パキスタン生まれの男性コメディアン・クメイルが、アメリカ人大学生のエミリーと付き合っていたが、文化の違いで破局するが、エミリーが原因不明の病で昏睡状態に陥り(ビッグ・シック)これを救おうとするクメイルがエミリーの両親と出会い、結婚に向けて文化の違いによる数々の障壁を乗り越えていくさまを、実話をもとに描いたコメディドラマ。
主人公をコメディアンであるご本人クメイル・ナンジアニが演じ、脚本は妻である脚本家のエミリー・V・ゴードンとの共同執筆です。凄いことになっています!
監督は「ドリスの恋愛妄想適齢期」のマイケル・ショウォルター。共演にゾーイ・カザン、
ホリー・ハンター、レイ・ロマノ、アヌパム・カーです。
このドラマは若いふたりの成長物語であるとともに、両親が人生を見つめる物語でもあるんです。かって浮気が露見して妻と不仲になったというエミリーの父親が「失敗してみてわかる、生涯一緒にいたい女とは誰か」という教訓が下敷きになっているところが良いですね! 至言だと思います。(笑)
アメリカで大ヒットした理由は、主人公がパキスタン生まれのイスラム教徒、公開された時期がトランプ大統領の移民排斥問題に絡んだことです。作品のなかでもこのことに触れられていて、ビッグ・シックはエミリーの大病であるとともに、大国アメリカの病を意味しています。
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物語は、クメイルがシカゴのクラブで生まれ故郷パキスタンネタで笑いを取り、これに野次を飛ばすエミリー(ゾーイ・カザン)のシーンから始まります。このあとふたりはすっかり打ち解けて、クメイルの部屋で身体を重ねるという、エミリーが惚れて交際に入ります。
クメイルの父親アズマ(アヌパム・カー)は医者、母親は家庭人で熱心なイスラム信者、信者との交際が彼女の世界。クルメイは、親の反対を押し切ってコメデイアンになったがいまだこれだけでは食べてはいけないらしくウーバーの運転手として稼いでいます。いつも親の準備する食卓に座っている。(笑)
一方、エミリーはセラピーを目指す大学院生で学生結婚歴がある。彼女の父親テリー(レイ・ロマノ)は教師。母親ベス(ホリー・ハンター)は家庭人で、ふたりは学生結婚でした。
パキスタンでは結婚は見合い以外に認められていない、これを犯せば家族の絆を喪うということに、クメイルは親の期待を裏切ることが出来ずエミリーに隠して見合いをしていたのでした。ふたりの間の最大の障害はイスラム教に起因しています。仏教国の日本人にはこれほどの縛りはないと感じます。
エミリーの治療にもっと技術のある病院に転院する必要があるのではとベスとテリーが対立するが、クメイルが耳にした「ここで安静にしているのが良い」という意見が夫婦の諍いを止めます。クメイルは自分の夢を応援してくれたエミリーに応えようと彼女の危機的病状をねたにステージに立ち続け、観客が一緒に泣いてくれるから面白い。
この危機を脱して突然エミリーが目覚める。しかし、「わたしはず~と寝ていて、いま直ぐにあなたの気持ちを受け入れられない」と言います。確かにそうですね! ここからのふたりの成長していく姿が感動的です。
クメイルは自分の家族に「見合い結婚はしない、家族は家族、絆は消さない」と宣言し家を出て、活動の場をニューヨクに移します。クメイルにコメデイアンとして自立する明確な自覚が出来ました。
クメイルはエミリーとの経験を取り入れたパキスタンねたをしゃべり、エミリーはこれをネットで観るという毎日が続きます。そんなある日、エミリーがクラブを尋ね野次を飛ばします!
クメイルのケーシー高峰風のコントをもっと理解できたら、もっと笑えたのにと残念! ユーモアで大きな壁を乗り越えていく物語に感動しました。
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