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監督がウッディ・アレン、第86回アカデミー賞でケイト・ブランシェットが主演女優賞を受賞した作品、WOWOW(吹替版)で観賞しました。
セレブな妻が夫の不倫に怒り、その腹いせに夫の不正事業を暴いたために夫が自殺、その地位・財産を失った。サンフランシスコに住む妹を頼り、美術デザイナーとして自立を志すなかで新しい伴侶を見つけるが、セレブ時代が忘れられず、嘘を重ねたことを見破られ、立ち上がれないはなし。(笑)
ウッディ・アレンはウイットに富んだ女性の見方を描いてくれますが今回はえらく辛辣で「こんな女くたばってしまえ!」と言わんばかりの結末。よほど耐えがたい記憶があるんですかね!よくセクハラで訴えられなかった!(笑)“男目線”で観ておくと女性選びに失敗しないと思います。(笑)
監督・脚本:ウッディ・アレン、撮影:ハビエル・アギーレサロベ。
出演者:ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、アレック・ボールドウィン、ピーター・サースガード、ルイス・C・K、ボビー・カナベイル、アンドリュース・ダイス・クレイ、マィケル・スタルバーク、タミー・プラン。
あらすじ(ねたばれ):
冒頭、サンフランシスコ行きの機内。ジャネットことジャスミン(ケイト・ブランシェット)が隣の老婦人に「夫ハル(アレック・ボールドウィン)は“ブルームーン”が好きでセックスも上手かった!」と話しかける。驚く婦人。夫人が「あの人おかしい!」と驚く。ジャスミンに何があったかというシーンから始まります。
ジャスミンは大学時代に、投資家ハルに見初められ、人類学の学業を辞めて結婚。彼の名声でニューヨークの社交界にレビューしこれを唯一の誇りに生きていたが、夫が急死し、生活に行き詰まり、妹のジンジャー(サリー・ホーキンス)に身を寄せ人生をスタートさせようとサンフランシスコに向かっていた。
ジンジャーは前夫オーギー(アンドリュー・ダイス・クレイ)との間に二人の子をなしていた。今は大工職のチリ(ボビー・カナベイル)に結婚を迫られていた。
ジンジャーはチリに我慢してもらって、部屋を準備しジャスミンを受け入れた。
やってきたジャスミンは豪華なファッションでファーストクラスで来たと言いルイ・ヴィトンのスーツケース2個を持っていた。なんでこんなレディーがと驚くジンジャー。全く“経済観念”がない!
シンジャーはかって20万ドルの宝くじが当たって、夫オーギーとニューヨークにジャスミンを訪ね、金の使い道を相談した際、ハルに投資を勧められ、これが失敗して全額を失った。それでも姉を庇うジンジャーに愛想つかしてオーギーは別れていった。ジャスミンとジンジャーふたりは里子の姉妹で、姉のジャスミンは憧れの姉であった。しかしジャスミンにはジンジャーを庇う考えはない。ふたりの容貌があまりにも違うのはこのせい。(笑)
チリが早くジャスミンを追い出そうと酒を持って仲間のエディ(マックス・カセラ)とご機嫌伺いにやってきた。ようこそ!とバーボンで乾杯しようとすると、ジャスミンはワインで応じる。“庶民感覚”が全くない!エディがジャスミンに何とか近づこうとするが、ジャスミンが不快感を露わにする。
ジンジャーがこれからどうするの?と問えば、「大学時代やりたかった美術アドバイザー」になるという。お金ないのにどうやってと問えば、「テレワークで学んで免許取得する」という。「パソコン使えるの?」「使えない、スクールに通う」「そのお金は?」。ということでチリが探してくれた歯科医院の受付係として働きながらパソコン教室に通うことにした。
患者の都合に合わせて予約を準備することなど、やったことがないからまともにできない。それでも首にならない。それは医師フリッカー(マイケル・スタールバーグ)に魂胆があった。(笑) フリッカーが頃を見計らって「もういいだろう」と迫ってきた。男は女を見れば動物になる。(笑) これを拒否して歯科医院を辞めた。
パソコン教室で合コンに誘われ、ジャスミンはこれに賭けることにした。彼女の出来ることはこれしかない!一人では無理とジンジャーを誘った。
