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「硫黄島からの手紙」(2006)

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3月26日、この日は太平洋戦争における硫黄島の組織的戦闘が終わった日。NHKでは3月26日総合朝のニュースで現在の遺骨収集の状況を伝え、BSプレミアムで2夜にわたりとクリント・イーストウッド監督作「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」を放送して両軍に哀悼の意を伝えました。本作は日本側から見た硫黄島の戦闘を描いたものです。

本作、遺骨収集員が洞窟陣地を掘っていてなにかにぶつかり、掘り出して見ると本土に届くことのなかった兵士たちの郵便物だったというシーンから物語が始まります。

米軍に大損害を与えた日本兵とはなにものかとイーストウッド監督が描く硫黄島の戦いです。硫黄島からの手紙監督からのメッセージと言っていいでしょう。よくぞここまでと言えるほどに調べ、日本兵のすばらしい闘い振りとそこでの兵士たちの想いを伝えてくれています。

脚本はアイリス・ヤマシタ、撮影はトム・スターン、製作にスティーブン・スピルバーグが参加しています。
主演は渡辺謙さん、共演に二宮和也伊原剛志加瀬亮中村獅童さんらが参加です。


映画「硫黄島からの手紙」日本版劇場予告

あらすじ(感想):
西郷(二宮和也)はパン屋をやっていたが憲兵にたかられ遂には道具の供出を命ぜられ廃業しているとことに妻が身籠るという、こんな状況のなかで徴兵に応じ海軍の204設営隊隊員として硫黄島に配置された。海岸付近に抵抗堡を造っていたところで、硫黄島を守備する小笠原兵団長として着任してきた栗林中将に出会った。班長に怒鳴られ殴られてところを「兵を殴るな!」と中将に救われ、このことで中将に親しみをもつようになった。

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栗林中将は米国武官を勤めた経験からその戦法に明るく、海岸付近で戦うという海軍の戦い方に疑問を抱き、海軍司令官を更迭して「一日でも硫黄島を持ちこたえることが国家、国民への貢献である」と洞窟陣地と夜襲で戦う戦法に変更した。

これ以降、僅かな食糧と塩水による下痢に苦しみながら、西郷たちは洞窟を掘る毎日であった。

硫黄島には西中佐(伊原剛志)率いる第26戦車連隊がいた。中佐はロサンゼルスオリンピック馬術選手で金メダリスト、栗林中将と西中佐は同じ騎兵科ということで親しかった。中佐は戦車を壕の中に配置し火砲として運用し、自らが現場で直接指導した。

西郷の中隊に元憲兵隊員・清水(加瀬亮)が配属された。彼は憲兵隊として勤務中に上司から犬を殺せと命じられ、殺すことができずここに飛ばされてきた兵だった。ここでも孤独だった。

米軍は激しい艦砲射撃を行ったあと、大兵力を持って一気に上陸。栗林中将は十分に上陸部隊を引きつけ、「1人で10人を倒せ!」と戦闘開始を号令した。

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上陸部隊は大混乱に陥るが、圧倒的な火力で攻め込み、あっけなく擂鉢山が奪取され、守備隊長から栗林中将に玉砕の勅を求めてきたが、中将はこれを許さなかった。しかし、これで多くの兵士が手榴弾で自爆していった。中将の「脱出せよ」の命令が届き、西郷は脱出しようとするが伊藤海軍中尉(中村獅童)に呼び止められ「恥さらしだ!」と斬られかかったところに、状況を確認にきた中将によって救われた。

伊藤中尉は中将から「無駄な突撃はするな!」と注意されたにもかかわらず擂鉢山奪回のため部下を率いて夜間敵陣に切り込み失敗した。その後西中佐に無謀な攻撃を戒められ、兵を残してひとりで対戦車地雷を身体に巻き付けて出て行った。

西郷は西中佐の部隊に合流した。戦車砲200mm噴進砲などの射撃で敵の前進を阻止していたが、追い詰められ。中佐が爆風で失明したため部隊を北方に後退させることにした。中佐は足手まといにならぬよう、部隊が去ったあと自害した。

これに先立ち清水は「何をも成し得ていない、生きたい!」と脱走したが米兵に捕らわれ殺害された。

西郷らは激しい米兵の追撃、空地からの射撃を回避しながら、栗林中将の指揮所にたどり着いた。

戦況はもはや最終段階で、中将は大本営に決別電報を起案中であった。西郷を呼び秘密文書などの償却を指示して、敵陣めざし突撃していった。西郷は郵便物¥を焼却することなく土に埋め、中将を追った・・・
               
栗林中将の透徹した使命感と兵と家族を想う生きる方に主軸に置き、硫黄島は死の戦場だと思っていた一兵卒・西郷が中将に感化され、生きる希望を見出していくプロットがすばらしい。

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栗林中将は硫黄島を徹底的に研究し、副官に砂場を走らせ水際における射撃機会を調査、西郷らの射撃練度をも把握し、アメリカ軍の圧倒的な制海・制空権のなかで如何に戦うか。一日でも長く持ち堪え国や国民の期待に応えるようとする合理的な戦法が米軍に大きな損害を強いたということがよく分かります。

海軍上官の分からず屋を更迭して自らの考えを浸透させていくシーンなど、今の人には学ぶところではないでしょうか。

そして、当時の精神主義を改め最後まで兵の命を尊重し、最後には自らが先頭となり敵に突進していった姿勢には、渡辺謙さんを通して、中将の人柄がよく伝わる描写でした。
最初に西郷に会ったとき、「虐めるな!」と制し、「飯を食わせて、休ませろ!」と指示しましたが、「飯を食わせろ」のこの一言は名将の証拠です。日本軍の将軍でこの言葉がでる人は少ない!

西郷はストーリーテラーで中将と兵の間を繋ぐ役。パン屋を経営ししっかり本を読むという、当時としては少しヒネクレたところのある青年。この役には二宮和也さんがピッタリでした。「よくぞ監督、見つけてきましたね」と言いたい!(笑)

中将に会うまでは「どうせここで死ぬんだろう!」と悲観的であったが、中将の戦い方と人を想う姿に惹かれ、擂鉢山の陥落で自決する兵に疑問を抱き、「俺は中将のため、お国のために任務を全うしたい。無駄死にはしたくない」というまでに成長していく。これは多くの硫黄島で戦った兵士の想いではなかったかと思います。
西郷は中将の死に立ち合い、これが縁で米兵に救われるというラストシーン、悪いのは戦争でそれを強いた者だと訴えているようです。

西中佐はこの激戦のなかにあっても米軍捕虜を手厚くもてなすエピソードが紹介され、日本兵のなかにもしかりした人道主義者がいたことを描いています。一方で清水は脱走して捕虜となったが、監視兵が上官に無断で射殺してしまうという軍規違反を描き、戦場とは無残だと訴えるところがイーストウッド監督らしい。

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伊藤中尉も威高に無駄な突撃を強要しているようで、対戦車地雷を抱えて陣地を出た者の死体の中に隠れて敵戦車に轢かれるのを待つという小心者で実は軍の精神主義の犠牲者だった。

戦場描写が前作と同様とてもリアルだった。特に夜間戦闘シーンが多いのだが、うまく描かれていました。また、兵器、特に200mm推進砲の射撃にはびっくりでした。

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硫黄島での激戦。国・国民のためにと兵士たちが懸命に闘い、家に帰りたいという想いで亡くなったことがしかり伝わる作品でした。彼らの気持ちを思うと、決して戦争はしてはならない。クリント・イーストウッド監督がしっかり彼らの想いを伝えてくれました。
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