笑)脚本家の橋本さんには「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(2021)「そして、バトンは渡された」(2021)というヒット作があります。

出演者;大泉洋有村架純目黒蓮伊藤沙莉田中圭柴咲コウ、菊池日菜子、小山紗愛、他。

物語は

現代を生きる、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃(菊池日菜子)を亡くした男性・小山内堅(大泉洋)と、27年前にある女性・正木瑠地(有村架純と許されざる恋をした男性・三角哲彦(目黒蓮)、無関係だった彼らの人生が“瑠璃”という名の女性の存在で交差し、「愛する人にもう一度会いたい」という想いが引き起こした数奇で奇跡を紡ぐ壮大なラブロマンス。

 過去に現在、瑠璃に繋がる人と人の想い行き来し、「今何が描かれている」という視点を見失うような複雑な物語でした。(笑)しかし、この複雑さに「人はみな他人の人生を生きる。そして繋がってくる」という“輪廻転生の世界感”に誘われ、身内の人を失っても“生きる希望”を感じるという作品でした。この世界感に嵌らなかったら残念な作品となるかもしきれません!

この作品はコロナ禍にあって全編ロケ。それも高田馬場駅周辺の変遷が美しく描かれ、ジョン・レノンの曲で命が繋がる物語となっていて、悲しい話でありながら、暖かい気分にしてくれます。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

2007年12月、1999年に妻子を交通事故で亡くした小山内は建設会社を辞めて、実家の青森の八戸に戻り水産会社に勤めていた。そこに東京に住む娘・瑠璃の高校時代の親友・緑坂ゆい(伊藤沙莉から、「話したいことがある。瑠璃が描いた人物画を持ってきて欲しい」と連絡があった。

12月8日、東京に着いた小山内は妻子が亡くなった事故現場に花を手向け、ゆいが待つホテルに向かった。ホテルのラウンジでゆいは子供と一緒に待っていた。ゆいは瑠璃の思い出が撮ってあるビデオカメラを持参していた。

ゆいは小山内が持参してきた瑠璃が描いた人物画の謎を小山内に聞かせ、小山内はゆいが持参してきたビデオカメラを受け取り、その映像をみながら東北新幹線で八戸の帰り着くまでの話です

小山内の瑠璃についての記憶。

1980年12月8日、小山内は同郷の梢と結婚した。ジョン・レノンが暗殺された日だった。ジョンの曲が溢れていた。小山内は「梢を大学の食堂で梢を見染めたのが切っ掛けだ」という。

1981年、瑠璃が誕生。梢が「瑠璃という名は夢の中で瑠璃が自分で決めって生まれてきた」という。

1988年瑠璃7歳の夏、赤い車で梢が運転して、3人で海でのピクニックに出かけた。途中で美しい夕陽を見た。そして夜、瑠璃が満月の月を見て「こないだ死んだ月が生き返った」と言い、梢が「消えたものが元に戻ったの。これが繰り返されるの」と教えた。

9月に瑠璃が原因不明の高熱で入院。退院後、英語の歌を唄ったり、人形にアキラ君と名付けて呼ぶ、またジッポライターの石交換をするというちょっと普通の子には考えられない行動がみられた。

12月8日、瑠璃がひとりで電車に乗り、高田馬場の駅近くのビデオショップを訪れアンナ・カレーニナのビデオを見ていたという。小山内が「何故高田馬場に来た?」と聞くと「アキラ君に会いにきた」という。「高校を終わるまで来てはいけない」と注意すると「分かった!パパの愛情は忘れない」と答えた。

ゆいの瑠璃についての記憶

1999年10月、瑠璃18歳。瑠璃はゆいを自分の誕生会に誘った。ゆいが見た瑠璃の家族は瑠璃をとても大切にし、仲良し家族で小山内が梢を妻にした訳を話す状況などをビデオカメラに収めた。途中で小山内に会社から電話があり席を外した。

