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宮﨑あおいさんを応援します

「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017)

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ヒロインが、最近変わった役の多い蒼井優さん。夫の稼ぎに依存して自堕落な生活を続ける妻十和子を熱演。もっぱらの評判が佐和子の夫・陣治役阿部サダオさんの不潔で無作法、下品な演技。()キャッチコピーは「共感度ゼロの最低な男と女が辿り着く“究極の愛”」。
どんな作品か?と観ないわけにはいきません。()

蒼井さんが大阪城を望む淀川べりの公園で見せるとんでもない演技。なんだこれはと監督を恨んでいると、ラスト近くで美しい蒼井さんをしっかり見せてくれ、“そうだったのか”と二人の愛の物語に感動します。蒼井優さんの振れ幅のある演技がすばらしい!今年の映画賞対象になりますね(#^.^#)

監督が「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌さん。恋愛映画は本作が初めて。原作は「ユリゴコロ」(2017)の沼田まほかるさんの同名小説。脚本は「ラストフレンズ」の浅野妙子さんです。

作品はミステリアスで、コメデイー風。「なぜこの男と女が一緒に住んでいるのか」という大きな疑問が、絶妙な回想の嵌め込みで過去と現在を行き来しながら、最後に衝撃的な事実で明かにされます。ラストで鳥たちが飛び立つ映像の意味は? なんとなく「ユリゴコロ」の展開に似ていて、映画を観終わって、もう一度見直したくなる作品です。

蒼井さん、阿部さんは言うに及ばず、竹野内豊さん、松坂桃李さんの金と性欲だけで動くクズ男の演技も見どころです。特に「ユリゴコロ」にも出演していた松坂さんの演技が、同じ人?と思わせるほどに良いもので、驚きます。
大阪の商店街、公園など街の風景が、この夫婦のありようをリアルにしてくれます。
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物語は、
働きに出ることもなく、15歳年上の夫・陣治(阿部サダヲさん)の稼ぎに頼って自堕落な生活をする妻・十和子(蒼井優さん)。
冒頭、物を散らかしっぱなしの部屋で、十和子が時計店に「大切な人からもらった腕時計が壊れた」とクレームを入れる。
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この部屋をどうやって造ったのと聞きたいほどの乱雑さ、汚さ。そして横着な十和子。電話を終えて出かけようとすると陣治から電話。「何もいうことないのに電話しないで!」「飯食いに行こう」「うるさい」。
十和子、ビデオ屋にCDの返却。「壊れて途中から観ることができなかったから、この時間ロスをどうしてくれる」とクレーム。めんどくさい女。これを陣治が外で見ている。陣治から「俺、失敗や」とまた電話が入る。24時間十和子をストーカーしているようです。なぜか? ここから、物語が始まります。
十和子がソファーに赤いドレスで眠っているところに陣治が帰ってくる。十和子の観ていたビデオを隠す。このビデオがとんでもない嵌め込み映像。()
ふたりで天ぷらうどんを食べる。奥歯の入れ歯を外して、足の指のゴミを取って、こぼしながら、ズ~ズと音を出して食べる陣治の汚い食べ方。なぜこんな男と一緒になったのと問いたい。
食事のあと、十和子は陣治に腰を揉ませる。「これだけは褒めてもらえるな!」「顔が見えんからや」と十和子。陣治、抱かせてもらえない。自分でやっといて!() それでも朝、籠に金を入れて出勤する陣治。

十和子は「シングルマザーを支援する会」でボランテイア活動してる姉美鈴(赤澤ムックさん)を訪ね、
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「とんでもない人、なんで陣治と一緒にいるのか分からん」と相談すると「あの人まじめ。生命保険まで入ってるよ。あんた黒崎さんのこと引きずっているよ」とたしなめられる。

