1970年のイタリア・フランス・ソビエト連邦・アメリカ合衆国の合作ドラマ。
イタリア、モスクワ、ウクライナでロケされ、WWⅡ戦争によって引き裂かれた夫婦の行く末を悲哀たっぷりに描いた作品です。
まさに今、ロシア・ウクライナ戦争の真っただ中、日本では当時大変なヒット作品だったようですが、再び関心が高まっている作品、WOWOWで観ました。
戦争で引き裂かれた夫婦の悲劇がテーマですが、ロケ地をロシアにしたことでイタリアの遺骨収集の問題が浮かびあがり、これは日本の問題でもあり、今の問題になって、この作品か決して死ぬことのない、今の時代に生きる作品になっています。
監督:ビットリオ・デ・シーカ、脚本:トニーノ・グエッラ ゲオルギ・ムディバニ チェザーレ・ザバッティーニ、撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽:ヘンリー・マンシーニ。
出演者:ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、リュドミラ・サベリーエワ、他。
物語は、
結婚して幸せな日々を送っていたジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)だったが、第2次世界大戦が勃発し、アントニオはソ連の最前線に送られてしまう。終戦後、帰らない夫を探しにソ連を訪れたジョバンナは、命を救ってくれたロシア人女性・マーシャ(リュドミラ・サベリーエワ)との間に家庭を築いていたアントニオと再会する。逃げるようにイタリアに戻ったジョバンナだったが、数年後、もう一度やり直したいとアントニオが訪ねてくる。(映画COM)
感想:
どこまでも拡がるひまわり畑と、美しくも哀しいヘンリー・マンシーニのテーマ曲が心に残り、平和を願わずにはおれない作品でした。
ジョバンナがアントニオをロシア戦場に送るために、そして再会して再びロシアに戻るアントニオをミラノ駅で見送る二度の涙の別れに泣けます。
ジョバンナとアントニオ出会ってすぐに恋に落ち、たった12日間の新婚生活でアントニオは戦場に発たねばならなかった。アントニオは精神病になってでも戦場に行きたくなかった。ジョバンナはそんなアントニオを戦場に送り出た。
戦争が終って、身元不明の帰還戦死者の名簿を確認し続け、そこに「夫の名はない!生きている」と帰還を待ち続けた。やっとスターリンが亡くなって(9年が経過)ロシアへの渡航が可能となり、戦場(ウクライナ)を訪れた。そこで見た景色は地に果てまでのひまわり畑だった。戦場で亡くなった兵士を慰めるための花だという。ジョバンナは必死に夫の墓標を捜すが、夫にものはなかった。
スクリーン一杯のひまわり畑が戦争の悲しみを訴え、ウクライナ・ロケのすばらしさでした。
コミカルな新婚生活を描く前段から、厳しい現実と対峙するソフィア・ローレンの表情の変化が胸をうちます。私の母も靖国神社から渡された“石の入った”遺骨箱を決して信じませんでした。ニューギニアから必ず帰ると何年も信じていました。
ジョバンナはやっとのことでアントニオが生きていることを確認したが、彼は幸せな家族を持っていた。10数年アントニオの帰還を待っていた彼女は許せなかった。アントニオの言い訳を聞かず、イタリアに戻った。
アントニオの戦場体験。赤旗をバックに、雪の中での戦闘。全く雪の中で戦う装備を持たないイタリア軍の闘い。戦に敗れ戦場離脱していく様が夢のように描かれており、すばらしい映像でした。意識の無い中でマーシャに助けられたのだった。
アントニオはジョバンナに謝りたいとミラノを訪ねた。妻のマーシャもこれを認めて送り出した。ジョバンナに会えば、昔の記憶が戻り、新婚時代に戻りたいと思ったが、ジョバンナにも新しい家族があった。この現実のためふたりは再びミラノ駅で涙の別れとなった。
2度の別れ、大ひまわりの畑の中に夫の墓標を捜すジョバンナの姿で戦争の悲劇を描き平和を願うビットリオ・デ・シーカ監督に感動しました。
ロシア・ロケのこと。当時、ソ連がその近代化された国威を示そうとした映像ではなかったかと。赤の広場の群衆。地下鉄、そしてデパート。デパートでは長い列ができて、アントニオがジョバンナのためにやっと狐の襟巻を手に入れるシーン。強い政府の締め付けを感じるものでした。そして、アントニオとアーシャの住む家からチェルノブイリ原発は見えるという設定。驚きました!
ウクライナは今戦争の悲劇の真っただ中にある。あのひまわり畑はどうなったかと心を痛めます。
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