席を外してからの小山内の記憶。小山内は翌日、部長から新しいプロセクトを任され、祝いにお酒に誘われたが家族八戸に行く約束があると断った。そこに梢と瑠璃が車両事故で無くなった知らせが入ってきた。

2007年、ホテルのラウンジに戻る

ゆいは瑠璃が描いた人物画を見て、小山内に「記憶がある?」と聞いた。小山内は「一度ある」と言って話し出した。

2000、小山内は実家八戸に戻り、荷物を整理しているところにフリーカメラマンの三角哲彦が尋ねてきて、瑠璃に位牌に手を合わせた後、「事故のあった日、瑠璃さんから電話があった」「瑠璃ちゃん7歳のときにも高田馬場のレコードショップに訪ねてきてくれて会った」と瑠璃との思い出は語りはじめた。

始めて会ったのはレコードショップ前で雨宿りしている瑠璃(有村架純にタオル代わりにTシャツを渡し、傘を貸して、彼女は映画が好きだと知って別れた。三角は大学生でアルバイトをしていた。ジョン・レノンが暗殺された日だった。その後、早稲田松竹座で見かけた。

彼女が忘れなれない人になり探していた。偶然に高田馬場駅前で出会い、川沿いのベンチでビールを飲んで、「会ったときに話すノートがある」と話すと、「見たい!」と瑠璃がアパートにやってきた。瑠璃はラジオから流れるオノ・ヨーコの“リメンバーラブ”を唄いながらノートを見ていた。自分は8mmカメラでこの情景を撮った。名前を聞くので「母親はアキラにするはずだったが、親父はアキヒコにした」と話すと「アキラを呼んでいい」と返してきたという。そして結ばれた。「ここに居て欲しい」と言ったが消えるように出て行った。

再び捜す毎日が続き、公園で寂しそうに猫を撫でている瑠璃(架純)を見つけ、強引に手を引いてアパートに連れてきた。瑠璃(架純)は先に撮った8mmの映像を見て「私が笑っている!」と喜び、三角とベッドで過ごした。「仲の良い夫婦を見つけた。奥さんが赤い車を運転していた。今度生まれるときはあんな幸せな家族に生まれたい」と言った。「あなたが望むところに連れていく!毎日高田馬場駅で待っています」と言ったが、瑠璃が「本当は私が会いたかったのよ、嬉しかった」と言って帰っていった。

三角は高田馬場駅で待っていると「踏切事故で電車が遅れた」と聞いて震え、ニュースで瑠璃が亡くなったことを知ったが、受け入れられなかった」という。

三角は「あなたの娘さんからの電話で、もしかしたら彼女はあなたの娘さんに生まれ変わるために死んだのではないかと思う」と話し、「瑠璃(架純)への気持ちを吹っ切るために来たのかもしれません、失礼しました」と帰っていった。

ゆいが「この絵、三角に似てない?」と聞くと「瑠璃はまだ生まれてないときのことだ」と小山内は信じられなかった。「高校のとき想像して書いたと瑠璃が言っていた。子は親を選ぶのよ!小山内さんも知っているでしょう」と言い、「小山内さん、瑠璃さんの夫・正木さん知っているでしょう」という。ゆいが正木のことを話し始めた。

正木は瑠璃(架純)が貴金属店で働いているとき、ジッポライターを買って近づき、「居場所を与えます」とプロポーズした。瑠璃(架純)は両親を亡くし厳しい親戚の人に育てられた記憶があっで、素直にこのプロポーズを受け入れた。しかし、不妊体質であったことから正木が暴力を働くようになり、これに堪えられず瑠璃(架純)は三角との恋に走った。不倫が正木にバレ、瑠璃は家を出た。正木は諦めきれず瑠璃(架純)追ったが、踏切で列車に接触し瑠璃(架純)は亡くなった。正木は瑠璃(架純)が残した日記を読んだ。

