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「ベネデッタ」(2021)17世紀のイタリア、レスピアンとして生きた修道女のはなし!

 

氷の微笑」(1992)「エル ELLE」(2016)などのポール・バーホーベン監督作品。2023年2月公開作品でこんな作品があったかとWOWOWで観ました!

フランス・オランダ製作作品

監督:ポール・バーホーベン原案:ジュディス・C・ブラウン、脚本:エル ELLE」のデビッド・バーク ポール・バーホーベン撮影:ジャンヌ・ラポワリー、編集:ヨープ・テル・ブルフ、音楽:アン・ダッドリー

出演者;主演は「エル ELLE」のヴィルジニー・エフィラと「ファイブ・デビルズ」(2021)のダフネ・パタキア。共演は「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」(2019)のランベール・ウィルソン、「ハイエナたちの報酬 絶望の一夜」(2017)のオリヴィエ・ラブルダン、「あのこと」(2021)のルイーズ・シュビヨット。そして「さざなみ」2015)「UNEデューン 砂の惑星」(2020)のシャーロット・ランプリング、他。

物語は、

17世紀、ペシアの町。聖母マリアと対話し奇蹟を起こすとされる少女ベネデッタは、6歳で出家してテアティノ修道院に入る。純粋無垢なまま成人した彼女は、修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助け、秘密の関係を深めていく。そんな中、ベネデッタは聖痕を受けてイエスの花嫁になったとみなされ、新たな修道院長に就任。民衆から聖女と崇められ強大な権力を手にするが……。(実話から着想を得た物語、映画COM)


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あらすじ&感想:

宗教革命後のキリスト教混迷期の世界。ベネデッタは幼いころから聖書、キリストへの信仰心の強い子であった。

両親が6歳のベネデッタをペシアのテアティン修道院に預ける途上で野盗たちに襲われ母親のネックレスがベネデッタの祈りで戻ったとか、修道院に入ってあまりの孤独に寝室を抜け出しキリスト像を祈っているとき像が倒れ下敷きになるが全く傷がなかったとか。奇跡を呼ぶ子と騒がれるが修道院の院長・フェリシタ(シャーロット・ランプリング)は奇跡とは思っていなかった。

18年後、修道院では来客(両親を含む)を迎え宗教劇“キリストに召される花嫁”をベレッタ主演で演じていた。花嫁が死人となって修道女に支えられキリストに献上されるシーンで、ベネデッタは「レベネデッタよ!」と呼ぶキリストに走り寄る」幻覚を見て、足をばたばた動かした。

観劇後の会食。ミラノ司教がペストで亡くなったことが話題になった。ペシアの主席司祭アルフォンソ(オリヴィエ・ラブルダン)とフェリンタがその後継者の話をする。アルフォンソは「ペシアは話題にもならない」という。大金を上納するか聖女でも現れないかぎりだめだと思っている。

聖職といいながら立身出世の道具でしかない

 フェリシタがベネデッタに「花嫁のあなたは死人よ」と注意すると「私はキリストを見た」と主張する。フェリンタはレベッタを持て増し気味だが、ベネッタからみればフェリンタは宗教心のない人に見える新興宗教をやっている人には当たり前だと言えるシーンだ。

そこに父親から逃げるように泥で汚れた顔の娘・バルトロメア(ダフネ・パタキア)が助けを求めて修道院に駆け込んできた。ベネデッタの父が「天国に行けますように!」と金を寄付し、バルトロメアの入信が認められた。

民は「天国に行くか地獄に行くか」が最大の関心事で寄進する

 ベネデッタがバルトロメアの世話を言付かる。髪を切り身体を拭いてやる。トイレに案内するとおならを出すという自由奔放なしぐさに驚かされる。着替えるバルトロメアの裸体に妬かれる。彼女の身体の傷は、母親を亡くして、父や兄から暴行された傷だという。そして「私はきれい?」と問われ、ベネデッタは「私の目の中の写っている、見て!」とバルトロメアの顔に近づけるが、フェリンタの娘クリスティナ(ルイーズ・シュビヨット)が部屋に入ったので止めた。バルトロメアはクリスティナが去るとベネデッタの唇にキスをして自分の部屋に去って行った。

ベネデッタは「あの子は面倒見切れない。神の助言が必要だ!」と思い悩む

朝のお祈り時、ベネデッタはバルトロメアに身体を触られ「蛇に襲われ、キリストが助けにきて蛇を切り裂き、悪魔が君から遠ざけようとしたとキスし、決して離れるな!」という幻覚を見ながら、ぼんやりと立っていた。修道女たちがこれを見ていた。

