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「大河への道」(2022)大河ドラマはどう作られるか!噺も面白いがキャストで魅せる作品だった!

 

現代を舞台に繰り広げられる大河ドラマ制作の行方と、200年前の日本地図完成に隠された感動秘話を描くドラマ

原作が落語家の立川志の輔師匠でその“落ち”を観たい。キャストがすばらしく、時代劇なのに岸井ゆきのさんが出演している。(笑)ということでWOWOWで観ました。

監督:中西健二脚本:森下佳子企画:中井貴一撮影:柴主高秀、美術:倉田智子、音楽:安川午朗主題歌:玉置浩二

出演者:中井貴一松山ケンイチ北川景子岸井ゆきの立川志の輔、西村まさ彦、草刈正雄橋爪功、他。

あらすじ

千葉県香取市役所では地域を盛り上げるため、初めて日本地図を作ったことで有名な郷土の偉人・伊能忠敬を主人公にした大河ドラマ開発プロジェクトが立ち上がる。プロゼクト長は池本総務主任(中井貴一)しかし脚本制作の最中に、忠敬が地図完成の3年前に亡くなっていたという事実が発覚してしまう。1818年、江戸の下町。伊能忠敬は日本地図の完成を見ることなく他界する。彼の志を継いだ弟子たちは地図を完成させるべく、一世一代の隠密作戦に乗り出す。(映画COM)

ここからねたばれ

忠敬の後を継いで地図を完成させたのは忠敬の師匠高橋至時の長男高橋景保だった。すこし歴史を勉強させてもらいました(笑)

池本が脚本を依頼した作家の加藤(橋爪功)は「タイトル“高橋景保物語”なら世に出してもよい」と完成した原稿を池本に渡した。池本は「これでは県の観光事業には繋がらない!」と県知事(草刈正雄)に「今回はNHKに申請しないが、再選に出馬してください!必ず申請してみせます」と報告した。その後、池本は加藤の元に急いだ!

物語は大河ドラマ開発プロゼクトの活動と加藤が描く「大日本沿海輿地全図」が出来上がる物語からなる

プロゼクトのキャストが、加藤が描く歴史物語のキャストを兼務する。これがこの物語の面白いところ!

池本は高橋景保役、加藤は忠敬が埋葬されている寺の住職・源空時和尚。さて、池本は加藤に何を依頼したか?


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感想:

冒頭、文政元年(1818年)伊能忠敬の亡骸の前で弟子たちが「先生にはしばらく生きてもらおう」と密談するシーンから物語が始まる。

知事肝入りの「大河ドラマ誘致」。池本は伊能忠敬を売り出して地域復興の起爆薬にしたいとプロゼクトチームを作った。

チームは同じ課の木下(松山ケンイチ)と安野富海(岸井ゆきの)、これに観光課の小林永美(北川景子。それぞれが地図作りの時代劇では伊能忠敬に絡む役を演じます。このキャステイングが物語を面白くしている。落語の“落ち”が分かるキャステングです。(笑)

木下は「チュウケイさんが有名な人」というほどに無知な男。しかし、池本の指示には忠実に従う。地図つくりの時代劇では伊能忠敬のよき助手を演じる。(笑)

富海は「はいはい係長さん!」というよくわからない女性。この役の岸井さんは時代劇では地図作りを支援する賄婦・トヨ役として笑を一気に引き受け、「こんな岸井さん見たことない!」と楽しませてくれます

永美は「やるからにはものにしたい」とはっきりものをいう女性。時代劇では伊能忠敬の4番目の妻・エイ役で地図つくりに協力した女性

池本が加藤に訳本を依頼するが「地図の完成3年前に忠敬は亡くなっている」といい「やる!」と返事しない。「鳥肌が立つようなものでないとダメだ!」と言うから、池本らは加藤を資料館や九十九里浜にひっぱり出し、伊能忠敬の歴史や測量の仕方や地図の作り方を見せて関心を煽った。加藤はこの地図がロシアの樺太進出を押さえた記事を読んで脚本を書く気になった

加藤は「地図の完成と忠敬の死には3年の差があり、地図の作成には忠敬は関わってない」と話しなからプロットを語り始めた

忠敬を弔いにやってきた高橋景保中井貴一)は「これで地図つくりは終わり」と思ったが、父親の至時が忠敬に百両の借金があるころが分かった。これが幕府にばれたら死刑になる。忠敬の脈を取った医者(立川志の輔)は耄碌してどこを触ったか分からないらしい。(笑)

景保は幕府に「忠敬は生きている」と報告して、自分が忠敬に成り代わり、地図作りを指揮することにした。弟子たちは全員賛成してくれた。

距離の計測、測角、天体観測、三角測量などと当時の測量のやり方や計算した地点座標を白紙に落としていく作業が描かれる。

この作業で最も難しいところ、幕府に忠敬が生きていると信じらせるところ。これをユーモアたっぷりに描いている。

景保が幕府に自ら状況報告に行くと「忠敬を寄こせ!」と言われ、「どこどこに出かけている」と返事するが、「経費がかさむ事業!おかしい」と疑問が出てくる。

幕府の役人・神田(西村まさ彦)が作業場を訪ねてきた。応対に出たのがトヨ(岸井ゆきの)。トヨは「忠敬さんは墓にいる。確認は草鞋です」と答えた。神田が「墓はどこだ?」と聞けば「分からない!」と言い、「いい占い師がいる!」とエイを紹介する。(笑)エイが派手なお祓いをして占い、九十九里浜の松の下と教える。神田が苦労して探すとそこは海の中だった。(笑)。やっと探し出すと草履は子供用だった。(笑)

文政4年(1821年)、地図が出来上がって幕府に提出し将軍に観てもらうことになった。弟子たちは「先生が亡くなっていることが分かり、処罰される」と恐れだす。景保は出来上がった地図を車力で江戸城の運び入れ、将軍の接見間の隣の間に展開した。

景保は将軍に拝謁し地図が出来上がったことを報告。すると将軍から「忠敬はなぜ来ないのか?」と聞かれた。景保は「隣の間でお待ちしています」と答えた。

将軍はこの間に入ると部屋一杯に日本全国図が展開されていたそこには忠敬が測量の旅で履いていた草履があった。将軍は「余の国か、美しい。余にはお前の姿が見せる、大義であった。ゆるりと休め!」と景保に言葉をかけた。このシーンは草刈さんと中井さんの名演技で泣けるシーンになっています。

加藤は「これは高橋景保の物語で伊能忠敬は出てこない。名もない者たちがこれほどに国に大切な地図を作った。この記を残してやりたい」と大河ドラマ伊能忠敬」に反対した。

まとめ:

池本が加藤に頼んだのは「私を脚本家にしてくれ!」だった。「脚本家になって書き換える、高橋景保と同じ役目を果たす」というものだった。落語の“落ち”です。(笑)

NHK大河ドラマのテーマ選定の裏側を描いた作品!この結末「史実とドラマは違う!」に頷けます。(笑)しかし、加藤が描いた“高橋景保物語”は面白かった。今のNHK大河ドラマより面白い。これ現実化されるかもしれませんね!(笑)

 その面白さは開発プロゼクトの活動と加藤が描く地図が出来上がる物語のキャストが同じというところ。そしてキャストの演技が素晴らしかった。笑い一杯のドラマで「何故この地図を作らねばならなかったか、世界が恐れたという日本地図の製作秘話を教えてくれます。

実際の測量を行い紙面に側転を落とす作業は、観測器具や要員不足でいかにもTVドラマそのもので、映画としては安っぽかった。小作品ですが日本地図の歴史を面白く見せてくれる作品でした。

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