朝食事をしていると水島(松坂桃李さん)という男が「同等の時計を準備したので訪問したい」と電話してくる。「安い時計で騙すつもり!」と返事して、こっそり時計店を訪ね下見。イケメンだ、黒崎に似ている!
家で水嶋に会う。水島がいくつかの時計を十和子の腕につけて感想を聞く。水島の時計をつける手つきがなまめかしい。松坂さんの名演技です。
これで雰囲気が出来上がって水島が十和子にキスしているところに陣治から電話。()
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十和子が時計店を訪ね、ふたりでラブホテルへ。水島は「旅が趣味で、タッキリ・マカンがよかった。無限の死滅だよ。人間は孤独、子宮に抱かれたい。あなたも孤独、僕に似ているよ。こうなるのは運命だったんだ」としゃべる。これに十和子はすっかりいかれてしまう。() 商店街を通って帰っていると、自転車に乗った陣治に会う。

陣治は美鈴に電話し、家に来てもらって十和子と話す。美鈴が十和子に「あの人、黒崎さんでしょう。より戻したの」と言うと陣治が「それは絶対にない!」と否定。美鈴の「陣治さんがやさしいからこんなことに」に「黒崎さんはどうなんか知らん!」と十和子。

十和子が黒崎に電話するが、すぐに切る。相手から返しのコールがあるが無視。
黒崎に会って「子どもを産んでくれ、妻とは別れる」とピアスを渡された記憶を思い出す。
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陣治が弁当買って帰ってくると十和子がソファーで「黒崎さん」と寝言。これで、陣治の十和子への監視がきつくなり、電車にまでついてくるようになる。
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そんなある日、刑事が訪ねてくる。「一昨日、黒崎さんに電話したでしょう。先方は黒崎さんの奥さん。5年前に失踪届け出している。どこかにいるんでしょうね」と話して帰っていく。十和子は異様なまでに自分に執着する陣治の姿に不審感を感じ始め、黒崎の失踪との関わりを疑い、水島にも危険が及ぶのではないかと怯えはじめる。

十和子が陣治が籠に入れてくれている金をもって出かける。これに気付いた陣治は「いったらいかん。恐ろしいことになる」と止めようとするが、これを振りきって出て行ってしまう。
ホテルで水島に会い金を渡して「タッキリ・マカンに連れていって」とねだる。帰りに、ふたりが車のなかにいるところを陣治に見られている。

十和子は美鈴のところに泊まっているところに、陣治が迎えに来て「相手はだれでも良い。十和子が幸せにできるのは僕だけ。なんでもします」と連れて帰る。

十和子は黒崎の妻国枝カヨ(村川絵梨さん)を訪ねる。ここでカヨから「黒崎は5年前に殺されたと思う」と聞かされ、カヨの父親(中島しゅうさん)に会う。父親は「ひさしぶりだ。お前の肌も声もよく知っている。黒崎はどうしている。あの日なぜ来なかった」と話す。この話を聞いて、十和子は5年前の黒崎との最後の日の出来事を思い出す。

家に帰ると、陣治が「佐藤(同僚)に殴られた」と血痕の衣服を洗っていて、十和子を見て「前にもこんなことあった」と言う。

翌日、水島から「自宅に大人のおもちゃが送られてきて、妻が怒っている。そして200人分の顧客名簿が盗まれた。あんたの旦那を疑っている」とメールが入る。
十和子が時計店を訪ねると水島が店の女と出てゆくところ。つけると寿司店に入る。待つ時間に雑貨店を除くと、なんと水島が買ってくれたと同じ時計が3000円で販売されている。夜になり、水島に会うと淀川の畔で求められる、このレビュー冒頭のシーン。ほんとにこの男はケチで薄っぺらな男です。()

帰りに、陣治に捕まる。「水島に大人のおもちゃを送ったのは俺だ!タコパンツもだ。十和子が必要なんだ」「目を覚ませ!また、黒崎のようにえらいことになるぞ!」と迫られる。
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十和子は「わたしと付き合うようになって、黒崎さんのこと話さんようになった。あの人いまどこにおるん?」と聞く。家に帰った十和子は陣治の貯金箱を捜し黒崎にもらったイヤリングを見つける。
「あの人どこに居るの?」・・・・ここからの十和子の行動は伏せます。
 
想像できない結末。陣治が十和子に語ります。「十和子との生活は夢のようであった。十和子が思い出したことを全部もっていってやる。目を覚ませ!子供を産め、金はないが俺はお前の腹に生きる」。
フラッシュで見せてくれるふたりの馴れ初め。そこには、愛されたことへの感謝の想いが溢れていました。
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