映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「ゲット・アウト」(2017)一味違うホラー!黒人の悲劇が刻み込まれた、 “痛みを感じる”ホラーだった!

「NOPE/ノープ」(2022)を見て、この作品を観たいと思っていたところWOWOWが放送してくれました。とてもラッキーでした。

アメリカのお笑いコンビ「キー&ピール」のジョーダン・ピールが初メガホンをとったホラー。低予算ながら全米で大ヒットを記録し、第90回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞の4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。

監督・脚本ジョーダン・ピール撮影:トビー・オリバー、美術:ラスティ・スミス、衣装:ナディーン・ヘイダーズ、編集:グレゴリー・プロトキン、音楽:マイケル・エイブルズ。

出演者:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、ケイレブ・ランド:リー・ジョーンズ、キャサリン・キーナー、スティーブン・ルート、ベッティ・ガブリエル、マーカス・ヘンダーソン、ラキース・スタンフィールド、他。

物語は

アフリカ系アメリカ人写真家クリス(ダニエル・カルーヤは、白人の彼女ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家へ招待される。過剰なまでの歓迎を受けたクリスは、ローズの実家に黒人の使用人がいることに妙な違和感を覚えていた。その翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティに出席したクリスは、参加者がなぜか白人ばかりで気が滅入っていた。そんな中、黒人の若者を発見したクリスは思わず彼にカメラを向ける。しかし、フラッシュがたかれたのと同時に若者は鼻から血を流し、態度を急変させて「出て行け!」とクリスに襲いかかってくる。


www.youtube.com

あらすじ&感想

冒頭の黒人が拉致されるシーン、湖畔の林を抜けてと意味不明のショット。

 

白人の恋人ローズに誘われて、ローズの家族に会うことに「どうみられるか」と気が気でないクリス。ポンタコ湖畔のアーミテージ邸に急ぐ途中で鹿に衝突。この衝撃に驚いた。死体を確認するクリス。警察に事情聴取されて、運転してないのにクリスの運転免許種を調べるポリス。現在の黒人差別の実態を描きながら物語は続く。

アーミテージ邸に着くとローズの両親がクリスの予期に反する歓迎。神経外科医の父親ディーン(ブラッドリー・ウィットフォード)が祖父母を含む6人家族の集合写真を示して「祖父がオリンピック選手だったがJ・オーエンスに敗れて白人優位性が敗れた」という。台所に黒人女性ジョージナ(ベティ・ガブリエル)がいてびっくり。

庭に出ると、そこに黒人男性がいてこちらを睨む。ディーンが「親の介護のためだったが亡くなっても、そのままいてもらっている」という。

庭で夫妻とお茶をしながらの談笑。家族はと聞かれてクリスは「母親はひき逃げされて亡くなった。父親とは疎遠」と答えた。母親のミッシー(キャサリン・キーナーがお茶のカップをスプーンで叩く。ディーンがその音を気にすると「催眠術だ、よく効くからサービスを受けたら」とディーンが勧め、「明日がローズの祖父のパーティーだ」という。

ミッシーが「両親の他界後も親睦のために続けている。ふたりの想い出のために」と話すと給仕していたジョージナがお茶をこぼして涙を見せた。なんでジョージナが泣くの?そこに医学生の弟ジョレミー(ケイレブ・ランド)が帰ってきた。

この映画は2度観る価値があります。思わせぷりな会話がなんとも嫌味!こまかい伏線が網の目のように張られている。

夕食の後の談笑ディーンがジョレミーに「お前聞け?」と指示して「運動は何していたか?」と聞き、やたらと身体を触り「この遺伝子構造なら、とんでもあい野獣になれる」と絡んでくる。クリスはうんざりした。

夜中目が覚めて庭に出ると昼間見た黒人が猛烈なスピードで走って来る。2階の窓からジョージナが見ている。このふたりの関係は?とクリスは気になった。

部屋に戻るとミッシーに呼び止められ、コーヒーカップをスプーンでかき回す音でクリスは催眠術に嵌った。目覚めたときはベッドの中だった。

早朝、庭に出て写真を撮っていてまき割するあの黒人男ウォルター(マーカス・ヘンダーソン)に出会った。「ローズとはよく知っている仲だ。夜は運動していて驚かせた」と侘び「奥様の部屋に長くいたろう!」と笑う。クリスは気持ちが悪くなった。

ローズの祖父のパーティー大勢の白人カップルが集まってきた。皆がクリスの身体を見て褒める。その中に年増の白人女性フィロメナと若い黒人男性ローガン(レイキース・スタンフィールド)のカップがいた。