ゆいが「これで正木さんは生活が荒んで会社も潰したそうです」と話した。

この話で、小山内は部長から「面倒をみてやってくれ」と正木を紹介され、自宅に招いてプロゼクトを議論しているところに、外から帰ってきた瑠璃が正木の顔を見て、“ふい”と二階に上がったことを思い出した。

ゆいは美術室で男性の肖像画を描く瑠璃を見ていた。そして、学友たちと一緒に帰校時、瑠璃が肖像画の男性について「今はパパとの約束で会えないが、想いはどんどん深くなる!」と話していたところに正木が現れ、ジッポライターで火を点けて「なぜ出て行った?何が不満なのか?」と激しく迫ってきて、級友たちが驚いた。ゆいが正木にしがみつき瑠璃を逃がした。そのあと、瑠璃から「アキラに何かあったらいけないから伝えに行く」と電話があった」と記憶を話した。梢と瑠璃の乗った車は正木に追われ、トラックと接触して横転し、この事故で無くなった。

小山内は「正木に瑠璃を会わせた俺に事故の原因があるのか!」と無念がった。

ゆいが「今まで言わなかったがこの子を見て!」と連れてきた子のことを語り始めた

先月瑠璃の墓参りに出向いたとき、小山内に出会い、小山内がゆいの子の名が瑠璃(小山紗愛)と聞いてびっくりしたこと。そして「瑠璃が絵描いた男性の肖像画を捜して!」と頼んだことを話した。

そして、「瑠璃(紗愛)は7歳で高熱を出し、人形にアキラ君と名付けた」と話し、「瑠璃ちゃんから死ぬ前にいろんな話を聞かされて、この子が名を選んで生まれた。瑠璃ちゃんが亡くなる前に人は命を繰り返すと言っていた。瑠璃(紗愛)は瑠璃ちゃんの生まれ代りよ!」と話した。そして三角に電話して「瑠璃(紗愛)を会いに行かせる」と話したという。

小山内は「この話は止めよう」と信じられなかった。ゆいは瑠璃の誕生日に小山内一家を撮ったビデオを渡した。このとき、瑠璃(紗愛)が「ホテルの外に出たい!」と出ていた。

小山内は八戸への帰りの東北新幹線の中で、亡くした梢と瑠璃のことを思い出していた。

走って出て行った瑠璃(紗愛)が瑠璃となり三角と高田馬場駅で会い抱合っている幻想をみた。そしてゆいから渡されたビデオを観ると梢が瑠璃に「パパに好きになったのは私の方が先。高校のとき雨の日に傘を貸してくれた先輩がいて、パパを意識して同じ大学に入った・・・」と話していた。小山内は泣いた!

まとめ

テーマ「この世に生まれた命は、皆だれかの生まれ変わり」が強すぎて、命が繋がる伏線、雨、傘、人形の名、ジョン・レノンの死、赤い車、ジュポライター、瑠璃の名の由来、映画などが、フィクションとしても、バカにするなというレベルまで繋がり、現実性が感じられず、輪廻転生の世界感には残念ながら入り込めなかった。(笑)

しかし、小山内が東北新幹線の中で、ひとりになり、瑠璃(紗愛)が瑠璃に重なり恋人・三角に走り寄る姿を思い描く姿、ビデオを観て、妻・梢の想いが瑠璃(架純)の人生に重なっていても、涙する姿には泣けますね!

三角と瑠璃(架純)の恋物語、小山内と梢の夫婦愛と親子関係など個々のエピソードはそれなりに楽しめました。有村さんのこれまでにない大人びた女性の演技に、目黒蓮さんの純真な愛の演技、よかった。この作品には明るい人がいい、ということで大泉さんの演技が生きていて、泣きの演技も見事でした。柴咲コウさんの明るい母親の存在感はみごとでした。

なかでも、菊池日菜子さんの明るさ透明感が余韻を残し、ちょっと楽しみな女優さんが現れたなと。でも菊池さんを有村さんと間違えるという設定は無理があり過ぎる。(笑)

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