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「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2017)

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ニクソン政権下、ワシントン・ポスト紙(ポスト)の就任したばかりの女性社主と編集主幹が、政府を敵に回し、ベトナム戦争の欺瞞を暴くという重い決断を下すまでの葛藤を描く実話。監督はスティーヴン・スピルバーグ、脚本に「スポットライト 世紀のスクープ」のジョシュ・シンガーが参画。女性社主をメリル・ストリープ、編集主幹をトム・ハンクスが演じます。とても力の入った作品、楽しみにしておりました。
 
テーマは「報道の自由」。なんとも平凡で、何か隠されているなと感じていました。秘密文書の入手・暴露から政府の法的措置裁判に至る約半月間の熱い戦いのなかで、社主と編集主幹が社運と名声を掛ける“勇気ある決断”が焦点。特に社主が女性という偏見に立ち向かう姿に、平凡ということを超えた、感動を味わうことができました。

この物語のラストはニクソン大統領が裁判に負け「ポストはホワイトハウスには入れない。二度とホワイトハウスに来るな!」の宣言した後に、ウオーターゲート・ビルにワシントン市警が訪れ、警備員が扉を開き招き入れるシーンで終わっています。
この発言が、ポストによるウオーターゲート事件スクープと“ニクソン大統領”の末路に繋がるという絶妙なエンデイング。メデイアに対するエールと共に政権に対する責任を追及しており、監督の制作本意はここにあったのではないでしょうか。(#^.^#)
 
練られた脚本で、テンポよく、ふたりの名優の演技で、最後まで緊張感を持って観ることができ、感動が味わえるというすばらしい作品でした。
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物語は、
1966ランド研究所のダニエル・エルズバーグ(ダン)がベトコン掃討作戦に参加し敵の罠に嵌り大混乱を経験する。戦況視察して帰国する国防長官マクナマラの要請でダンがブリーフィングすると「大統領には戦況改善中と報告した」と言い、記者団に「この1年の成果は期待以上だ」と語る。これに大きな疑念を感じたダンは研究所から「4代の大統領のベトナムにおける政策決定の歴史」(極秘資料)を持ちだし、友人宅でコピーを撮り続け、一部をニューヨーク・タイムズ(タイムズ)にリークする。政権が作戦の失敗を隠し続け、国民を欺き多大な犠牲を強いていることが簡潔に説明され、印象的なオープニングでした。
 
1971
に飛び、ポスト社主キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)がベッドで目覚め、周りには読んだであろう資料が散乱している。そして株式上場の初値を気にしている。そこに編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)から「話したい!」と電話が入る。

朝、ベンを招いての朝食会。ここでベンはタイムズの編集長ニール・シーハンの行動が気になるというが、キャサリンは大統領の娘さんの結婚式に記者参加を断られたことで読者が離れると気にする。
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これを聞いたベンは「あんたは社主、私はボス」と答えて「何か方法はないか」の問いに、「ない」と答える。社主と編集長の関係がとても親密であること。そして、キャサリンの社主としての能力、ベンのジャーナリストとしての矜持が、簡潔な描写でしっかり読み取れ、このテンポの良さが最後まで続き、脚本のすばらしさを示しています。
 
会社に戻ったベンは「シーハンの姿が見えない、何か嗅ぎつけている」とタイムズ社に社員を派遣して様子を探らせる。一方、キャサリンは社の経営会議に出席。
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ほとんど発言をすることなく男性を立てて聞きに周り、発言は会長のフリッツ・ビーブ(トレイシー・レッツ)に任せている。ここでの自信のなさそうな社主の感情をメリル・ストリープの絶妙な表情で読み取れます。
 
ベンは派遣社員からタイムスの状況を掴み、明日タイムスに極秘記事が出ることをキャサリンに伝えます。そして、
翌日、ベンは出勤しタイムス紙を調べ、キャサリンに「記事は読まれているぞ。スクープを追う気なないか」と問いかける。編集会議で「7000ページの文書だ、漏れがある、文書を入手しろ!」と記者に発破をかけるが、返事がない。「俺が調べる」と。主幹として、先が読み、リーダーシップを発揮するベン。トム・ハンクスが若返って見えます。(#^.^#)
 
キャサリンが娘の髪を溶きながら、「ママの友達、マクナマラ、ジョンソンさんに別荘に招待されたのよ」と話しているところに、ベンが訪ねてきて「コピーを手に入れたい!マクナラマに頼めないか」という。「それは無理」と断ります。
 
タイムズの記事でデモが発生、大きな社会問題へと発展していく。ポスト社の編集室に暴露資料の一部?が投げ込まれ、この信ぴょう性を調べて本物だと断定し、ベン・バグデイキアン(ボブ・オデンカーク)にダンとの接触を指示する。ダンも、ポスト社の反応を見ながらリークしてくるので、ドラマに緊張感があります。
 
その時、キャサリンは会長とレストランでランチをとりながら社の株式上場時のスピーチを練っているところに、ベンから「資料は本物だ!すぐ動かないとタイムズに抜かれる」という電話が入る。TVに「機密文書をリークした者を処罰したい」という政府コメントが流れている。会長に「タイムズ社にニクソンが訴えている」という電話が入り、会長は「ケイ、失礼する」と席を外します。
ベンに「明日タイムズの記事が差し止めになる」という情報がもたらされる。キャサリンに伝えると「法に触れない程度にやって!」と返ってきます。

ベンが「NOだ」と返事し、ダンから膨大な文書を入手し、分析して、記事を起こし、印刷部署に待機指示をします。
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と、同時にキャサリンの説得に動き、この熱意にキャサリンマクナマラに事実の確認に動きます。ベンのキャサリン説得、これによるキャサリンの姿勢変化、社内の動きがリンクしながら、政権の掲載禁止命令要求が出る前に新聞発行に駆けつけようとする、とても緊張感のあるストーリー展開にさすがと声を挙げました。(#^.^#)
 
そして、輪転機が動き出す2時間まえまでの社内弁護士の「情報出所がタイムズと同じなら、社が潰れる」と発行阻止を訴えるなかで、ダンの「掲載しないと信用を失う。報道の自由を守るとは報道することだ」の声を聞き、「父の会社でもない、夫の会社でもない、私の会社よ。わかった、寝ます!」と“GO”を指示します。

裁判では6対3で勝利し、他社もポストを称賛します。法廷から出てくるキャサリンの姿に目線を送る女性たち、女性の社会進出に大きな転機になった出来事でもあったのでした!
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後半、ベンのジャーナリスト魂に自分の立場に気付き決心するまでの、キャサリンの葛藤をみごとに演じたメリル・ストリープの演技に魅せられました。お見事でした!!
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