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「いぬやしき」(2018)

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ある日突然、謎の墜落事故に巻き込まれてそれぞれに超人的なパワーを宿した冴えない初老男性と冷酷な高校生が、“人類の命運”をかけて繰り広げる壮絶なバトルの行方を迫力のアクション満載で描くSFアクション大作だという。いったいこのふたりはなぜ戦わねばならないのか、そして二階堂ふみさん出演ということになると観ないわけにはいきません。( ^)o(^ )
 
原作は奥浩哉さんの同名人気コミック、テレビアニメ化されていますが、いずれも観ていません。監督は、奥浩哉さんの大ヒット・コミックス「GANTZ」の映画版を手がけた佐藤信介さん、代表作に「図書館戦争」(2015)があります。
キャストは主演に木梨憲武佐藤健さん、共演に本郷奏多二階堂ふみ三吉彩花さんらです。
 
作品は、会社や家族から疎外されたおやじと母子家庭で父の愛情を知らない少年のキャラクターがとてもリアルで、新宿上空250マートルで繰り広げるふたりのSF物語にうまくつながり、SFとは思えないリアルさ、感情移入できる物語になっていています。現実世界からSF世界に入り、再び現実世界に戻るといううまい構成になっています。“テーマは家族愛”。「いぬやしき」とは、この家族の絆の程度(花子)を示しているのではないでしょうか?
 
人間が機械になるという設定、パソコンモニターや携帯画面、大型ビジョンにより大量殺人を犯すという発想もネット事件の多い今日、面白い設定です。
 
クライマックスの新宿上空のバトルは、完全にCGで作られているそうですが気が付きませんでした。すばらしいです。250メートルで新宿上空を飛んだ気分になります!ここで繰り広げられる木梨さんと佐藤さんのバトルは、少しくど過ぎるきらいはありますが、楽しめます。
 
木梨さん、佐藤さん、二階堂さんのキャステイングが言いえて妙、これまでに観たことのない演技で楽しませてくれます。二階堂さんには“可愛かった”と付け加えておきます! この可愛らしさなら、あの大量殺人事件につながりますね!
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物語は、
冒頭、犬屋敷壱郎(木梨憲武)が郊外に購入した一戸住宅に引っ越すシーンから始まります。家を見た家族は「日当たりが悪い」と言い、「腹減った」と妻万里江(濱田マリ)と長女麻理(三吉彩花)、長男剛史(福崎那由他)はファミレスに。壱郎はひとりで寿司を取り寄せ、キャビアを載せて、ワインを飲んで祝う。これでこの男の家での位置づけ、さびしさは十分伝わります。()
 
長時間かけて飲料会社に出勤し、上司に仕事ぶりをなじられ、帰りにカツアゲされている男を見ても見ぬふり。それを娘にたしなめられるという不がいない父親。近寄ってくるのは捨犬の「花子」だけ。
そんなある日に余命3か月のガン宣告を受けます。電話しても誰も出ない。家に帰ると娘に「洗濯物は一緒にしないで、自分で洗って!」と言われ、ガンのことなど家族に話し出せない。このおやじ像がリアルですよね。これで一気に、この物語にもっていかれました。()
 
妻に「花子を捨てて!」と言われ、公園にやってきて、そこのベンチに少年獅子神皓(佐藤健)が座っていたが、ともに強い光に打たれる。朝になって
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家に帰り、妻に嫌味を言われ、朝食のみそ汁に味がないことで体に異変がおきたと鏡で見ると、なんと腕から機関銃やレーザーがでてくる機械人間になったことを知ります。頭部の前面が人面と後部には機械が詰まっているという仕掛けもよくできています。ここからがSFの世界に入ります
 
犬屋敷は死にかけた鳩に触ると息を吹き返したことで、黒沢作品「生きる」(1952)の主人公のように、余命僅かな人間、「人を救いたい」と考えるようになり、瀕死の少年の病室を訪れて生き返らせます。
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一方、獅子神は、よく虐められるやつだが、唯一心を許せる友・安藤直行(本郷奏多)を励ましに、漫画本とゲームを持って訪れるが興味を示さない。元気つけるために、変身で得た魔力を見せると不快感を持ち会いたくないらしい。
一緒に住む母親・裕子(斎藤由紀)にガンが見つかり、別れた父の家族にも馴染めず、なんでおれだけがこんな不運な目にと手に入れた魔力を使って、“秋葉原通り魔事件”のように、なんの関係もない家庭に入り込み、パンパンと指さして(指拳銃)家族を殺害する。このニュースが「調布一家惨殺事件」として報道され、「俺は神になった」と安藤と袂を分かちます。獅子神のキャラクターも実際の事件に準拠しリアリテイがあり、佐藤さんの無表情で無差別に撃ち殺していくサイコパス演技がすごい。
 
