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「パーフェクトワールド 君といる奇跡」(2018)

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事故で車イス生活を送る青年。初恋の相手である彼と運命的に再会したヒロインが、様々な試練を乗り越え愛を育んでいく物語。
 
本作、杉咲花さんの初主演作、かつ本格的ラブストーリーでの出演です。「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016)の熱演が忘れられず、車いすの彼への愛一途なヒロインを演じる花ちゃんを観たいと駆けつけました。( ^)o(^ )
ごく平凡なストーリー立てですが、この種作品のどの作品にも及ばない、相手を想う情感に溢れた作品でした。
平凡なストーリーということが低評価につながっているように思え、そのことがかえって、障害を持つ青年の心情やこれを支える彼女の想いをリアルに描いていると思います。
 
泣けるというコピーはないですが、確実に泣けます。() 「君といる奇跡」というフレーズがいかに素晴らしいものであるかを感じさせてくれます。
 
原作は有賀リエさんの同名少女漫画。未読です。監督は「流れ星が消えないうちに」の柴山健次さん。主演は杉咲花さん、岩田剛典さん。共演は芦名星大政絢小市万太郎・財前直美さんらです。
 
あらすじ:
インテリアデザイン会社に就職した川奈つぐみ(杉咲花)は、仕事先の飲み会で高校時代の先輩で初恋の人である鮎川樹(岩田剛典)と偶然再会する。
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建築士として活躍する樹との再会につぐみは心を躍らせるが、樹は事故で車イスでの生活を余儀なくされる障がい者になっていた。
その姿を見たつぐみは樹との恋愛を無理だと悟るが、昔と変わらないまっすぐな樹の姿にかつての感情があふれだし、樹に惹かれていく。
樹も「自分は誰かを幸せにすることができない」との思い込みから、女性と付き合うことをあきらめていたが、つぐみの素直でやさしい性格に惹かれていく。
ふたりの愛が深まるかに見えたが、つぐみのホーム転落事故を契機に、ふたりの関係が壊れてしまう。お互いが、高校時代の桜の記憶をたどり、たどりついた結末は・・・。
 
脊髄損傷症という重い障害を、笑顔で前向きに生きる樹。演じる岩田さんの笑顔がすてきで、この物語が重いストーリーにならなず、ベストなキャステイングだったと思います。
杉咲花ちゃんのつぐみ役。目力で好きだという想いを伝え、流す涙は切なく、完璧です!
つぐみの父親・川奈元久を演じる小市万太郎さんのつぐみにかける言葉が、情感の籠っていて、すばらしいです!
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冒頭、建築家を志しバスケのうまい樹のいる体育を背景に、桜を描くつぐみ。
図書館にやってきて、持ち出し禁止本を貸して欲しいと図書委員のつぐみに話しかける樹。
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ふたりのこのころの思い出が、6年を経て、仕事先の飲み会で再会します。
 
樹は障害者であるがゆえに、健常者に負けないという頑張り屋。それだけに、彼を支えてくれる人に大きな負担をかけているという意識を持っている。さらに、万一結婚したら、相手に迷惑をかけると結婚を考えないことにしている。
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これが樹の持つ結婚へのバリアー。ドラマのなかで、仔細にこの感情を描いてくれます。
 
一方、つぐみは、樹は障害者、なんとしても支えたと、彼の仕事、日常の生活支援など、恋愛にこれほどに努力しなければならないのかというほどに尽くします。この思いがつぐみの彼を想う上でのバリアー。
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つぐみが人とぶつかり駅ホームに落ち、一緒にいた樹がこれを助けることができなかった。つぐみは大腿部骨折で入院。
つぐみの父川奈元久が、病院を訪ね、樹に別れて欲しいと申し出ます。
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樹はつぐみが回復したころを見計らって、遊園地に誘い、夜の観覧車のなかで「別れよう!」と切り出します。
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「よく夢を見る。夢の中では両脚で立って、景色を見ている。川奈といると楽しい、幸せを感じたときを想像できる。歩けないが一緒に見る景色を想像することができる。川奈、今日までありがとう。俺の最高の思い出だ。川奈の絵をもぅ一度見たい!もどりたい、あのころに。あのころの身体で川奈に会えたらとくやしい、川奈にしてやれることがなくて悔しい。ホームで手を差し伸べることが出来なかった。俺は人を不幸にする、だから今が最後だ。別れよう」
「いやだ!」
「別れよう」
「いやだ!」
 
樹はつぐみの父のことは一切口にしなかった。彼は、優しさのあまり、自分ではバリアーを破ることができなかった。先のことばかりが心配で、現実を見ることができなかった。
 
この後、ふたりは距離をおきます。つぐみは父が脳梗塞で倒れ故郷に戻っている時に、樹が緊急入院。
見舞いに訪れると、ヘルパーさん(芦名星)から、樹はいまだ意識のないが、つぐみ宛ての手紙が渡されます。そこには、
「明日手術を受ける。成功する確率は高くない。会えないかもしれないが、どうしても伝えたい。事故に遭ってからは、誰かの助けを受けての生活、それは苦痛だった。しかし、沢山の人に支えられて前に進めた。でも、心に壁を作った。
川奈は昔と同じように不器用だったが、この壁を壊してくれた。彼女になってくれた。川奈といると昔のように笑えた。幸せだった。感謝している。もう一度会えたら、一緒に桜を見たい!」と書かれていた。
 
つぐみの父は「病気になって分かった。みんな一人ではない。これで辛いときも乗り越えられるのではないか」とつぐみの背中を押します。
 
桜の舞う校庭で、つぐみは樹に、
「夢の中の先輩は車椅子だった。今の先輩が好きです!」
「もう最期かと覚悟したときに、川奈のことばかりだった。川奈と一緒に居れることが最高の時間だ。二人で居られる世界はそれだけで完璧だ。結婚しよう!」
 
観る人の人生に重なるセリフがたくさんあります。そして、この世界で、ふたりが結ばれることの奇跡。この平凡な現実がいかに大切かを思い出させてくれました。先日観た「日日是好日」です!
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