1982年公開のSF「ブレードランナー」(リドリー・スコット監督)から、35年の時を経て生み出された本作。前作スコット監督が製作総指揮を務め、「メッセージ」「ボーダーライン」のドゥニ・ビルヌーブ監督が新たにメガホンをとっています。「生命」「愛」など人としての根源的な問題に触れた「メッセージ」に強く惹かれ、本作を期待していました。主演にライアン・ゴズリング、前作主演のハリソン・フォードが同役で、シルヴィア・フークス、ロビン・ライト、アナ・デ・アルマスらが出演しています。監督は何も見ないで観て欲しいと語っており、これに従い観ないでの鑑賞です。
前作から30年後の2049年の世界を舞台に、ブレードランナーの主人公“K”が、異常を起こしたレプリカントを解任するなかで、レプリカントが子供を出産した事実に遭遇。自分の記憶から、この子は自分ではないかと、出生の謎を解き明かしていきます。「人間とはなにものか」と問われるすばらしい物語になっています。
テンポよく進み、ホログラフィーの女性との恋、激しい格闘アクションがあり、そして2049年の世紀末を感じさせる荒れ果てた風景のなかで繰り広げられるドラマは、ミステリアスで感動的。2時間43分という時間を長いとは全く感じない。
ライアン・ゴズリングの孤独感、ハリソン・フォードの重厚感、アナ・デ・アルマスの可愛らしい演技がすばらしいです!
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K(ライアン・ゴズリング)が操縦するポリス・スピナーが、広大なソーラー基地を抜け、人気のない農場に到着。ルーフに装着されてるドローンを飛ばして監視するなかで、小屋に立ち入り指名手配中の男サッパ・モートン(デイヴ・バウテイスク)であると確認して解任(射殺)する。この一連のスピナー、ドローンの軽快な動き、Kの行動がとても機敏で、一気に物語に引き込まれます。
サッパの「俺は奇跡を見た」が気になりドローンで探ると花が供えられた大きな木の元に箱が埋められている。これをロス警察署に持ち帰り提出。身体調査を受け賞与を受け取って帰宅する。
Kがアパートに帰宅すると周りのやつらに「人もどき!」と罵声を受ける。部屋にはいるとホログラフィーの恋人ジョイ(アナ・デ・アルマス)が出迎えてくれ、これが唯一の慰め。
Kは上司ジョシから「この世には秩序が必要。壁がなくなると戦いになる。子供と、子供に関するすべての情報を処分する」との指示を受け、ただちに遺
体の髪をもって、製造会社のウォレス社を訪ねる。対応してくれるのは社長代理レプリカントであるラヴ(シルヴィア・フークス)。2022の大停電で資料を喪失しているが、彼女の特別な計らいで、当時のレプリカント検査記録(音声)から遺体名はレイチェル、検査官はブレードランナーのリック・デッカード(ハリソン・フォード)であることが判明。そしてラヴが「彼女は彼が好きだったようよ」と語った。
Kは老人ホームに、デッカートのかっての同僚ガフを訪ねる。彼は「デッカードは望むものを手に入れたと退職した。彼女だよ!」と語る。
ウォレス社では、盲目の社長ニアンダー・ウオレス(ジャレッド・レト)自ら新たに作成したレプリカント女性が子供を産めるかと調べ、失敗を確認してその場で処分した。ウォレスは新しいレプリカン作成のため、デッカードを確保するようラヴに命じた。ここでの、レプリカントが滑らかな子宮から生まれ出るシーンにびっくりです!