犬屋敷は獅子神が殺害した家族の「助けて!」の声を聴き、ロケットをふかして駆けつけるが、すでにこと切れていて助けられない。居合わせた獅子神に一発でたたき出されるという始末。これでは獅子神に太刀打ちできないと、獅子神の威力を知っている安藤の知恵を借りて猛特訓を開始します。
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家に帰ると「剛史が妻の財布から金を盗んだ」というから、「盗むな!」と1万円を渡したことで、「こんなことで収まる問題でない。お父さんは会社に行ってない。この家は、お父さんには守れない」と麻理に言われる。きつい言葉ですが、犬屋敷の父親としての在り方も問題です。
 
「調布一家惨殺事件」はネットで話題になり、その矛先が母親に向かい、遂に母が自殺してしまう。これを契機に獅子神はTVや携帯のデイスプレイに登場し、電波を介して指拳銃で殺人を行うようになる。
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獅子神は警察に追われる身となるが、クラスメイトの渡辺しおん(二階堂ふみ)に匿われる。獅子神は自分の秘密を打ち明けるが、しおりは「そんな風には見えない。人間だよ」と泣きます。獅子神はしおんを連れて、ロケットをふかし、東京の街を見せます。“しおん”って園子音監督のしおん? 監督作品の二階堂さんと違って、ここでは人を疑わず愛するやさしい女の子。とても可愛いです!
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ところが警察は、獅子神の隠れ家を特殊部隊で襲い、しおんが銃殺される。これを契機に獅子神は「この国の全員を殺してやる」と新宿ヤマダ電機YUNIKA VISIONに登場し指拳銃で無差別殺人を始める。これを見た犬屋敷が「助けなきゃ!」とボトルの水を飲み(燃料)、急ぎます。
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ここからはクライマックスの新宿の空中戦。実際に新宿の街を封鎖して撮影されたようで、その映像にCGを加えたもので、キャッチコピーでも謳っている「空飛ぶ映像トリップ」を楽しみます。
獅子神の放つロケット弾でビルが燃え上がり、911の再現です。ビルの合間をぬい、地下道を抜け、ビルの屋上で格闘、電車に・ヘリに衝突しながら、大気圏を抜け、激しく戦います。( ^)o(^ )
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屋上で対峙するふたり、水を欲しがる獅子神に犬屋敷が渡した水が会社のドリンクで、これでロケットエンジンに不調をきたした獅子神が墜落。()
 
このころ東京都庁の見学に来ていた麻理が負傷して発する「助けて!」の声に、犬屋敷は救助に都庁に向かう。心肺停止の麻理に懸命に人口呼吸を施しやっと息を吹き返しているところに獅子神が現れ、「君の父さんは人間でない」とめちゃめちゃに犬屋敷を傷める。傷めつけられる木梨さんのCG顔が面白い。()
 
麻理が父を救おうと手をつなごうとすると、これを足で妨害。ついに麻理を空中に放り出してしまう。犬屋敷が危機一髪のきわどいところで麻理に追いつき救出する。その後、犬屋敷は再び救助を待つ人のところに飛び出して行く。“父の愛は強し”です。獅子神も激しい闘争のなかで感じ取ったのではないでしようか。TVニュースは「獅子神は部品となり飛び散った」と伝えている。
木梨さんの活動が目につきます。当初よぼよぼに老け込んでいましたが、ここでは上半身裸になりアクションしたり空を飛ぶ演技。あの木梨さんがやってくれるという意外性が面白いです。
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現実の犬屋敷家の朝食。TVでの獅子神が死んだというニュースを聞いて、母の万里江が「だれが倒したの?」と聞く。壱郎がみそ汁を飲まないで見つめている。仕事に出かける万里江。残された壱郎と麻理。麻理が「なぜみそ汁をのまないの」と問い・・ではないでしょうか。()
やっと家族の絆が戻ってきそうですね!絆を戻すには、父親にはこれほどの努力が必要だということを教えてくれましたね。( ^)o(^ )
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