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「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(2024)戦場カメラマンの活動とその目を通して見る生々しいアメリカの崩壊劇、その恐怖に震えた!

 

内戦の勃発により戦場と化した近未来のアメリカを舞台に、最前線を取材するジャーナリストたちを主人公に圧倒的没入感で描いたアクションスリラー。

アメリカで内線が勃発!否応なく3年前の議事堂襲撃事件が頭に浮かぶ。現在のアメリカの状況を思うと余りにも生々しいテーマ。これだけで観ることにしました。

大統領の肉声を求めてホワイトハウスに駆けつける戦場カメラマンの活動とその目を通して見る生々しいアメリカの崩壊劇、内戦の恐怖を圧倒的な映像と音響でみせてくれました。すばらしいの一言

ラストシーンのホワイトハウスへ突入には記者と一緒に飛び込んで最高の映像を収めたという没入感に浸った。

監督・脚本:アレックス・ガーランド撮影:ロブ・ハーディ、美術:キャティ・マクシー、衣装:メーガン・カスパーリク、編集:ジェイク・ロバーツ、音楽:ベン・サリスベリー ジェフ・バーロウ。

出演者キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソンソノヤ・ミズノ、ニック・オファーマン、ジェシー・プレモンス。

物語は、

連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州カリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。就任3期目に突入した権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。(映画COMより)


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

ニューヨーク市街の暴動を取材に出たリー(キルステン・ダンスト

そこでリーに憧れ戦場カメラマンを目指すジェシーケイリー・スピーニー)に出会った。爆発で気を失い1枚の写真も撮れないジェシーだったが、その意思に負けて連れてゆくことにした

リーは長年コンビを組む記者のジョエル(ワグネル・モウラ)にと師匠のベテラン記者サミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)にジェシーを加え、ピッツバーグ~ウエスバージニアシャーロッツビル経由でホワイトハウスに入ることにした。

ホワイトハウスまで1397kmの旅の開始

車中でやっと政治の話しが出る。西部同盟反逆の理由は大統領が社会の分断に乗じて憲法に違反し任期延長、FBIを解散、軍を使っての統治、ファシズム政権だという。

途中で大量の車両が破壊・放置されている現場に出会った。ハイウエーを下りて一般道を走る。

ガスステーションで給油。

異変に気付いたジェシーがスタンドの裏に回ると、二人の男が吊るされていた。男が「侵略者だ、同じ高校だが口を利かなくたったので吊るした。もっと見つける」という。これを聞いているジェシーのところにリーが駆けつけ、この男を中にして吊るされた男を撮った。リーは車に戻って「質問せずに記録に残せ!」とジェシーに注意した。

荒廃した街に入り、リーは車を停めて、ジェシーに「墜落したヘリを撮れ」と指示した。自由にいろいろ撮るジェシーに「自分が訴えたいものを撮れ!」と教える。

リーはジェシーを一人前のカメラマンに育てることに必死だった

ジェシーは第1線で撮るには向かない、後方に残すという意見がでたが、ジェシーはこれを拒否する。ジョエルが「支援する」と申し出た。

市街戦闘の撮影

市街戦で戦う兵士に密着して写真を撮る。リーが腹部に傷を負った兵士の写真を撮る。ジェシーは興奮しながらリーと同じように撮る。西側の兵士が捕らえた男たちを野に並べて射殺する惨いシーン。これをジェシーが撮る。ジョエルが「すげえ、最高だ!」という程に勇敢に撮れるようになった。

ヴァージニアに入り、難民キャンプで宿泊

野外で、ジェシーが撮ったフルムを現像しリーに見せる。リーは「よく撮れている。使えるのは30枚に1枚ぐらいだ」とジェシーの戦場写真家としての腕を褒めた。そして「内戦を見たくない!」と告白。これまでに数々の過酷な戦闘シーンを撮ってきたが同じ光景を米国で見たくなないという。彼女はしばしば忌まわし過去の戦闘シーンを思い出し落ち込む。このこともジェシーに伝える。

無人化した街で見たもの

ブティックが営業していた。店員の女性に聞くと「内戦を知り、皆さん隠れた」という。断絶の境目にいる、無責任は人たちだ。店員の「試着してみたら」の誘いで、リーが黒いドレスを試着して鏡を見る。これをジェシーが「きれいだ!」と撮った。サミーが車の中で泣いていた。リーが自分の運命を知ったように見えて、寂しい気分になるシーンだった。

ゴルフ場のクラブハウスを狙撃するふたりの男

男は戦闘服装で、こちらが話かけても返事しない。ひたすら狙撃を繰り返す。記者証を示すと「相手が撃つから撃つ!」という。ジョエルが「西側か?指揮官は?」と聞くと「そんな者はいない」と返事した。ジェシーが撮ると「いい知らせだ!」という。フェイクか?ガソリンスタンドの事案と言いこの事案、何のために撃ち合っているのか分からない。これが現代における内戦かもしれない

