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「レッド・スパロー」(2018)

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ロシアのスパイとなったヒロインが、自らの美貌と心理操作術を駆使したハニートラップでターゲットCIAエージェントに接近し、これに寄ってくる大物モグラ(内通者)を炙り出すという物語。このヒロインを演じるのが若きアカデミー賞女優ジェニファー・ローレンス27才)。これでは観ないわけにはいきませんね!

監督はジェニファーと組んで作った「ハンガーゲーム」のファランシス・ローレンス。原作は33年間CIAで工作員として活動したというジェイソン・マシューズの同名小説、未読です。共演はジュエル・エドガートン、ジェレミー・アイアンズシャーロット・ランプリングととても豪華です!
 
この作品のコピーは「私は、国家の美しい武器」というもので、国家が絡む激しいスパイ合戦かと思いきや、ロシアスパイ組織が行う組織保全のための戦いで、組織を潰し合うでもなく、知恵を使って異分子を炙りだし秘密裡に処分するはなしで、ジョン・ル・カレの描くスパイ世界。因みに、ジェイソン・マシューズは彼の大フアンだそうです。
 
見所は、知恵を駆使し騙し合う精緻なストーリー展開とジェニファーが仕掛けるハニートラップ。
結末が、予想もしない、大物を炙り出しきっちり落とし前を付けるという鮮やかさに感動しました。しかし、細部のところはよく分からないという宿題があるところが良いです。() ラストの電話、主人公はロシアに残るかアメリカを目指すか、とてもうまいエンデイングでした。

物語はロシアのスパイ組織を暴くという一面もあり、えげつない暴力シーンは全部ロシア、なかでも準主役のヒロインの叔父でロシア情報庁の高級幹部を演じるマチアス・スーナールツが、かってKGBに席を置いたプーチンにそっくりに見え、うまいキャステイングでした。() 
 
ジェニファーは、バレエダンサーに、そして全身を使って男を虜にするというこれまでにない姿を見せてくれます。彼女は「私にとって初めて、衣服をすべて脱ぐというものになったが、実際にそういうシーンをやったあとでは、そういうものに対して自由に感じられるようになった」と語り、さらに高位の演技に挑戦していると思われ、これからを楽しみにしたいと思います。
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物語は、
冒頭、ボリショイバレエ団のダンサー:ドミニカ・エゴロワ(ジェニファー・ローレンス)が病弱な母親を介護しながら舞台で踊っていて足に重傷を負い手術するシーンとCIAエージェントの男:ネイト・ナッシュ(ジュエル・エドガートン)が暗号を解読しで「マーブル」なるモグラ接触を試みるも何者かに追跡され発砲して逃走するシーンが、ふたつのシーンの短いカット映像を交互に見せられ、不穏な空気のなかにひっぱり込まれます。バレエサンサーとしてのジェファニーには、踊るパートナーがセルゲイ・ボルーニンですから、その勇気を褒めてあげたいですね。()
 
ネイトという男は、エージェントとしては問題がありますが?、モスクワを離れブタベストで「マーブル」が接触してくるのを待ちます。
一方ドミニカはロシア情報庁の高級幹部である叔父ワーニャ(ジュエル・エドガートン)から事故の原因はパートナーの故意によるものと教えられ、シャワー室で新しくパートナーとなった女の子といちゃついている彼を鉄棒で滅多打ちにします。こういう残酷シーンがかなり出てきます。ドミニカはやられればやり返すという気性の激しい根性のある子です。

ワーニャは母親の面倒を見るかわりに「しっかり着飾ってホテルに行け。その際、携帯電話を取り換えよ」と指示します。
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ドミニカは赤いドレスで高級ホテルを尋ねると、いきなり男にレイプされますが、携帯を取り換える余裕がない。なぜかここに覆面で男が現れ、ドミニカを救出して、技術が未熟とスパイ(スパロー)の養成学校に送られます。ドミニカの受傷事故、レイプ事件はこの叔父が仕組んだ芝居ではないかとドミニカには叔父に対する大きな猜疑心が生まれたと思えます。
 
スパロー養成学校。この教育でもっとも大切なのは国家への忠誠心でしょう。教育の監督官は「さざなみ」(2015)のシャーロット・ランプリングです。苦虫をかみ潰したような面構えで伝統のロシアスパイ魂「平和のためにロシアの先頭に立つのがスパロー」と教えますから説得力があります。() 

大半の教育は、標的を誘惑し心理捜査する技術の習得といいますが、風俗店の支配人が教えるものと変わらない。()  ドミニカはことごとく監督官とは合わないが、自分の意思で動ける子。特に人物鑑定に優れた能力を見せます。
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ワーニャにより、ロシア情報庁の上層部に潜むアメリカとの内通者(モグラ)を探り出す任務が与えられ、ブタベストに送り込まれCIAエージェントのネイト・ナッシュに接触するよう命ぜられる。

ブタベストに着いたドミニカは、マルタという女性とマンションをシェアーしながら、ネイトに接触を図ります。派手な水着で、その筋の女と、彼の気を引きすぐには誘いの食事も断り正攻法で迫ります。ネイトも彼女の会員証を盗み正体を掴みます。
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ドミニカはマルタの部屋を捜索し彼女がロシアスパイであることを突き止め、接触している男がアメリカ上院議員補佐官ステファニー・プーシェ(メアリー=ルイズ・パーカー)であること知りる。(#^.^#) マルタは、この男(スパイ名スワン)に惚れたらしく一緒にウイーンに出向くと話した直後、殺し屋に殺害され、ドミニカは「お前も惚れたらこうなるぞ」と惨い死体を見せられる。
ネイトは、暗号指令を受け、積極的にドミニカに接近する。相手はだれか? ネイトは「あなたはロシアに利用され危険な状態にある。ここでは自分に協力しないか」と熱心にドミニカに説く。
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遂にドミニカは心を動かし、ベッドを共にして、ネイトの言葉に「嘘はない」と協力することにする。

米大使館による十分な尋問を受けたのち、雇う条件にウイーンの銀行に25万ドルを振り込ませ、マルタの情報を売ります。ドミニカはネイトと共にウイーンに乗り込み、スワンに会い、マルタに成り代わり、訪ねてきた女性から衛星(設計?)情報が入ったCDを受け取り、ネイトに渡す。
 
ロシア情報庁が、ドミニカの裏切りを知り、「ブッシュをアメリカに売った。アメリカを愛しているのか」と厳しい拷問を行う。これに耐えたドミニカは、ワーニャに呼び出され「失敗したか?全部話せ」と問われ、「アメリカは私のことは全部知っている。もう一度任務に戻して欲しい」と訴え、再度ネイトに接触します。
 
ドミニカは、喜ぶネイトに亡命のため25万ドルの振り込みを約束させ、ベッドを共にします。目が覚めるとネイトがロシアの殺し屋の拷問を受けている。ピラーで皮膚を剥がすという、痛々しい! これにドミニカが加勢すると見せかけ殺し屋を殺害する。ふたりはアメリカ大使館により救助され、療養中。そこでコルチノイ将軍から、「アメリカは個人の自由を認める。おれがモグラだ!おれを差し出してアメリカへ行け!」と告げられる。

ドミニカはワーニャに「望みのものが手に入った。モグラ!あなたは使い走り。手柄にしていいよ。くれぐれも大統領に迷惑を掛けないように」と連絡を入れます。ドミニカが放つもうひとつの罠、銀行口座がワーニャ名義とは痛快ですね!
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仕掛け仕掛けられる罠の謎解きと、とても痛いシーンから立ち上がるジェニファーの決断がみごとです!
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