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「あゝ、荒野 後編」(2017)

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後編はボクシングが主体、ラストの新次・バリカン戦に泣かされます。5ウンド、新次の放つ24発目のパンチがバリカンに入って、やっとふたりが何故打ち合っているかに気付き、セコンドの馬場・片目(堀口)が、そして宮本が、京子が、芳子が、スタンドの皆が泣きます。ボクシングの映画でここまで感動的に描かれたものを知りません。
なぜ壮烈な試合になったのか。なぜ皆が泣いたか。新次とバリカンの想いが描かれ、新次が試合を終え控室で聞く「ゴング」の意味を問われます。
ねたばれ(感想):
冒頭、競馬場のシーンから始まります。新次が2回戦(前編)を終えたあと、毎日の健二とのルーテイントレーニングの合間に、片目に連れられて競馬に。片目の買った馬券が当たらない。「ああダメだ、両脇はなに?両親」という。新次が「それなら戦う必要がない」とバカにすると「それでは人生味気ないぞ!」と片目。最後に大当たり。後編を総括するような出だし? まずは、新次とバリカンの父母の関係から本題に入ります。

バリカンは、書籍「帰還隊員の闇」を求めてブックストアに。ここで、自殺抑止研究会で活動していた恵子に出会います。研究会は、あのショッキングな敬三の自殺ショーで、活動は下火になったようです。恵子は敬三の子を宿していて、バリカンの目の前で破水。彼は病院に付き添い交際が始まります。
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新次は老人ケアーホームでバイトに励んでいる。人材不足で、店は葬儀屋に改装されることを耳にします。ここで秘書として働く母・京子も、これまでと違って老人部屋の掃除している。宮本が老人の遺体を見て「人間は半端に生まれてきて、一生かかって死体となる。もう少しでパーフェクトだった」と名言?を吐きます。
 
口も利かなかった京子が新次に「父親を殺したのはバリカンの父親だ」と教え、自分の人生が欲しかったので新次を捨てたと告白します。新次はバリカンの買った本で詳しい経緯を知ります。しかし、バリカンを責めることはしなかった。イメージ 4
芳子に会い彼女の母親のことを聞く。芳子に海を見たいと催促されて、バリカンを誘って三人で海辺に。三人は、兄弟、妹のようにはしゃぎます。芳子は母の思い出の赤い靴を海に流すが戻ってくる。これを見て泣く芳子、やさしく背なかを撫でる新次。寂しさが伝わってくるシーンです。

新次は父親の墓参にきたバリカンの父・健夫に会います。健夫は父親の自殺について謝罪し、息子バリカンに会いたいという。健夫はホームレスとなり、小さな小屋で、自殺抑止研究会会員であったマコトの支援で暮らしている。マコトは、自衛隊に応募するので建夫をバリカンに預けたいらしい。バリカンはマコトの要請で父・健夫に会い「何故日本に連れてきたか」と問い、父と住むことを拒否する。

片目が「バー楕円」で働く芳子の母・セツに、「おれは片目、お前は片足」とお互いのを庇うように付き合いが始まります。この物語の特色は次から次へとよくまあ繋がるところ。()
片目はセツに新宿で暮らすことを申し出るが、セツが「被災地に戻りたい」とこれを拒否します。これは切ないシーンでした。(#^.^#)

「新次、山本裕二戦が決まった」と片目が告げる。馬場が「相手を殺してもいい」と景気つけ。新次がサンドバックを激しく叩き始める。これを寂しそうに見るバリカン。
新次は練習で借りてきたボクサーを本気で殴り、練習相手がいなくなる。ここにケアホームの二代目オーナー石井和寿(川口覚さん)が、葬儀場の空き部屋をジムにしたいと海洋ジムを視察にくる。バリカンの練習試合を見て興味を示し、「ボクシングに何があるの?」と聞くと「ボクシングなら繋がれる」と答える。
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バリカンが馬場の髪を切っていると「お前、ボクシングで何がしたいのか?本気で自分を変えたいなら上を目指せ!相手を倒して、倒してチャンピオンになる。チャンピオンになりたくないか?でも新次を倒さなければならんな」と言う。
バリカンはいつまでも新次と繋がっていたい。このままではいずれ捨てられる、どうしたらよいかと真剣に考え始めます。
 
新次が計量しながらバリカンに「何でもそうなんだ!負けるやつは嫌いだ。運のないやつも嫌いだ。俺は親父のようにはならない。誰かに殺されるぐらいならぶっ殺してやる」と言葉を投げる。
バリカンは二代目に会って、ボクサーとして受け入れてもらえるかを聞きます。
 
