
冒頭、「この映画は100人以上の画家によって描かれた絵で構成されている」「物語はゴッホ亡くなった1年後からはじまる・・」とテロップがでます。このテロップが絶妙でした。
ゴッホの死の翌年に弟のテオに宛てた手紙が出てきた、ゴッホの友人でもある初老の郵便配達人(ジョセフ・ルーラン)が、それをテオのところに郵送したところ宛先不明で帰ってきたため、息子アルマンにその手紙を届けさせることにする。アルマンがゴッホの死の直前に関わりのあった画材商(タンギー爺さん)、医者(ガシェ)、ピアノを弾くマルグリット、農夫などに死の真相を求めて旅するサスペンス。物語に引き込まれ、その結末はドン・マクリーンの歌「Vincent」に合わせ、ゴッホが残した絵で語られます。
これら絵画から抜け出した登場人物たちが、ゴッホの風景画の中で生きている。ゴッホの実画を見たことはありませんが、この作品で130品もの作品を観ることになります。ゴッホの絵に、彼の人生を想い、この映画を思い出すことになります!
映画は、俳優たちが役を演じる実写映画として撮影され、ゴッホタッチを完璧に習得した画家たちにより油絵になり、この絵を物語に合わせ登場する人物の風貌や雰囲気にうまく混ぜ合わせ、動く肖像絵になっています。
回想シーンは、モノトーンで俳優さんたちの演技で見せてくれます。油絵の人物たちの動きにまったく違和感がなく、回想シーン(モノトーン)に繋がれ、ぎらぎらしたゴッホの絵に目が眩むこともありません。うまく作られています。
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アルルの町「夜のカフェ・テラス」で、酔っぱらったアルマン(ダグラス・ブース)が、フィンセント・ファン・ゴッホ(ロベルト・グラチーク)の悪い噂を聞き、「何で死んだ人に届けるのか」と不満を漏らすところから物語が始まる。
行くなと叫び、耳を切り落として、娼婦に届けるという精神異常者だった。絵を描こうとすると、子供たちにバカにされ石を投げられて追われる。遂にここを逃げだしたという。

列車でパリに出る。とても美しい映像(絵)です。テオが世話になっていた画材商「タンギー爺さん」(ジョン・セッションズ)を訪ねる。

そして、フィンセントの生い立ちを語る。28歳で画筆を持ち、テオの援助で絵を描き続け、このパリで修行したが「堕落する」といって去った。しかし、2年後にここで会ったが顔つきに威厳ができ星を掴むと思った。
その6週間後に棺に合うとは思わなかった。たった8年で素人から画家になった。医者は完治したと言っていたのに。葬儀は画家と「医者ガシェ」。絵が壁から剥がされ、ガシェ(ジェローム・フリン)が薬代に持って行ったという。
アルマンはフィンセントの拳銃自殺に疑問を持ち、彼が最期を過ごしたオーヴェールにある「オーヴェルの教会」に、医者ガシェを訪ねる。そこでは美しい娘がピアノを弾いている「ピアノを挽くマルグリット・ガシェ」(シアーシャ・ローナン)。家政婦ルイーズ(ヘレン・マックロリー)が対応して、ガシェは数日留守だという。

「カラスのいる麦畑」を通って、「ラヴーの宿」に逗留する。

父が部屋にいくと彼は腹を押さえ医者ガシェは何も言わず見ていた。腹の銃弾を取り出さず帰っていった。テオさんが訪ねてきて明け方一時ごろ亡くなった」という。
翌日、雨。ラヴーは「フィンセントは幸せそうだった。風変りだけどやさしい。雨のなかでも絵を描いた。いつも、どんな天気でも出かけて絵を描いた。そして、いつもひとりだった。河が好きだった」と話す。

「オーヴェルの教会」にマルグリットを訪ねると、またあの家政婦ルイーズに会う。

マルグリットは「いなくなって何ができるというの! 花が好きな人だったから墓に花を供えている」「私とは関係ない。彼は父と絵の友達、父は彼と口論したことで死んだと思っている」という。
宿に戻りラヴーにマルグリットのことを聞く。「あの家族は信頼できない。ふたりが一緒のときは、フィンセントの顔が違っていた」という。そして「弟テオに会った、画材が高いと言っていた。画材が無くなり送ってもらうよう手紙を書いた。それなのに死ぬというのはおかしい」という。このころフィンセントは1日が数週間に感じられると書き残していた。
「矢車菊をくわえた“若い男”」に襲われ、追いかけていくと父親の農夫に会う。

アルマンは、「みんなの言うことがみんな違っている。自分にも異変が起きている。本気で自殺したのではない」とフィンセントの自殺を疑い始める。
ルイーズは、「拳銃はラヴーのカウンターの下にあった」と言い、ラヴーに聞くと「フィンセントは悪童どもや品のない女と付き合っていた。拳銃はあの時はなかった」という。貸ボート屋に聞くと「拳銃は、ラヴーがフィンセントに売りつけた。彼が村で振り回してしていた。『耳を切り落とした男』と悪童どもに揶揄されていた。その先のことは知らない」という。
アルマンが、カフェで「矢車菊をくわえた“若い男”」が悪童どもに脅されているところに居合わせ、彼を助けようと暴力事件を起こし警察に世話になる。そこでフィンセントの死亡証明書を描いた医者マリーゼがいたことを知る。彼を訪ねて話を聞くと「被弾部位が頭でなく腹、弾丸が残っていたことから自殺でなない。フィンセントは撃たれたんだ」という。
再度、「嘘ついたろう」とマルグリッドに会う。

やっとガシェに会える日がやってきた。

私を“えせ絵描き“と言ったから『テオは梅毒にかかっても君を支えている。弟の苦労が分かるか、それで芸術家としての価値があるのか』と言い返した。自分の言葉が彼を死に追いやったかと思っていた。あの夜、彼が『これが皆のためになるんだ』と言ったので、ベッドの傍にいて泣いて詫びた」と話す。
ガシェが、「テオの妻ヨーが手紙を集めているので、その手紙を送る」と言い、フィンセントが旅に出た最初の手紙と交換することにした。
馬車で「赤い葡萄畑」(生前唯一売れた絵)を通っての帰り、手紙を開くと「私は、人にどう関わるのか?不快な、最低の人間だろう。もしそうだとしてもそれが真実でも、作品で示す」と書かれていた。


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