世界的ベストセラー小説「海を照らす光」(M・L・ステッドマン)の映画化。監督は「ブルーバレンタイン」のデレク・シアンフランス、出演者に主役を「それでも夜は明ける」「スイーブ・ジョブズ」のマイケル・ファスベンダー、ヒロイン役を「リリーのすべて」のアリシア・ヴィキャンデル。「ナイロビの蜂」のレイチェル・ワンズという豪華版です!「テイシュ会社の株があがるほど、観客は泣くに違いない」という作品。(笑)名優たちの演技にしっかり泣こうと観ることに。こちらでは2ヶ月遅れの公開です。
インド洋と南極海がぶつかる(ossans)オーストラリア西部に浮かぶ孤島に暮らす灯台守(Light)の夫婦。深い絆で結ばれた2人は愛する我が子を失い深い悲しみにあるとき、見知らぬ男の死体と泣き叫ぶ女の子が漂着。ふたりは、罪であることを知りながら自分たちの娘として育てます。しかし4年後に産みの母が現れ、育ての夫婦と産みの母親の葛藤、赤ちゃんの運命が描かれます。
前段で灯台守夫婦がそれぞれの光を求めて結ばれる経緯がうつくしく、ラブリーに。しかし、二度にわたる流産に苦しむ痛々しい姿を見ることになります。そこに現れた赤ちゃんは彼らの光になります。
原題は「The Light between occans」、この原題こそがテーマ。人は誰しも沢山の過ちを犯しますがその過ちは何によって救われるかが問われます。
前段は、「八日目の蝉」のような数多い作品の雰囲気に似ていて、泣くということがありませんでしたが後段になりテーマがはっきりと見えるあたりになると大泣きになります。(#^.^#)。
作品の雰囲気に合ったうつくしいロケ地の風景、3人の情感あふれるすばらしい演技、波が近づいて離れるようなテンポのよい編集に癒されます。
****
物語は、・・・
ふたりは一目惚れ、手紙のやり取りで交際が始まります。トムは孤独な自分の人生を明るくしてくれる人と、イザベルは自分の未来に責任をもってくれる人とお互いを認め合うようになり、結婚します。
ふたりの誰にも邪魔されない島での生活は楽園のようでした。まるで桃源郷での生活のように美しく描かれています(アダムとイブ?)。
しかし、時間とともに子供を願うようになりますが、二度の妊娠いずれも早産で、イザベルは失意から立ち直れない。そんなとき一隻のボートが流れ着き、中にはすでに息途絶えた男と女の赤ちゃんが乗っていました。
トムは灯台守の役割から、そして軍隊生活で培った正義感から届け出ようとしますが、イザベルが「赤ちゃんを少し休ませてあげて」と届け出を待たせ子供と一晩過ごすうちにもはや子供を手放すことができなくなり、自分たちの子供として育てたいと言い出します。
イザベルの苦しみや悲しみ、孤島での厳しい生活を見ているので、この行為が犯罪だとは感じなくなっています。それほどに、妊娠の苦しみを演じるアリシア・ヴィキャンデルの演技はすばらしいです。
義父ビル(ギャリー・マクドナルド)に尋ねると「町一番の金持ちの娘とドイツ人の男の間に出来た子で、父親と海に出ていて消えた子」ということを知ります。
罪悪感に苛まれたトムは島に帰る前に「夫君は神の御許だが娘さんは大切にされている」と匿名の手紙をハナのポストに投函します。ハナは警察に届けますが、何の手がかりもなく時間が過ぎていきます。
島に戻ったトム一家は、これまでと同様、ルーシー中心の楽園のような生活が続きます。イザベルの光はトムからルーシーに移ったようです。(#^.^#)
さらに2年後、灯台建設40周年式典に出席するため、トム一家が岬の町に戻り、揃って式典に参加します。そこにハナ一家も参加していて、ハナの妹がイザベルとルーシーに話し掛けたことが発端となり、ハナがルーシーを自分の子ではないかと感じ始めます。イザベルもこのことに気付きます。ここから、この作品の核心部に入って行きます。
トムとイザベルは「打ち明けるべきだ」「今更手遅れよ」「正しいことをすべきだ」「他人のため、ルーシーのためにこれは正しいこと」「彼女は母親だ」「あの子にとって私が母親よ」と対立します。トムはルーシーが島に流れ着いたときに持っていたお守りをハナのポストに投げ入れ、島に帰ります。トムは妻を裏切りました!
このお守りから足がつき、島でトムとルーシーは逮捕され岬の警察署に連行されます。島を離れる前にトムはナハに「お前は無実だ、全部おれがやったと言うんだ」と言い含めます。
トムは男を殺害した疑いがあるとして警察の独房に収容され、ルーシーは無理矢理にイザベルから引き離されハナに引き取られます。イザベルは失意のなかで両親の家で待機となります。
トムは警官に「男は死んでいた。この事件での責任は全部自分にある」と証言します。警察官はイザベルに「トムは、死んでいたというが本当か」と問いますが、イザベルは黙秘し、結婚指輪に触り涙を流します。
イザベルが何も食べなくなり、トムの気の迷いから事件が発覚し娘が奪われと思い込み「トムが憎い」と言い始めます。
イザベルが衣料店に出掛けるとそこにハナと一緒に来ていたルーシーに出会います。イザベルを見つけたルーシーはママと叫びイザベルの胸のなかに。ハナはイザベルからルーシーを取り戻し連れて帰りますが、イザベルの悲しみを目にします。
ハナは警察署を訪れトムに「本当にあなたがやったのですか」と尋ねます。トムは「後悔している。どうにでもしてください。妻には選択の余地がなかった」と答えます。
イザベルの母ヴィオレット(ジェーン・メネラウス)が苦しむイザベルに「トムは今もあなたの夫。このままではトムは一生牢で過ごすことになるよ」と話し掛けます。
そこにハナがやってきて「私には何もできない。グレースはあなたを愛している。あの子はあなたのもの。あなたの夫が収監されるころ娘を連れてきます」と提案します。
イザベルはトムのメモを取り出して読みます。そこには「偽り続けることはできなかった。すべてをかけてあなたを愛した。あなたを悲しめたことを謝りたい」とい書かれていました。
イザベルは母の言葉に促されトムのメモを読み、トムの限りない愛情を知り、ルーシーを返すというハナの赦しに、自らの罪を認めてルーシーをハナの元に返すことにします。
祖父の提案で、グレースはルーシー・グレイスと名を替えることで、すっかりハナに懐きます。
1950年8月、ベッドのなかのイザベルがトムに「神はわたしをお許しになるでしょうか」と問うと「君も自分を許す時だよ」と話しかけます。イザベルはルーシー宛てに手紙を残し亡くなります。「あれから長い時が流れ約束を守ってきました。私はもう終わります。私たちを訪ねてくれることを信じています。あなたが生きていることを遠くから祈っています」。イザベルはルーシーを手放しましたが、夫とともにやすらかな晩年を過ごしたようです。
ある日、女性が「グレースです。ルーシーよ、お礼を言いたくて」と息子クリストファーを連れて、トムを訪ねてきます。「イザベルも君に会いたかった」とイザベルの手紙をみせます! 「また会いにきます」とルーシー。穏やかな海に夕陽が沈みます。 何重にも仕掛けられた赦しの物語に涙がでます。