ベネデッタは司祭にこの恐ろしい幻覚について告白しどうすべきかを問うた。司祭は「キリストの真偽を知る唯一の方法は痛みだ!」と教えた。

ベネデッタは繭の糸取り作業で、「バルトロメアの妨害で絹糸を熱湯に中に落とした」と因縁をつけ、彼女に熱湯の中の絹糸を拾えと命じた。ベネデッタはバルトロメアに痛みを与えた。バルトロメアは熱湯に手を入れ拾い上げた。彼女は火傷を負った。これを見たフェリンタが「故意にやった?」と聞くので、ベネデッタは「愛情からです。彼女の痛みに同情を持っている」と答えた。すると「他者でなく自分ならそうだ!」と言い、罰として2週間年老いたヤコバ修道女の夜の準備を世話するよう命じた。

夜、ベネデッタはヤコバの部屋を尋ね自分の罰を話した。ヤコバは「自分の罪はユダヤ人、これが恋人よ」と自分の乳房を見せ「神の言葉の形はさまざまだ。必要なのは愛を受け入れる勇気だ」と言う。ベネデッタは自分の部屋に戻り鏡で自分の乳房を見た。全く違うことに気付いた。

ベネデッタはヤコバの言葉を自分に問い続け七転八倒の苦しみに陥った。医者の診断を受け、ケシの煮汁で治るというものだった。これをバルトロメアが聞いていた。

ベネデッタの部屋にバルトロメアがやってきて火傷の包帯を外して「私と一緒にいたい?」とキスをする。ベネデッタが幻覚を見始めた。野盗たちに追われ手を矢で射抜かれ、取り押さえられて殴られる。そこに白衣の騎士が現れ「キリストだ、傷を癒してやる」と野盗たちの首を飛ばす!ベネデッタが「キリストではない!嘘つき!」と叫ぶと「私のものになれ、この売女!」と侮り、ベネデッタが嫌がり騒ぐ。目が覚めた。ケシの煮汁を飲まされ騒ぎは収まった。嫌な残酷シーンだった

さきの蛇の幻想、そしてこの幻想、男性の性暴力を連想させる

フェリンタはこの状態を見かねてバルトロメアに付き添いを命じた。バルトロメアがベネデッタの衣類を捜していて、箪笥の中からベネデッタが幼いころ持っていた小さな木彫りのマリア像を目にした。

ベネデッタは火傷を負わせたことを侘び、ローソクを消して眠ると「十字架に縛られたキリストから愛の証を受けるか、裸になれ!と促がされ、ベネデッタが裸になりキリストとセックスする」幻覚を見た。ベネデッタが「神よ痛い!」と声をあげベットから落ちた。そこにバルトロメアが立っていた。

朝の礼拝でベネデッタが「昨夜キリストは私の体に傷をつけた!」と公言した

バルトロメアがイエスの声を聴いたと証言した。フェリンタは傷を調べ「キリストには額に傷があるが、ベネデッタにはない」として傷は聖痕ではないと主張。アルフォンソ主席司祭は「神は規則に縛られない、信じてみようと思う。聖女が生まれればこの町は繁盛する」という。

バルトロメアに伴われ、ベネデッタがキリスト像に礼拝していると突然花瓶が割れ額に傷を負った。この様子をクリスティナが見ていた。ベネデッタは礼拝堂に戻り、神に憑依したように、

「冒瀆だ!罪人ども!知るがいい、ペストが国を襲うが、ペシアの町は私が花嫁の聖寵により助かる!」と声を上げた。アルフォンソ主席司祭は「神の声を聴いた!」と聖痕を認めた。民は大喜びでこれを受け入れた。

しかし、クリスティナが「瓶が壊れその破片で、自分で傷つけた」と牧師に解告した。が、「音は聞いたが見ていない」と却下され、ベネデッタによって自らが鞭打つ刑を科せられた。これは辛いシーンだった!

ベネデッタは修道院院長の座をフェリンタから引き継ぎ大部屋に移動した。ここではドアを閉めれば憚ることなくバルトロメアとの愛を楽しめた。バルトロメアが仏像を削り「これなら傷つけない」と性具として用い、ベネデッタを性の頂点に導いていった。ところが、フェリンタは部屋を去る際、壁に穴を開けていて、この様を覗き見していた。

ふたりが楽しんでいるとき、夜空に不吉だと言われる彗星が現れた

クリスティナが飛び降り自殺を図り、民が大きな不安を抱く中で、ベネデッタは「ペストを収める好機」と民を扇動し町を上げての祈祷を行ない聖女としての地位を確立し、町の城門を閉鎖した。他の地域がペストに冒されるなかでペシアの町は安泰であった。

フェリンタはペストの汚染地域をかいくぐり、フレンツェの教皇大使ジリオーリ(ランベール・ウィルソン)を尋ね、ベネデッタを訴えた。

ジリオーリはベシアに到着したが城門が開かれない。ベネデッタはペストの安全祈祷中に倒れ、死亡。

ジリオーリは教皇大使の特権を翳し城内に入り、ベネデッタの遺体に面会し祈りを奉じると、ベネッタは「キリストが私をここに寄こした。ペストから救うためです。私が生きる間は皆も生きれる」と息を吹き返した。ジリオーリは「神を冒涜した罪で訊問する」と宣言した。

