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「22年目の告白;私が殺人犯です」(2017)

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本作、「SR サイタマノラッパー」の入江悠監督作品。ラッパーの監督がサスペンスをどう描きくかと興味があり、夏帆さん・松本まりかさんの出演に注目していました。(#^.^#)
大変おもしろい作品、ラッパーのような乗りで作った?テンポのよい、最後まで目の離せないサスペンスです。なんといってもストーリーのよさ、いや、ストーリーがすべてと言ってよく、紹介は予告編の範囲内とします。脚本は平田研也さんと入江監督の共同執筆です。

本作は韓国映画「私は殺人犯です」(2012)に日本の社会情勢や時代の空気を盛り込んでリメイクした作品とのこと。(細部はわかりません)
1995年に起こった事件の犯人と称する男が、22年後の今年、「私が殺人犯」と名乗り出て真の犯人が誰かを問うサスペンスドラマ、作品のテーマは「時効」です。
1995年という年は阪神淡路大震災、地下サリン事件、警察庁長官事件と大きな社会事件が起こった年。さらに15年後の2010427日に刑事訴訟法が改正され死刑に相当する殺人事件には時効が廃止。今日のSNS、テレビ報道社会。この時代性が物語の伏線になっており、見事に回収されていくところがすばらしいです。そして、サイン会、報道番組、街頭インタビューシーンなどの映像はラッパーで見せてくれたようにとてもリアルで臨場感があります。

ラストで、被害者にとって耐えがたい時効の問題だけなく心神喪失者の犯罪を加え、エンドロールでその結末を語るというエンターテイメントだけで終わらせなかったことに、入江監督の成長を見たようにおもいます。
****(ねたばれ)
物語は、
1995年、阪神大震災の年。東京で14日足立区飲食店店主殺害事件、214日世田谷区会社員殺害事件、315日銀座ホステス殺害事件、331練馬区病院長夫人殺害事件、427大田区警察官殺害事件と立て続けに起きた5件の事件を新聞記事の見出しTVニュースにより殺害現場、捜査本部の活動状況をラッシュで見せ、犯人の手掛かりはなく10年後刑事訴訟法の改正により、5件目の事故から15年後の20104270時に時効を迎えたというナレーション。一気に物語の時代背景と事件概要が説明され、この時代に引き込まれます。このテンポの良さが最後まで続くからすごい!

ここから時代が一気に2017年に飛びます。ビルの外付け非常階段を駆け下りる男戸田丈(早乙女太一さん)、これを追う牧村航刑事(伊藤英明さん)と春日部信司刑事(竜星涼さん)。「真司行け」と追わせる牧村はベテラン刑事。捕まえると「橘組の者だ、放っておけ」。これを遠景の長回しで見せますが、実はラッパーで見せた長回しの他に、サスペンス感を煽るように短いカットでうまくつなぎ緊張感が溢れています。このカットのなかにもいくつかの伏線が含まれており、これらが次々に回収されていきます。
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ここに課長から「署に戻れ」と連絡が入る。テレビでは、1995年の東京連続殺害事件の犯人の告白本発表会見が始まろうとしている。警察署では当時の事件担当者が会見に見入る。
この作品の特色は、TV会見とこれを観る人の反応をうまく組み合わせて見せることで臨場感を煽っています。この事件に対する市民の反応は「出版は自由だから」と無関心なものからデモで「出版反対」を訴えるものまでありますが、デモで緊張感が伝わります。

会見では事件の概要、手口が語られます。
1件目1月4日の飲食店殺し、事件で初めてだった。ここでは目撃者を生かしておいた。必ず1対1でなければやらない。
2件目2月14日の家族殺し、縄で後ろから縛り殺すが、第3者に見せ、犯罪を伝えるために目撃者を生かしておく。
3件目3月15日クラブの女と男。首を絞められる被害者とこれを見送る男を見るのが快感に繋がる。
4件目3月31日山縣夫人殺害、警察がこれを隠すので警察の手のうちで遊ぶことにして応じて出向き牧村に会い後ろからロープで首を絞めナイフで襲う。が、牧村に拳銃で撃たれ肩に傷を負う。牧村は口に受傷。このときに次の目標、仇を討つと牧村刑事に決めた。
5件目4月27日警察官殺害事件、テープで死体が牧村のアパートにあると報せると、彼は罠にかかり刑事滝幸宏(平田満さん)と一緒にやってきた。滝が先に部屋に入り縄にかかりこれがライターの点火を促し、充満したガスが爆発。牧村の目の前で上司滝が爆死。この事件で死者と目撃者が逆になり連続殺害にピリオドを打つことにした。
それ以来、警察は私に辿りつけない。この告白本が私のせめての罪滅ぼしです。私が殺人犯曾根崎雅人(藤原竜也さん)です。

