動機が芳しくなかったせいか、また、本作キャッチコピー「4回泣ける」に拘りすぎたためか泣けませんでした。(笑)
あらすじ
時田数(有村架純)が働く喫茶店“フニクリフニクラ”には、不思議な都市伝説があった。それは、店内のある席に座ってコーヒーを注文すると、望んだ時間に戻ることができるというもの。ただし、過去に戻っても現実は変わらない、過去に戻れるのはコーヒーが冷めるまでの間で、コーヒーは冷めないうちに飲み干さなければならない、などの細かいルールがあった。そんな噂を聞きつけ、幼なじみとケンカ別れしてしまった独身女性清川二美子(波留)や若年性アルツハイマーの妻高竹佳代(薬師丸ひろこ)と優しいその夫房木康徳(松重豊)、訪ねてくる妹を拒否する姉平井八絵子)、店には過去に戻りたいと願う客たちが訪れていた。しかし肝心の席には、いつも謎の女性(石田ゆり)が座っているのだったが…。<allcinema>
物語は、4つのショートストーリーからなり、主体は、時田数と謎の母に関わるもので、数の成長物語となっています。いずれの物語もありふれたよくあるはなしです。
テーマは「過去は変えられないが、自分自身を変えることで、未来を変えることができる」。とてもいい話なんですが、彼らの苦悩や心情をしっかり掴むことができず、泣くまでには至らなかったです。(笑)
泣けるセリフと演者のとても上手い泣き演技で、泣きを押し付けられたようにさえ感じてしまう。
しかし、泣けるという人も結構おられますので、これは個人的な問題かもしれません。原作を読んだ人、物語の登場人物のような人生体験を経た人は、深読みでき、彼らの心情をしっかり掴め、泣けるのではないでしょうか。
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第1話「ケンカ別れした幼なじみの愛」
夏。喫茶店に「一周間前に戻して!」と二美子が飛び込んでくる。実は、一週間前、ふたりはここで別れ話をしていた。
こんなこと、今でなくても、適当な時期にはっきり言えば済む問題だろうと思うのですが・・。
謎の女が座る席が空かないので、粘って、彼女が化粧室に立った折を見てこの座り、瞑想してるうちに水槽に落ちて、一周間前ここで会っていた過去にタイムスリップします。
喧嘩の続きが始める。二美子が「わたしがひとりでいて、あんたに彼女がいなければ結婚してやるといったでしょう」と迫ると「そんなこと言ったか?本気にしているのか」と言って去ろうとする。
「お幸せに!」と言葉を投げると、「アメリカに行くと言ったら、彼女が別れた!」と言って立ち去る。「なんでそれを先に言わないの!」と追おうと思ったが、コーヒーが冷めるので止める。この時、席を外してしていた謎の女が戻ってくる。
二美子が「五郎に会った。本当に起こったことは変えられないよね」と数に聞く。「過去は変えられないが、未来はお客様次第です」と返事。これで二美子は「あたしがアメリカに行く」と嬉しそうに帰っていく。
過去に戻って、少し思考の幅が広がって、彼の立場も考え幼ともだちであるがゆえの慣れを捨て、はっきり意思を伝えようと先に希望を見出したようです。しかし、これまでのふたりの関係がほとんど読めず、この話に感動するということはなかった。
この話で、これからの物語のためのすすめ方が分かり、そういう意味でとてもよかったです。( ^)o(^ )
タイムスリップは数の淹れるコーヒーの香りを嗅ぎ瞑想に入り、水槽に落ちたときから始まるということ。
水は再生のイメージに繋がりこの設定に違和感はないが、映画としては物足りない。
コーヒーが冷めるまでと時間が制限されるというルール。いたずらに時間をかけず、短い時間内で未来への答えを見出すという設定がいい。が、短い時間内では登場人物の実像が見え難い。原作はこうなっているのでしょうか?
謎の女性、ユウレイの存在は、記憶を無くした母親でもいいのではと思いましたが、都市伝説に関わる設定ということで違和感はなく、ファンタジーな物語として楽しめます。
第2話「若年性アルツハイマーの妻とその夫の愛」
苗字が異なるふたり。当初、なぜこうなるのかと混乱しましたが、妻がアルツハイマーということで納得。妻の居場所を尋ね回る夫が、かって妻が渡そうとして渡さなかった手紙を読みたいとその時にタイムスリップ。
そこで夫房木は将来アルツハイマーが進み介護で苦しむ自分を気遣う妻高竹の気持ちを知り、自分の覚悟が決まるという話。わかりやすい話で、松重さんの明るく妻を労わろうとする気持ちと涙の演技がすばらしく感動します。が、妻の介護実態というのは薬を調合し飲ませる程度の描写では、涙が出るところまではいきませんでした。(笑)
第3話「家業も親も妹に預っけぱなしで自由に生きる姉と妹の愛)。
突然久美が交通事故で亡くなり、葬儀のため実家に帰る。帰ってきて、実家には居場所がなく、なぜ久美が何度も訪ねてきたかを知りたいとタイムスリップ。そこで久美の自分を思う気持ちを知り、実家に帰る決意をするというはなし。羊さんが、葬儀に出かける前と後で、演技に変化を見せて楽しませてくれます。
姉妹が話すシーンなどほとんどなく、姉八絵子のひとり語りで、これまでのふたりの関係、家族のことは全く分からない。これでは感情移入することは難しい。
第4話「幼いころ別れた母と娘の愛」
謎の女は、実は数の母。数は「5歳のクリスマスの日に母が父に会いに出て行き、自分は捨てられた」という想いでいままで生きてきたのでした。
よく店にやってくる新谷良助(伊藤健太郎)の「人を幸せにすると、いつかその幸せが自分に戻ってくる」という励ましの言葉に絆されて、結婚して子どもを授かる。
子供ができたことを喜ぶ良助に、無言で、母になれた喜びを目で伝える表情がすばらしいです。
母となることで、本当に母に捨てられたのかと、母の気持ちを知りたくなる。
どうやって母に会うか。新谷の知恵を借りて、お腹の子の未来に会いにゆき、ここで母に会うことにする。
母は自分を捨てて逃げたと思っていたが、そうではなく、3か月の余命と知った母は自分(数)の将来を心配して未来に行き、ユーレイとなって自分を見続けていると聞かされる。母の本当の気持ちを知って、数が大きな母の愛を知るというはなし。
ここでのタイムスリップは複雑で、この物語の感動がうまく伝わるかどうか。架純さんの母への感謝で流す涙の演技が圧巻です。
だれしも、困ったときには、真意を確かめたくなるものです。悔やまれる出来事やその時の自分と向き合うことによって、未来は変えることは出来るかもしれない。テーマはとても良いのですが、いまひとつ入り込めなかったです。映画にせず、連続ドラマでしっかり描いた方がよかったのではと思うのですが・・・。
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