新次は裕二戦を前に、かっての兄貴劉輝をヒハビリセンターに訪ね、試合をすることになったことを告げると、「裕二に金の世話になっている」という。新次は「わからん。見とれ、俺はあいつを殺す」と告げて帰る。劉輝を失うという孤独感が新次を襲ってくる。
新次が夜、目覚めるとバリカンがリング上で考え込んでいる。「俺は憎んで、憎んでチャンピオンになる」と話すと「新次みたいになりたい」」とバリカン。「それは無理だ。兄貴は兄貴、違う道を探せ」と話して寝る。バリカンは自分の顔を叩きながらリングで泣き、ベットの中でも泣き続ける。
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試合の前日の練習。バリカンが、リングでシャドウボクシンを続ける新次を見て、ヘッドギアーを着け、馬場と片目が「試合前だ!やめろ」というのも聞かずリングに上がる。「2ラウンドだけだぞ」ということで試合開始。新次はパンチを出さない。バリカンのフックが入る。これが引き金でふたりは殴り会う。「やめとけ!」と片目。これで新次はリングを降りる。バリカンはリング上で・・、「いずれ新次には試合をしてもらえない。決めた!」とバリカン。
 
新次と裕二の対戦。
控室にバリカンが姿を見せない。宮本、京子、劉輝が観戦にやってきている。
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試合が始まる。
新次が裕二を煽るように腕を振り回す。新次、裕二に誘い込まれアッパーを食らい、倒れる。新次の表情に一気に憎しみが出てくる。新次は足を使い、抱きついてパンチを繰り出す。「めちゃめちゃだ!落ち着け!」と片目。減点判定を取られる。グローブを合わせ試合再行。激しい打ち合い。
新次は憎しみだけで戦う。一方、裕二はプロボクサーとしての堅持でこれを冷静に受け止めているが、次第に新次の罠に嵌る。新次は、あの新宿での事件を思い出し、殴って殴って、もうとまらない。結果は新次の判定勝ち。新次は「これでいいのか、これで終わりか?」と裕二に声をかける。新次の心に大きな空白ができ、何も満たされない!
観戦中の劉輝が「裕二!」と声を掛けると、借りは返した!とばかりに、頭を下げて去っていく。ストーリーに沿った試合ですが、菅田さんと山田さんの試合は迫力があった。
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試合を終えた新次は控室で、バリカンが二代目のジムに移籍したことを聞かされます。「これまで何をするにもあなたに従ってきたが、これからの自分を考え、結論を出しました。ず~とあなたとグローブを交えていたかった。僕はボクサーとして生きたい。あなたと闘いたい」という手紙が残されていました。

次の日から、新次がひとりで練習。孤独感がびりびり伝わってくる。バリカンは新しい設備の整ったシムで練習です。
新次は芳子に会っても目を合わせない。芳子は店を辞めどこかに去って行き、新次はバリカンのことを思い出す毎日が続きます。
 
バリカンは新しい事務所でいくつかのプロ試合をこなします。いずれもノッイメージ 8
クアウト勝ちで名が知られるようになる。新次は、裕二との泥試合で、対戦相手を見つけるのが難しい。
バリカンは恵子との交際を、「あなたとは繋がれない」と切ない別れです。そして、二代目に新次との試合を申し出る。
 
宮本は金策ができず海洋ジムを閉鎖すると片目に伝えます。「新次、店お終いだ。いいジムを紹介するからボクシングを続けろ!」と声を掛けます。新次が涙ぐむ。
二代目から片目に新次とバリカン戦の打診が入ります。片目が新次に伝えると「あいつ何考えている?」と疑う。「バリカンは強くなっている。断るか」「やる!」と新次。イメージ 9
ふたりの激しい練習が始まる。バリカンは新次の目の絵を壁に描き、憎め憎めと闘争心を掻き立てる。マコトはふたりの試合を知り「なぜ戦うのか知りたい」と、健夫に観戦させることにする。
試合当日。新次、片目、馬場、それにやってきた宮本で、海洋ジムをきれいに掃除して閉鎖し、試合場に急ぎます。閉鎖にあたり宮本が「いいジムだっイメージ 10
た。振り返っても夢はない」と名言を吐きます。()
この日は「社会奉仕プログラム法」反対デモが国会に向け実施されている。このデモのなかマコトが健夫を背負って試合場に急ぐ。この法律は「若者は自衛隊または介護業務のいずれかに強制的に勤務させる」というもの。
控室ではバリカンが二代目に「ありがとうございました」と挨拶をしている。一方、新次は「あいつは俺に繋がろうとしている。その手には乗らん!」と嘯いている。新次は全てを失った孤独のなかで試合に挑むことになります。
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ここからの18分間、この作品のメセージのすべてが含まれていますので、伏せます。劇場で、この壮絶な試合を観戦し、衝撃的なラストを見届けてください。菅田将暉さんとヤン・イクチュンさんでなければ描かれなかった男の絆に泣けます。
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あゝ、荒野 前編」(2017