2023年度オーストラリア製作作品。SNSで流行する「90秒憑依チャレンジ」にのめり込んだことから思わぬ事態に陥っていく女子高生を描き、2023年サンダンス映画祭で話題を呼び、A24で配給され「ミッドサマー」(2019)をはるかに超える興収を上げたという話題作。監督はYouTubeで活躍する双子の兄弟と聞いて、YouTubeに疎いのでこの機会にと劇場に駆けつけた。1週目の終りだが客は結構入っていた。
監督・脚本:ダニー・フィリッポウ マイケル・フィリッポウの長編映画の初監督作品、A24作品として続編が決定しているとのこと。撮影:アーロン・マクリスキー、編集:ジェフ・ラム、音楽:コーネル・ウィルチェック。
出演者:
ソフィー・ワイルド、アレクサンドラ・ジェンセン、ジョー・バード、オーティス・ダンジ、ミランダ・オットー、ゾーイ・テラケス、クリス・アロシオ、マーカス・ジョンソン、他。
物語は、
2年前の母の死と向き合えずにいる高校生ミアは、友人からSNSで話題の「90秒憑依チャレンジ」に誘われ、気晴らしに参加してみることに。それは呪われているという“手”のかたちをした置物を握って「トーク・トゥ・ミー」と唱えると霊が憑依するというもので、その“手”は必ず90秒以内に離さなければならないというルールがあった。強烈なスリルと快感にのめり込みチャレンジを繰り返すミアたちだったが、メンバーの1人にミアの亡き母が憑依してしまい……。(映画COMより)
あらすじ&感想(ねたばだあり:注意):
「ダケットを見たか」と探す兄。建物の奥にぐったりしているダケットを見つけ連れ帰ろうとしてナイフで刺された。ダケットはその直後自殺。ダケットの死の原因はまるでドラッグで錯乱したような“手”の最初の犠牲者だった。
ダケットの死は人との関りが希薄になったSNS社会の中で起こる“孤独の闇”。
物語はここから始まる、
17歳のミア(ソフィー・ワイルド)は母リア(アレクサンドラ・ステファンセン)を亡くし、その死について父マックス(マーカス・ジョンソン)ときまずくなり、孤独に耐えていた。唯一心許せるのは親友ジェイド(アレクサンドラ・ジェンセン)と彼女の弟ライリー(ジョー・バード)とふたりの母親スー(ミランダ・オットー)だけだった。
ライリーは友達と薬タバコでラリって、ミアに迎えの電話をした。母に厳しく注意されておりジェイドには頼めない。
ミアがジェイドに母の居なくなった寂しさを訴えているところにライリーからの電話。ミアが車で連れ帰る途中でカンガルーがぶつかってきた。ミアは停車して調べ、手遅れだと放置してジェイドのところに戻った。
ミアはこのことが気になってジェイドに話し、母親の死に結びつけていた。
ジェイドには3か月前に知合ったという恋人ダニエル(ミランダ・オットー)がいた。実はミアも心を寄せていた。
ダニエルの紹介でミア、ジェイドの3人がSNSで話題の「90秒憑依チャレンジ」に参加した。
そこには10数人のメンバーがいた。ゲームは憑依役を決め、司会者ヘンリー(ゾーイ・テラケス)の指示と実行者ジェス(クリス・アロシオ)が実行を監督するというもの。確実に90秒間で終るよう時計係がいる。
3人が初めてなのでメンバーのひとりが例を展示した。
ジェスによって椅子にロープで縛られ、ヘンリーの合図で憑依役が“手“を握り「トーク・トゥ・ミー」と発声しればそこに霊があらわれ「レット・ユー・イン」と唱えれば霊が憑依役に入り、憑依役は目を見開き大きくのけ反り苦しむ。メンバーたちがこの状態を囃し撮影するというもの。展示者の憑依チャレンジは大成功で拍手!
