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「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 」(2015)

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ローマの休日」の脚本家の実話ということで、予告編も観ることなく、鑑賞しましたがとても面白かったです。「ローマの休日」の原題名は当初「女王と無骨者」であったとか?()
“嫌われた”というのは、1940年代、トランボは売れっ子の脚本家でしたがかって共産党員であったことから赤狩りの対象者となり、彼に関われば赤と見なされ映画活動が出来なくなることから「嫌われる」という意味です。
嫌われた彼が如何にして名誉を回復したかという彼の執筆姿勢、彼を支える強い家族の絆やこころある映画関係者の支えが描かれます。
1970年の講演で「自分は国家の立場で行動した。しかし家族には辛い思いをさせた。アンフェアーだ! 家族が私を救ってくれた。”傷を修復するために仕事をした”」と語ります。そしてエンドロールでの彼の言葉「3歳の娘は作品全リスト名を知っている。しかしひとつも口にしなかった。父親が何者なのか知っていても。”オスカーを貰ったら、この子に全部やる”」に見るように、彼の風呂で飲みながらタイプを打ち続ける姿。そして、妻と子供たち家族が支え合う姿が涙を誘い、感動的です。
 
トランポという人はとてもユニークな人だったらしく、なにをやっても面白く、笑えます。こんな面白い人だからこそ、二度もアカデミー賞を取ったのでしょうか。映画は脚本だなと思えるし、こんな面白い人が出て来ないと映画は面白くならないのではないでしょうか。()
そして、なによりも言論の自由が必要なこと、希少意見は消してはいかん!!
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物語
赤狩りでハリウッドを追われる。
冒頭、1930年代に共産党入党者が増大しトランポは1940年に入党。その時代のトランポの活動がテンポよく語られます。イメージ 2
時間があればタイプを叩いている、恋愛手帳や「ショニーは戦場へ行った」の脚本家で、撮影現場にの出て行き俳優に知恵をつけるという活躍ぶり。
しかし、夜の映画人パーテイでは「一緒に仕事をしたくない」、「疑われるぞ、ストをするな!」「君の側にはつかんぞ」等彼への批判の言葉ばかりが耳に入ってくる。
ハリウッドニュースでは「多くの俳優がストに参加、その中にトランボがいて筋金入りの脚本家だ」と報道される状況であったようです。
「スパイが映画を乗っ取っている、民主主義を危なくしている」と言われ、歩けば水をぶっかけられる。娘から「コミュニスト」かと問われる。「ランチにお前は好きなママのサンドイッチを持って行って、もしランチを持っていない子がいたらどうする?」と娘に問う。「シェアする」という娘に「お前も小さな共産主義者だ」と、娘にわかり易く自分のしていることを説明するユーモアのある父親です。(笑)
 
政府を支持するジョン・ウエインの講演会場にでかけ映画だけの問題ではない、憲法第1条(言論の自由)の修正の問題だ言論の自由の必要性に関するパンフを配る。ジョン本人に渡すも受け取らない。当時の芸能界の裏事情を知ることになります
ハリウッドにおける卑怯者と言われ1947年9月共産主義者として調査開始されます。ワシントンからハリウッドの19名に召喚状が届き、9名(ハリウッド10と呼ばれる人達が証言することになる。トランボが出廷し証言しようとすると「君は共産主義者かそれともかってそうであったか」と一方的に問いただされる。「証拠を見せろ」と反発すると「それが証拠」と退席を命じられ、同じく証言を拒否した友人の脚本家アーレン・ハードと共に議会侮辱罪で訴追されることになる。
ヘッダ・ホッパー(女性コラムニスト)らによる活動妨害で仕事を失う。「ヨーロッパ某国の女王がアメリカ人記者と恋に陥る」という物語を書き上げアーレン・ハードに持ち掛けると「外交官儀礼に沿って書くように」と忠告される。金に困っており、早く売りたいと某プロデューサーのところに持て行くと「王女と無骨者」でどうだと言われる。
19499月、新聞記事「(言論の自由)法案が提出されると議員全員が憤慨する」を読んでいる妻クレオ・トランボのところに俳優のエドワード・ロビンソンがやってきて「トランポのせいで、いい仕事がない」と泣きつく。そこにトランポが帰ってきて「パラマウントに例の脚本を売った」と金蔓がなくなったことを明かす。
ラトリッジ弁護士(友人)が亡くなり裁判が気になるが「うまくいく」と楽観して裁判を待ちます。が、仲間と相談し「過去に戻っても何もできない」と出国を決意します。 
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○獄中生活
1950年6月、出国しようとするも、空港で逮捕される。厳しい身体検査の後、刑務所に収監される。獄中では不安と恐怖に苛まれるが、唯一の心のよりどころは家族に手紙を書くこと。妻クレオは写真を撮って彼に届ける。彼の心配ごとは「出所してからが怖い。特に想像力が無くなる」と税務士の男の話を聞いたり、映画を観たりで毎日を過ごします。
クレオはラジオでエドワード・ロビンソンの証言「自分は共産党員であったことは一度もない。あとで分かったことでトランボが共産党員とは思わなかった。組織を運営している邪悪な者、アルバート・マルツ、・・ダルトン・トランボらが問題なのだ」でエドワードが裏切ったことを知ります。
トランボは妻からこの証言を聞き「こうしたチクリ野郎はムショでは絞首刑。ヘッダ・ホッパーやエデイみたいな男は死んでしまえ」と激怒する。ローゼンーグ事件が明るみになるなかで19514月、釈放される。
 
