映画って人生!

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「春に散る」(2023)すばらしいボクシングシーン、一瞬を懸命に生きることのすばらしさを知る!

 

ボクシング映画。これを瀬々敬久監督が撮る!出演は佐藤浩市横浜流星の共演、これに横浜流星窪田正孝のボクシング対決、さらに27年ぶりの山口智子の映画出演。これは見逃せないと朝一番といっても1145分の上映に駆けつけました。(笑)

ボクサー演じる流星が怪我を押して戦う試合に、靱帯損傷という悲劇の大谷翔平選手の頑張りが重なり、ボクシング映画がこんなに感動を与えるかと再認識。「今を全力で生きるぞ!」と力を貰ったような作品だった。ラスト20分間のボクシングの試合を見れば、作品の答えは全部でてくるという作品だった。

原作:沢木耕太郎の同名小説、未読です。監督:瀬々敬久脚本:瀬々敬久 星航、撮影:加藤航平、編集:早野亮、音楽:田中拓人主題歌:AI。

出演者:佐藤浩市横浜流星、橋本環奈、坂東龍汰小澤征悦片岡鶴太郎哀川翔窪田正孝山口智子、他。

あらすじ
不公平な判定で負けたことをきっかけに渡米し40年ぶりに帰国した元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)と、同じく不公平な判定負けで心が折れていたボクサーの黒木翔吾(横浜流星)。飲み屋で出会って路上で拳を交わしあい、仁一に人生初のダウンを奪われた翔吾は、彼にボクシングを教えてほしいと懇願する。

最初は断る仁一だったが、かつてのボクシング仲間である次郎(哀川翔)と佐瀬(片岡鶴太郎)に背中を押されて引き受けることにした。仁一は自信満々な翔吾に激しいトレーニングを課し、ボクシングを一から叩き込んでいく。やがて世界チャンピオン・中西(窪田正孝)との世界戦が決まる。(映画COM)

ここからねたばれ

世界チャンピオン戦直前に翔吾の目に異変が現れた。それでも翔吾はチャンピオン戦を戦うというが、仁一は止めろ!と反対した。ふたりの激しい対立の末、仁一が共に戦わせろ!とセコンドとなりふたりでリングに上がった。その勝敗は・・・。


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感想(ねたばれあり)

見所は20分間の世界チャンピオン戦

「この試合に人生を掛けたい」という翔吾。「網膜剥離を治して挑戦しろ!」という仁一。ふたりの長い葛藤ののち、仁一は「燃えきれなかった人生を生きる」と翔吾と共にリングに上がることを決心

熱い戦いでどちらが勝つかではなく、ふたりが戦う熱意・根性に拍手を送りたくなる試合だった。

観衆の感動が写し出されるが、ふたりが戦う姿からすごい熱量が伝わってくる映画だった。「俺もこう闘いたい!」「生きたい!」と思わせてくれるシーンだった。

これだけで観る価値があります。突っ込みどころも沢山ありますがこれで全てが吹っ飛んだ。(笑)

空手で鍛えられた流星とボクシング映画出演作の多い窪田の試合数々のボクシング作品に関わった松浦慎一郎の指導で迫力のあるシーンだった。迫力だけでなくセコンドの仁一と翔吾が一体となって戦うストーリーがはっきりと読み取れる。人生の中で“この一瞬を全力で生きる“ことの意義が伝わる作品になっていた

壮烈な試合で傷ついたアップ映像が多く、迫力は編集の力かなと思ったが、パンフレットで「アドリブでふたりが戦った」と知り、「迫力があるはずだ!」と驚きました。

仁一は力がありながら判定に不満で真拳ジムと仲間を捨てアメリカの渡り渡り、チャンピオンにはなれなかったがホテル経営者として成功した。しかし年輪を重ね、妻と別れ、心筋症の発覚で死を前に「この状況で死ぬのか?」と人生に不完全感を覚えた。翔太も一度ボクシングをやめたが「これで先に進めるのか」と未練があった。

仁一は日本に戻り飲み屋で翔吾と拳を交わした後、真拳ジムを訪れ、亡くなった会長の後を継いだ娘・令子(山口智子)に会い、ジムを持ったが失敗し山形の田舎で誰も訪ねてくる人もない孤独な生活をしていた仲間の佐瀬を知った。

仁一は甲府に住み家を見つけ、佐瀬を呼び「どう生きようか」と考えていたところに、ボクシングを教えてくれと翔吾が訪ねてきた。仁一は断ったが、佐瀬が練習メモを渡し翔吾の覚悟と能力を試して仁一に勧めた。仁一は翔吾と拳で打ち合ってみて、「やれる!」と思い「社会の不条理に耐えられるか」と聞いて面倒見る気になった。

仁一は翔吾を真拳ジム所属選手のボクサーとして世に出そうとジムを訪れた。翔吾が自分の力を試すためにジムのエース選手・大塚(坂東龍汰)にガードを着けた試合を申し出て、大塚はちょろいと見たかこれを受けた。翔吾の無鉄砲なボクシムングで大塚を痛めつけたため、令子から「真拳ジムのモットーは考えるボクシング」と翔吾の引き受けを断られた。