気休めにKがビビのバーに出かけ、あの大きな木が気になって写真を見ていた。そこに娼婦マリエッテイ(マッケンジー・デイヴィス)が近づき、「サッパを解任したブレードランナーか?」と確認して去った。マリエッテイは旧型レプリカントで構成される反乱軍の主謀者フレイザの手先として働いていた。ビビのバーは、暗く猥雑で、2049年という雰囲気にあった歓楽街だ。
写真を見ていて、Kはある部屋でピアノの奥に隠された小箱を開け、布切れ(袋)を取り出す記憶を思い出す。
Kは再び大木を訪れ、根元に6.10.21の文字を見つけこれが自分の誕生日と一致することから、自分の出生に関係があると悩み始める。署に戻りジョシに、子供のころ持っていた木馬にこの日付がつけられていた記憶のことを話す。すると記憶を確認するためDNA検査をするよう命じられた。
ロサンゼルス警察DNA検査室でDNAを調べようとするが日本語で「消滅してます!」のアナウンス。そこで、ジョイを呼び出し(エマネーターの電源を入れる)、ふたりで膨大な遺伝子データーを調べる。同じDNAの男児と女児がいるが、女児は死亡、男児はサンデイエゴの破棄物処理場の孤児院にいることが判明。
Kはジョイを伴いスピナーで、孤児院に向かった。(大量のゴミの発生で広大な破棄物処理場は息をのむほどのがらくたの山だ)
突然不明機に襲われ不時着させられた。ラヴがドローンを使って遠距離から監視し「子供を見つけて!」とミサイルを撃ち込みKを不時着させたのだった。
巨大なドーム形の孤児院を訪ねると、所長は「その年齢の男児の記録はない」という。しかし、炉の中に隠したという自分の記憶
で探すと、そこで木馬を見つける。書かれている数字も一致する。自分の記憶と現実が一致していることを確認した。
ジョイが「本物の男の子はあなた?」と言うが、Kは「移植された記憶かもしれない」とウテリン研究所を訪れることにする。
研究所に、記憶創造者のアナ・ステライン博士(カーラ・ジュリ)を訪ねる。博士は「男の子は免疫不全症で8歳からガラス張りの部屋だけが安全で、ここで過ごしている」という。「レプリカントの記憶はやさしいより正しいことを優先して作る。本物を作ることは禁止されている。本物の記憶は作ったものより複雑だ」と話して、Kの記憶を調べ“本物だ”と涙を流した。Kは「チクショウ」と声を上げて退室し、雪を手にした。
このとき上司ジョシから呼び出しがありチェックを受ける。「あなたは基本にほど遠い。異変が出ている」と詰問され、「今日は許す!」と帰宅を許された。帰宅したKはマエッテイを呼び交わろうとすると、ジョイが「自分も」というので、マエッテイに重ねて交わる。(笑) 終わってマエッテイは追跡チップをKに衣服につけて帰って行った。身体を持たないホログラフィーのジョイとの愛は切ない。
Kはビビのバーで専門家に木馬の材質を検査してもらうと、強い放射線が残っていて場所が特定できることがわかる。ドローンを使って調査するとラスベガスであることが分かった。一方ラヴはジョシを襲って殺害し、警察の探知システムでKの居場所を突き止める。
オレンジ色の砂漠にゴテゴテに飾り立てられた像が点在するラスベガス、かってのきらびやかな街ではない、死の町だ。手に虫がつくと爆発音。蜂がいる箱に手をかざして建物に入る。中にはルーレットがあり犬がいる。ジュークボックスからエルビスの歌が流れるなかで、男が襲い掛かってきた。
Kは男の攻撃に耐えていると、攻撃するのをやめ「酒を飲もう」と誘う。男はデッカードだった。「母親の名前はレイチェル、子は見つかれば解剖されるので売り払った」という。フランクシナトラのマイウエイが流れるなか、突然ラヴ一派が侵入してきてデッカードをスピナーに乗せて連れ去る。Kが重症で動けないでいるところに、マリエッテイと組織の親分フレイザがデッカードを確保しようと現れ、彼らに救助された。
フレイザが「レイチェルの出産時その場にいたんだ。あんたが解任したサッパーがとりあげた。人間より人間らしかった」と語る。「仲間を解放したい。自由な身になりたいならチームに入らないか。大義のために死ぬなら本望だろう。デッカードを捕えられては自分たちの場所が知られては困る」と誘われた。そして「子供は女の子。隠したのは男の子、これは陰謀だった」と語った。
Kが「自分だと思っていた!」と話すと「みんなそう思いたいの。だから信じる」と慰められた。
一方、デッカードはウォレスの元に連れてこられ、彼から子供を産むレプリカント作成のための協力を求められる。そこに幻のレイチェルが現れ、デッカードを説得しようとするが目の色が違うと断るとその場で彼女は射殺された。デッカードはラヴによって別の場所にスピナーで移動させられた。
失意のKが街を歩いていると大型のジョイが現れ激励をしてくれる。(笑) これに励まされデッカードを追うことを決意した。
雪の降る日。Kはデッカードを娘に会わせるためステリン研究所に案内する。「記憶は彼女のものだ。俺はあなたにとってなんなんだ」と語りかけた。
ラストシーン、重症を負い研究所の入り口の階段に横たわり降る雪を感じるKと研究所内で同じ雪を感じる娘、雪の記憶が同じでもKはレプリカント。
人間とレプリカント。人間とはなにかを“愛”と“記憶”で問い、すばらしい物語になっています!!「人間が滅亡しないためはどうしたらいいのか」と問われているように思う。
一度の鑑賞ではとても理解できない、何度かの劇場通いが必要、そして前作を観ることで、一層深く理解できるのだろうと思います。
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