ローガンは力が抜けた空っぽのような男だった。そこに「君のフアンだ」という盲目の画廊オーナーのハドソン(スティーヴン・ルートがいた。

クリスは「変なやつばかりのお集まりだ」と不安になり、親友で空港警備官のロッド(リル・レル・ハウリー)に電話した。彼は「白人の性の奴隷になるぞ。ジェフリー・ダーマのことを思い出せ!」と返事してきた。この話をジョージナが笑いながら聞いていた。「白人だらけで頭おかしくならないか?」と聞くと、泣き笑いする。

参加者に「アフリカ系アメリカ人で満足している」と話すローガンをフラッシュで撮ると鼻血を流し、「ゲットアウト」と怒鳴り大暴れとなった。これを鎮めたのがミッシーだった。ミッシーはローガンの謎を知っていると思った。

クリスは嫌になって「帰りたい!」とクリスに話し、しばらく席を外した。ディーンがクリスの写真を前に、ビンゴゲームを始めた当選者は盲目の画廊オーナーのハドソンだった。

パーティーが終って家族が参加者を笑顔で見送った。そこにロッドから電話が入った。「お前から送ってきた写真を確認した。ローガンはお前が知っているアンドレーだ。性の奴隷になっている。すぐ逃げろ」と言ってきた。

クリスはローズの部屋に入り小箱を調べた。そこにはローズが黒人男性と撮った写真が一杯あった。ジョージナやウォルターと写った写真もあった。

クリスはローズに「車の鍵を寄こせ!一緒にに帰るかどうかは自分で決めろ」と荷物を持って走り出す。すると家族が出てきて止めにかかり、部屋に閉じ込められて拘束され、ミッシーの睡眠術で深い穴の中に落ちた

ロッドは警察署を訪ねてクリスの窮状を訴えるが「そんなバカな!」と取り合ってもらえない!自分で救出するしかないと決心。

ディーンとジュレミーがハドソンを手術台に乗せ脳の切開手術を開始。クリスが目覚めると目の前のTVにアーミテージ家の集合写真に写っていた祖父が現れ「選ばれた強靭な肉体で人生を謳歌している。私の家族になれ、凝固法で!」とメッセージを届け、ハドソンから「君の脳は生きるために必要なものを除いて俺に移植される」と伝えてきた。なんでこれを伝えてくるのか?クリスはソファーのやぶれからはみ出した綿で耳に栓をして、ミッシーの睡眠に嵌った振りをして待っていた。

ハドソンの脳の切開が終り、クリスの脳を移植するために睡眠状態にあるクリスを迎えにジュレミーがやってきた。クリスはジェレミーを倒し、飾り物の鹿の首を持って追って来たディーンを刺殺、ミッシーをナイフで刺して、アーミテージ邸を出て車で逃走を図った

次の黒人男性をネットで物色していたローズが気付き、銃撃してくる。ジョージナが車を止めに飛び込んできた。ウォルターが追って来た。

ローズがクリスを射撃するのをウォルターが止めてローズを撃って、自らの頭を撃って即死した。良き絶え絶えのローズ。そこにロッドがパトカーで救出にやってきた。ローズを残してこの場を走り去った。「ゲット・アウト」のタイトル。

まとめ

ローズの「愛している」を無視し、「お前らこの世界から出て行け!」とアーミーテージ家を去るラストシーンに「黒人をおもちゃにして!」とわかり易いメッセージでした。

いわゆるホラーと一味違う!黒人の悲劇が刻み込まれた、いや現在も生きている“痛みを感じる”ホラーでした。こういう作品は他にみない!

 出だしはさっぱり分からず何が起こるのかとミステリアス。物語が進むにつれて伏線が見事に繋がり怒涛の結末

冒頭の誘拐事件とビンゴのプレゼントの繋がり、さらにウォルターとジョージナの謎が解かれる終末に驚いた

港湾警備員のロッドを道化としてストーリーに筋を入れ、テーマを明確にしているのが見事でした。

前段のアーミーテージ家の会話クリスがいらつくようにいやな感じ。当初の車が鹿に衝突した音やローズの母がコーヒーカップをスプーンでかき回す等音の恐怖。ローズの母の催眠術、ジョージナの微笑み、ウォルターの馴れ馴れしさと威圧感、ローガンの優しさなどの意味不明の恐怖、脳で感じる恐怖だった。

ダニエル・カルーヤの目から流れる涙の演技が、作品のテーマ全てを語る作品だった。

             *****