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「ポトフ 美食家と料理人」(2023)ソウルメイトの関係で作る料理、もはや芸術の世界!

 

ジュリエット・ビノシュブノワ・マジメルが料理人と美食家を演じ、ミシュラン3つ星シェフのピエール・ガニェールが料理監修という作品

料理のことはよく分からないが、この面子ならフランス料理に興味を持たせてくれるだろうと観ることにしました。(笑)

フランス料理が出来上がるプロセスをたっぷり観てくれ、美しく美味そうだが、食べられないのが残念でした。(笑)これを創る美食家と料理人(夫婦)の関係がミステリアスで面白かった。本作品が邦画「土を喰らう十二カ月」(2022)に

よく似ていて興味深く観ました。

監督・脚本:トラン・アン・ユン、撮影:ジョナタン・リケブール、編集:マリオ・バティステル、料理監修:ピエール・ガニェール。

出演者:ジュリエット・ビノシュブノワ・マジメル、エマニュエル・サランジェ、ガラテア・ベルージ、ボニー・シャニョー・ラボワール、ピエール・ガニェール、他。

物語は

19世紀末、フランスの片田舎。「食」を追求し芸術にまで高めた美食家ドダン(ブノワ・マジメル)と、彼が閃いたメニューを完璧に再現する天才料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)の評判はヨーロッパ各国に広まっていた。ある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招かれたドダンは、ただ豪華なだけの退屈な料理にうんざりする。食の真髄を示すべく、最もシンプルな料理・ポトフで皇太子をもてなすことを決めるドダンだったが、そんな矢先、ウージェニーが倒れてしまう。ドダンはすべて自分の手でつくる渾身の料理で、愛するウージェニーを元気づけようとするが……。(映画COMより)


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あらすじ&感想

料理人ウージェニーとレシピ作家(美食人)は20年もの間片田舎のシャトーに共に暮らして料理してきた。

昵懇の4人の未職人を迎える日

朝、ウージェニーは自製の菜園から野菜を採取、アシスタントのヴァイオレット(ガラテア・ベルージ)と自分の後継者にと預かった少女ポーリーヌ(ボニー・シャニョー・ラボワール)に指示しながら料理を作り始めた。

自ら先ず魚を捌く、ヴァイオレットにザリガニをゆでさせ、その間に魚の内蔵を炒める。ザリガニがゆで上がる冷やし自分でワインを振りかける。ヴァイオレットに井戸水で野菜を洗わせるというようにふたりを手足のように使って、時計を見ることなく、適時的確に料理が出来上がっていく。この作品での見せ場。こうして舌平目のクリームソース、子牛のポワレ、アイスクリームが中に入ったノルウェー風オムレツが出来上がってくる。

俳優たちの演技と、彼らの表情、手や調理器具の動き、そして調理が進むにつれ素材が形と色を変え料理に仕上がっているところ

料理間にドダンが起床し風呂を終えた、3人での食事が始まる。そのあと、ドダンも料理を手伝いながらポーリーヌにソースの味見をさせる。ポーリーヌは10種の材料を見事に言い当てる。ドダンはこの子には特別な才能があると見た。