ジャスミンが考えたように、国務省務めで将来下院議員になろうかという男ドワイト(ピーター・サースガード)に出会った。ジャスミンは「夫は死亡、子供はいない、インテリアコーディネーターをしている」と彼の気を引くようごまかした。ドワイドはジャスミンの話を信じて結婚の約束をした。彼女の美貌と会話のセンスの良さから決めたようだ。何でもっと内面を見ないの?「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」(19)でこのバカバカしさを描いてくれます。
一方のジンジャー。すこし歳とってるが、やさしい音響技術士だというアル(ルイス・C・K)に出会い、「チリより品がある」とすぐにホテルに駆け込むという状況。(笑) が、チリはジンジャーに復縁を迫ってくる。しかし、アルの居所に電話して彼は既婚者だと知る。
ジャスミンはドワイドと住むマンションを確認し、指輪を買おうと店に入るところで、オーギーに出会った。オーギーが「俺から奪った金をどうした!馬鹿旦那も逮捕され自殺した、全てはお前のせいだ!バカ息子がここに住んでいるぞ!」と怒鳴る。
ジャスミンは夫ハルが若い秘書に熱を上げたことに嫉妬して、夫の闇商売を明かし、このことでハルは捕らわれ自殺していた。ジンジャーがニューヨークに出て来たときにあのふたりは怪しい!と忠告したとき、ジャスミンがちゃんと対応すればハルの浮気を封じれたのに、ジャスミンの自尊心が邪魔した。男女のことになるとジンジャーの方に才があると言える。(笑)
ドワイドは直ちにジャスミンを振った。
ジャスミンは息子ダニー(オールデン・エアエンライク)を頼っていくが「俺に関わってくれるな!あんたみたいな見栄っ張りな女は嫌だ!」と断れ、行き場を失った。
息子はハーバード大出の自慢息子だったがジャスミンが夫の不倫を激しく追及し、警察に突き出したことを知って家を出ていた。
ジャスミンがジンジャーのアパートに戻ると、ジンジャーはチリとの仲を元に戻し仲良くやっている。ジンジャーが「セレブの生活に戻れるならよかったね」と声を掛けるとジャスミンは本当のことが言えず、着のみ着のままで出て行き、ひとりベンチに座り「ブルームーン」を聞くが歌詞を忘れたと呟いた!
感想:
美人で自己中な女性の人生転落悲劇。知的美人のケイト・ブランシェットにこの役を演じさせたことで、外見がどんぴしゃりですから、こんな女性のバカバカしださが際立って伝わるという辛辣な女性の見方でした。最初から終わるまで、何一つまともなところのない女性でした。(笑)
大した努力もなく美人を鼻にかけて結婚してセレブな地位を得たら、それを失ったときにはパニックになるし間違ったこともするでしょうが、全く自分を反省することのないジャスミン、“ブルー”ジャスミンに驚きました。
取るに足らない女性の代表としてのジンジャーと対比しながらジャスミンの行動を描き、真っ当に生きるためには何が必要かをジンジャーの姿で描くという、この辛辣さがよかった。しかし、ここまで描くかというアレンの悪あがき!(笑)
アレンの皮肉に、全身で応えたケイト・ブランシェットの演技、セレブな女性から夫の浮気にマスカラで目を真っ黒にして泣き狂い、ラストは泥酔して虚ろな精神病者の表情。あたりまえです、アカデミー賞主演女優賞ですから。
ラストシーンで好きな曲「ブルームーン」を思い出し「歌詞を忘れた!」と呟きますが、なんでこの曲が好きなの?夫が好きだったから、これこそが大問題だった。どうしょうもない女に成り下がったジャスミンのこれから、どうなるんでしょうかね!(笑)
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付記:ブルームーン(Blue Moon:和訳)
あなたは一人ぼっちで立っている私を見ていた
心に描く夢もなくて
愛する人もいない
あなたは何のために私がそこにいるのかちゃんと分っていたのですね
あなたは私のお祈りが何を言ってたのか聞いていたのですね
私が誰かを本当に大切にしたいということ
それから突然私の前に現れた
私がいつまでも抱きしめておきたいたった一人のひとが
私は誰かがささやくのを聞いた「どうか私を大事にして。」と
そしたら、お月さまが金色に変わっていた
今はもう一人じゃないんだ
心に描く夢もなくて
愛する人もいないような
(リピートの部分は省略)
Blue Moon (song):Wikipedia
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