このシーン、犯人と名乗る藤原さんの“何かを隠しもっているぞ”とばかりの演技に犯人は藤原さんだ、時効にトリックがあると確信して観ていました。このことが、この作品の面白さには絶対必要条件だったと思いますので、すばらしい熱演です。
そして刑事の伊藤英明さん、22年前と今の姿を演じることになります。今の姿に、やつれた感じがよくでてベテラン刑事役をうまく演じています。海猿シリーズとは違った影のある役をうまくこなし、大きな俳優さんになったという感じです。

事件での目撃者は誰なのか?ここから回収がはじまり、被害者相互のつながりもおもしろいです。イメージ 4
まずは、岸美晴(夏帆さん)、書店に勤めていて、牧村が訪ねてきます。「事件の被害者(2月14日会社員殺害事件)だから仕事に来るなと言われた」と言い「お父さんが殺された犯人はこんなやつだった。お父さんのページはたったの3ページ」と宣伝びらに載ってる犯人の顔をナイフで斬りつけるという怒り。夏帆さん、出演シーンがわずかで残念でした。( ;∀;)
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会見を終えた曾根崎は出版社の社員(松本まりかさん)に「まだ足りない、テレビ出演はないのか」「徹底的に売れ」と発破を掛けます。松本まりかさんの出演シーンも少ない。( ;∀;)

仙堂俊雄(仲村トオルさん)がキャスターを務める報道番組「NEWS EYESが始まる。「曾根崎雅人氏をこの番組に呼びましょう。海外から帰って私がかかわった事件、私がやらなければならない。法律で裁けないなら私たちで」と訴えている。
仙堂は番組スタッフに「ファントムペイントを知っているか。戦場で腕を失くして帰ってもその腕が痛むんだ」と話しながら曾根崎とのインタビューについて番組デレクター(升毅さん)と打ち合わせをしている。
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レストランを出た曾根崎は、カメラクルーを引き連れ、病院を訪れ山縣医院長に面談を求めます。医院長の面前で「奥さんを殺したのは私です。まことにすいません」と告白すると医院長が殴りかかりる。これを止めに入った牧村に「牧村刑事、お変わりありませんか」と言い寄る。この一部始終がTVで流れている。曾根崎が何かを耳打ちしてる。とそこに「このやあろう」と冒頭の橘組の戸田が殴りかかる。
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曾根田が大々的にサイン会を開催。これまでの宣伝効果で大盛会です。牧村がこの会を視察にやってくるとそこに戸田がいる。「橘さん(岩城滉一さん)、殺人は駄目だ。若い奴に殺させるんですか」と抗議の電話。突然ナイフを持った美晴が曾根崎に斬りかかる。これを阻止しようとした牧村が傷付く。「なんであんなやつ庇うんですか」と怒りが収まらない。
沢山のエキストラを動員しての大掛かりなサイン会のシーン、ここで繰り広げられる観衆のどよめき、「人殺し出版社」と叫ぶ反対デモ、美晴が起こす殺傷事件には臨場感があり、ここで見せる曾根崎の笑みに事件の不気味さが感じられます。
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サイン会から10日目の報道番組「NEWS EYESで、仙堂が「今日の番組は記憶に残るものになります」と語り、曾根崎をゲストに迎え事件に斬り込みます。曾根崎が「この事件はマスコミが書くべきであった」と問うと仙堂が「私はフリーのジャーナリストとして現場にいた。私には疑問がある。この本に書かれていないもうひとつの事件がある。牧村さんには妹がいた。妹さんは阪神大震災のあと東京の牧村さんのところにきた、連続殺人事件の最中です。婚約して新しい生活をしていた(婚約者小野寺卓也(野村周平さん))。本にはこのことが書かれていない。あなたは詐欺師だ!」と攻め込み、動画投稿サイトの映像が提示する。そこにはテープで口封じされた牧村の妹牧村里香(石橋杏奈さん)が映されていた。
曾根崎は「これは本物のテープか?」と応酬し「私の本には警察も知らないことが書かれている。もう一度隅から隅まで読んで欲しい」と自らが執筆した「私が犯人です」を主張する。牧村はこのTVインタビューを食堂で観ている。
番組に匿名者から「自分が犯人だ。牧村、曾根崎と一緒なら番組に出演してもよい」という投書がある。
TV報道番組シーン、本物そっくりで、ラッパーで見せてもらったと同様とてもリアルなものになっています。また、番組に対す一般の人の街頭インタビューが加えられることで臨場感が盛り上ります。
こうして、事件は日本中を巻き込んで、ここから新たな事件が動き出します!

本作の良さは、網の目のように張り巡らした伏線が見事に回収され、最後まで画面に引きつけてくれる脚本とテンポです。今年の脚本賞と伊藤さんの男優賞が話題になるのでは・・。
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