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「パラレル・マザーズ」(2022)家族の血の繋がりで戦争の悲劇を描くとは!

 

病院であかちゃんを間違えられた母親の話是枝監督の「そして父となる」(2013)と同じ設定ドラマだがスペインでどう描かれるのかと、監督はスペインの名匠ペドロ・アルモドバルと言われても全く分からず、WOWOWで観ました。(笑)

スペイン・フランス合作映画監督・脚本:ペドロ・アルモドバル撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ、編集:テレサ・フォント、音楽:アルベルト・イグレシアス

出演者:ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、他。

ペネロペ・クルスが、第78回ベネチア国際映画祭(2021)で最優秀女優賞を受賞。第94回アカデミー賞(2022)で主演女優賞にノミネートされています。

物語は

写真家として成功しているジャニス(ペネロペ・クルス)と17歳の少女アナ(ミレナ・スミット)は、同じ病院の産科病棟で偶然出会い、同じ日に女の子を出産。ともにシングルマザーとして生きていくことを決意していた2人は、再会を誓って退院する。

ところが、ジャニスがセシリアと名付けた娘は、父親であるはずの元恋人アルトゥロ(イスラエル・エレハルデ)から「自分の子どもとは思えない」と言われてしまう。

それをきっかけにジャニスがDNA検査をしたところ、セシリアが実の子でないことが判明。アナの娘と取り違えられたのではないかと疑うジャニスは、悩んだ末にこの事実を封印し、アナとも連絡を絶つ。しかし1年後、偶然アナと再会し、アナの娘が亡くなったことを知る。(映画COM)


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あらすじ&感想:

冒頭、フォトグラファーのジャニスは考古学者アルトゥロのポートレート写真を撮った。これが縁でジャニスはアルトゥロに内戦で亡くなり埋設されている曾祖父の遺体発掘を依頼した。祖母が「何が何でも父親の遺骨を手元に戻し埋葬したい」という強い願いからだった。アルトゥロは「多分見つかる!」と快く受けた。そしてふたりが恋に落ちたというこの出だしに驚きました。(笑)

ペネロペ・クルスの美しさならこれもあり。(笑)物語はとてもテンポよく、無駄なことは描かないという物語の展開がいい

ジャニスが妊娠。アルトゥロは病弱な妻と別れることが出来ずジャニスの出産に反対した。しかしジャニスは年齢的にこれが最後と産む決心をし、出産を控えて入院した。

そこで17歳の妊婦アンに出会い、アンもシングルマザーとなることを知った。アンには母親のテレサ(アイタナ・サンチェス=ギヨン)が顔を見せていた。この3人が揃うと画面が映えます!(笑)

ふたりは同じ日に女の子・セシリアを出産。苦しみ出産した喜びを共有するように、ふたりは「また会いたいね!」と約束して退院していった。

ジャニスがしばらく仕事を辞め、セシリアのベッドのカメラを設置しリモートで監視しながら育てる

アルトゥロがセシリアを見にきて、「誰に似ているのか?」と不信感を持った。

ジャニスはGNA検査をして自分が生んだ小ではないとしった。病院でアンの子と間違えられたと思った。

ここからどうなっていくのかと冷や冷やしながら注視することになりますが、その結末は、・・

ジャニスは「我が子として育てる」と、アンとの通話回線を遮断。学生のベビーシッターを雇いSNSでリモート監視しながら、写真家の仕事に戻った。自立した女性の子育てを見せてくれます。

ジャニスが写真家に戻ったことで、暗い物語が彼女の職場、撮った写真で明るい雰囲気のものになっている。

1年後、ジャニスは偶然カフェで働いているアンに出会い、アンは子供を亡くしたことを知った。ジャニスはアンを自分のアパートに招待した。これはまずいと思うのですが、実はジャニスはそのことで悩んでいた。ジャニスはセシリアの母で居たいと思った。

ジャニスはアンと一緒に住み、雇い料理を教え、セシリアの世話をしてもらいことにした。アンはセシリアをとても可愛がった。

アンが亡くした子・アニータは酔っぱらってレイプされた子で、「親が誰か分からなかった」と写真を見せた。ジャニスはその内のひとりがセシリアに似ていると思ったが、アンは気づかないようだった。ジャニスは密かにDNA検査をしてセシリアンの子であることを知った。

ふたりはレスビアンの関係へとなっていった。この展開には驚きました。

アルトゥロの曾祖父の墓が見つかったという知らせで彼に会ったたことがアンに知られ、「本当に自分を愛しているの?」とアンの激しく追及にされ、「アルトゥロの子を産んだが、病院の手違いで間違えられ、セシリアはアンの子である」と告白した。

アンは「最初になぜ言わなかった」と激しく責めた。ジャニスは「何度も言おうと思ったが言い出せなかった」と謝った。ジャニスの母性が強かった。

アンはセシリアを連れて出て行ったが、時間を経るとともに、夫が誰か不明なことや幼いころの両親の離婚で居場所のなかったことを思い出し、ジャニスへの感謝の気持ちに変わっていった。

病院の手違いで赤ちゃんを取り間違えた問題は収まるところに収まり、いったいこの作品は何を見せようとしたのか?と思ったところに意外な結末が待っていました。

ジャニスはアン母子とともにアルトゥロが行う曾祖父埋葬地の発掘に立ち会う。そこにはいくつもの鎖で繋がれた遺体が埋められていた。やっと曾祖父の遺骨が祖母の手に戻ってきた。スペインの悲しい戦争史は語られた

まとめ

病院の手違いで赤ちゃんを取り間違えた問題。ジャニスが「病院で間違えられた」と分かりながら、それでも「自分は母だ!」とセシリアを健気に育てた。しかし、あるべき姿を考え産みの母アンに戻すという人としてあるべき姿が描かれていた

もう子供を持つことはないと罪悪感に苦しみながらセシリアを育てるジャニス役ペネロペ・クルスの演技がすばらしかった。 “母としての愛情”が見せどころでした。

ジャニスとセシリアの血の問題を、曾祖父と祖母の血の問題に繋げ、スペイン内戦の悲劇を描くという結末祖母(フリエタ・セラーノ)が「父は逃げればいいのち家族と居たくてここに戻って捕まった」という。このことが強く耳に残った!

とても美しいおしゃれな作品でした

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