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「ゴッホ最後の手紙」(2017)

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キャチコピー「世界初、全編が動く油絵で構成される体感型アートサスペンス」、しかもゴッホの死の真相を明かす物語だという。これはもう観ないわけにはいかない。(#^.^#) 原題「Loving Vincent」、監督ドロタ・コビエラ、すばらしい作品でした!
冒頭、「この映画は100人以上の画家によって描かれた絵で構成されている」「物語はゴッホ亡くなった1年後からはじまる・・」とテロップがでます。このテロップが絶妙でした。

ゴッホの死の翌年に弟のテオに宛てた手紙が出てきた、ゴッホの友人でもある初老の郵便配達人(ジョセフ・ルーラン)が、それをテオのところに郵送したところ宛先不明で帰ってきたため、息子アルマンにその手紙を届けさせることにする。アルマンがゴッホの死の直前に関わりのあった画材商(タンギー爺さん)、医者(ガシェ)、ピアノを弾くマルグリット、農夫などに死の真相を求めて旅するサスペンス。物語に引き込まれ、その結末はドン・マクリーンの歌「Vincent」に合わせ、ゴッホが残した絵で語られます。

動き出すのは「郵便配達人」「タンギー爺さん」「医者ガシェ」「アドリーヌ・ラヴー」「矢車菊をくわえた若い男」などいずれも有名な肖像画たちです。
これら絵画から抜け出した登場人物たちが、ゴッホの風景画の中で生きている。ゴッホの実画を見たことはありませんが、この作品で130品もの作品を観ることになります。ゴッホの絵に、彼の人生を想い、この映画を思い出すことになります!

映画は、俳優たちが役を演じる実写映画として撮影され、ゴッホタッチを完璧に習得した画家たちにより油絵になり、この絵を物語に合わせ登場する人物の風貌や雰囲気にうまく混ぜ合わせ、動く肖像絵になっています。

回想シーンは、モノトーンで俳優さんたちの演技で見せてくれます。油絵の人物たちの動きにまったく違和感がなく、回想シーン(モノトーン)に繋がれ、ぎらぎらしたゴッホの絵に目が眩むこともありません。うまく作られています。
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アルルの町「夜のカフェ・テラス」で、酔っぱらったアルマン(ダグラス・ブース)が、フィンセント・ファン・ゴッホ(ロベルト・グラチーク)の悪い噂を聞き、「何で死んだ人に届けるのか」と不満を漏らすところから物語が始まる。
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インセントは、ここにきてゴーギャンと一緒に「黄色い家」に住み始めるが喧嘩別れ。
行くなと叫び、耳を切り落として、娼婦に届けるという精神異常者だった。絵を描こうとすると、子供たちにバカにされ石を投げられて追われる。遂にここを逃げだしたという。
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父ジョゼフ・ルーラン(クリス・オダウド)は「この町があいつを苦しめた。精神病院に入ったが、死の半年前は精神的に正常だった。彼の手紙で知っている」と言い、「パリに住むテオに手紙を直接渡し、様子を聞いて来い」という。

列車でパリに出る。とても美しい映像(絵)です。テオが世話になっていた画材商タンギー爺さん」(ジョン・セッションズ)を訪ねる。
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「ふたりは、心が繋がっているようだった。フィンセントの死に打ちのめされ、半年後に亡くなった。拳銃自殺したことに、テオは『兄は不幸だった』と言った」という。

そして、フィンセントの生い立ちを語る。28歳で画筆を持ち、テオの援助で絵を描き続け、このパリで修行したが「堕落する」といって去った。しかし、2年後にここで会ったが顔つきに威厳ができ星を掴むと思った。
その6週間後に棺に合うとは思わなかった。たった8年で素人から画家になった。医者は完治したと言っていたのに。葬儀は画家と「医者ガシェ」。絵が壁から剥がされ、ガシェ(ジェローム・フリン)が薬代に持って行ったという。

アルマンはフィンセントの拳銃自殺に疑問を持ち、彼が最期を過ごしたオーヴェールにある「オーヴェルの教会」に、医者ガシェを訪ねる。そこでは美しい娘がピアノを弾いている「ピアノを挽くマルグリット・ガシェ」シアーシャ・ローナン)。家政婦ルイーズ(ヘレン・マックロリー)が対応して、ガシェは数日留守だという。
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「フィンセントは嫌な人、目つきが悪い。あの人のせいでさんざんな目にあった」という。とりあえず宿をとって彼の帰りを待つことにする。
 
