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「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015)

本作、195060年代の米ソ冷戦下で起こったソ蓮と米国の激しい核開発競争にまつわるスパイ活動を題材に、囚われたソ蓮スパイの弁護を引き受けた米弁護士の活動を通して、米国とはどんな国であるか、国家とスパイの関係、さらに同時代に起きたベルリンの封鎖に見る人権問題にまで及んでいる。
米ソが対立する冷戦のなかで、捕まったスパイをどう裁くか、裁かれるスパイの心情と国家はこれにどう係るのかなど今日的な課題でもあり興味深く観ることができました。特に、アメリカという国は法律で「人権」「人間の尊厳性」を尊重することで成り立つこと。弁護士の敵国スパイに贈る軍人としての賛辞や本国ソ蓮へ帰るためのグリーニケ橋での別れは、国家から見放された人たちへのエールであり涙を誘います。
冷え切った東西関係を象徴するベルリンの壁とここでくりひろげられる脱出劇、「グリーニケ橋」で交わされるスパイ交換シーン、U-2機の特性や偵察行動など当時の空気を伝える映像はすばらしいです。
 
物語は、
ソ蓮のスパイ、アベルの裁判
米・ソが冷戦状態にあった1957年、両国間に緊張が高まる中、ニューヨークで一人の、絵を画くのが趣味で友人を持たない、男FBIにより逮捕される。イメージ 2彼は、ソ蓮のスパイ、アベルマーク・ライランス)として母国に暗号メッセージを送った罪で告発される。FBIの厳しい尋問を受け逆スパイの誘いを拒否したため裁判を受けることになる。この弁護を担当する国選弁護士がドノバントム・ハンクス)。彼は交通事故で4人の被害者が出ても事故件数は1件として一括処理する意志の強い敏腕弁護士。ここで一括処理するというのが後のスパイ交換条件で生かされる。
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ドノバンは当初、家族の反対もありこの弁護に乗り気でなかったが、政府の強い要請で受けることになり、米国は法で成り立っている国だから、法のもとで公平に弁護すると明言する。しかし判事も国民も極刑を期待する空気のなかで早く結審したがっているが、捜査権なき逮捕は違憲であるとして1週間の延期を申請するも却下される。
 
この時、U-2機のアメリカ人パイロットフランシス・ゲイリー・パワーズが、ソ連に捕らえられる事件が起きる。
二つのスパイ事件が並行して語られることで国家とスパイの関係、スパイに期待されるもの、失敗した場合の処置などが具体的に語られる。
 
陪審員の全員が死刑支持。そこでドノバンは判事を訪ね、米国にもスパイがいるわけで捕まった場合どうするのか、ここは保険だとおもって減刑することを訴え、刑期30年で結審する。この判決は国民の大きな批判に晒され、自宅が狙われるという事件も起こる中で、彼は法廷で「彼は立派な空軍兵士であった。2重スパイの誘いを断り、これは我々の見本だ」と彼の行動を弁護。これに対してアベルはドノバンの身辺を心配し、お互いを理解する仲となっていく。アベルの妻からドノバンに感謝の手紙が届けられる。
 
米・ソのスパイ交換交渉
アベルの裁判が終わって5年後、両国はアベルパワーズの交換を画策し、ドノバンはその交渉役という大役を任じられる。
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ここで、U-2機の機体性能、撮影能力、偵察任務などが紹介される。特に収集した資料・機体を相手に渡してはならないが、パイロット自身が重要な情報源であるので万一の場合針に仕組んだ毒で自殺することをほのめかすシーンがある。
パワーズソ連の領空で偵察任務中、対空ミサイルで射撃され墜落するまでの彼の行動が映し出され、この状態で針を使って命を絶つことなど不可能で、ソ蓮に拘束され10年の刑を言い渡される。
 
パワーズから機密が漏れることを恐れたCIAは密かにパワーズアベルの交換を画策。これはドノバンが保険をかけるよう提言したことによるものであった。
CIA諜報員ホフマンからドノバンに交渉役を依頼される。交渉の場は、まさにベルリンの壁が敷かれようとしている東ベルリン。米国は東ベルリンを国家として認めていないので、ホフマンからは「自分の身は自分で守れ」と言われ、危険性の高い任務であるが、彼は家族にスコットランドに釣りに行くと伝えベルリンに向かう。ここでアベルの妻と会い、何とかして欲しいという要望を聞くことに。
ベルリンに到着した彼は、フレデリック・フライアーという米留学生が東ベルリンでスパイ容疑者として逮捕されたことを知る。イメージ 4
ここで、ベルリンの壁が突然に構築され始め、西側に逃げ惑う人々の行動とともにフライアーの行動が全くスパイ行為に該当しないことが写し出される。とてもリアルに描かれている。
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CIAの指示はパワーズの交換に集中というものであったが、ベルリンの壁の悲劇を目撃したドノバンは誰も置き去りにしたくないと、あの自動車事故の処理のように、ファライアーも含む一括交換をすることで交渉に入る。
交渉は東ドイツを通じて行われることになり、東ドイツがこれに介在しこの交渉の功績を欲しがるために、2対1の交換は二転三転と混乱をきたす。交渉は破綻しかかるが、ドノバンの機転で一括交換に決るが、同時刻にそれぞれ別の場所で交換されることになる。実際に行ってみなければ分らない、とても緊張するなかでの交換現場が映し出される。
イメージ 6ドノバンは交換場所「グリーニケ橋」で久し振りにアベルに会う。ここは涙のでるシーン。帰国後のことを心配し交換をどう思うかと問うと「迎えに来た相手が抱擁してくれればOKだ。そのまま後部座席に乗せられるようだと・・・」と答える。
 
交換は、夜間・照明下で、両陣営とも狙撃兵を配するという緊張下で行われる。別の場所で交換されるフライアーの準備が整ったことを確認後、アベルはソ蓮側の手に渡される。
アベルはドノバンに「プレゼントがあるから受け取ってくれ」と言い去っていく。ドノバンが去っていく彼を目で追っていると“そのまま後部座席に”が見える(ソ蓮は後に「彼はスパイではなかった」と発表)。彼のプレゼントは、ドノバンを描いたもので、彼は自画像しか画かなかったから、ドノバンは彼の唯一の友人となっていた。
還ってきたパワーズは、航空機で移動するなかで、自分の帰還は歓迎されていないことを知る。ドノバンは「関係ない、人がどう思おうと、君が自分のしたことがわかっているなら」と話し掛ける。
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