仁一は山田(松浦信一郎)がトレーナーをしている山の子ジムに翔吾を預かってもらいことにし、佐瀬と仁一が手を取り一からボクシングを教えた。仁一は「自由になれ!考えろ!」をモットーに「相手に読まれるな!」と教えた。翔吾は倉庫会社で働きながら懸命に努力する若者だった。仁一はこんな翔吾が気に入り一緒に住むことにした。

翔吾の最初の試合相手は妻子持ちの川島選手だった。翔吾は川島を応援する妻子の応援に、手加減しながら戦い勝利したが、仁一は「見ておれん!」と怒った。翔吾は母子家庭で堪えられなかった。

仁一は大分に住む疎遠であった兄の葬儀に赴いた兄の娘の佳菜子から依頼され兄の献体承諾者になっていた。兄の孤独死、お金がないから葬儀をしないという佳菜子の悲しみを見て、母が亡くなり父が出奔したのに兄が面倒を見てくれなかった恨みで疎遠になったが「任せ切りで、すまなかった」と佳菜子に詫び、彼女を引き取ることにした。

仁一はこれまで考えることのなかった翔吾の家族に興味を持った。翔吾は父親を亡くし苦労して母親に育てられ、母を守るためにボクシングを始めたという。

仁一は「ボクシングに同情は危険、命を落とす!」と教えた。しかし、仁一の心にはこれまでになかった心情が生まれてきていた。

翼会長(小澤征悦)から仁一と令子に「翔吾と大塚の闘いの勝者と世界チャンピオンの中西とタイトルマッチを行いたい」という申し出があった。仁一は「これは当て馬で危険!」と反対した。しかし、仁一は中西から横柄な態度で「それは年寄りのプライド!」と揶揄したことで、この試合を引き受けた。

仁一は真拳ジムを尋ね大塚のボクシングを研究し昌大に「スピードとフックに注意しろ!」と佐瀬とともに徹底的なトレーニングを行った。

東洋太平洋タイトルマッチ

 

激しい打ち合いとなり翔太は「これ以上傷を負ったらドクターストップ」という状態に追い込まれたが、翔太のノックアウト勝ちとなった。翔太は大塚に駆け寄り「ありがとうございました」と礼を述べた。大塚はこの試合に満足し引退を決意した。

ボクシングの良さはここなんだ!“これが人生”と言わんばかりに大塚の爽やかなリングからの去り方が描かれた!翔太は勝利インタヴューで中西を挑発する言葉を贈った。

中西対策をしながらの翔太のトレーニング。仁一は昼夜を問わず翔平に付き添った。ふたりの間には特別な関係が出来上がっていった。

そんなとき、翔太は視力に異変を感じた。網膜剥離だった。仁一は「危険だ!辞めろ」と主張。翔太は「今なら世界が狙える。世界を狙えるなら目をひとつ失ってもいい、何時かはない!今だ!」と世界チャンピオンマッチに出ることを主張した。仁一が認めないことで翔太と佳菜子は家を出た。仁一はふたたび一人になり、寂しさを感じるようになった。

晦日に仁一は心臓発作で入院した。仁一は心臓のバイパス手術を勧められたが、一度心臓を止めての手術だから戻れないことがあると拒否。そこに翔太が見舞に訪れた。「世界を取る!なんでもやる!」という翔太に「中西が相手の試合、無傷では終わらん!俺を連れていけ!」とう。仁一はこれまで自分中心の判断を変え、翔太の言い分に乗ることにした

 

仁一は見舞の令子に「アメリカにいたとき、俺の試合を見た人から勇気を貰ったと聞き、これまで自分のことだけ考え、観る人に感動を与えなど考えもしなかった」と話した。

世界チャンピオンタイトル戦

12回戦まで激しい打ち合いで、翔太の目はつぶれた。翔太はこのような状の中で「爺さん、タオルを入れるな!凄く気持ちが良いんだ」と戦い続けた。判定は僅差で翔太が勝者になった。翔太は中西に駆け寄り「ありがとうございます」と礼を述べた。

 

この試合を見た佐瀬は子供にボクシングを教えることに生き方を見出す。令子は仁一のボクシングに納得した。多くの人に感動を与えた。

まとめ

仁一は翔太と交流することでこれまで得られなかった生きた証を貰って、桜の散る中、あの世に旅立った。

翔吾は片目を失ったが、仁一によって苦しいボクシングの中から生きる力を貰った。どこで何をしようが耐える生き方を身につけた。爽やかな世代を超えた絆の物語だった

本作は“今の社会でいかに人生を生きるか?”がテーマ。

 老人社会、老人介護、女性暴力、貧困、母子家庭などの社会状況の中で世代や考え方が違うもの同士がどう生きるかを描きたいという狙いがあった!

このため仁一が当初翔吾の申し出を断った理由や翔太の過去が曖昧で分かりずらい。このことは後に出てくる翔吾の母親(坂井美紀)や、仁一の兄の娘・佳菜子(橋本環奈)のエピソードにも出てきます。恐らく原作からの設定変更。エピソードが多すぎたね!

佐藤浩市さんは安定した演技でした。横浜流星さんのボクサー役は打って付けでしょう。令子役の山口智子さんは存在感があってこの役には向いていたが、もっと仁一への不信感があってもよかったかなと思いました。

橋本環奈さんの演技。父親を介護し葬儀を出して、その後仁一の家で生活しながら子供食堂に努め成長していく姿は新鮮なものだった!

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