「カラスのいる麦畑」を通って、「ラヴーの宿」に逗留する。
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ここはフィンセントが最期の10週間を過ごした場所。「アドリーヌ・ラヴー」のラヴー(エレノア・トムリンソン)は「あの日、彼は遅く帰ってきた。
父が部屋にいくと彼は腹を押さえ医者ガシェは何も言わず見ていた。腹の銃弾を取り出さず帰っていった。テオさんが訪ねてきて明け方一時ごろ亡くなった」という。
翌日、雨。ラヴーは「フィンセントは幸せそうだった。風変りだけどやさしい。雨のなかでも絵を描いた。いつも、どんな天気でも出かけて絵を描いた。そして、いつもひとりだった。河が好きだった」と話す。
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アルマンはフィンセントが好きだったという河、貸ボート屋(エイダン・ターナー)を訪ねる。「無口な人でぼんやりしていた。いつも絵を描いていた。孤独そうだが、女性がいた。俺が知るかぎり彼は普通だ。女で変わった。あの女は教会にいる」という。宿に戻りラヴーに聞くと「ガシェは怒っていた」という。

「オーヴェルの教会」にマルグリットを訪ねると、またあの家政婦ルイーズに会う。
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「あの日、彼はボロボロの服を着ていて目が異常だった」と言う。
マルグリットは「いなくなって何ができるというの! 花が好きな人だったから墓に花を供えている」「私とは関係ない。彼は父と絵の友達、父は彼と口論したことで死んだと思っている」という。

宿に戻りラヴーにマルグリットのことを聞く。「あの家族は信頼できない。ふたりが一緒のときは、フィンセントの顔が違っていた」という。そして「弟テオに会った、画材が高いと言っていた。画材が無くなり送ってもらうよう手紙を書いた。それなのに死ぬというのはおかしい」という。このころフィンセントは1日が数週間に感じられると書き残していた。
 
矢車菊をくわえた“若い男”」に襲われ、追いかけていくと父親の農夫に会う。
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「あの子はおかしいんだ。あの日、納屋から拳銃の音がした。自分で撃ったと言っていた」という。

アルマンは、「みんなの言うことがみんな違っている。自分にも異変が起きている。本気で自殺したのではない」とフィンセントの自殺を疑い始める
ルイーズは、「拳銃はラヴーのカウンターの下にあった」と言い、ラヴーに聞くと「フィンセントは悪童どもや品のない女と付き合っていた。拳銃はあの時はなかった」という。貸ボート屋に聞くと「拳銃は、ラヴーがフィンセントに売りつけた。彼が村で振り回してしていた。『耳を切り落とした男』と悪童どもに揶揄されていた。その先のことは知らない」という。
 
アルマンが、カフェで「矢車菊をくわえた“若い男”」が悪童どもに脅されているところに居合わせ、彼を助けようと暴力事件を起こし警察に世話になる。そこでフィンセントの死亡証明書を描いた医者マリーゼがいたことを知る。彼を訪ねて話を聞くと「被弾部位が頭でなく腹、弾丸が残っていたことから自殺でなない。フィンセントは撃たれたんだ」という。

再度、「嘘ついたろう」とマルグリッドに会う。
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「彼は恋の相手ではない。彼は天才、父も気付いていた。父も画家になりたかった人。彼の絵を模写しようとして『邪魔するな』と言われ喧嘩になった。その次に会ったのは彼が自殺したとき。ルネ・スクレタンという若者が彼に意地悪していた。彼は悪党どもとよく遊んでいたから。結果は同じよ、私が会わなかったこと。」と話す。

やっとガシェに会える日がやってきた。
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「フィンセントは将来を恐れていた。テオから支援を受けていることに苦しんでいた。テオは金に行き詰まっていた。苦を彼に押し付けて、それを恐れていた。彼は『自分で撃った』と言った。彼が死んだのはテオを救うためだ。

私を“えせ絵描き“と言ったから『テオは梅毒にかかっても君を支えている。弟の苦労が分かるか、それで芸術家としての価値があるのか』と言い返した。自分の言葉が彼を死に追いやったかと思っていた。あの夜、彼が『これが皆のためになるんだ』と言ったので、ベッドの傍にいて泣いて詫びた」と話す。
ガシェが、「テオの妻ヨーが手紙を集めているので、その手紙を送る」と言い、フィンセントが旅に出た最初の手紙と交換することにした。

馬車で「赤い葡萄畑」(生前唯一売れた絵)を通っての帰り、手紙を開くと「私は、人にどう関わるのか?不快な、最低の人間だろう。もしそうだとしてもそれが真実でも、作品で示す」と書かれていた。
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アルマンはアルルに帰り、父と話す。「フィンセントには別の世界があった。じっと見ても理解できない。あの事故が、起きる事故で亡くなったのか、若者が関わったことなのか」。ヨーからの手紙が届く。そこには「画家の人生で、死というものは難しいもの。星を見ると想像する。手が届かない、死をみるか、発狂する・・」。
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ドン・マクリーンの歌Vincentに合わせ、ローヌ川の星の夜」から「星月夜」へと変化して、フィンセントの死因を明かす表現は見事です。
                             
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