次にミアは挑戦した。ミアは「八つ裂きにしてやる」と激しく憑依し時間をオーバーし、93秒で霊から離れた。ヘンリーが「大丈夫かちょっと過ぎたが凄かった」と評価した。ミアには霊が入りやすい心に隙間、孤独感が強いということ。人に見られるということでミアの認証要求が働いた可能性がある。しかしこれでミアは人気ものになった!この話をライリーがジェイドから聞いてやってみたいと言い出す。
ド~ンと大音響に中で何者かに憑依し狂態を演じるのを観るのは面白い!これが「90秒憑依チャレンジ」かと魅入った。
ジェイドの家で、このゲームをやった。
憑依役がダニエルで始まった。ダニエルは誰に憑依したか目玉が飛び出し口から血を吹き出した。ジェイドが飼っている犬のクッキーがこれを舐めるという狂態にメンバーが大笑い。
ライリーがやりたいと言い出した。ヘンリーは「年齢から無理だ」と言ったが、ミアが50秒でやったらと提案し、これでやることになった。
ライリーはミアの母リアに憑依し「本当にごめん!傷つけえる気はなかった」とミアに話しかけた。ミアがライリーと会話することで憑依時間をオーバーし、ライリーは激しく頭を壁や机にぶつけ顔面破壊状態で警察が介入した。ミアはリアが去っていくのを見た!ミアには死者が透視できる力がある?
ミアは転がっている“手“をバッグに入れて帰宅した。父マックスに「ママに何か隠していることはないか」と聞いた。
ライリーは病院で治療を受けることになった。
ミアが見舞にライリーを訪ねたが、スーとジェイドに「貴方が原因でこうなった」と拒絶された。ミアがトイレに入るとドーンと音がしてドアを開けると誰もいない。
ミアは母に会ったことが本当なのか確かめるためダニエルを家に呼んだ。
ダニエルはソファーで眠り始め、ミアは母との思い出の動画を見て眠った。母を部屋から引きずりだす父の記憶を思い出し“手”に触った。するとミアがデブの醜い母に憑依して「ダニエル!」と起こした。ダニエルは怒って帰っていった。
ミアは自分の頭を何度も殴りつけ、ローソクの火を点け、「トーク・トゥ・ミー」と唱え母を呼び出した。「自殺したの?」と聞くと「その気はなかった。一度も離れたいと思ったこともない」という。そして「ライリーには助けがいる」と言った。
病院では、ジェイドがライリーの介護をしていると何かに憑りつかれ暴れて風呂場に血液が流れだすという、凄惨な事態が発生していた。
ミアは憑依チャレンジメンバーと話し合い、ヘンリーに「お前の責任だ」と言われ、ミア自らが司会者となりライリーの病室を訪れ、ゲームを始めた。しかし、なかなか霊が出てこない。そこに出てきたのがタゲットだった。ミアは“手“を蹴とばしてゲームを止めた。
父マッがクス正直に話すと母の手紙を読んでくれた。
そこには満足し希望に満ちていると書かれていた。「違う!」と思ったミアは“手“に触れると母リアが現れた。「リアは違う」と言い「あの男はマックスでない、霊が化けている」という。ミアはこの男をハサミで切りつけた。
もうミアの精神はめちゃめちゃで狂っていると思った。
ミアはジェイドに「ライリーは救える」と自宅に呼び寄せ、自分が病院に乗り込んだ。すると怒っていたスーが「あなたは精神を患った変な人だ」と怒らない。「責めて御免」と謝られた。
ジェイドにミアの家で“手”を発見した。病院に戻るとミアがいた。
ミアはライリーに近づくとライリーではなくダケット?の死霊だった。ミアが斬りつけようとするとライリーが現れるので斬れなかった。ミアはレイリーを車椅子に乗せ院外に出て高速道路に投げ捨てようとした。
ミアは死んだカンガルーの霊に取り込まれ飛び出して車に衝突して目が覚めた。病院に戻るがライリーもスーもいない。
まとめ:
「90秒憑依チャレンジ」が、ライリーが憑依して入院して以降、現実なのかミアの幻想世界なのか分からなくなって、混乱をきたす。後半になってホラーとしての面白さが出てきた。
恐ろしいシーンがいくつもあったが、このシーンをひつこく追うのではなく、10代の少女ミナの心理を追う物語となっていて、恐ろしさは軽るめだか、精神的に重い感じがした。脚本が秀逸だ!
ミアの孤独感と承認要求が浮き彫りになり、まさにSNSの世界で暮らす10代の娘の孤独と闇を描いた作品だと思った。現在の若者が犯した犯罪を見る思いがした。
ラストシーン、ミアが深い闇のトンネルを抜け、ローソクの灯りの中で、タゲットの兄?の“手“に触ったが次の展開がどうなるの?
ブログを読んでいただいたみなさん、よいお年をお迎えください。
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