新年の1本目を本作にしました!NHKBSで元旦に放送されたものです。
みなさんご存じの“愛しのクレメンタイン”曲で名高い作品。ジョン・フォード監督の名作中の名作といわれる作品。
「荒野の決闘」(1946)圧巻の決闘シーンだが、静かで、美しい、しんみりした作品だった。
黒澤監督が憧れた作品、どこに憧れたか、「フェイブルマンズ」(2022)のラストシーンでスピルバーグが入社試験でジョン・フォード監督の面接試験を受け「地平線は上か下がいい画だ!中はダメだ!」と教わったというエピソードを思い出しなら観ることにしました。(笑)
監督:ジョン・フォード、撮影:ジョー・マクドナルド、音楽:シリル・モックリッジ、編集:エドワード・B・パウエル。
出演者:ヘンリー・フォンダ、リンダ・ダーネル、ビクター・マチュア、キャシー・ダウンズ、ウォルター・ブレナン、
あらすじ:
1882年.ワイアット(ヘンリー・フォンダ)、モーガン、ヴァージル、ジェームズの4兄弟が大量の牛を売るためカルフォルニアに急いでいた。
トゥームストンでクラントン(ウォルター・ブレナン)と長男のアイクと出会い交渉したが値が折り合わず商売は成立しなかった。町近くで野営し、末弟のジェームスを残して小さな町トゥームストンに出掛け旅の垢を落として最中に、ジェームスが何者に襲われて殺害され、牛を盗まれるという事件が起こった。
町の治安は劣悪で、ワイアットは保安官を求めていることを知り、かって名の知れた保安官であったが、この事件の犯人逮捕のため、ふたりの弟を補佐にして保安官となった。
ワイアットは退屈を癒すように酒場で賭博をしながら、犯人が現れるのを待つことにした。
賭博の元締めはドク(ビクター・マチュア)だった。彼は医者の免許を持ちながら酒を煽り生きることを諦めたような自防自得な男。そんな彼の娼婦がチワワ(リンダ・ダーネル)だった。
クラントン一家が酒場に現れた。ワイアットが「弟をやったか?」と聞くがこれを否定した。
ワイアットがクラントに雇われたシェイクスピア役者が怯えて舞台に立てない状況を知り彼を匿ったことでクラントンの息子たちと揉めた。クラントンは息子たちの鞭を呉れて「やつが抜いたらやれ!」と指示してOK牧場に帰っていった。
ある日、美しい婦人クレメンタイン(キャシー・ダウンズ)が町を訪ねてきた
ワイアットはひとめ惚れした彼女を部屋まで案内するという気の使いよう。クレメンタインが探していたのかドクだった。しかし、ドクは「東部へ帰れ!帰らないなら俺がこの町を出て行く」とクレメンタインを追い払う。
町に鐘楼が出来、町は総出でダンスをして祝った。ワイアットは帰りかけたクレメンタインを誘って一緒に踊った。
ドクが6頭立ての馬車で町を出た。
そのときチワワは宿のベランダでジェームスが恋人の買ったペンダントを見つけた。これを知ったワイアットは単独でドクを追った。原野で繰り広げられる追撃戦がすばらしい。
しかし、ドクにはペンダントと関係がないことが分かった。
チワワはドクが居なくなったことでクラントンの息子ビリー(ジョン・アイアランド)と寝ていた。
そこにワイアットが駆けつけると、ビリーがチワワを撃って逃走。ワイアットはヴァージルにビリーを追わせた。ドクはクレメンタインを助手としてチワワの弾丸摘出手術に成功した。ドクの顔に生きる力が戻った。
ビリーを追ったヴァージルはOK牧場に進入しクラントンに射殺され、ワイアットの元に送り返された。
明朝、ワイアットはOK牧場にクラントン逮捕に向かうことにした。
ワイアットとモーガン2人では無理と町長とシンプソンが、さらにドクが「チワワが亡くなった」と助っ人を申しでた。
ワイアットは町長とシンプトンにモーガンとドクの身代わりを演じさせ、3名で正面から逮捕の理由を述べ正々堂々と。モーガンとドクを迂回させた。
ドクは息子と対峙し射殺されたが、生き残ったのはクライトンのみ。クライトンを町から追放したが抵抗したので射殺した。このシーンもとてつもなく美しい。
クレメンタインはこの町に教師として残るという。ワイアットは「一度故郷に帰るがまた牛を追ってくる」と町をあとにした。
感想:
圧巻の決闘シーンだが、静かで、美しい、しんみりした作品だった。
冒頭のトゥームストンの原野の映像からはじまり、背景には常に原野と空が描かれる。荒れたれた人の心を写し、その心を洗うように見え素晴らしかった。
黒澤監督がジョン・フォード監督に聞いたという、馬が砂塵を巻き上げて爆走シーン、これは圧巻だ。フォード監督は黒澤監督にこの秘訣を伝授したという。
そしてOK牧場の決闘シーン、青空?をバックにワイアット自ら正々堂々と逮捕の理由を名乗り正面から逮捕に向かう。ドクとモーガンを迂回させる。戦闘シナリオがすばらしい!クライトンが抵抗したため射殺する結末。命を大切にし、しっかり正義を主張するのも面白い。
この作品の面白いのはビクター・マチュアが演じるドクのキャラクター。
結核と分かり、人生を投げ出し、クレメンタインを守るためにこの地に逃れ、死のうとするが死ねず苦しむ。しかし、医者として瀕死のチワワに手術を施し、生きることに喜びを見出すが、彼女の死でその命をワイアットに差し出すという生き方。人間味のあるいい話だった。
ワイアットのクレメンタインに寄せる愛の表現は控えめで、これから先は観るものに撒かせるというのもよかった。クレメンタインはここに残り教師として町のために生きるというのも、終戦直後の平和を暗示するように感じた。
命を大切にというメッセージが含められ、監督として戦後最初の作品だということが伺われる作品だと思った。
能登半島沖正月地震、被災者のみなさんにお見舞い申し上げます。昨日のNHK山内泉アナの絶叫勧告、解説員もよくがんがりました。気象庁は何をしているのか?と存在感全くなしでした。
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