ソースにこれほどの材料を使ったウージェニーの直感、料理法に驚いた。フランス料理の繊細さを物語っていると思った。

美食家が揃ってコンソメスープから食事が始まった

これに合わせてウージェニーもスープを飲む。必ず美食家と同じものを食する。

ウージェニーが料理を作り、ヴァイオレットに料理を持たせて部屋に運ぶ。美食人たいはアントン・カレーと比較しながらひたすら食べる。

デザートにノルウエーのオムレツを出す。ウージェニーたちも味わってみる。

美食人たちが厨房に挨拶に現れ「まさに芸術家だ!」と褒める。ウージェニーは料理の途中で気分が悪くない座り込むことがあった。

ユーラシア皇太子の使者だという男がやってきた

「料理界のナポレオン、ドダン氏と従者を晩餐会に招待したい」という。美食人たちはドダンは受けないと思ったが、ドダンはこれを受けた。

食後、ドダンが「今夜ドアーをノックしてもいいか?」と聞く。ウージェニーは「ノックして!」と答えた。ドダンは「結婚しよう」と問うと「普通の夫婦より長くいる。レシピを検討したり、それを作って食べたり、ウイットに富んだ言葉で結ばれている。それが私たちよ」と答えた。身体の関係は無いが二人は結ばれていると言うのがウージェニーの夫婦感。ドダンは「結婚とはデザートから始まるディナーだ」と言う。

その夜、ドダンはウージェニーの部屋を訪ねるとドアーは開けてあり、ウージェニーはバスで身体を洗っていた。その身体をドダンは眩しく観た。

話しが外れますが「土を喰う十二カ月」にも同じようなシーンがあります。

ドダンは子牛を買いに出かけズアオホオジロの卵を手に入れた

ドダンはズアオホオジロをローストして、匂いを逃がさないよう美食人たちに頭の上からナプキンをすっぽり被らせて匂いを逃がさず食べさせた。(笑)

一方、ウージェニーはボーリーヌの両親に合っていた。

両親に「ドダンが責任を持ってポーリーヌを料理人に育てる」とポーリーヌを寄こすよう説得した。両親は「まだ早いが考える」という返事だった。菜園にアンテナを立て電流を流すと野菜がやわらかくなると教えてくれた。ウージェニーはこのアイデアを自分の菜園に取り入れた。

ドダンと美食家たちはユーラシア皇太子の晩餐会に参加

皇太子は「今日の食事メニューだ」とシェフ(ピエール・ガニェール)に説明さえた。

帰宅した美食人たちがウージェニーに晩餐会の料理について語った

「さすがに8時間は大変だった」という。ドダンの感想は「構成は豊だが輝きがない。料理のオンパレードだ。味と触感に欠点がある。体に下品な軟骨の匂いが残った」だった。この感想にウージェニーは満足だった。

ドダンが仲間に「皇太子にポトフを食べてもらう」と提案した

ウージェニーの意見を聞こうと探すが見つからない。必至に探すと、木の根に倒れ込んでいた。ウージェニの健康が心配になった。

部屋に連れ戻し、ドダンが料理を作って食べさせた

ウージェニーの健康を願っての食事。ドダンは料理をヴィオレットに代ってもらうよう勧めたが、ウージェニーはこれを受け付けなかった。ウージェニーは「皇太子招待のレシピを好きな時に見せて欲しい。準備は出来ている」と告げた。ふたりが料理を通して深く結ばれていた。

貝料理を出して、「50年も海にいたやつだ。全てが最高だ!君の食べる姿を見たい」とふたりで食べた。料理を語る言葉がふたりにとっては愛の言葉なのだ。

このあとドダンは「中国の詩人のように1年中休まず働き翌年は妻のために1年を捧げたい」と話すと、ウージェニーは「美食家のナポレオンでよい」と断わった。(笑)ドダンは直ぐに料理の中に指輪を隠して贈り、今夜の約束をした。(笑)

ふたりは結婚式を挙げた

大勢の人の祝いを受けた。ドダンは「人生の秋を迎えて結婚することにした。美食の季節、この秋に結婚し冬を楽しむ」と挨拶した。ウージェニーは「あなたには秋だけど。私には夏の盛りよ」と伝えると、ドダンは「どの季節も好きだ!」と答えた。

ドダンのユーラシア皇太子晩餐会レシピが決まった

ウージェニーは「言葉に迷う。皇太子の晩餐会第1部には及ばないが、私が含まれるメニュー、それが大胆だ」と感想を述べた。ドダンは「華やかさに欠ける料理だがフランス的で、家庭で何世紀も出されてきた。だからこそ皇太子を魅了できるか挑戦する。力を貸して欲しい」と訴えた。ウージェニーが「怖くないの?」と聞くと「何故恐れる?」と聞き返してきた。これを聞いたウージェニーは卒倒した。