○偽名で活動。
妻が刑務所に迎えに来て、喜ぶ子供たちと会います。長女ニコラがすっかり娘らしくなったのに驚く。しかし生活のために家を売ることになります。イメージ 4
仲間たちがいるバーに出かけるが誰も近寄らない。聞こえてくるのは罵声のみ。「金が欲しい、もう裁判はいやだ」とB級映画専門のキングブラザー社に出向く。「群盗と風?」を1200ドル、3日で100ページ書く」と契約します。一心不乱に書き始める。風呂の中でも書く。
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キングは作品を見て、こいつは天才だ驚きます。売ったお金でハイランドパークに新しい家を見つけます。引っ越しても裏切り者と非難されプールにゴミを投げ入れられるという環境。夕食時「こんなことに負けない」と一家が団結してこれに立ち向かうことを誓います。
19538月「ローマの休日」(脚本:イアン・マクレラン・ハンター)が映画公開される。「ブラドリーがふざけて“真実の口”に手をいれる」シーンに皆が大笑い、大ヒットとなります。
「キングの仕事は安いし芸術性もない、そのうえきつい仕事だが食いぶちを稼ぐために書はねばならない」として、仲間を集め、同時並行して5本書くという荒業に挑みます。子供には「家が会社だ」と言い「電話ではトランポという名を使うな(偽名で活動中)」と命じる。そして口述筆記を練習させる。
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「みんなで仕事をするぞ」とトランポ。娘ニコラは人種問題に興味を持ち語りかけるが「タイプが壊れた」と返事せず、浄書を命じる。意味不明の頭がでかい男が馬とやる話、こんなクソ映画のために徹夜で書きます。「政治姿勢に合わせる必要もない、全米図書賞を貰った男のする仕事か」とブツブツ言いながら書きなぐる。風呂で飲みながらタイプを打つ姿が、彼の物書きスタイル。
こうやって書きまくっていると、どこで聞きつけたか、大手の映画会社からも「傑作でなくてもそれ相当の物を書きたいだろうから、キングと契約するまえに俺に相談してくれ」という話が来る。そこに「ローマの休日」がオスカーを獲得の朗報が入る。家族は大喜びするが、授賞者はイアン・マクレラン・ハンターでトランポではない。
アーレン・ハードから偽名で一本の脚本を頼まれるが、なかなか書けない。風呂で、書いた原稿を張り合わせながら、薬を飲んで頑張る。娘の誕生祝も忘れて書く。妻のクオレが子供たちの不平をなだめしっかり彼を支える。このふたりのコンビがとてもいい。
アーレン・ハードを訪ねると亡くなっていて、彼の借金返済にエドワード・ロビンソンを訪れると裏切の言い訳をする。「“おれは顔で仕事をする”。隠れて仕事はできん。
を貸してくれ」と泣きつかれる。
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バーではヘッダ・ホッパーが近づいてきて、「あんたが書いた映画を教えてくれ」と問うてくる。彼が書き続けることで無言の脅威を相手に与えている
ある日、新しい原稿をニコラに届けて欲しいと依頼すると「人種問題デモで行けない」と断ったことから「俺は指10本で仕事をしている」と激しく叱りますが、妻クレオの「あなたのやりかたで家族がみんな傷ついている」と窘められ、長女に「思い知った、不安なんだ。前たちを傷つけている」と謝まります。このシーン、やりたい放題のトランボにもちゃんと自制の利くいい親父さんで、これが家族の大きな絆の支えになっていることがわかります。
 
1957年3月、トランボが長年温めていた企画「黒い牡牛」が再びアカデミー原案賞を受賞する。が、受賞者には代理人で「ロバート・リッチ」は誰なのかが話題になり、あんただろうとトランボが取材を受けるす。
 
○名誉回復
カーク・ダグラススパルタカスの脚本依頼にやってくる。ダグラスのところにはヘッダ・ホッパーからトランボを使うなと言う抗議が入る、でも使う。
197812月には映画監督のオットー・プレミンジャーがやってきて、「栄光への脱出読んだかポール・ニューマンで撮る」。「やるしかない」とトランボはふたつの仕事を引き受けます。
プレミンジャーはクレジットすると言ってくる。「もうロバートリッチでオスカーを誤魔化すことはできない」とトランボ。新聞に実名で公表される。スパルタカスでも脚本はトランボと発表。取り消せという運動が起きる。プレミアショーで自分の名を見て帰宅すると妻クレオが「よくやったのね」と泣きます。
19612ケネデイー大統領スパルタカスを観て「いい映画だった、ヒットするよ。原作者は元共産主義者、これは反対者への抗議だ」と評価します。
 
1970年3月 ロスでの演説、感動的です。「ブラックリストは悪の時代、関わらなかった者はいない。自分は国家の価値で行動した。家族をみると辛い思いをさせた。アンフェアーだ。家族が私を救ってくれた傷を修復するために仕事をした」。
そして、エンドロールで流れる言葉に泣けます。
「3歳の娘は全リストを知っている。ひとつも口にしなかった。父親が何者なのか知っていた。オスカー貰ったら、この子に全部やる
END