プレス車と並走するジョエルの友人トムの車

ふざけてジェシーとトムが入れ代り、ジェシーはあらぬ方向に走って行った。

ジェシーは赤いサングラスの男(ジェシー・プレモンス)に囚われていた

そこでは大量の制服でない人々が穴に集められていた。サミーが危険だからやめと言うが、リーとジョエル、トムがサングラスの男との交渉に向った。

3人が近づくと男は威嚇してジェシーの隣にいた男を無造作に射殺。ジェシーが震えあがった。ジョエルが「ロイターの記者だ、アメリカ人だ」と話すと「どういうアメリカ人だ?」と残りの3人に間を置いて問うてくる。ジョエルは「フロリダ」、ジェシーは「ミズーリ」、リーは「コロラド」と答えた。そしてトムの番。なかなか声が出ないトム、「香港!」と答えた瞬間に男はトムを射殺した。極端は人種差別。この男の残忍さに震えあがるほどの恐怖があった。

このシーンは超有名シーンになりましたね!ジェシー・プレモンスは妻ダンストの要請でちょい役のつもりが、役に震えあがったと言います。

サミーが車で駆けつけリー、ジョエル、ジェシーを救出したが、腹に大怪我を負った。ジェシーは死体の穴から這い出てきた。この体験も彼女を強くした。

赤く燃える森林の中を走る。

サミーは火の粉を手に受けていたが、息を引き取った。戦場の記憶のなかで亡くなった。静かな曲が胸にしみる美しいシーンだった。

シャーロッツビル基地(西側)に到着

大量の戦車、装甲車が集結していた。沢山の棺を目にした。リーはサミーの死に泣くジェシーに「サミーは死に場所を与えられてよかった」と伝えた。ジェシーが「楽しかったこと、躍動を感じたことか?」と聞くと「それはない!」と答えた。リーはカメラの中のサミーの映像を消去した。

ヘリが装甲車を吊り上げ、戦車が移動開始。ワシントンD.C.への攻撃が開始された。

ホワイトハウス(WH)の攻撃、大統領を撮る

夜間、装甲車から下りてWHに向う西軍兵士をカメラに収めた。政府軍と西側の戦闘が始まった。ジェシーは兵士と一緒に装甲車を盾にしてWHに接近、兵士の真近で戦闘状況と撮る。とても勇敢な行動だった。一方、リーは恐怖で身体が動かない。ビルの屋上に81mm迫撃砲が布陣。

WHは完全に西側軍に包囲された。そのとき黒い乗用車が出てくる。兵士はこれに群がる。しかし、リーは「大統領は内部にいる」とジェシーを急がした。兵士たちが「記者を追え!」と付いてくる。

ジェシーは兵とともに大統領室に入り、大統領を捜索する兵士を撮る

女性の警護官が「交渉したい!」と立ち塞がるが兵士が射殺。これをジェシーが撮る。「手榴弾投擲!」の号令に、リーがジェシーを突き飛ばして庇う。が、リーは射殺された。ジェシーはリーの遺体をカメラに納め、ジョエルとともに大超量執務室に。兵士が大統領を探し出して射殺、これをジョエルが見ていた。ジェシーはこの映像をカメラに収めた。

ジェシーとともに行動している感じになる兵士の動きがまるでニュース映画をみているようでリアルで上手い。大統領の写真を撮ったときはやったという気持ちになる。それにしてもジェシーは勇敢で、リーがまるで乗り移ったように感じだ。

まとめ

テーマはふたつ。真実を撮るジャーナリストの必要性。そしてアメリカの断絶による危機を訴え、内戦の恐怖を伝えることだった。みごとに描かれていました。

 ジェシーが撮った大統領が撃たれ倒れた瞬間の写真。この1枚こそが真実を伝える唯一の写真だった

ここに来るまでの過程。これがしっかり描かれていました。ジェシーの戦場カメラマンとしての成長、ジェシーに未来を託すリーの献身。良い話でした。

気丈な戦場カメラマンだが過去の戦火の傷に苦しみ、死の影を踏みながら、後輩カメラマンを育成することに尽くすリーを演じたキルステン・ダンスト、すばらしい演技でした。リーの指導で戦場カメラマンとして成長するジェシー役のケイリー・スピーニー、「プリシラ」でしか知らなかったが、この役で一段と成長したようで、次代を背負う女優になって行くでしょう。

内戦に至るアメリカの断絶と内戦の恐ろしさ

現在のアメリカの保守派とリベラル派の対立、さらに2021年1月6日トランプ支持者らがアメリ連邦議会議事堂を襲撃した事件を考えると、断絶が内戦を生むというのも嘘に思えない。

ここで描かれるワシントンD.C.までの道中で見せてくれた分断の実態は映画の中の話しで終わって欲しいが、リアル感があって恐ろしい。

アメリカが崩壊すると日本はどうなるか。こんなことを考えてみたくなる作品でした。

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