ウージェニーが倒れた原因は分からなかった。ウージェニーは「この時間が一日で一番」と料理を作り、ドダンは安心していた。

そして「あなたと寝室を共にしたことは多くはないが、2度ほど想像したとおりに訪ねてきてくれた」と話して笑った。そして泣いた。

突然、ウージェニーが亡くなった。

ドダンは悲しみで食事も出来ない状態が続いた。ドダンは美食家たちに「ウージェニーに自分が何を求めていたかを説明すべきであった」と嘆くが、美食家たちは「彼女は理解していた。君が思い描いた料理を作り続けた。優れた直観力があり君を知り尽くしていた」とウージェニーを褒め称えた。

美食家たちは次の料理人についてドダンと相談したいが言い出せない

ドダンはヴァイオレットを追い出し、ウージェニーの味を知っているポーリーヌを呼び寄せ、何人かの料理人をオーデションでテストしてみた。

ドダンは料理法を説明しながら最後に皿盛しソースをかけるまで教えるが、最後には「このスープは作れない。ご主人様が手に取って教えてくださるなら教えて欲しい」と帰ってしまう始末。ウージェニの料理を教えることはデキなかった。

ドダンはポーリーヌと一緒に手間暇掛けてポトフを作ったが、ポーリーヌが「味がダメだ」という。ドダンは「この味を完成させるには文化と記憶が必要だ。味が真髄だ!覚えておけ」と注意した。

ある日、ポーリーヌが「肉が美味い!感じる」と言い出す。ドダンは「シャンポールミューズだ。全てを備える優美で純粋だと言い、ウージェニーと一緒に料理してきた日々を懐かしんだ。

そのとき、ディズモーが「チョウザメの骨髄のコンソメが出た」と尋ねてきた。

ドダンは試食して「陸と海が出会い土地の魅力を歌いあげている」と歓声を上げた。ディズモーが「料理人はアデル・ビドウだ」と言うと、ドダンはポーリーヌを連れて駆け出した。

誰もいないキッチン

窯には火が赤く燃えている。みんな着いてくれた。いい仲間に恵まれ幸せだ!指輪の今夜のお願いも食べ物でしえした。(笑)私たちの人生は秋ですって!それは貴方ヨ、私は夏の盛りよ。・・・・

まとめ

フランス料理は美食家と料理人の双方から描かれフランス料理のすばらしさを歌えてくえますが、狙いは料理を通して夫婦の愛、死生観を描いた作品でした。

 ポトフは妻のウージェニーが急逝したことで作れなくなった。料理というのはレシピだけでは作れない。そこには優れた感覚の料理人が必要だということ

 料理を語る言葉がふたりにとっては愛の言葉だった。

 最期のふたりの晩餐でウージェニーが「貴方との関係は夫婦なのか料理人なのか」と聞くとドダンの答えは「料理人」だった。このときウージェニーは微笑んだ。美食家と料理人の関係は愛で結ばれた関係以上のもっと次元の高い精神的なものがあるのかなと思った。結婚という形は“料理人を終える”ということなのかと思った。

何度も繰り返す「どの季節が好きか」の問答ドダンは「四季の全て」と言い、ウージェニーは「夏、夏に生きる」。この言葉にドダンはまだまだ創りたいものがあると考えているが、ウージェニーは燃え尽きていたと思われ、すでに彼女の料理人としての生命は尽きていた。ポーリーヌを後継者として育てようとしたのもそうだったのでは。それほどにこの世界は厳しい。

フランス料理の作り方、美しさや味の繊細さなど映像として見せながら、これを創る美食家と料理人の深い結びつきを描くという、フランス文化の匂いのする作品でした。

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