訊問が始まった。フェリンタが「木像を性具にした」と証言したがバルトロメアは嘘だと否定した。バルトロメアは地下室に閉じこめジャンヌダルクも耐えられなかったという特殊器具“苦悩の栞”を用いて責められすべてを白状した。

ベネッタはジリオーリの脚を洗いたいと申し出た。ジリオーリが「娼婦のような洗い方をする」という。ベネッタは教皇大使は妻子を持たれ、娼婦を知っておられる」と皮肉を返し、ペストに感染していることを確認した。バルトロメアとの関係を聞かれ「愛だ!」と答えた。そこにバルトロメアが連れてこられ隠していた木像を差し出した。「これが愛か!」というジリオーリにベネデッタは神に恣意したごとく「冒瀆者!十字架の私を嗤ったように私の花嫁を嗤うか!神にお裁きを!」と叫んだ。ジリオーリはこの言葉に怯んだ!

ジリオーリはベネデッタを火あぶり刑で処すことにして、広場の観覧席から見ることにした。

バルトロメアは裸同然の格好で院外に放出された。

ベネデッタはフェリンタを訪ねた。彼女はペストに冒され臥せっていた。ベネデッタは「あなたは神を信じなかったが、娘さんと天国で会えます」と言い、耳元で「ジリオーリがペストであることを証言しなさい。あなたは天国に逝ける」と約束をした。

ベネデッタが広場に引き出されると民は一斉に「教皇大使を殺せ!」と叫ぶ。まさにキリストの再来だった。

ベネッタはジリオーリに「あなたはペストに冒されこの町を潰す!」と叫んだ。これにフェリンタがペストの証拠を見せ「子供たちが犠牲になる」と叫んた。広場は大混乱に陥った。ジリオーリは町の女に刺され瀕死の中で、ベネデッタに「天国に行けるか!」と聞く。「そうだ」と答えたが「また嘘をつく」と言い亡くなった。

ジリオーリはここに至っても神を信じないこの人物が教皇大使の地位にいるという不思議。

バルトロメアが駆けつけベネデッタが落とした陶器の破片で縛り縄を解いた。ふたりはこの場を離れた。

フェリンタは神を信じ火の中に消えていった

ある丘の廃屋で、裸で一夜を過ごしたベネデッタとバルトロメア。ベネデッタが「町に戻る」と言うとバルトロメアが「奇跡は自作自演?戻ると殺される」と言う。ベネデッタは「あなたが知っているとおりだ。火刑で死刑台だが、火は私を焼かない!あなたも信じる、これで街の人は二度と疑いを持たなくなる」と答えた。バルトロメは「いかれている!行っちまえ!」と声を掛けた。ベネデッタは「貴方は子供だねえ、そこがいいところ」と言い残し町に降りて行った。

教会はネデッタのイエスの幻覚を見たという証言を認めず、彼女は獄で70歳まで生きた。ミサへの参加が許され、時折修道女たちと食事を共にする事も許されその際には特別の席に座らされた。ペシアの町はペストの災厄から逃れていた。

まとめ

とてもしんどい作品だった。しかし面白かった。エロとかグロとかいろいろ言われるが、今に生きる人への生き方、宗教に対する考え方など大きなメッセージを抱える作品だと思った

ベネデッタは神の宣託で聖女になったのか、自演自作なのか?それはラストシーンで答えが出ている。信じるか信じないかだ!

中世では断禁の愛と言われたレスビアンを、ベネデッタは「神を信じ、愛に形はない」と強く生きた人だった。

愛は信じる力だ

ベネデッタとバルトロメアのレス関係が繊細に描かれ、裸体のシーンが全編にわたるという強烈なエロチシズム、ベネデッタの幻覚やクリスティナの鞭打ち刑、火刑シーンなの暴力シーンはクリスチャンには耐えられないような暴言・表現かもしれない。聖痕やベネデッタが修道院院長して絶大なる権力を手にする過程も嘘・はったりばかりに見えるかもしれない。

しかし、これらをすべて晒してこそ“真の愛”が見えてくるという脚本が凄いと思った

ラストシーンのベネデッタの言葉「死刑台が待っているが火は私を焼かない!これで街の人は二度と疑いを持たなくなる」、これこそがテーマだと思った。宗教とは何かを問うているようだ!

ヴィルジニー・エフィラとダフネ・パタキアの身体を張った演技。ヴィルジニー・エフィラのキリストに憑依した叫びの演技に身震いした。80歳を超えたポール・バーホーベン監督の実にたくましい女性を描いた作品だった!

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