映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「レジェンド&バタフライ」壮大な映像に夢がある、日本の風物と心の優しさに、映画人の想いが宿っていた。

 

織田信長と妻・濃姫との33年間にわたる愛の物語。政略結婚で結ばれた夫婦の笑えて泣けるロマンティックコメディ。濃姫については歴史資料がほとんどないという。タイトルが英語で書かざるを得ない事情のある作品。(笑)しかし、歴史にないこの愛の物語をどう描くか、監督が「るろ剣」シリーズの大友啓史さん。史実を見ようなどという気持ちは全くないで、きっとこんな作品になるだだろうと期待して観ることにしました。

壮大な映像に夢がある、日本の風物の美しさと人の心の優しさ、映画人の想いが宿った作品でした

監督:大友啓史、脚本:古沢良太撮影:芦澤明子美術:橋本創、装飾:極並浩史、編集:今井剛、音楽:佐藤直紀

出演者(役):木村拓哉織田信長)、綾瀬はるか濃姫)、宮沢氷魚明智光秀)、伊藤英明(福富平太郎貞家)、中谷美紀(各務野)、他豪華俳優多数。沢山の俳優さんが出てきますが、この五名に焦点を当てた物語になっています。

物語は

格好ばかりで「大うつけ」と呼ばれる尾張織田信長は、敵対する隣国・美濃の濃姫と政略結婚する。信長は嫁いで来た濃姫を尊大な態度で迎え、勝ち気な濃姫も臆さぬ物言いで信長に対抗。最悪な出会いを果たした2人は、互いを出し抜いて寝首をかこうと一触即発状態にあった。そんなある日、尾張今川義元の大軍が攻め込んでくる。圧倒的な戦力差に絶望しそうになる信長だったが、濃姫の言葉に励まされ、2人は共に戦術を練って奇跡的な勝利を収める。いつしか強い絆で結ばれるようになった信長と濃姫は、天下統一へと向かって共に歩み出が・・・。


www.youtube.com

あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、婚礼のある那古野城に急ぐ濃姫の隊列、カメラは道辺のカマキリをズームアプして城正門に近づいてくる。物語の終盤、魔王に化した信長が長篠の闘いで勝利し、死屍累々の血で染まった川床を馬で帰還中、死骸に飛び回る美しい蝶を見る。物語に出てくる濃姫の変化を示す映像ですが、撮ったのは女性カメラマン・芦澤明子(71)さん。時代劇に女性カメラマンの登場、想像力をくすぐるすばらしい映像が一杯で楽しめました。東映の京都撮影所も、こんな時代劇撮ったことがないと、仰天だったでしょうね。(笑)

結婚式の夜、道三の国盗り政略のために輿入れした濃姫尾張を守りたい秀信の思いを汲んだ信長の初夜。信長の激しい声に控侍が襖を開けてみれば、濃姫が信長をねじ伏せている。(笑)見栄でしゃれに拘る信長と武芸に心得のある大人の濃姫というキャラクター設定。新たに登場した信長と濃姫ここから始まるボーイ・ミーツ・ガール物語です。

濃姫は信長が父秀信の葬儀に、仏壇の父親に香料を投げつけて去る姿を目にし「この男は大丈夫か」と思った。ふたりが鷹狩に出て、信長が足を踏み外し崖下の海に落ちんとするのを救って、自分の夢「海の向こう、南蛮に行ってみたい」と話した。

これがふたりの夢になっていく信長と濃姫の物語

父・道三が息子・義龍に殺されたとの知らせに濃姫は「役目は終わった」と死を決意するが、「役目は俺の妻」という信長の言葉に救われる。そして今川との桶狭間の戦を迎える。

「もう尾張は終わった」という濃姫の侍従・福富平太郎貞家(伊藤英明)と侍女の各務野(中谷美紀)。濃姫はこれを退け、軍議で決断ができない信長の元に奔った。

ここは攻めるのみ。豪雨を利用し少兵を鼓舞して奇襲すべし」と桶狭間攻略作戦をふたりで練って、信長を送り出す。そのあと、濃姫が敦盛を舞い信長の帰還を待った

全く戦を描かないで、義元の首を掲げ持ち帰還する信長の映像。これでふたりの心が通い出すことがよく分かります。テンポよく、なによりも経費節約で、上手い演出になっています。

稲葉山城を手に入れ、ふたりが城に馬で駆けつけるシーン、爽やかな二人の姿をみて爽快な気分にしてくれます。信長は岐阜城と改名し、濃姫に与えた。濃姫は「これで役目は終わりですか?ならば離縁ですか」と問うと、信長は「お前が言い出せ」と、ふたりが言い争っているとことに、将軍・足利義昭からの上洛要請が届く。信長は夢のために上洛を決めた

上洛したふたり。身分を隠して京の街に繰り出す。ここで描かれる当時の京の風景。大画面で観る映像になっています。

ふたりは路上で踊る異人のダンスに巻き込まれ、踊った。信長が蛙の焼物を買い与えた。この焼物が終生ふたりを繋ぐことになります

信長が小童に財布を盗まれ、これを追って猥雑な集落に入り、住民に囲まれ、生々しい戦いになる。ふたりは助け合いながらこの場を切り抜け、お堂の中で結ばれ、本当の夫婦になった。

信長が京の活動を妨害する浅井長政との戦闘で勝利したが、大きな痛手を被った。

この戦が終ったところに信長はお産で帰省中の濃姫を見舞う。死産だった。濃姫の「悲しくないのですか」の問に「何万もの兵が死んでいる」と答えた信長。濃姫はこの答えに不安を抱いた。

信長は比叡山の焼き討ちへと向かっていく。「女も子供も殺せ!皆殺しだ!」という信長に「それはならぬ」という意見が出る。信長は「第六天の魔王だ!我人にあらず!」と実行を命じ、実行するのが明智だった。若い才気立ったミステリアスな明智の登場です。

五郎座(本田大輔)の要請で濃姫は信長の無慈悲な戦を諫めにやってきたが、信長は聞く耳を持たず「お前の役目は終わった」と告げた。

天正2年(1957)の新年会明智の差し出した浅井の3つのしゃれこうべで祝杯をあげた。酔った信長に濃姫が夫婦の話をするが「もう後戻りできない。日の本を全部平らげる。反する者は皆殺しだ」と言う。

濃姫は「殿がこうなったのは私の夢が原因!」と各務野に相談すると「貴方が恋慕っているからです」と言う。

濃姫バテレンの神を祭る祭壇を前で信長に、「夢は違う生き方、家も身分も捨てていきたい愚かな夢だった」と語った。そして「離縁して欲しい」と切り出す。信長は「良き夫を持って幸せに暮らせ!」と受け入れた。が、城門を出ていく濃姫を見て涙した。

濃姫は福富と各務野を伴い、田舎のあばら屋へと落ちていった。

信長は長篠の闘いで武田勝頼を破った。宮中に招かれ、公家と共に酒を呑むが一行に気分が晴れない。白装束の女が子を抱いて川に入水する姿を見て止めに走るが、餓鬼が足に差張り付き動けない夢を見た。「今まで何をしてきたか」と森蘭丸に聞くと「天下布武」だという。

信長は濃姫が伏せていることを聞き、引き取りにあばら屋へやってきた。濃姫は「縁は切れている」と拒否した。各務野が「助けが必要なのは殿なのです」と説き、信長が「亭主の側にいてくれ!」と頭を下げたことで戻ることにした。各務野と福富が泣いた!

と城に戻った濃姫信長の作る薬で熱い介護を受け穏やかな生活が戻ってきた。

天正10年(1582年)信長が明智の「徳川を調略する必要がある」という進言を受け、徳川家康斎藤工)を招いて宴席を設けた。魚料理が出たところで「臭い!徳川殿に失礼!」と激しく明智を折檻をした。家康が帰ったあと信長は「すまんかった」と明智に謝った。

信長は中国・四国の戦況督促のため本能寺に出向くことになった。信長は「この戦が最期だ。終わったら南蛮へ船で行く。名も家も捨てる、早く病を治せ!返ってくるまでにこの楽器を覚えて欲しい」と洋楽器リュートを預け、本能寺へ発った。濃姫はこれまで大切に持っていた蛙のお守りを渡した。信長は門前で振り向いて天守閣を仰いだ!

6月2日、本能寺明智の攻撃が始まった。信長が弓、槍、刀と武器を変えながら戦った。長い闘いだった。遂に追い詰められ、燃える火を前に、濃姫に話した夢「南蛮船で海に出て旅する夢」だった。信長にはリュートの音が聞こえた。安土の濃姫も夢の中にあった。

目覚めた信長は敦盛を唄い、「好いていた」と呟く自らの首を斬った

まとめ

夢を見させてくれる作品でした

濃姫についてはほとんど知られていない。信長の史実に、上手く濃姫を絡ませ、政略結婚であったふたりが夫婦になっていく姿を見せるという作品。誰しもどのような夫婦だったのかと想像を掻き立てられます。これをうまく見せた作品。かなり薄れている自分の歴史感の中で、ちょっと無理感はあるが、こう来るかと、大歴史絵巻を見ながら、楽しみました。

夢で結ばれたふたりが、南蛮船で海に出る、こんな映像は見たことがない。その根底にある二人の愛について、史実とは違っているが、しっかり描かれていたと思います。

敵同士の2人が一緒になって、夢を達成するために相手を庇い合い、それを口にしない、秘めたる恋というのが感動的でした。

信長を描いたというより、想像上の濃姫を描いた作品とみました。それだけに綾瀬さんの魅力がしっかり出た作品でした。

脇の濃姫を支える中田美紀さんと伊藤英明さんとの演技が魅力的でした。恋を知らない濃姫に恋を説く中谷さんの演技が絶品でした。伊藤英明さんもすばらしかった。「7年側にいて指一本すら触ってない」と信長に抗議する言葉に、その奥が見えて、これぞ忍恋というシーン、とてもよかった!

明智の行動、新説!と銘打っていますが、無謀という印象を持ちますが、宮沢氷魚さんの透明性のある演技の中に、これが光秀だ!と感じる演技でした。

キムラさんは、悩める信長、歴史を知る人に不満かもしれないが、この作品では生きていました。ラストシーン、キムラさんだからの「好いていた!」というセリフ、生きていました。

映像がすばらしかった。大画面で観る作品でした延暦寺の焼き討ち、本能寺の変など、戦闘シーンは大迫力で見応えがありました。

楽しい作品でした。もう一度観ます!

                                                   ****